「お、お仕置き…?」
今度は一体何をされるのだろうと後ずさると、政宗は素早く私の後ろに回って、私を後ろから抱き締めた。
「逃がさねぇよ、遙。俺以外の男の声にときめきやがって」
「あっ…」
政宗が耳元で低く囁くと、ぞくぞくするくらいにその声に感じてしまって、私は思わず小さく声を上げた。
政宗は満足そうにくすくすと笑った。
「相変わらず、俺の声に弱い奴。安心したぜ。さぁ、遙。手習いだ」
政宗は、私を抱き直すと机の前に座らせ、左手で私の腰をしっかりと抱き締めて、耳元で囁きながら私に筆を持たせてその上から手を重ねた。
「いろはじゃ面白くねぇな。試しに和歌から書いてみるか」
「いろはが基本って言ったじゃない」
「江戸に帰ったらゆっくりな。今日は戯れに歌を綴るぜ?」
政宗は、耳元で囁きながら、筆を動かしていった。
「みちのくの しのぶもじずり だれゆえに みだれそめにし われならなくに…。奥州のしのぶもじずりのように、俺の心を乱したのは、他でもないお前だぜ?」
「あんっ!」
そんな事を囁かれて、耳を甘噛みされたら、どうにかなりそうで、思わずさっきより甘い声が出た。
「相変わらず、可愛い奴。次、行くぜ。たまのをよ たえなばたえね ながらへば しのぶることの よわりもぞする…。お前に会えない苦しさから、この命がなくなってもいいとすら思った。それくらいお前の事を愛してるぜ」
「まさっ…むねっ!」
今度は、首筋に何度もキスをされて、私は政宗の腕の中で震えた。
「やっとこうして会えた。もう二度と離さねぇ。他の男にときめくのも許さねぇ。次、行くぞ」
政宗は、私のこめかみにキスをすると、また耳元で囁きながら、和歌を書いた。
「かみつけの あそのまそむら かきいだき ぬれどあかぬを あどかあがせむ」
「政宗、これって…」
「上毛野の国の麻の束を抱えるように、何度お前を抱いても寝ても足りねぇんだ。俺はどうすればいい?」
「後朝の歌…」
「そうだ、あの鎌倉でお前に贈った歌だ。本当に、お前は何度抱いても、飽きたりねぇな」
政宗は、私の着物の合わせをはだけて、手を差し込んで、柔らかく私の胸を揉んだ。
私は政宗に背中を預けて息を乱した。
「んっ…はぁっ…はぁっ…」
こんな事をされたら、手習いどころではない。
「遙、愛してる」
「あ、あんっ…やんっ…!」
耳元でまた囁かれて、軽く耳を甘噛みされながら、胸を揉みしだかれたら、身体が跳ねそうなのに、政宗にがっちりと後ろから抱き締められて、自由を奪われた。
「ねぇ、政宗、もうやめよう?」
「まだだな。お仕置きだって言っただろ?次、行くぞ。すみのえの きしによるなみ よるさへや ゆめのかよひぢ ひとめよくらむ。夢でさえ、お前、なかなか会えなかったぜ?何で会いに来なかった?こんなに愛してるのに」
「私だって政宗に会いたかったよ…」
政宗は、また恋歌を耳元で囁きながら、段々と私を乱していった。
今度は深いキスをされながら、左手で素肌を愛撫されて、どうしようもなく身体が疼いて限界だった。
「政宗ぇ…」
甘えた声で呼ぶと、政宗は私の耳元でくすくすと笑った。
その吐息にすら感じて身体を震わせる。
「どうした?もう俺が欲しいか?クッ、これはお仕置きだからな、まだまだ温いくらいだな」
「そんなっ!」
「次、行くぞ。なげきつつ ひとりぬるよの あくるまは いかにひさひき ものとかはしる。お前がいない一人寝に泣き濡れた夜は、どんだけ長く感じられたか、お前は、分かるか?」
「分かるよ…。私だって同じだったもん…」
政宗は、軽く私の項に歯を立てると、耳元で吐息と共に低く笑った。
また身体がびくりと震える。
「お前は本当に可愛いな。もっと苛めたくなる」
「やだやだ」
今度は胸を揉みしだきながら、先を弄ぶように転がされて、堪え切れない嬌声が上がった。
欲しがってた快楽を、あっけなく身体は受け入れた。
「あっ、ああっ…あんっ…あんっ!」
身体が甘く痺れ、何度も何度もびくびくと身体が跳ねる。
とろとろと熱い愛液が溢れるのが、自分でも分かった。
早く政宗が欲しくてたまらない。
「物欲しそうな顔しやがって。でも、入れるのはまだだ」
「あんっ、そんなっ!」
政宗は筆を置くと、本格的に私を乱し始めた。
胸への愛撫はそのままに、着物の中に手を差し込まれて太腿の内側をゆっくりと撫でるられると、もうたまらなかった。
狂ったように嬌声を上げ続けると、耳元を掠める政宗の吐息が熱を帯び、上がって行った。
「ああっ、くそっ!何て声で啼きやがるっ!もっと苛めようと思ってたのに、我慢の限界だっ!」
政宗は私を押し倒して深くキスをしながら、勢いよく着物を剥ぎ取って行った。
自分の着物も脱ぎ捨てると、政宗は一気に私を貫いた。
眩暈がしそうなほどの快楽で、私はそのままイッてしまって、政宗の背中に我知らず爪を立てた。
びくびくと震える背中を政宗は抱き締めて、耳元で笑った。
その吐息にすら感じてしまう。
「まさか、入れるだけでイッちまうとはな。そんなに俺が欲しかったか。お前は本当に可愛い女だ。いつもより濡れてるな?今日は優しくなんてしてやれねぇ。覚悟しろよっ、遙っ!!」
「ああっ!政宗っ、待ってっ!」
「待てねぇよっ!」
まだ息が上がったままなのに、政宗は勢いよく腰を打ち付け始めた。
余韻も与えられずに、またすぐに高みに追いやられる。
「ああっ、待ってっ!やだっ、またっ!」
「何度でもイケっ!俺が満足するまで何度でもなっ!」
また白く意識が弾ける。
でも、政宗の動きは止まらない。
より一層激しく打ち付けられて、上がったままの呼吸が整わない。
何度も何度も達しながら、あられもなく啼き続け、めくるめく快楽を享受し続けるうちに、段々政宗の呼吸も荒くなって行った。
「はぁっ…はぁっ…遙っ…ああっ!」
政宗は大きく喘ぐと、キツくキツく私を抱き締めて、やっと動きを止めてくれた。
私の中で、政宗自身が脈打つのを感じる。
荒い吐息を吐きながら、数回ゆっくりと穿つと、引き抜かないまま政宗は、しばらく私の首筋に顔を埋めていた。
私も息も絶え絶えで、長いことお互いの荒い吐息だけを感じていた。
ようやく政宗は息を整えて、顔を上げると私を見つめた。
政宗は、私の呼吸が整うまで、優しく優しく髪を撫でていてくれた。
ようやく呼吸が整うと、政宗はくすりと笑った。
「お前、いつもより感じてたな」
「だって、政宗が…ずっと耳元で囁くんだもの。私が政宗の声に弱いの知ってるくせに」
「ああ、そうだ。もう、小十郎にときめかないように、手習いは、先に俺が十分仕込んでやるからな」
「まさか和歌で口説かれるなんて、思ってもみなかった…」
「また何度でも口説いてやる。遙、愛してる」
「私も政宗を愛してるよ」
そのまま、気だるいキスを交わしながら二人で抱き合っていると、部屋の外から女の人の声がした。
佐助のくノ一だ。
「政宗様。お館様はすでに動いておられました。こちらが、文の内容です」
襖の細い隙間からすっと文が差し出されて、小袖を引っ掛けた政宗はそれを読んで、ニヤリと笑った。
「思った通りだ。It's show time!!遙との婚儀は間違いなく上手く行く」
「そうなの?良かった!それより、佐助は?」
「ふふっ、美紀様とそれは仲良くお出かけになりました。まるで恋人同士のように。お二人で遠乗りに出かけて、富士山と紅葉を眺めているそうでございます」
「そっか、美紀、良かった!だから佐助が来なかったんだね?」
「左様でございます。では、私はこれで失礼致します」
政宗は私の隣りに戻って来て、また腕枕をして、優しく髪を撫でてくれた。
「そうか、紅葉か…。八王子に行く途中に見えるな。富士山も見えるはずだぜ?明日は八王子まではゆっくり行こうな」
「うん。でも、ちょっぴり残念」
「何が?」
「ここの美肌の湯が気に入ったの。確か、龍神温泉と南淡路温泉も美肌の湯だったなぁ」
「お前、本当に温泉好きだな。上洛しながら、湯巡りでもするか?しっかり女を磨けよ?」
「本当?うん、楽しみ!」
政宗は、おかしそうに笑って、私の頭をくしゃりと撫でた。
「その前に、ここの温泉を存分に楽しもうぜ?」
「そうだね。何度も入りたいなぁ」
「じゃあ、今から行くか。仕度したら小十郎を呼ぶから急げ」
「うん!」
私達は着替えて、また小十郎に護衛を頼み、湯治客のように、何度も温泉に浸かっては、じゃれ合った。
肌が柔らかくなった感じがして、政宗に抱かれるたびに、本当に女が磨かれて行くような感じがした。
政宗とこうしてじゃれ合うのもとても幸せな時間だ。
肌を重ねる事も、愛を囁き合う事も。
行燈の光に照らされた部屋で、私達は飽きる事なくキスを繰り返し、見つめ合っては、また会えなかった時の出来事や募る想いを語って抱き合った。
「お前も美紀と同じように、俺達はもう身体だけの関係だって思うか?」
「ううん。政宗にはときめかされっぱなし。声を聞くだけで、抱き合うだけで、ドキドキして、安心するのは政宗だけだよ。まだ政宗に恋してる」
「良かった…。俺もだ、遙。こうして腕の中にお前を閉じ込めていられるだけで、幸せでたまらねぇよ。お前を抱くのもお前が愛しいからだ。触れていないと淋しくて狂いそうになる。まだまだ足りねぇな。この恋心は、ずっとずっと永遠に続きそうな気がする」
「嬉しい…。名実共に、やっと夫婦になれるのも嬉しいな」
「盛大な祝言を挙げるから、楽しみにしてろよ?」
「うん」
また私達は見つめ合って、優しいキスを繰り返した。
もう、別れに怯えなくていい。
悲しい恋はもうお終い。
後は、ずっとずっと、いつまでも政宗に恋していられますように…。
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