「恥ずかしいから言わないで…」
「あ。赤くなった。可愛いねぇ!梵、そんなにいい?やっぱすごいテクニシャン?絶倫?」
「もう止めて!」
成実は可愛くて仕方ないというように声を立てて笑った。
俺も他の男がこんな事言い出したら許せねぇが、何故だか成実なら許せる。
俺も笑いながら遙の頭を軽く小突くと、会話に戻った。
小十郎は決まり悪そうに顔を背けている。
「梵、続き聞かせろよ。ぬれどあかぬをって、何発やった?何刻?」
「何発かは覚えてねぇけど、確か、夜に二刻半、朝に一刻足らずか。そんなに何発もやってねぇ。全身たっぷり時間をかけて可愛がったからな」
成実はまた口笛を吹いてハイタッチをした。
「ははっ!そんだけ抱いても飽きたらねぇって、やっぱ、梵らしくねぇ!」
「まあ、今夜もそれくらい抱くけどな」
「政宗!」
「言ったはずだ。俺は片時もお前を離さねぇし、7年間の積年の想いだ。諦めろ」
「もう…」
また成実は声を立てて笑った。
「ヒュー!ヒュー!熱々だねー!伊達の基盤もこれで盤石だ。これで子供が出来ないはずがねぇ!楽しみだ。なぁ、梵。お前が天守閣で歌ってた歌、遙ちゃんの事だろ?俺、全部意味分かるからさぁ」
「ああ、そうだな。お前は英語が出来るからな。あれは初夜に遙が歌ってくれた、思い出の曲だ。一発目のすぐ後にな。俺の目を閉じさせて、手を取って、柔らかい胸に俺の手を当てて、遙の少し速い鼓動を感じた時は、言い表わせないくらい幸せだった…」
俺が遠い目をすると小十郎がくすりと笑った。
「ようやく腑に落ちました」
「だろ?すっげぇ幸せなラブソングだ」
「遙ちゃんも梵に負けないくらいキザだね。そりゃ梵も惚れるよ」
「ああ、天下一の伊達女の才女だ。俺が惚れない訳がねぇ。すっげぇ幸せだった…」
また遠い目になると成実が肘で俺を小突く。
「この、このー!で?初夜の後はどうした?」
「ああ。遙は男の愛情に懐疑的な意味のタバコを吸ってた。Marlboroってやつだ」
「Marlboro?」
「そうだ。Men always remember love because of romance onlyの略だ」
「なるほどね、それでMalboroか。確かに懐疑的だ」
「ああ。それをこのタバコ…」
俺は懐からKOOLの箱を出した。
「KOOLに変えさせた。成実、一本吸ってもいいか?」
「ああ、いいぜ。俺ももらう。初めてだからな」
「政宗、私も」
すぐに灰皿が配膳されて、俺はライターで遙のタバコに火を点けてやり、成実に点けてやると、俺も火を点けた。
「悪くねぇな。何かスーッとする」
「ああ、メンソールという」
「その火付け石は?便利だな」
「ライターという。遙からのプレゼントだ、俺の誕生日のな」
「ははっ!coolだぜっ!南蛮のドラゴンか。やるねぇ。流石、梵の女だ」
「当たり前だ、最高にcoolな女だ」
「政宗様、お話とおタバコは結構ですが、お食事もなさって下さい。遙様はすでにお食事を終えられています。政宗様の伊勢海老も残してあります」
「悪ぃ、悪ぃ。成実、お前も食え。小十郎、茶を申しつけろ」
「はっ!」
俺達はタバコを吸いながら、伊勢海老の刺身と寿司を20貫ほど食って腹が膨れた。
茶を飲みながらまたタバコに火を点ける。
タバコを吸いながら成実はまた俺の肩を抱いた。
「なぁ、なぁ、梵。それでKOOLって?何の略なんだ?」
「Keep only one loveだ」
「Keep only one loveか。随分一途だな。お前らしくもねぇ。他の女、抱けねぇじゃねぇか」
「抱くつもりもなかったからな。俺は遙しか欲しくねぇ。遙しか愛さないつもりだったからな」
「そうか、それでお前、縁談片っ端から断ってたんだな」
「ああ、そうだ」
成実は、またひゅうっと口笛を吹いてハイタッチをした。
そして、また俺の肩を抱く。
「それにしても、梵。お前、本当に7年間も女抱いてねぇのか?俺だったら耐え切れねぇ。絶対女抱いただろ?」
「抱いてねぇよ」
「嘘だ」
「嘘じゃねぇのはお前が一番よく分かってんだろ?俺の女遊び、全部知ってんだから」
「そうだけどさぁ。じゃあ、お前どうやって抜いてた?春画じゃなんかとても抜けねぇし、耐えられねぇな」
「ああ。遙の写真見ながら抜きまくってた」
「写真?聞いた事ねぇなぁ」
「成実、写真ってな、見たまんま、ありのままを紙に写して残しておける、未来の便利な道具だ。お前に見せてやる」
俺は胸元のロケットを出すと開いて成実に見せた。
成実は驚いて声を上げた。
「すげぇ!マジで見たまんまだぜ!これなら抜けるな。ってか俺ならエロい写真撮りまくる!後でじっくり眺める!」
俺は声を立てて笑った。
流石、成実は俺の従兄弟だ。
考える事がよく似ている。
俺も身を乗り出して成実の肩を抱く。
「俺も100枚くらい撮りたかったが、遙が恥ずかしがってな。20枚くらいしかねぇな」
「いーなー、梵。今度それ見せろよ」
「裸の写真以外ならな」
「つまんねぇの。腰巻じゃ抜けねぇだろ?」
「それがな、成実。あっちの下着って超可愛くて過激だったぜ?裸より一層そそるやつもある。ベビードールって夜着とかな」
「どんなの?」
「シースルーで身体が透けて見える。下は申し訳程度に隠す感じだ」
「マジで!?聞いてるだけで超そそるんだけど!」
「水着って海に入る時に着るやつも、超絶セクシーだったぜ?下着と同じ、大事な所だけ覆って、裸同然だ」
「裸同然…それは超絶そそるな」
「だろ?そそられてたまんねぇから7年間それで耐えられた」
「7年間も…。遙ちゃん、超絶セクシーなんだろうな…。梵が抜きまくるくらいだから」
「だから妄想すんなって。後でちゃんと見せてやっから」
「梵、約束だぞー?で?遙ちゃんの好きな体位は?」
「間違いなく正常位だな。俺を近くに感じられるから。俺も遙となら正常位が一番だ。同じ理由でな」
「ふーん、何か意外。もっとエロいのが好きだと思った」
「愛し合ってるからな!俺達の愛は最強だ」
「愛ねぇ…。分からなくもないか。で?開発の方はどうなんだ?」
「時間が足りなかったし遙が恥ずかしがるからな。まだ俺の唇と舌が触れてない場所もある。ただ、全身性感帯だし、耳元で囁くだけで感じるレベルまでは開発したな」
「すげぇな、梵!囁くだけでって過去最強じゃねぇか!」
「だろ?可愛がりまくったからな!今日も風呂入ったらその後、とことん可愛がりまくるぜっ!」
「流石だ、梵。それでこそ伊達の筆頭だ!」
成実はまた口笛を吹き、ハイタッチをした。
ふと遙を見遣ると顔を真っ赤に染めて、声もなく俯いて震えていた。
小十郎を見遣ると顔を反らして咳払いをしていて、猿飛と美紀も顔を背けている。
「遙…?」
そっと肩を引き寄せると、遙は驚くほどの速さでそれを振り払った。
「遙?」
「政宗、酷い…。そんな事ここでバラさなくてもいいじゃない…」
「そんなに俺、バラしたか?成実とはいつもこんな感じだぜ?」
「それでも酷い…。恥ずかしくて死にそう…」
「大丈夫だ。すぐに慣れる」
頭を撫でるとその手も振り払われる。
これは本格的に拗ねている。
無理矢理に腰を引き寄せると、俺の胸に手を付いて、いやいやと首を横に振る。
「やだっ、政宗なんか嫌いっ!」
「Hey、遙。聞き捨てならねぇな。前に俺の事、嫌いって言って、お前、いじめ倒されたの、忘れたか?今日はたっぷり時間があるからな。またお前の事、苛めるぞ?お仕置きだな」
「それもやだっ!」
遙は涙目で俺を睨みつけた。
俺の肩越しに成実が遙の顔を覗き込んで笑う。
「ごめんねー、遙ちゃん。悪気はなかったんだ。梵があまりにも惚気るから興味が湧いちゃってさ。許して?」
「成実も嫌い…。あんな事聞かなくてもいいじゃない…」
遙は泣き出した。
「あーあー、泣いちゃった。確かに梵が絆されるの分かるかな。泣かせたくないって気持ちになるの。分かったよ。写真、超見たいけど、見せなくていいからさ。それで許して?」
遙は返事もせず、抵抗しながらぐすぐすと泣いていた。
「遙ちゃん、ごめんね。お願いだから泣き止んで?ごめんな」
「遙、悪かった。お願いだから泣き止んでくれ。頼む」
成実と交互に謝りながら、優しく優しく頭を撫で続けると、ようやく抵抗が止んだ。
小十郎が苦笑いをする。
「政宗様、小十郎はこれにて下がります。美紀も猿飛も、下がれ。成実、お前は責任を取って遙様を宥めろ。政宗様、それでよろしいですね?」
「ああ、悪ぃ。酒を持って来させろ」
「はっ!」
小十郎は撤収の指揮を執ると、下がって行った。
ほどなくして、酒が二升届けられた。
「遙、泣くな。酒を用意した。それでも飲んで、機嫌直せ。残った寿司をつまみに飲もうぜ。お前の好きな大トロまだ残ってんだろ?」
寿司桶にはまだ大トロがたくさん残っている。
トロならいくらでも食べられるから大丈夫だ。
遙はまだぐすぐすと泣いていたが、ようやく頷いてホッとした。
「成実、酌をしろ。手が離せない」
「ああ、分かった」
成実は、俺と遙の湯呑みに酒をなみなみと注ぐと、自分の湯呑みにも注いでまたタバコに火を点けた。
「ほら、遙。酒を飲むぞ。いらないのか?」
「いる…」
ようやく身体を離して、涙を拭うと、遙もタバコに火を点けた。
「乾杯だ。仲直りの乾杯だ。いいな?」
「うん」
乾杯と言って、三人で湯呑みをかつんと合わせると、寿司をつまみに酒を呷り始めた。
「美味しい。どこのお酒?」
「灘の酒だな」
「灘か。酒どころだね」
しばらく無言で寿司を食いながら酒を呷ると、成実が興味津々というように身を乗り出して遙を見つめた。
遙の顔はすでにほんのり赤い。
「ねーねー、遙ちゃん。聞きたい事があるんだけど、いい?」
「エロい事?」
「そんなにエロくもないかな」
「だったらいいよ」
「遙ちゃんってさ、梵が初めての男?」
「ううん」
「意外だな…。じゃあ、梵は、何人目?」
「二人目」
「そっか、納得。経験少なそうだからね。梵と別れた後は?」
「甲斐で幸村に犯されかけた。唇奪われた。身体も触られた。キスマーク上半身にいっぱい付けられた」
「成実!傷を抉るな。遙はまだ立ち直ったばかりだ」
「ごめんごめん。泣かないで。そうか、真田幸村、許せねぇな。甲斐に攻め込めば良かったぜ」
「真田の事は置いとけ。思い出すだけでも胸くそ悪ぃ」
「分かった、分かったから!梵も怒んないでよ。で?遙ちゃん、その男とどれくらい付き合ったの?」
「二年くらいかな」
「へぇー。いくつの時?」
「政宗と出会う1ヶ月前まで。19の時から2年間」
「2年間か…。梵と過ごしたのが確か1ヶ月半だろ?出会った時にその男が恋しくて泣いてただろ?梵がいなくなった後、その男の所へ戻ろうと思わなかったの?」
遙はすぐにふるふると首を横に振った。
「政宗だけが好きだったから。それに、彼とは遠距離恋愛で、一緒にいられたのは2ヶ月半くらいだけ。政宗と変わらない」
「初耳だぜ。隠してたな?」
「だって、政宗が妬くと思ったから」
「そっか。遙ちゃんは梵の事が、本当に好きなんだね?」
「うん」
「正直、前の男に妬けて仕方ねぇけどな。遙の処女を奪ったなんて許せねぇ。出来るなら、一から開発したかったぜ。まあ、処女を抱くのは面倒だけどな。あの泣き顔見たら萎える」
「私、初めての時、辛くてたまらなかったのに、無理矢理抱かれて痛くてたまらなかった」
「そうか…。ますます許せねぇな。だから、お前、抱かれるのが苦手だったのか。初めて抱いた時、痛がったのもそれでだな?」
「うん…」
「それは可哀想に。でも、梵は優しかっただろ?梵が惚れた女だ。優しかったに決まってる」
「うん。指だけで…その…イカされそうになった。あんなの初めてだった…」
遙は真っ赤に顔を染めて俯いた。
その頭をくしゃりと撫でて、頬を指の背で撫でると、遙はホッとしたように微笑んで、また飲み始めた。
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