「お前、相当疲れてるな?大丈夫か?小十郎、玉露を申し付けろ」
「はっ!」
部屋の中から小十郎の返事がして、言付けるのが聞こえた。
遙は深い溜息を吐いて、タバコを吸い始めると、俺達にもタバコを差し出した。
遙を挟んで成実と座り、タバコを吸っているうちに灰皿が届けられた。
「なぁ、遙ちゃん。登勢、そんなに悪いのか?だから、溜息吐いてるのか?」
成実が不安そうに尋ねると、遙はまた溜息を吐いた。
「ううん、そうじゃないよ。登勢ちゃんは順調。問題は私の身体。はぁ…10日間も身体持つかなぁ」
「美紀ちゃんと半分ずつ担当だろ?6刻あれば十分休めないか?」
「だって、政宗ったら1日3刻以上は抱くんだよ?合計4刻以上だったかも。いくら眠っても足りないよ…」
その瞬間、成実は大爆笑をして、俺は思わず顔を背けた。
確かに休憩時間除いても、昨日と今朝合計で遙と8時間くらいはヤった。
「はははっ!梵、やっぱお前絶倫だな!その上テクニシャンだから、遙ちゃん、ずっとイカされっぱなしだったんじゃねぇのか?それなら疲れても仕方ねぇ!はははっ!傑作だぜっ!」
「そう、イカされっぱなしで2刻以上だったかな。まさか気絶するまで抱かれるとは思わなかったよ」
「ははっ!遙ちゃん、気絶させられたのか。それは相当だな。そりゃ、身体が参っても仕方ねぇ。なぁ、梵。あと10日だけはせめて3刻以下で我慢しろ。休憩挟みながらな。じゃねぇと、登勢の事が心配だ。流石に美紀ちゃんにずっと任せる訳には行かねぇからな。長丁場過ぎる」
俺も深い溜息を吐いた。
成実の言う事はもっともだが、それでも抱き足りねぇ。
「明日9時にすっきり起きれるかなぁ…。いや、政宗が朝も抱くから起きるのは7時かな。ううっ、夜中まで抱かれるなら睡眠時間が全然足りない…」
「ははっ!やっぱりな!道理で遅いと思ったら、やっぱりヤっていやがったか。ずるいぞ、梵!」
「うるせぇ、成実。まだ遙をこの城で抱いて3日目だ。信玄の屋敷ではずーっと我慢してたからな!初日お前が邪魔したから、二人きりは2回目だ。耐えられる訳ねぇだろ?7年間も待ち続けたんだ。抜きまくっていたとはいえ相当溜まってるからな。あんなに可愛く乱れた遙を腕に抱いて、耐えられるはずがねぇ」
「まあ、お前の気持ちもよーく分かるけどな。俺も登勢が解禁になったら、耐えられるか自信ねぇしな」
「だろ?お前、よく分かってんじゃねぇか」
すると、背後から小十郎の堪え切れないような笑い声が聞こえて来た。
「政宗様、玉露をお持ち致しました」
「Thanks, 小十郎」
小十郎も座り、盆を縁側に置いた。
いつも憎いくらい礼儀正しい小十郎が、まだくすくすと笑っている。
「何がおかしい、小十郎」
「いえ、この小十郎の予想通りだったと思いまして。以前、手加減出来ないとおっしゃっておりましたから。あれだけ派手に女遊びをしてらしたんです。それも一晩に数人も、明け方まで。どれだけ、この小十郎が後始末に追われた事か。もうそのような事が二度とないと思うと肩の荷が下ります」
「小十郎!余計な事を言うんじゃねぇ!」
「はぁ…政宗、すごく手慣れてるとは思ったけど、そんなにすごかったんだ…。あの夏は、すごく手加減してくれてたんだね…。それでも、朝から夕方までとかざらだったから、やっぱり政宗は相当だよね…。すっかり忘れてた。あの頃は毎日休みだったから気にならなかっただけか…」
遙の呟きに、また今度は小十郎まで成実と爆笑した。
「遙っ!お前まで余計な事、バラすなっ!」
「ククっ…遙様も大変ですね。しかし、薬の服用さえ止めればすぐにでもご懐妊なさりそうで安心でございます。遙様、どうか耐え抜いて下さいませ。全ては伊達の基盤のためでございます」
「それを言われると弱いんだよなぁ…。早く世継ぎは生みたいし。でも、あと10日間、4時間睡眠じゃ足りなさそう…。政宗、8時間は抱くから…」
「8時間…4刻でございますか。美紀の睡眠の見積もりはどの程度でございますか?」
「そうだなぁ…。10日間なら、4時間睡眠で、点滴の間仮眠を取れば持つかな、普通の医者なら」
「ならば、美紀には3刻休ませ、遙様は政宗様と共に9刻はお休みになられるのはいかがでございますか?この小十郎の経験上、流石の政宗様も5刻までおなごを抱いた事はなかったように記憶しております。そうだな?成実?」
「そうだな!梵の最長記録は、確か休憩抜いて、4刻半だぜ。一発ずつ違う女でな!」
「政宗様は、遙様を愛してらっしゃいますから、記録を更新して5刻に届くやも知れませんが、それでも4刻はお休みになれます。いかがでございましょう?」
「うん、それなら例え政宗が記録更新の10時間に届いたとしても、8時間は休めるね。お風呂とご飯で1時間かかっても、7時間は休めるか」
「左様でございます」
「んー、美紀の休憩が6時間か。ご飯とお風呂をささっと済ませれば、それでも5時間半休めるか。ギリギリ許容範囲だな。でも、美紀、許してくれるかなぁ…」
「この小十郎が説得致します。全ては政宗様の御為でございます」
「流石だ小十郎!よし、その手で行く。せっかく遙をこの城に迎えられたのに、俺が耐えられる訳がねぇ!」
「重々承知しております。この小十郎にお任せを。さあ、遙様。どうぞ、茶をお召し上がり下さい」
「小十郎、ありがとう」
遙は玉露を飲むとようやくホッとしたように微笑んだ。
俺も甘い玉露を楽しみながら、ゆっくりとタバコを吸った。
「遙、このまま夕餉まで休むか?」
「そうだねぇ。夕餉前に一回点滴の交換が必要か。焔!まだ、予備の点滴のバッグあるね?」
「はい、あと3回分はございます。点滴のスピードと薬に変更がございませんようでしたら、遙様はお休みになっていらしても、問題ございません」
「なら、安心だ。点滴のスピードと薬に変更なし。登勢ちゃんが酷い痛みを訴えるようだったらすぐに呼んで」
「かしこまりました」
「焔に頼んだから、夕餉まで休めそうだな。もうしばらくタバコが吸いたい」
「ああ、いいぜ。それにしても、お前って大した女。猿飛の忍隊に医術叩き込んで顎でこき使うなんてな」
「だって、疱瘡患者の人数多過ぎて、人手が足りなかったんだもん。お陰で今楽出来てるけど」
「指揮官は、いかに楽して部下を使うかだ。それでいい」
俺が褒めると遙はくすぐったそうに笑ってタバコの煙をゆっくりと吐いた。
「誠、信玄公より猿飛忍隊を貰い受け、幸いでございました。遙様、大変ご立派でございます。正直お世継ぎの教育も、遙様ご自身にして頂きたいくらいでございます」
「遙ちゃんってやっぱりすごいねー。梵の嫁は遙ちゃんしか無理だ。この伊達男、他の女じゃ絶対物足りねぇからな」
「だろ?この世で最高の女だ!誰にも渡さねぇ!」
「左様でございますね。政宗様、冷え込んで参りました。隣の部屋ならば、おタバコも結構でございましょう。遙様、いかがですか?」
「そうだね…。まあ、許容範囲」
「かしこまりました。では、お部屋を移動致しましょう」
小十郎に促されて、俺達は部屋を移動した。
座卓について、残りの茶を飲みながらゆっくりとタバコをふかす。
「遙、茶は足りるか?もう一杯いるか?」
「じゃあ、玉露をもう一杯」
「分かった、俺もそうする。お前達もそれでいいな?」
「はっ!」
「いいぜ」
小十郎は玉露を申し付け、夕餉の首尾も確認した。
「遙様、あと四半刻も経たずに夕餉でございます。温かい鍋でもお召し上がりになれば、少しはお元気になられるでしょう」
「うん!昼餉のお野菜も美味しかった」
「左様でございましたか。嬉しい限りでございます」
小十郎は目を細めて微笑んだ。
「でも、ちょっと暇かな。iPadで何か調べようかな」
「いいから、休んでろ」
「何か職業病で、常に何かしてないと落ち着かない」
「じゃあ、お前もドレス、見てみるか?小十郎とはゆっくり見たけどな」
「うん、政宗がどんなの気に入ったか気になる」
「Okay, 待ってろ」
俺は隣の部屋に入ってiPadを持って来ると、席に座って遙と覗き込んだ。
向かいの成実も興味津々に覗き込んでいる。
「あれ?これ、遙ちゃんのとカバーの色が違うな」
「ああ、俺専用のを遙がくれた」
「ずるいぞ、梵!俺も未来の道具が欲しい!」
「お前にもそのうち貸してやるから我慢しろ」
「まあ、だったらいいけどさぁ」
成実は、またタバコに火を点けて、ゆっくり吸い始めた。
ドレスの検索結果を出して、遙と眺める。
「小十郎がドレスの祝言は3回でどうだって提案した。俺も賛成だ。教会式と、披露宴が2回だ。何度でもお前のドレス姿は見たいからな」
「教会式かぁ…。ヴァージンロードの向こうで政宗が待ってるの、夢だったなぁ…」
「お前がそう言うなら、教会式も何度かやってもいいけどな」
「そうだねぇ。でも、同じ場所じゃ、つまらないし…。そうだなぁ。やっぱ教会式は1回で、伊達家の重臣と、全国の大名と奥さん呼んで参列してもらえば?王族の結婚式って各国の王族ばかり招待されるから、政宗の婚儀もそんな感じにしたら?全国の大名ばかり招待すれば、天下人らしい婚儀になるでしょう?私もみんなに会いたいし」
俺も流石にそれは思いつかなかった。
確かにそれなら歴史に残りそうな式だ。
「お前、やっぱ最高の女!俺でも思いつかなかったぜ。小十郎、どう思う?」
小十郎は微笑んで頷いた。
「流石は遙様でございます。誠、天下人に相応しいお式でございますね!それならば、必ずや、後世まで語り継がれるでしょう。早速そのように手配を致します」
「結婚式の後、私の世界の王族は、パレードするんだよね。民衆にお披露目。パレードしたら、また政宗の人気が急上昇だね!車はないから、馬車しか無理か。パレードには大名のみんなにも参加して貰おう。伊達家の重臣達もね。絶対盛り上がるね!」
「パレードまですんのか!最高にcoolだぜっ!お前を見せびらかすのは楽しそうだ!そうだな、広い道しか走れねぇから、青山から銀座に向かって、それから東に向かって、最後に二重橋経由で帰還するか」
「ああ、それなら広い道ばかりだし、違う道を通って江戸城に帰れるね。長さ的にも丁度いい」
「すげえな、遙ちゃん。そんな婚儀聞いた事もねぇ!絶対に歴史に残るぜ!俺と小十郎が梵と遙ちゃんの盾になるから問題もねぇな。警備の伊達軍も十分いるしな」
「成実、その通りだな。確かに民衆にお披露目とあらば、政宗様と遙様の人望もより高まりましょう。沿道では酒や菓子でも振る舞いましょうか。民衆も喜ぶでしょう」
「流石、小十郎!みんなも喜ぶね!そうだな、お式はトレーンの長いドレスを着た方が映えるけど、馬車は短い方が乗りやすいな。教会を出る前にお色直しだ」
「マジでか!それならお前のドレス姿、4回も見れるな!楽しみでたまらねぇ!!お前ほどcoolな女はこの世にいねぇ!」
「coolなのは政宗だよ!そうだな、着替えるから教会には控え室が必要だな。式の日程とパレードについては、瓦版で周知すればいい。みんな政宗が見たくて集まるよ、きっと」
「宣伝か。派手に宣伝しなきゃならねぇな!見物人は多い方が盛り上がるからなっ!」
「誠、遙様の策にはまた驚かされました。まさかそのようなお式があるとは、この小十郎、夢にも思わず、正に、江戸最大のエンターテイメントとなるでしょう。史上初なのは間違いございません。歴史に伊達の名を刻むのが楽しみでございます。伊達男の政宗様に、誠に相応しいお式と存じます!」
「やっぱ遙ちゃんってマジですげぇ…」
小十郎と成実は感心しきったように遙を見つめた。
正直俺もびっくりだ。
まさかこんなに盛大な祝言があるなんて知らなかった。
遙を見せびらかせるのが、楽しみで楽しみでたまらない。
「政宗、多分、ロイヤルウェディングを調べたら、すごく参考になるよ。政宗なりにアレンジしたらいいよ。政宗の方がセンスいいから、どんなドレス選んでくれるか楽しみだし。馬車の手配もお願いね。オープンカーみたいなのがいい」
「任せろ!ロイヤルウェディングか。…これだな。遙、どれが見たい?」
「イギリスのダイアナ妃かな」
「Okay!」
ダイアナ妃の豪奢なウェディングドレスは、今までに見たことがないほどデザインが良かった。
教会の赤い絨毯に映えるのは間違いない。
ただ、遙には肩と背中を露出して欲しい。
このドレスを参考に俺なりにアレンジした方がいいか。
「この南蛮人、超絶美人だな!それに、ドレスも最高に綺麗だ」
「世界を熱狂させた、ダイアナ妃だよ。世界一豪華な結婚式だったらしいから、政宗なら気に入るかなって」
「世界一でございますか!それならば、この小十郎も是非参考にさせて頂きたいと存じます!」
小十郎まで身を乗り出して、じっくりと写真と記事を読んでいる。
俺達が記事を読んでいる間、遙はゆっくりタバコをふかしていた。
「小十郎様、茶です!」
「おう、入れ」
部下は俺達それぞれの前に茶を置くと、静かに下がって行った。
遙はゆっくりと幸せそうに茶を飲んでいる。
「政宗、気に入った?」
「もちろんだ!絶対にこれを超える婚儀にしてやるぜっ!」
「流石、政宗!多分、YouTubeに当時の動画あるよ?そのまま動画検索にしたら、きっと見つかる」
「動画検索?これだな」
動画はすぐに見つかり、俺は再生した。
途端に小十郎と成実が驚きの声を上げた。
「小十郎様、鍋の仕度が出来ましたっ!」
「おう!今は手が離せねぇ。遙様、この動画の長さは?」
「んーと、1刻」
「おい、夕餉を1刻遅らせろ!」
「押忍!」
小十郎と成実は俺と遙の隣に移動し、熱心に動画を見始めた。
教会の式からパレードまで、ほぼほぼ全部の行程がまとまっている、字幕とナレーション入りの動画だ。
俺達は、ただただ声を上げながら見惚れ、俺は遙のドレス姿を夢に描いていた。
これは、絶対に最高の婚儀になる!
楽しみで楽しみでたまらねぇ!
遙も興味津々に動画をずっと見ていた。
1刻経って動画を見終わると、小十郎と成実は席に戻って行った。
「大変参考になりました。教会のお式もパレードもよく分かりました。政宗様とじっくり打ち合わせを致したいと思います」
「流石、小十郎!パレードの後は大名達と伊達家の重臣達と晩餐会ね。つまり、宴。みんな喜ぶと思うよ?私はそこで、カラードレスを着ようかな。んー、フランスからドレスを取り寄せるのもいいな」
「違うドレスも着てくれるのか!?」
「うん。お色直しってそんなものだよ、政宗」
「知らなかったぜ…」
俺達はただただ驚き、また遙を見つめていた。
まさか俺も1日で3度も違うドレス姿が見られるとは夢にも思わず、幸せで頬が緩んだ。
「小十郎様!鍋です!焼き鳥も熱々です!」
「おう、入れ」
「押忍!」
部下は鍋をセットして、配膳を済ませると、部屋を出て行った。
「小十郎が鍋の仕度を致しますので、政宗様は、焼き鳥を先にどうぞ」
「Thanks!ほら、遙、熱いうちに食うぞ。成実、お前も食え」
「いただきまーす!」
遙と成実は同時に手を合わせて言うと、食べ始めた。
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