安らかな寝息を立てて眠る遙と共に、俺もしばらくの眠りに就いた。
次に、オレンジ色の太陽の光を目蓋に感じて目を覚ますと、カラスの鳴き声が遠くで聞こえた。
もうそろそろ夕餉の時刻だ。
遙の頬はまだ透けるように青白く、夕焼けで少し赤みが差している程度で、俺は遙を抱き締めて、その温もりにようやく安堵した。
「政宗様、夕餉はいかが致しましょう?」
「俺は軽めの夕餉でいい。遙がまだ眠ってるんだ」
「そうですか。では、小十郎は席を外します」
「ああ、そうしてくれ。遙の分は用意しなくていい。遙の栄養剤の話を聞いた。重湯よりもずっと効果があるらしい。このまま眠らせてやりたい」
「左様でございましたか。承知致しました」
小十郎は、夕餉を申し付けてそのまま控えていた。
やがて、夕餉が運ばれて来ても、遙は深く深く眠っていた。
小十郎は痛ましそうに遙を見つめた。
「よほどお疲れになったのですね。あれほどのお働きをしたのですから、無理もございませんね」
「ああ、そうだな。焔を控えさせてくれ。またうなされないか心配だ」
「かしこまりました」
小十郎は焔と見張りを交代して、下がって行った。
少し不安な気持ちで遙を見つめながら、簡単に夕餉を終えると、襖の前に膳を置いた。
襖がすっと開いて、焔が膳を下げながら小声で囁いた。
「遙様がうなされ始めたら、無理には起こさないで下さい。すぐに催眠をかけます。また、人払いも慣れておりますゆえ、ご安心下さい。下がる頃合いも心得ております」
「Thanks. 流石は猿飛の右腕だ、頼んだぜ」
「御意」
焔はまたすっと襖を閉めて、部屋はまた静寂に包まれた。
しばらくゆっくりと茶を飲みながらタバコを吸っていると、辺りは夕闇に染まり始めて、俺は行燈に明かりを灯した。
柔らかな明かりの中、遙の長い睫毛が震えて、俺は遙の隣りに寝そべって、そっと頬にキスをした。
何度か触れるだけのキスを頬に繰り返すと、遙は瞬きをして、ゆっくりと目を開けた。
そして、不思議そうに辺りを見回して、ハッとしたように身体を起こした。
「今、何時?もう夜なの?」
「7時半くらいだな。よく眠れたか?」
「うん…。いつ寝たのかも覚えてない…」
「うなされなくて良かったな。それにしても、物騒なもんを身に付けたまま寝やがって。とりあえず、その銃をしまっとけ」
「あ、そうだね。うん、そうする」
遙は、長い白衣を脱ぎ、銃を装着するベルトを外すとバッグにしまい、栄養剤を飲み干すと、また俺の隣りに寝そべった。
遙を抱き寄せ、絡み合うように抱き合いながら、キスを交わすと、遙の柔らかな身体をまるで直に感じているようで、堪らない気持ちになって、段々と深いキスへ変えて行った。
濡れたキスを繰り返すと、遙は息を乱し、甘えるような声を上げ始めた。
襖の向こうの気配はすぐに遠ざかり、俺は遙の髪に手を差し入れ、指先で愛撫をしながら、濡れたキスを続けた。
遙は愛撫に感じたように喘ぎ、息を乱して唇を離した。
「政宗ぇ…」
「何だ?」
「優しいキスをして?鎌倉の時みたいに」
「鎌倉の時か…懐かしいな…」
今度は啄ばむようなキスを繰り返すと、遙は幸せそうに吐息を吐いた。
「あの時、政宗の吐息、震えてたね。私も緊張してた。政宗に幻滅されるんじゃないかって不安だったの…」
「そうだな、俺も緊張してた。お前は、俺が初めて愛した女だったから。傷付けたくなかった。とても、大切にしたかった。お前は相変わらず俺の宝だ、遙…」
触れるだけのキスを唇に、頬に、目蓋に雨を降らせるように繰り返すと、遙はそっと涙を流した。
「あの夜みたい…。政宗に、大切に大切に抱かれた、今でも忘れられないあの時みたい…」
遙は俺の髪をくしゃりと撫でた。
遙の優しい手の感触が、あの夜を鮮明に思い出させた。
遙の頬をそっと撫でながら、また優しいキスを繰り返し、そして耳元で囁いた。
「包帯、取ってもいいか?」
「うん…」
ゆっくりと包帯を解き、首筋にも触れるだけの優しいキスを繰り返すと、遙は小さく喘ぎながら、愛しげに俺の髪を撫で、また一筋涙を流した。
「政宗、今、とても幸せだよ…。幸せでたまらない。政宗、愛してる」
「俺もお前を愛してる」
柔らかなキスの雨を降らせながら、遙の白衣を脱がせて行くと、遙は俺を拒む事なく、ただ幸せそうに小さく喘ぎながら、俺の背をそっと抱いた。
すっかり白衣を脱がせると、艶かしいほど美しい肢体が露わになった。
オレンジ色の、セクシーな下着がこの上なく似合っている。
ただ、今は、性急に抱きたいとは思わなかった。
このまま、気だるく優しい空気に包まれたまま、遙を大切に愛したい。
俺は、そっと指先で愛撫をしながら、遙の身体に触れるだけのキスをたっぷりとして、また遙を抱き寄せて、唇に柔らかなキスをした。
唇を離すと、遙はまた懐かしそうな目をして、涙を流していた。
「あの夏と同じだ…。部屋に籠って、政宗にゆっくり優しく抱いてもらった、あの夏と同じだ…」
「そうだったな…。朝から夕方まで、ずっと抱き合ってた事もあったな」
「そうだね…政宗と素肌で抱き合いたいな…」
「分かった」
俺は、着物と袴を脱ぎ捨て、遙の背に両腕を回してキツく抱き締めた。
遙の温もりを全身で感じて、幸せでたまらない気持ちになって行って、あの頃と同じように、幸せな溜息が出た。
「遙、俺も幸せでたまらねぇよ。幸せで溜息が出るなんて教えてくれたのは、お前だ。愛してる」
耳元でそう囁いて、また唇に身体に、ゆっくりと優しいキスの雨を降らせた。
遙は感じながらも、幸せの吐息を吐いて、そっと指先で俺の背を愛撫していた。
あの頃、いつまで経ってもこの優しい空気に包まれていたくて、俺たちは、飽きる事なくこうして互いにキスをしながら愛撫を繰り返していた。
余りある時間の中、何も考えず、お互いの愛情だけを全身で感じながら抱き合っていた。
時間を忘れて、遙ともつれ合うように、互いに愛撫とキスを繰り返しているうちに、段々と遙と繋がりたくなって来た。
その一方で、まだまだこの気だるく優しい時間を過ごしていたい。
「…っん、ねぇ、政宗。はぁっ、私、もう、もう…」
「分かった。優しく優しく抱いてやるよ」
俺は遙の下着を脱がせ、自分の下着も取り払うと、ゆっくりと遙の中に自身を沈めていった。
とろとろに蕩けたそこの、柔らかな襞に包まれると、言い様がないほどの幸福感で胸が満たされて、俺は遙をキツく抱き締めて、一番奥まで貫いた。
深く繋がった瞬間、遙は一際大きく喘ぎ、俺の背に爪を立てた。
「Hey, 遙、まだイクな。優しく抱いてやるって言っただろ?」
「んんっ…!はぁっ、だって気持ち良くてっ…!」
「じゃあ、落ち着くまでキスしてようぜ」
深く繋がったまま、気だるいキスを繰り返すうちに、遙はようやく落ち着いて、また目に涙を溜めた。
「政宗をすごく近くに感じるよ…。初めて繋がった、あの夜みたいに。Make Loveが幸せな事だって教えてくれたのは、政宗だよ」
「それを俺に教えてくれたのは、お前だ。深く繋がるだけでこんなに幸せなんだってな」
俺は優しいキスを繰り返しながら、ゆっくりと腰を動かし、より深く深く遙と繋がった。
激しく穿っている訳でもないのに、遙は奥に当たる度に、幸せそうな喘ぎ声を上げて、俺の背をギュッと抱き締めた。
すぐに達してしまうのがもったいなくて、俺は殊更にゆっくりと遙を抱いた。
やがて、遙の呼吸は段々と荒くなり、限界が近付いていった。
「はぁっ、はぁっ、政宗っ、もっと…!激しくしてっ!」
「ああ、いいぜ?お前がイったら、またゆっくり可愛がってやるから」
そう言うなり、遙を揺さぶるように激しく腰を打ち付けると、遙はすぐに達して、俺にしがみ付きながら、荒い呼吸を整えていた。
その髪を撫でて、頬にキスを繰り返すと、遙は段々と落ち着いていった。
「政宗とまだ繋がってるの、嬉しい…」
「ああ、今夜はゆっくりとMake Loveしようぜ。あの夏みたいに」
「あの夏みたいに、か…。嬉しくて、幸せで泣けて来そう…」
「俺もだ、遙」
また絡み合うように抱き合って、ゆっくりと遙を穿ちながら、俺たちは気だるいキスを交わした。
何時間もそうして抱き合いながら、あの夏の恋に想いを馳せるのは、この上なく幸せな時間だった。
俺自身も何度か達したけれども止められない。
また、繰り返し繰り返し、7年間の空白を埋めるかのように遙と身体を重ねて、ようやく二人とも疲れた頃には夜もかなり更けていた。
辺りは完全に静まり、俺たちは、そっと部屋を抜け出して温泉でまた愛し合うと、部屋に戻って心地よい倦怠感の中、遙が眠りに落ちるのを見届けてから俺も眠った。
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