短い曲だから、歌詞は一回で簡単に覚えられた。
でも、かなりテクニックが必要な歌だ。
「遙、これ難しいじゃねぇか、力加減が。小十郎向きだ」
「ダメ。これは、政宗に歌って欲しいの。政宗じゃなきゃダメなの。他の人は禁止」
「何でだ?」
「だって、恋しちゃいそうだから。政宗に、Won't you please surrender to me?って甘く歌って欲しいの。そこのフレーズが一番好きなの」
「ああ、なるほどな。そんな口説き文句、小十郎に歌わせる訳にはいかねぇな。相変わらず、お前は可愛い女だ」
さっきの歌は、甘く優しい告白の歌だが、これは女を口説き落とす、情熱的な歌だ。
それを理解した上で、俺にしか歌わせないなんて、いじらしくて可愛くてたまらない。
遙の肩を抱き寄せて、柔らかくキスをした。
嬉しそうに遙は微笑んで、俺にしなだれかかった。
「俺に口説かれたいなんて、お前は相変わらず本当に可愛いな」
「だって、もう一度、最初から恋したいの。政宗に口説いて欲しいな」
「何度でも、口説いてやるよ。永遠に俺のものになれ、今夜、俺のものになれ、か…。いいのか?そんな風に俺に口説かせて」
遙の顎を指先でくいっと上げて、じっと遙を見つめた。
今すぐにでも遙が欲しくて、自分の瞳が欲情で濡れ切っているのが分かる。
「俺は、口説いたからにはその通りにするぜ?ん?いいのか?」
遙は頬を染めて、俺に魅入られように固まって動かない。
俺を見つめるその瞳は、迷うように揺れているのに、小さく熱い情熱の炎もまた揺れているように潤んでいる。
俺は、キスをするように顔を近付けて、唇が触れそうな距離で低い声で囁いた。
「そんなに情熱的に口説かせて、後悔しても知らねぇぞ?俺は、本気にするぜ?歌うからには本気で口説くぜ?」
遙の震える吐息が唇を掠めた。
遙の視線が、俺を求めるように段々と熱を孕んでいく。
初めて遙を抱いた時のようにドキドキと胸が高鳴る。
そんな目で見つめられたら、欲しくてたまらなくなる。
後戻り出来ないくらいに止まらなくなる。
でも、今がチャンスかも知れない。
遙をもう一度口説くチャンスかも知れない。
「Won't you please surrender to me?」
殊更に甘い声でそう歌うと、遙は、一筋涙を流して、身体からかくんと力が抜けた。
片腕で抱きとめて、そのまま唇が触れそうな距離で甘い声で初めから歌い始めた。
歌詞に合わせて艶っぽく甘く歌いながら、遙の髪をゆっくりとかきあげ、指の背で頬をゆっくりと撫でると、遙は感じたように吐息を震わせた。
「And I know, each time I kiss you that your heart's on the fire too」
そして歌詞に合わせるように柔らかいキスをして、また吐息がかかる距離で、遙の瞳をじっと見つめながら囁くように殊更に甘く歌う。
「So, my darling, please surrender」
また遙の瞳から一筋涙が零れた。
部屋の外に小十郎の気配を感じて、俺は、押し殺した声で命じた。
「小十郎、下がれ」
「はっ!」
すぐに小十郎の気配は遠ざかり、また俺は、歌い始めた。
歌いながら、頬を撫でていた指を、そのまま首筋に滑らせて撫で下ろした。
遙は吐息を震わせびくっと震えた。
身体が一瞬怯えたように強張ったが、そのまま、視線を外さずに歌い続けると、また身体から力がかくんと抜けた。
そのまま、綺麗な鎖骨をゆっくりと指先でなぞっていく。
「政宗、まだ朝だよ?夜の歌だよ?」
遙は、潤み切った瞳で、吐息を震わせながら囁いた。
「関係ねぇな。口説いて欲しいんだろ?」
触れるだけのキスをして、そのまま唇が微かに触れる距離で低くそう囁くと、遙は甘い吐息を漏らした。
「そういうつもりじゃ…」
「俺は、本気にするって言ったぜ?本気でお前を口説くって」
唇が微かに触れる距離で囁くと、遙は感じたように震えた。
柔らかくキスをして、また甘く囁くように歌い始めた。
歌いながら、鎖骨をなぞっていた指を、そのまま肩のラインをなぞるようにゆっくりと滑らせて行く。
浴衣が少しはだけて、遙はハッとしたように顔色を変えて、身体を強張らせた。
俺は、遙の目をじっと見つめたまま、歌いながら、華奢な肩のラインを端までなぞって、更に浴衣をはだけさせ、手のひらで包むように素肌の肩を抱いた。
「Won't you please surrender to me?」
遙の一番好きなそのフレーズを最初よりももっと甘く歌い上げると、遙の身体からかくんと力がまた抜けた。
そして、そのまま歌を続け、素肌の背中に手のひらを滑らせながら、最後のフレーズを歌った。
「Be mine forever…Be mine tonight…」
遙はまた一筋涙を流した。
その瞬間、浴衣を片肌脱がせて、柔らかくキスをした。
何度か柔らかいキスを繰り返して唇を少し離して遙を見つめた。
遙の頬には幾筋も涙の跡が出来ていた。
「政宗、ズルい。こんな口説かれ方されたら拒めない」
「口説いて欲しいって言ったのはお前だぜ?」
「こんな風に口説かれるなんて思わなかったよ…。初めて政宗に抱かれた時より、もっとドキドキして胸が苦しい…。身体が蕩けて力が入らないよ…」
「そのまま俺を受け入れろ」
俺は、柔らかいキスを繰り返しながら、遙の浴衣を脱がせて行った。
そして、布団の上にそっと押し倒して、俺も着流しを手早く脱ぎ捨てた。
遙の額にキスをして、頬を撫でて見つめ合う。
絡み合った視線は、初めて結ばれた時よりももっと熱を孕んでいて、胸が苦しいくらいに高鳴る。
「遙、愛してる」
遙と指を絡めるように手を繋ぎ、床に縫い止めて、身体を密着させるように覆い被さり、何度も何度も柔らかいキスを交わした。
唇を離すと、お互い吐息が震えていた。
胸が苦しいくらいに愛しくてたまらない。
遙はぽろぽろと涙を流していた。
「政宗の温もりだ…幸せでたまらない温もりだ…」
「ああ、もう一度最初から恋をしようぜ…」
遙の目尻の涙にキスをして、頬をそっと撫でて、また吐息のかかる距離で、遙の目を見つめながら少し掠れた声で歌い始めた。
今度は、さっき小十郎が歌っていた、Can't help falling in love。
「Wise men say only fools rush in, but I can't help falling in love with you」
ゆったりとしたテンポに合わせるように、そっと、頬から首筋へ、胸からほっそりとした腰へ、身体のラインをなぞるようにゆっくりと指先を滑らせて行く。
遙は、涙を流しながら、俺の頬に手を添えて、そっと撫でた。
「お前に恋せずにはいられない」
「私もずっと政宗に恋してるよ。ずっと、ずっと…」
遙がそっと目を閉じると、綺麗な涙が目尻を伝って流れて行った。
その涙にまたキスをして、今度は深く唇を重ねた。
柔らかな唇を味わうように、何度も柔らかく食んで唇を離すとまた互いに吐息が震えた。
「政宗、好き…」
「俺もだ、遙」
また見つめ合って、額から頬にかけて撫でると、遙は俺の手の上に自分の手を重ねて、甘い吐息を吐いて目を閉じた。
遙のこの仕草と表情が好きでたまらなかった。
愛し過ぎて胸が苦しい。
また吐息のかかる距離で、俺は、別のフレーズを歌い始めた。
「Take my hand. Take my whole life, too. For I can't help falling in love with you」
歌いながら、そっと遙の手を外し、ゆっくりと互いの下着を解いて、生まれたままの姿になって、遙の目を見つめながら、またそっと指先を遙の身体に滑らせた。
「今のは、プロポーズのやり直しだな。お前、さっき小十郎にプロポーズされやがって」
「政宗一筋だって返事したよ?」
「そうだったな。お前は本当に可愛いな」
遙の背中に両腕を回し、身体が密着するくらいにキツく抱きすくめて、お互い絡み合うように抱き合って、また深い口付けを何度も飽きる事なく交わした。
遙が甘えるような小さな声を上げ始めた。
身体が熱くてたまらない。
でも、とてもとても幸せな熱だ。
互いに息が上がって行って、ようやく唇を離して遙を見つめると、熱に浮かされたような、蕩け切った表情をしていた。
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