Four loving hearts -1-

私が発熱して3日が経った。
余程疲れが溜まっていたのか、薬を飲んでもなかなか熱が引かない。
身体は鉛のように重たく、そして酷い倦怠感があった。
起きなければと思うのに、少し気を抜くと、すぐにうとうとと微睡んで、そのまま夢の世界へ誘われてしまう。
底冷えのする部屋の中、常に幸村が私に寄り添っていた。
何の想いも寄せていない異性に身体に触れられるのにはやはり抵抗があったし、熱で怠い身体には触れられる事さえ少し煩わしいとすら思う事もあったけれど、確かに寒過ぎて、囲炉裏の火だけでは到底足りず、幸村の温もりがなければ眠れないのも事実だった。

それに、幸村を拒まない理由が私にはあった。

幸村の腕の中で眠ると、何故か私は政宗の夢を見る事が出来た。
あんなに夢の中ですら会う事が出来なかったのに、ここ数日間、私は政宗に優しく抱き締められる夢を何度も見た。
あのひと夏の恋の思い出は遠ざかっていくばかりだったのに、政宗の温もりと優しい笑顔に包まれて微睡む事が出来た。
あの頃の想いが色鮮やかに蘇る。

今日もまた、私は政宗の夢を見ていた。

忘れもしない、あのハネムーンの時と同じ蒼い浴衣を政宗は着ていた。
畳の上に無造作に寝転がった政宗は、くすりと笑うと腕を伸ばし、私の腕を引き寄せた。
政宗の身体の横に引き寄せられ、ギュッと抱き締められる。
頬同士をくっつけて抱き合うと、あの頃感じていた幸せで甘酸っぱい気持ちでいっぱいになる。
政宗は片腕で私の背をしっかりと抱き、もう片方の手で優しく優しく後頭部を撫でてくれた。
政宗のこの仕草が好きで堪らなかった。
時に壊れるくらいに激しく私を抱いたけれど、それが終わるといつもこうして優しく、繊細で壊れやすい何かを扱うかのように私を大切に大切に愛してくれた。

「政宗、愛してる」

私がそう言うと、政宗は嬉しそうにふわりと微笑んで、私の頬に軽く音を立ててキスをした。
そして、少し顔を離して2人見つめ合う。

『恋ってこんなに幸せなものなんだな。知らなかった』

2人、想いが通じ合った頃、政宗はふとそう呟いていた。
私も政宗と恋に落ちるまで、見つめ合うだけでこんなに幸せな気持ちになれるなんて知らなかった。
いや、知っていたつもりだったけれど、政宗だけは特別だった。

政宗に愛されて、運命という言葉の意味を初めて知った気がした。

やっぱり私には政宗しかいない。
他の誰かの事なんて考える余地がないくらいに、思い出は政宗で埋め尽くされている。

離したくなくて。離れたくなくて。
ギュッと政宗に抱き付くと、息も出来ないくらいに強く抱き締められた。
それがとても嬉しくて。
ただ幸せで。

政宗の温もりに包まれたまま、また意識が遠ざかっていく。

「ずっとそばにいるから。だから、安心して眠れ。お前が好きだ」
「うん。絶対に離さないでね」
「ああ」

耳元でそう甘く囁かれると、とても安堵して、私は意識を手放した。
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