「エレキギターか。お前のエレキギターはcoolだったからな」
「なぁ、梵。エレキギターって?」
「成実、お前なら気に入ると思うぜ?おい、遙、iPodで何か好きなメタル流せ」
「うん、分かった」
遙はiPodとスピーカーを取り出すと、インペリテリをかけ始めた。
最高にシビれるギターの出だしだ。
確か、曲名は、I’ll be with you。
情熱的な永遠の愛の歌だ。
「超絶coolだぜっ!最高にシビれるな、梵!遙ちゃんの好み、全然見かけに寄らねぇ!」
「ああ、そうだな、成実。遙はこれに完全に合わせて弾いてたぜ?」
「すげぇな、遙ちゃん!遙ちゃんが弾いてる所がすっげぇ見たい!」
「随分と情熱的な歌ですね。I’ll be with you all the way. I’ll never leave you. I will not turn away. でございますか。遙様が政宗様の事をそのように想って下さり、大変嬉しく思います」
「小十郎も意味が分かるんだね?」
遙が嬉しそうに問うと、小十郎は目を細めて微笑んだ。
「この程度であれば」
「ふふっ、流石は天下の伊達軍。政宗の教育が行き届いてるね。さて、エレキギターよ、出て来い!」
遙は手を胸の前で組み、祈りを捧げるとバッグの中を見て声を上げた。
「やった!エレキギター出て来る!私の愛器よ、出て来い!」
遙のボストンバッグから、ソフトケースに入ったエレキギターが出てきた。
ファスナーを開けて、また遙が歓声を上げる。
「わぁ!私のギターだ!Ibanez!ネックが薄くて細いからお気に入りのギター!よし、次!Marshallのアンプ!」
間口を目一杯広げると、遙が座れそうな大きさのギターアンプが出て来た。
そして、エフェクターとペダルを二個取り出すと遙は満足そうに笑った。
「これだけあれば十分!この調子ならバイオリンも出て来そうだけど、今日は久しぶりにエレキギターで遊ぼうっと。楽器は二ヶ月振りだから嬉しいな。弾けるかな」
「お前なら弾けるだろ。メタリカのCreeping DeathとOneを弾いてくれ」
「あれなら弾きまくってたから弾ける。メガデスとMr. Bigも弾こうかな」
「ああ、いいぜ。楽しみだ!」
遙は嬉しそうにギターとアンプの線を繋ぎ、アンプとエフェクター、ペダルも線で繋いで、アンプの上に長い脚を組んで座った。
そして、iPodを止めて、調弦をすると、戯れにパガニーニを少し弾いてまた嬉しそうに笑った。
成実は興味津々に遙を見つめている。
「すげぇ…。教会の南蛮人とは比べもんになんねぇ…。神業だ…」
「もっとすげぇから楽しみにしてろ」
「マジかよ!超楽しみだぜ!」
「ふふっ、ギターはね、学園祭のライブの後に女の子からラブレターもらった事あるくらいだから、自信あるよ?」
「What!?女に抜け駆けされてたとはな…」
「愛してるのは政宗だけだよ?」
「分かってる。それにしても、女も落とすとはすげぇなお前」
「親への反抗で大学デビューでギター弾きまくってたからね。政宗、メタリカがいいの?メガデスの方がテクニカルだけど。アングラとか」
「そうだな…。久々だから、やっぱメタリカのCreeping DeathとOne。それからBatteryが聴きてぇな。その後メガデス弾いて遊んでろ。そうだな、メガデスなら、Holy WarsとShe-Wolfが聴きてぇな」
「分かった。その順に弾いてくね。政宗よく覚えてるね」
「香りと音楽は記憶に残りやすいからな」
遙は微笑むと、iPodをいじった。
すぐにヘヴィなギターの音が流れ始めて、遙は音に酔いしれたように軽く頭を振りながらギターを弾き始めた。
長い髪がヘッドバンキングで揺れる。
「coolだぜ」
「懐かしいぜ」
イントロが終わるとシビれるようなギターソロからcoolなリフが始まる。
早弾きのリフが最高だ。
馬に乗って駆け出したくなるような、疾走感溢れたリフに心が沸き立つ。
小十郎も目を瞠って驚いている。
「遙様にこんな激しい一面があるとは…。それにしても、随分器用でいらっしゃいますね」
「ああ。中盤のギターソロが楽しみだぜ。懐かしいな」
俺達は激しい音色に身を任せ、しばらくギターを弾く遙の姿に見惚れた。
やがてギターソロが始まり、早弾きをしながらギターを思いっきり鳴かせると遙は感じたように眉根を寄せて目を瞑った。
ベッドの中で見せる表情によく似ていて、胸がドキリとする。
「ヤバっ!超絶セクシーじゃねぇか!」
小十郎は咳払いをして、爺やに文を書き始めた。
でも、ちらりちらりと遙を盗み見る。
俺は思わず笑ってしまった。
「政宗様、笑い事ではありません」
「悪ぃ悪ぃ。ベッドの中じゃ、もっとセクシーだぜ?」
「政宗!」
「怒るな、遙。お前のcoolなギターをBGMに仕事するから機嫌直せ」
遙は頬を膨らませながらギターを弾き続けた。
成実は興味津々にずっと遙を見つめている。
俺は気持ち良くギターを聴きながら、文を書き始めた。
いい音楽を聴いていると筆も乗る。
Oneの最後の盛り上がりの前で文を書き終わり、頭を振る遙と共に俺も思わずヘッドバンキングをした。
遙がちらりと俺を見遣ってくすりと笑って、最後のテクニカルなギターソロを弾き上げた。
「いーなー、梵。お前、こんなcoolな音楽聴いてたのかよ。ズルいぞ!」
「だからcoolだと言った。夜伽で聴きながら抱くと最高に盛り上がるぜ?」
「政宗!」
「いいだろ、遙?あの頃、そうやってよく聴いてたじゃねぇか。だから、俺もよく覚えてる」
「もう…」
「ほら、次、Battery、聞かせろよ。お前が最高に興奮するやつだ」
「そんなエロい言い方しないで!」
「へぇ!遙ちゃんが興奮するんだ!超絶楽しみ!たしかに夜伽にぴったりだな…」
「成実!」
「怒るな、遙。お前のcoolなギターが聴きたいだけだ。早く弾け。Batteryってとこ、合わせてやるから」
「…分かった。だったら弾く」
遙は少し機嫌を直してゆっくりとしたイントロから弾き始めた。
アコースティックの音から一転、ヘヴィなイントロに変わると、俺もあの頃を思い出して、腰が疼いた。
激しいリフに合わせるように、俺の上で踊っていた遙を思い出す。
ヤベェな。この曲を弾かせるんじゃなかった。
遙は感じたように速いリフを弾きながら、熱を孕んだ視線でちらりと俺を見遣った。
「Battery!バッテーリィっ!」
遙と共に叫ぶように歌うと、遙は満足そうに口許を綻ばせて華麗な短いギターソロをキメて、すぐにまた速いリフを弾き出した。
成実も興奮したように軽くヘッドバンキングをしている。
「Battery!バッテーリィっ!」
次のBatteryの所は成実も参加すると、遙は本当に嬉しそうに笑い、気持ち良さそうにギターソロを弾き始めた。
ワウペダルを使いながら、切なげに眉を顰めて弾くその姿がセクシーな事この上ない。
成実が口笛を吹いた。
「ヤベェな、遙ちゃん。たまんねぇ。そりゃ、女も落ちる。最高に綺麗だ」
「だろ?遙が最高に興奮する曲だ」
「政宗、このまま、次のMaster of Puppets弾いてもいい?テンション上がって来た。その後メガデス」
「ああ、いいぜ」
ソロの最後でまた成実とヘッドバンキングをすると、俺達はハイタッチをしてまた遙に見惚れた。
やがて、遙はBatteryを弾き終わると、そのまま次のMaster of Puppetsを弾き始めた。
これも、最高に乗れる曲だ。
俺はいい気分のまま、また文を書き始めた。
「Master!Master!」
遙の好きなフレーズに合わせると、遙は笑った。
「流石、政宗。仕事しながら合わせてくれるなんて」
「当たり前だ。そう言うお前も話しながらよく弾けるな」
「ふふっ」
「梵、俺、今日、政務サボっていい?テンション上がって手につかねぇ」
「ああ、いいぜ。今日は特別だ」
「Thanks!」
成実は遙に見惚れながら縦ノリをしている。
俺と好みがよく似ているから、成実のテンションが上がるのもよく分かる。
俺は、残る資料に次々と目を通し始めた。
「おい、遙。メガデス4曲くらい弾いたら、アングラのCarry OnとNova Era弾いてくれ。最高に乗れるから仕事も捗る」
「分かった!」
遙がHoly Warsを弾き始めた。
最高にシビれるテクニカルな曲だ。
聞き惚れながら、ざっと書類に目を通して行く。
「政宗様。爺やへの文は、黒脛組に任せてよろしいでしょうか?この小十郎が八王子まで出向きましょうか?」
「Ah…そうだな。今日は黒脛組に任せるか。お前は俺を手伝え。今日中に仕事のカタをつけたい」
「かしこまりました」
「政宗、Holy Warsの後、そのままHangar 18弾いていい?」
「好きにしろ。その後She-Wolfだ」
「うん!」
「この曲、最高にcoolだぜっ!俺、メガデスの方が好きかも」
「俺もだ、成実」
小十郎は一旦下がり、また戻ってきた。
ギターに夢中になっている遙を微笑ましそうに見遣ると、小十郎は書類に次々と目を通して行く。
「遙、Nova Era弾き終わったら休憩だ。Bon JoviのBad Medicine歌おうぜ。そうだな…Green DayのAmerican Idiotも歌いてぇな」
「うん、いいよ」
聞き惚れながら、書類に読み耽ると、山のようだった書類が片付いて行った。
遙は、俺をちらりと見ながら7曲ほどメガデスを弾き、5曲ほどMr. Bigを弾くと、アングラのCarry Onを弾き始めた。
キラキラとした早弾きが特徴的な、好きな曲だ。
歌詞もいい。
成実は歓声を上げて遙にまだ見惚れている。
「梵、この歌詞いいな。サビの所が前向きでさ」
「ああ。Nova Eraもそんな感じだぜ?」
「ヒュー!楽しみだぜ!」
残りあと10分ほどだ。
やっとまた遙を抱き締められると思うと、嬉しくて堪らない。
Carry Onが終わり、Nova Eraに曲が変わる。
最高の気分のまま、また一つ書類を読み終えると、丁度遙の演奏も終わった。
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