決戦!武田道場 -2-

「お館様ぁああああ!!!!」
「幸村ぁああああ!!!!」

真田幸村とお館様は、いつものように、拳で互いの顔を殴り合っている。

「おーっと!!いきなり武田名物、主従殴り合いですっ!!両者一歩も引きません!!」
「美紀、それ、何?」
「実況、解説だよ!」

俺が尋ねると、美紀はうきうきと笑った。
その瞬間、真田幸村は、お館様に殴られて吹っ飛ばされた。

「幸村、お館様の拳で吹き飛ばされたーっ!!お館様、駆け寄り幸村の両脚を抱えたーっ!キターー!そのまま幸村を振り回して、ジャイアントスイングだーっ!!」
「幸村ぁああああ!!!!」

真田幸村は、リングへしたたかに背中を打ち付けたが、カウント内に何とか立ち上がり、ふらつきながら雄叫びを上げて、走り出した。

「お館様ぁああああ!!!!」

そのまま、両脚を揃えて華麗なジャンピングキックをした。

「決まったーー!幸村のジャンピングキック!いや、しかし、お館様、吹っ飛びながらも、幸村の腕を掴んでいるっ!!そして、幸村の身体を羽交い締めにして…おおおっ!!これは、コブラツイストだーーっ!体格の大きなお館様のコブラツイストは、痛いっ!!幸村、辛そうだーっ!」
「幸村ぁああああ!!!!」
「幸村、頑張って!!」
「真田幸村っ!!小柄な身体を活かせ!」

政宗殿が叫ぶと、真田幸村は、はっと気付いたように、するりとコブラツイストから抜け出し、ふらつきながら、お館様の後ろに回ると、腰を抱えて持ち上げた。

「うううおおおおお館様ぁああああ!!!!」

そのまま、後ろへお館様の頭をリングへ叩きつけるように、叩き落とした。
その瞬間、伊達主従は、おおおっ!と声を上げて、手に汗を握った。

「決まったーー!ジャーマン・スープレックス!!幸村、見事です!あの体格の大きなお館様をジャーマン・スープレックス!!お館様、かなりのダメージっ!ワン、ツー、おおーっと、お館様立ち上がった!!流石、お館様!!」

お館様はふらつきながら、頭を振っている。

今だ!!

「姫様っ!」
「うん!」

姫様は、リングへ走り出して、叫んだ。

「幸村ぁああああ!!!!行くわよ!!!」
「姫様っ!?」

真田幸村は、驚いたような表情を浮かべた後、気付いたように、表情を引き締め、姫様と逆方向からお館様へ向かって走り出した。

「お館様ぁああああ!!!!」
「父上ぇえええええ!!!!」

そして、両腕を差し出し、両側からお館様の首へと打ち込んだ。

「決まったーーっ!!姫様とのタッグのラリアットーーっ!!前後からのラリアットは痛い!首を痛めたか、お館様!!お館様、大丈夫か!?立てるか、お館様、立てるか!?」

美紀はすぐにリングへ上がり、腹ばいになってカウントをした。
お館様は、唸りながら、立ち上がろうとしていたが、なかなか立ちあがれない。

「ワン、ツー、スリー!」

カウントが終わると同時に遙が鐘をチンチンチーンと三回鳴らした。

「決まったーー!幸村の勝ち!!」
「きゃぁあ!幸村勝ったよ!父上を倒したよ!!」
「ああ、そうだな!姫様…!!」
「幸村、1、2、3、ダー!だよ?」
「は?」
「行くよ、幸村!!1、2、3、ダーっ!!」

二人とも拳を振り上げ雄叫びを上げた。
俺達は、思わず拍手を始めた。
伊達主従も満足そうに笑いながら拍手をしている。
真田幸村と姫様は、まだ1、2、3、ダー!を繰り返している。

お館様は、ふらつきながら立ち上がり、大きな声で笑い出した。

「わーっはっはっはっはっはっ!!幸村、姫、ようやった!!二人の絆、この武田信玄、しかと見届けた!!二人の婚儀、認めようぞ!」
「父上!!」
「お館様っ!!」

その瞬間、姫様はぽろぽろと涙を流し始め、真田幸村も姫様を抱き締めて、漢泣きに泣いた。
美紀も顔を覆って涙を流し、遙も政宗殿に抱き付いてもらい泣きをしていた。
それをお館様は、満足そうに眺めて、大きく頷いた。

「明日は、二人の婚儀を家臣一同の前でお披露目じゃ!その時、遙、お主をこのわしの隠し子として宣言する。政宗公に嫁がせる我が娘としてな」

遙は、涙を浮かべながら礼を言った。

「お館様、ありがとうございます!本当にありがとうございます!」
「遙、やっとお前を連れ帰れる!!この日をどんなに待ち焦がれたかっ!遙っ!!」

政宗殿は、人目もはばからず、遙にキスを繰り返した。

「政宗公、辛い思いをさせてすまなんだ。この武田信玄も総力を上げて、婚儀に協力するつもりじゃ。公卿や帝への根回しは、武田からも行おう」
「ああ、助かるぜ、信玄」
「伊達軍の兵士達も庭に呼ぶがよかろう。佐助も美紀も、見届けたいであろう。お主らも来るがよい」
「はい!」
「了解」

…俺、遙が江戸に向かったら、このまま俺は、甲斐に留まって、美紀と別れちゃうんだろうか…。

そんな不安が胸の中をよぎると、お館様は俺を見つめ、ニヤリと笑った。
その目がとても優しくて、何かが明日、起きるような気がした…。

美紀を見つめると、美紀は大きく頷いた。

俺、君と離れたくないよ…。
俺も勇気を出して、闇の業から解き放たれなきゃ…!!

皆の嬉し泣きを聞きながら、そう強く心に決めた。


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