石榴石 -2-

「一度だけ聞いた事があるんだ。何でそんなに力を持ってるのに想い人と一緒にならないのかって。そうしたら…遠い、遠い、政宗でも手が届かない所にいるんだって言ってた。でも、その子は死んでしまった訳でもねぇらしいんだ。何か、俺も昔の事を思い出しちまったよ。伊達の城下では、政宗が耳飾りに願をかけてるって噂が流れて、石榴石の耳飾りが流行ってるよ。だから、あんたも何か願をかけてるのかなって思ったんだ」

慶次の口から、政宗がどんな想いでいまだに私の事を思ってくれているか聞かされて、胸の奥が苦しい。
もしかしたら、今が最大のチャンスなのかも知れない。
慶次だったら私をここから連れ出してくれるかも知れない。

「慶次、あのね、私…」

そう言いかけた所だった。
すぐ後ろで空気が揺れる気配を感じて私は言葉を飲み込んだ。

「ヘェ〜、言われてみればそうだね。3つ耳飾りをしてるから気にも留めなかったけど、確かに1つは石榴石だ。で、何の願をかけてるの、遙ちゃん?」

後ろからすっと現れたのは佐助だった。
にっこりと笑ってるはずなのに、何故かその笑顔が偽物のようで怖い。

出来れば本当の事を言いたい。
でも、武田の事を思うなら、本当の事なんて言えない。
こんなに主君を大切にしている佐助の事だ。
姫君との縁談の障害になると判断したら、私なんてすぐに殺されてしまう。

でも、これだけは伝えたかった。
願かけをしているガーネットのピアスをしている女がいるという事だけでも政宗の耳に入ればと思った。

「ある事を誓い合った人と、この耳飾りに願かけをしました」
「ある事って?」

慶次が尋ねた。

「言ってしまったら、願かけのおまじないが解けてしまいます。だから、言えません」

それでも、政宗を想っているのだと、言葉には出来なくても想いを伝えたくて、慶次をじっと見つめた。
慶次は探るように私の眼を見つめていたけれど、やがて、解った、と言うように、優しく目を細めた。

「あんたの願い、叶うといいな。じゃあ、俺は日が暮れる前に京へ向かうよ。じゃあ、またな!」

慶次は眩しい笑みを見せると、庭を出て行った。
その後ろ姿が完全になくなってから、佐助は私の右隣りに座った。
政宗と同じピアスをしていると気付かれたら殺されてしまうのでは…。
そう思うと怖くて堪らなかった。

「ねぇ、遙ちゃん。伊達の城下町って行った事ある?」

やっぱりピアスをしている事を疑われているようだ。

「仙台の事ですか?私、仙台の出身なので未来の世界では、もちろん仙台の街はよく歩きました」
「ふーん、そう。江戸じゃないの?」
「江戸?」

そう聞き返すと、幸村が代わりに答えた。

「確かに政宗殿の居城は仙台にもあるが、最近は江戸の居城にいる事が多いのでござるよ。石榴石が流行っているのは主に江戸の城下でござる」
「知りませんでした。私の世界では、政宗様は仙台にいらした事が多かったから…」

軽く混乱してそう答えると、佐助が呟いた。

「俺の杞憂かな?本当に知らなかったみたいだし。偶然って事か。何でもないから気にしないでね〜!じゃあ、俺、仕事に戻る!」

佐助はひらひらと手を振ると、姿を消した。
そして、私は幸村に誘われて散歩に出かけた。
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