いつものように、日常と非日常のコラージュのような、意味を成さない夢の群れを抜けると、爽やかな風が心地よい浜辺に私は立ち尽くしていた。
夢の中のように霞がかったぼんやりとした空間の中、頬を撫でる風と潮騒がやけにリアルで、まるでそれらだけは現実世界の物のようだった。
海鳥が遠くで啼いている。
行く当てもなく、ただ手持ちぶさたに歩き出すと、足元の砂を踏みしめる感触はせず、歩いている実感がない。
辺りを見回すと、まるで人の手が全く入れられていない、天然の入江のようだった。
浜辺では、岩が所々に顔を出し、私は岩と打ち上げられた流木や海藻を避けながら歩いて行く。
すると、遠くの岩に背を預けて座っている男がいた。
男は大河ドラマで見るような袴姿で、俯き、左肩に刀を立てかけていた。
刀で顔が隠れていて、向こうは私に気付いていないようだ。
夢の中なのだから、襲われても死ぬことはないと分かっているのに、刀を帯びた武士を見ると思わず立ちすくんでしまう。
男が不意に顔を上げてこちらを見る素振りをしたので、反射的にヒッと息を飲んだその瞬間、男の顔が露になり、私は目を見開き口許を手で覆った。
前より頬のラインがシャープになっているけど。
前より凛々しく、随分大人びているけど。
そこには少年らしいあどけなさはもう微塵もないけれど。
あれは、政宗だ…。
今までの夢と違う。
私の記憶には全くない、きっと私と同じくらい年齢を重ねた政宗の姿だった。
戸惑いを感じて、あれほど恋焦がれていたのに、私は口許を覆ったまま、動く事すら出来なかった。
政宗は訝しげに私を見つめていたが、その隻眼を大きく見開くと、刀を投げ出し、私の下に駆け寄って来た。
「遙っ!!」
変わらない懐かしい声を聞くと、私も呪縛から解かれたように、真っ直ぐに政宗の下へと駆け寄った。
体当たりをするように政宗の腕の中に飛び込むと、まるで夢ではないかのような衝撃を身体に感じ、息も吐かせぬくらいにギュッと抱き締められた。
7年間焦がれていたその感触に胸が満たされて行って、私も政宗を強く抱き締めた。
7年前と変わらない、私の愛した政宗の身体だった。
「愛してるっ…!」
愛しさが狂ったように胸の奥を焦がし、熱いものが込み上げて来て視界が揺れると、涙となって零れ落ちる前に、深く深く唇が重ねられた。
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