19.Emotion(R18)

仄香の腰をぐいと引き寄せて、一番奥まで押し付けるように腰を打ち付けると、仄香は仰け反って切な気に喘いだ。
今まで聞いた声の中でも一番艶っぽい。
俺も、先を包み込むような柔らかい奥に当たると、今までになく感じて、堪えきれない喘ぎに似た吐息が漏れた。
本当に仄香とは身体の相性までいいのかも知れない。
きっともっと慣らして行けば、仄香も辛くなくなるし、こんなに狭すぎる事もなくなる。
それを差し引いても、こうしてほとんど根元まで包み込まれて、ナカの角度といい、先を包み込む奥の柔らかさといい、今まで感じた事もないほど気持ち良くて、最高に理想的な身体だ。

ああ、本当に自分本位に抱きたくてたまらねぇ。

「仄香、動いてもいいか?っくっ…」
「激しくなければっ、っはぁ、奥がいいのっ…」
「分かった」

俺は、ほんの少しだけの動きだけで、仄香の腰を引き寄せて奥をゆっくりと突き上げ始めた。
たっぷりと濡れて熱く柔らかいそこに包み込まれて撫でられるような感覚にどうしようもなく感じて、もっと欲しくなる。
一番奥に当たるたび、仄香は艶っぽく啼いて背中を反らせて震える。
ナカがまたキツく締め付けて苦しいくらいなのに、こうして二人同時に快楽を感じる事がとても嬉しくて、愛しくてたまらない。
激しく動いている訳でもないのに、強い快楽に息が上がっていってどうしようもない。
荒い吐息の間に、堪えきれない喘ぎ声に似た呻き声が混じる。

「こじゅうろっ…!ああっ、気持ちっ、いいっ!、っはぁっ、小十郎も?」
「ああっ、最高の気分だっ!仄香、愛してる」
「私もっ、小十郎、大好きっ、っはぁ、もっとっ!」
「ああ、お前ぇが望むなら」

俺は、仄香に触れるだけのキスをして、覆いかぶさって仄香の手首をベッドに押し付け、吐息のかかる距離で仄香を見つめながら抱いた。
腰を抱え直して、もっと奥まで当たるように、ゆっくりと腰を押し当てる。
頭まで痺れるような快楽に、顔を顰めて、少しずつ動きを速くしていく。
仄香は眉根を寄せて艶っぽく啼きながら、薄っすらと目を開けて、そして眩しそうに俺を見つめた。

「小十郎ってこんなに色っぽかったんだ…。身体も表情も…。小十郎に抱かれて嬉しい…。こんな素敵な人いないよ。胸が苦しいくらいドキドキする。ああっ、小十郎、好きっ!」

仄香はそう囁くと、また感じたように目を閉じてあられもなく喘いだ。
またナカから熱い愛液が溢れてくる。
俺も仄香が愛し過ぎてどうにかなりそうだ。
増してや、俺に抱かれて仄香が喜び、俺を好きだと思ってくれてると知ったら尚更だ。

「仄香、お前ぇは本当に可愛い。そして、綺麗になった。こんな艶っぽい顔しやがって。誰にもこんな顔、見せたくねぇな。お前ぇは俺だけのもんだ。お前ぇに色々な快楽を教えるのも俺だけだ。お前ぇをもっといい女に磨き上げるのも俺だけだ。仄香、愛してる」
「こじゅうろっ!」

仄香のナカがまたキツく締め付けた。
俺の言葉に感じたのか、また熱い愛液が溢れ出した。
もう、これ以上焦れったい動きをするのが辛くて堪らなくて、俺は仄香の腰を引き寄せると、仄香を傷付けないように注意しながらも、衝動のままに奥の方だけで激しく突き上げた。
仄香は狂ったように啼いた。

「あっ、やんっ!こじゅうろっ、こじゅうろっ!ああっ、おかしくっ、なるっ!ああっ、もうっ、もうっ、ダメっ!」
「あとっ、少し、待てっ…くっ…!!」

俺の腕の中で、乱れる仄香は艶っぽく、綺麗で愛しくてたまらない。
これ以上はないほど乱れてるのに、もっと乱れさせたい。
それに、まだまだ抱き足りない。
俺が満足するまで、まだしばらくかかる。
気持ち良くてたまらなくて、呼吸はすでに上がり切っているのに、まだまだ仄香を感じていたい。
もっと深く感じたい。

欲求のままに、仄香を揺さぶりながら、激しく突き上げ続けると、仄香はもう言葉も発せないくらいに乱れて、可愛い嬌声を上げ続け、俺に揺さぶられるままに、耐えられないというように首をゆっくりと横に振った。
こんな可愛い声を上げながら、そんな拒絶をしても逆効果だ。
仄香の望みは叶えてやりたいが、今回だけは聞いてやれない。
俺だって、もう止めようがない。
耐えられないくらいの快楽を仄香が感じていると思うと嬉しくてたまらなくて、俺も自分の欲求のままに、突き上げ続けた。

最高に気持ち良くてたまらない。
愛しい女を抱くのがこんなに気持ちいい事だなんて知らなかった。
快楽と共に気持ちも溢れ出して、幸せでたまらない。
このまま時が止まればいいとすら思った。
このままで終わりになんてしたくない。
そんな思いとは裏腹に、身体は正直に快楽を貪るように動き、段々と高みに上って行く。
もうあと僅かで限界だ。

「くっ、仄香っ、限界だっ!…っ…っはぁっ、っはぁっ、ああっ、仄香っ!!」

俺は仄香をキツく抱き締め、荒い吐息をつきながら、己の欲望を吐き出した。
意識が白く弾けそうなくらい、最高の絶頂だった。
こんなに気持ち良くてたまらないのは、本当に初めてだった。
全て出し切るまで、何度かゆっくりと奥を穿って、仄香の首筋に顔を埋めて心地よい余韻を感じながら、荒い呼吸を整えようとした。
強い余韻がなかなか抜けなくて、なかなか呼吸が整わない。
仄香は片腕を俺の背に回してしがみつき、荒い吐息を吐きながら、まだ感じているように時折小さく啼いて、背中に爪を立てた。
しばらくそうして抱き合っているうちに、少しずつ呼吸が整っていき、名残惜し気に余韻が薄れて行った。

仄香は、酔いが覚めた後でもこの夜の事を覚えているだろうか。
俺の女になったという事を。
二人愛し合った時の事を…。

出来るなら覚えていて欲しい。
俺にとっては、焦がれて止まなかった仄香を初めて抱いた、特別な夜だ。
それも、最高に幸せで、忘れられないくらいの快楽を初めて知った夜だ。
愛し過ぎてこのまま離したくない。

でも…。
酔った勢いで仄香の記憶には残らないような気がする。
残念でたまらないが、それでもあれが仄香の心の奥底に眠っていた本音ならば、俺にはそれで十分だった。
いつか、酒の入ってない時に、仄香が俺の気持ちに応えてくれるまで、俺は待つ。
仄香が少しでも俺に追いつくまで、俺は待つ。
それまでは、この夜の思い出だけで俺は十分だ。

やっと完全に呼吸が整って、顔を上げて仄香を見つめると、仄香は酔いで潤んだ瞳で俺を見つめた。

「あのね、小十郎。指でイクのも気持ち良かったけど、小十郎と一つになった時の方がもっと気持ち良かったの。イカなかったけど、イクより気持ち良くて幸せだったの。そういうものなの?」
「女がどう感じるかまでは俺には分からねぇ。でも、お前ぇがそう思ったなら、そうなんだろうな。何て可愛い事、言いやがる。またお前ぇを抱きたくなっちまう」

俺は、仄香の唇を奪った。
何も知らないがゆえに、仄香のさっきの言葉は真実だ。
仄香も同じように感じていたと思ったら愛しくてたまらなくなって、本当に夜明けまで抱き続けたくなった。
でも、初めてなのに、それは流石に辛いだろう。
それに、もし仄香の記憶から消えてなくなるなら、これ以上離れがたくなるような言葉を聞いたら、俺は仄香を待ってやれなくなってしまう。
記憶がなくなる前に、ありったけの温もりと柔らかな唇をもっと感じていたかった。

しばらくキスを交わしているうちに、ようやく気持ちも落ち着いて、唇を離して仄香のナカから自身を引き抜いて、後始末をした。
そして、ワードローブの中からバスローブを2着出して、一つはベッドの上に置き、一つは身に付けた。

「仄香、まだ飲めるか?」
「うん」
「最後にもう一杯だけスコッチを飲んで、シャワーを浴びる」
「一緒にシャワー浴びるの?」
「お前ぇの好きにすればいい。ふらついて危ないようだったら、一緒に浴びるしかないな」
「じゃあ、飲んでから考える」

仄香には大き過ぎるバスローブを着ると、仄香は少しふらつきながらソファに深く身体を沈めて少し震えた。

「ちょっと寒い…」
「ああ、少し冷え込んで来たかもな。先に飲んでろ。温度を少し上げて来る」

俺は、スコッチをグラスに注いで仄香の前に置くと、エアコンの温度を上げた。
部屋の温度は15度しかない。
外は相当冷え込んでいるはずだ。
少し高めに温度を設定してソファに戻ると、仄香は小さく縮こまって、グラスを両手で持ってちびちびとスコッチを飲んでいた。
俺は、タバコに火を点けてゆっくりとふかした。
あと数時間しか眠れない時刻だ。

「仄香、明日は大学か?」
「ううん、もう期末も終わってる。今日はバレンタインだから大学行っただけ」
「二日酔いしそうか?辛くなりそうなら、有給を取って一緒にいてやる。お前ぇが大丈夫そうだったら、お前ぇは好きなだけ寝てて構わねぇから、俺は仕事に行く」
「やだやだ!小十郎と一緒にいたいよ。…もしかしたら、後で頭痛くなるかも知れないし…。起きて一人だったら寂しいし…」
「ああ、分かった。今のうちに有給の手配をしておくから安心しろ」

出勤しないのは気が引けるが、ここでテレワークが出来るし、俺も仄香と離れがたい。
俺は、ゆっくりとタバコを吸い終わると、綱元にメールで、仕事の内容も指示した。
出来る仕事はここでするつもりで、段取りを細かく手配すると、明け方過ぎにメールが届くように設定してメールを送信した。

「明日はここで仕事をするから、大丈夫だ。好きなだけ寝てろ。俺も出勤しないでいいなら、もう少しゆっくり飲めるしな。とっておきのモンテクリストでも吸うか。2時間半かかるシガーだが、ラファエル・ゴンザレスよりも上等なやつだ。モンテクリストの中でも上等なやつだからな。特別な夜にぴったりだ」

そう言うと、仄香は嬉しそうに微笑んで、俺に甘えるように寄りかかった。
少し傾いたグラスを取り上げ、少し飲んでテーブルに置くと、シガーケースからモンテクリストを取り出して、吸い口を切ると、火を点けてゆっくりと吸いながら、またスコッチを飲んで、仄香の肩を抱いた。

「まだ寒いか?」
「うん」
「確かに妙に冷え込むな」
「ねぇ、小十郎。窓の外、見て来ていい?雪が降ってる気がするの。こんなに寒いのおかしいもの」
「そうだな。立てるか?」
「うん…」

仄香は立ち上がろうとしてふらついて、またソファに座り込んだ。
俺は、シガーを灰皿の上に乗せて、仄香を抱き上げて窓際へ行った。
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