夢と現実の狭間 -4-

「遙っ!!」

がばりと身体を起こすと、そこはいつもと変わらない俺の寝室だった。
ただ、いつもと違うのは、夢が妙に生々しくて、まるで現実に起こった事のように、遙の体温すらまだ俺の腕に残っているように感じられる事だった。

『やっと、見つけた…』

夢の中で聞いた声は確かにそう言っていた。
そして、俺達がいた世界に亀裂が走り、それが弾け飛ぶと、遙の身体が俺の腕の中からかき消え、一気に意識が浮上して目覚めてしまった。

あれは、夢だったのだろうか。
でも、夢にしては遙の言っていた事は、やけに現実味を帯びていた。
そう、あれは夢ではない。
きっと夢と現実の狭間で、俺達は確かに再会していた。
俺達がそこで逢瀬をしていたというのなら、遙は一体どこへ行ってしまったのだろう?

今度こそ離したくなかった。
だから、遙が離れようとしても、俺は決して彼女を離そうとしなかった。
ずっとこの腕に抱きしめていたら、今度こそ連れ帰れると思ったのに、それでも今回も叶わなかった。

「どうして、お前だけは手に入らねぇんだ…」

遙は結婚をするのだと言っていた。
いつかそんな日が来ることは分かっていたが、それでも認めたくなかった。
他の誰かのものになるなんて、そして、俺への想いを捨てなければならないなんて絶対に認めたくなかった。
それが、遙を想っている男なら尚更だった。
俺ほどあいつを愛している男なんてこの世にいるはずがないのに、何故そいつがいともたやすく遙を手に入れてしまうんだ。
そんなの絶対に認めねぇ。許さねぇ!

「遙、俺は諦めねぇ。こうしてやっと会えたんだ。もう一度、絶対にお前を見つけてみせる。お前しか欲しくない。武田との婚儀だって…」

そう呟いて、俺は顔を顰めた。
武田との婚儀の交渉は着々と進んでいる。
小十郎はそれとなく先延ばしにするように計らってくれているが、それにも限界がありそうだった。
俺が婚儀に非協力的な事で、世継ぎのない伊達の基盤が弱まると見た、各地の戦に負けた恨みを持つ残党勢力が反伊達同盟を組んで、また戦を起こそうとしているという情報も入って来ている。
民の平和が俺の願いだった。
例え、どれだけ遙を愛していても、もしまた戦が起こるというのなら、俺は、俺自身の幸せを捨て去る覚悟を決めなくてはならない。
遙が結婚を決意したように…。

いくら俺が拒んでも、武田との婚儀は避けられないかも知れない。

「遙、どこへ消えてしまったんだ。早く、俺に会いに来い…。頼む、俺の下へ戻って来てくれ…」

胸元で揺れているロケットを、俺はそっと握った。
遙にこの想いが届くのを願いながら…。

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