まだまだ眠くて、でも気持ち良くて、小さな喘ぎ声に似た吐息を吐くと、胸の先を転がすように揉み始められて、流石に大きく喘いで目を覚ました。
ちらりと私の胸を揉む手を見ると、薬指の指輪のダイヤモンドがキラキラと輝いていていた。
紛れもない、政宗の手だ。
もう政宗しかこうして私に触れないと思ったら、夢みたいでとても嬉しかった。
優しい愛撫をされながら目覚めるなんて、幸せ過ぎて涙が出そう。
政宗の愛情が心身いっぱいに染み渡る。
「あんっ、政宗、おはよう」
「ようやく起きたか、遙」
政宗は背中にキスをしながら囁いた。
政宗の左手首の時計を見ると、そろそろ9時半だった。
何時に寝たか思い出そうとしても、いつ寝たか全然覚えてなくて、昨日の記憶を辿った。
確か、最後は政宗の部屋で、椅子に座ったままの政宗に抱かれたんだった。
今までになく感じてしまってた事は覚えている。
でも、どうしてもいつ寝たか思い出せない。
「政宗?昨日、私、何時に寝た?」
「正確に言うと、寝たんじゃなくて気絶したんだけどな。3時過ぎくらいだったか」
気絶と言われて、鮮明に思い出した。
意識のなくなる直前の、頭の芯まで痺れた、癖になりそうな最高のエクスタシーを。
気絶するまで抱くとは言われたけど、本当に政宗が実行するとは思わなかった。
「まさか、こんな時間までお前が起きねぇとは誤算だったぜ。気分はどうだ?」
「んっ…政宗がこうして触るんだもん。気持ち良くてよく分からない」
また乳首を弄られて、身体が跳ねて、甘い声が出た。
「クッ…気持ち良くてよく分からない、か。もっと気持ち良くさせてやってもいいぜ?」
「まだ眠いのに…。もう少し寝かせて?」
「はぁ…お前には無理させちまったからな。まだまだお前に触れてたいのはやまやまだけどな」
心底残念そうに溜息を吐く政宗がおかしくて、笑ってしまった。
でも、私が江戸城に来て、まだ1週間も経たない。
待ち焦がれていた政宗が、まだまだ物足りない気持ちはよく分かる。
私だって出来るなら時間を忘れてのんびりしたい。
政宗が私の身体に触れていたかったら、起こさない程度なら構わない。
「ねぇ、政宗?感じる所を避けて触るんだったらいいよ?それなら多分眠れるから」
「マジか!?」
「うん。私の到着、昼過ぎだって、伝令飛ばしてくれる?」
「お前、そんなに寝るのか!?」
「ううん。だって、政宗、もう一回くらい抱きたいでしょう?その後お風呂も入りたいし、せめて昼餉は食べないとだし」
「そうだな…。じゃあ、2時でいいか?お前の眠る時間を考えると、それより早くは無理だ」
「うん、いいよ。今から、朝の薬だけ飲んで寝るね」
「ああ、そうしろ。黒脛組に伝令させる。朝餉が準備されてるはずだから、温め直して12時半頃に俺の部屋に届けさせるか?」
「そうだね…。1時過ぎでもいいよ。あの部屋、そんなに遠くないから」
「お前、やっぱ最高の女。俺が抱き足りねぇの、よく分かってるな」
「ふふっ、私だって政宗と二人きりになりたいもん」
「早く引きこもりてぇな」
「そうだね」
政宗は、私の首筋に顔を埋めて嬉しそうにくすくすと笑った。
「おい!そういう事だ。遙の到着と、風呂と昼餉を言付けろ。言ってる意味、分かるな?」
「もちろんです。かしこまりました」
政宗が天井裏へ視線をやって言うと、返事が聞こえた。
改めて政宗の用意周到さに感心する。
LINEなんてなくても簡単に何でも手配出来る所がすごい。
正に政宗の天の一声だ。
「はぁ…政宗ってやっぱりすごいねぇ」
「そうか?早く薬飲め。タバコも吸うだろ?俺も吸う」
「分かった」
政宗は私を抱き起こして立ち上がらせると、夜着の乱れを整えてくれて、自分も着付けると、政宗の部屋に誘った。
「政宗、お茶は沸かさなくていいよ。タバコと水と薬だけでいい。時間がもったいないもん」
「確かにそうだな。はぁ…城に帰れば少しはゆっくり出来ると思ったのに、こんなに慌ただしいなんて、やるせねぇ。本気で今すぐ引きこもりてぇ」
そう言う政宗は本当に憂鬱そうだ。
あれだけ必死に政務を終わらせたのも、私とゆっくり過ごしたいからだっていうのはよく分かってるし、せっかくゆっくり出来ると思った矢先の急患だ。
政宗にとって予想外の出来事で、憂鬱になるのもよく分かる。
私は薬を飲んで、政宗の頭をそっと撫でた。
「政宗、そんなに落ち込まないで?今日も当直は美紀に頼むよ。夜10時くらいまで私が診て、その後美紀と交代。美紀には昼間寝てもらう事にしたら、私も美紀もゆっくり休める。そうだな、私の助手は焔と佐助のくノ一に頼もうかな。急性期はあと10日だけだから、それなら政宗の部屋でゆっくり出来るでしょう?ダメかな?」
そう言うと、政宗の表情が明るくなった。
「伊達の基盤のためだし、仕方ねぇ。伊達には成実と登勢が欠かせねぇからな。登勢が夜伽出来るようになるなら尚更だ。夜、お前を毎日独占出来るなら、10日くらいなら我慢してやる。そうなれば善は急げだ。早くタバコ吸い終わって眠れ」
「ふふっ、政宗って本当に現金」
「何か文句あっか?お前が俺に愛されてる証だ、諦めろ」
「よく分かってるから、そういうシフトにするんだよ?だって、政宗、納得しないでしょう?美紀は夜勤に慣れてるから、きっと政宗の我儘聞いてくれるよ?」
「流石、才女だ。ほら、タバコだ」
政宗は私にタバコを咥えさせると、火を点けてくれた。
政宗もゆっくりタバコをふかしながら水を飲んでいる。
「そうだね…。私も一人で伊達家の子ども生まなきゃって思ったらすごくプレッシャーだけど、登勢ちゃんも頼れるならプレッシャーも半減かな。だって、政宗の世継ぎって今は成実だけでしょう?」
「ああ、そうだ。だから、伊達の世継ぎを生めるのは、お前と登勢だけだ」
「ふふっ、これで成実も出奔しないね」
「成実が出奔?どういう事だ」
「成実ったらね、給料少ないって政宗と大ゲンカして、高野山に出奔しちゃうの。また戻って来るけど。その頃、奥方も亡くしててね、確か政宗の子を養子にしたんだったかな。だから、政宗、成実にはちゃんとお給料弾んであげてね?伊達家のためだよ?」
「そうか…。登勢がお前に命を救われたのもまた運命か。側室を娶る気はねぇから、成実に養子にやれるだけお前が子を生めるか分からねぇしな。あいつほどしんがりで頼れるやつもいねぇ。分かった、登勢のためにも成実の給料は弾んでやる」
「流石、政宗!はぁ、また歴史を変えちゃった」
「お前の世界とは違うんだ。多少の違いくらい、世界の歴史に比べたら微々たるもんだ。成実がどうせ戻って来るなら尚更だ」
「そっか、政宗が側室を娶らないから、代わりに登勢ちゃんが私に救われたのか」
「多分な。成実なら俺から家督を奪おうなんて気は絶対起こさねぇから、お家騒動も起きるはずがねぇ。お前しか嫁がいねぇなら世継ぎ騒動もねぇしな。完璧だ」
「なら、良かった」
佐助は幸村から離反してしまうし、成実の奥方の命まで救って、歴史が変わりすぎてしまったのではないかと、少し心配していたけど、私はこうして政宗と一緒にいる。
本当に、伊達の基盤こそが、この世界の命運なのかも知れない。
だからこそ、産婦人科医だった美紀もこの世界に来た。
美紀がいれば、私は安心して子どもを生める。
そして、美紀も佐助と結ばれた。
もう、心配するような出来事はこの先ないだろう。
あとは、私が政宗の世継ぎを生めばいいだけ…。
それで、この世界は完全に安定する。
「遙、どうした?」
「ちょっと考え事してた。政宗の世継ぎ、ちゃんと生まなきゃって」
「毎日抱くから大丈夫だ、心配すんな。お前がピル止めたら、すぐに身籠るから安心しろ」
「そうだよねぇ、一応排卵検査薬使ってタイミングは測るつもりでいたけど、それも必要なさそう…。引きこもったら、昼間も抱くんでしょう?」
「当たり前だ。世継ぎが出来るまで、昼夜問わずな」
「怖いくらいに愛されてる」
「お前しか欲しくねぇからな。さぁ、遙。そろそろタバコも吸い終わる。抱き締めててやるから、早く寝ろ」
「うん」
私はタバコを吸い終わると、水を飲み、欠伸を噛み殺した。
1時間弱くらい仮眠すれば、すっきりするかも知れない。
12時半までにお風呂に入れば間に合うから、政宗も、一度なら抱ける。
政宗も水を飲むと、私を抱き上げて寝室に戻った。
布団の上に私を下ろすと、政宗は後ろからぎゅっと抱き締めてくれた。
気持ち良くて、安堵の吐息が漏れる。
政宗の腕枕が心地よい。
「政宗、一時間後に起こして。多分、それで仮眠は十分」
「分かった。眠れそうか?」
「うん、眠たくなってきた。政宗、乳首を触らなければ、胸くらい触ってもいいよ?政宗、退屈でしょう?」
「クッ、よく分かってるな。ああ、お前の胸を触ってたら退屈はしねぇな。起きたらすぐに抱けるしな。好都合だ」
政宗は、私の夜着の合わせに手を差し込み、柔らかく胸を揉み始めた。
その手つきが優しくて、とても気持ちいい。
「これならいいか?」
「うん、気持ちいい」
「早く眠れ。お前を抱きたくて仕方ねぇ」
「分かってるよ。おやすみ」
「クッ、もう朝だけどな。ああ、ゆっくり眠れ」
政宗はそう言って、私の耳に優しいキスをしてくれた。
私はそれから間もなく深い眠りに落ちた。
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