それは俺自身が部下から確かめている。
遙は甲斐に突然姿を現した。
それは確かだ。
しかし、忍でもなさそうだ。
遙の言い分が正しいのであれば、未来から来たのだろう。
それも、先だってのお館様の治療で実証済みだ。
あんな治療法、忍の俺ですら知らない。
未来の医療技術だと言うのならそうなのだろう。
でも、解せない事があった。
今まで黒脛巾組が戦が起こらないように、甲斐の動きを見張ってきたけれども、こんなに活発に活動していなかった。
まるで何かを探しているようだ。
一体何を探しているのか部下に探らせてはみたが、あちらも忍だ。
そんな事、口を割るはずがない。
でも、何となく遙を探しているのでは、という気がしていた。
お館様がマムシに咬まれた事は伏せられている。
それを治療した医師の事も勿論だ。
だから、特異な技術を持った医師を探しているという事は考えにくい。
遙が外部と接触したのは、前田慶次と会った時だけだ。
きっと前田慶次が伊達に何か吹き込んだに違いない。
あの時は俺もずっと見張っていたから、何も不審な点はないはずだ。
ただ…。
もし、関係があるのだとしたら、遙が着けている石榴石の耳飾りとしか考えられない。
伊達政宗も石榴石の耳飾りをしている。
偶然の一致かも知れないけれど、何か引っかかる。
「はぁ〜、どうやらこちらも伊達を探らなきゃいけないか。黒脛巾組、手強いから大変な仕事になりそうだ」
そう呟いた時の事だった。
部下が風のように音もなく現れた。
「申し上げます。武田の領内で、疱瘡が流行り始めております。お館様にお知らせした方が良いかと」
「何だって!?」
疱瘡は一度流行りだしたらあっという間に広まってしまう。
そして、タチが悪いのは、疱瘡にかかったらすぐに死んでしまう事が多いのだ。
農民が疱瘡で倒れてしまったら、田畑を耕す者がいなくなる。
それは食料不足を意味している。
俺たちが例え病にかからなくても、生きていく術を失う事だって考えられるのだ。
「分かった。すぐにお館様に知らせてくる」
俺は、お館様の下へ向かった。
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