婚儀の相談 -3-

「全く、お前には驚かされっぱなしだ。何でもっと早く言わなかった!」
「だって、向こうの世界では結婚は避けてたし、江戸に着いたと思ったら、ゆっくりする間もなく急患だもん。それも心臓外科の大手術。先に上洛の打ち合わせだと思ってたし、婚儀の相談もする暇なかったでしょう?」
「まあ、そう言われてみれば、そうか」
「良かったじゃない、夕餉前にゆっくり見られて。小十郎も成実も見られたなら、尚更」
「そうですね、婚儀の事は、この小十郎が指揮を執りますので、政宗様のお話だけでは、見せて頂かなければ到底理解出来なかったと思います。正に百聞は一見にしかず。大変便利な機械でございますね」
「俺もここまで便利になってるとは予想もしてなかった。7年って長いぜ」
「うん。この一台で色々出来るから、本当に便利なんだよ?」
「そうか、またゆっくり教えてくれ。とりあえずの所はSafariだけで十分役立つ」
「まさか、私がロイヤルウェディングの主役になるなんて想像もしてなかったけど、言ってみるもんだね。そんなに政宗が喜ぶと思わなかった」
「俺は天下人だから当たり前だ。伊達男だしな!小十郎は前々から歴史に残る式にしたいって言ってたから、好都合だ。お前のドレス姿がこんなに見れるなら、絶対にやってやんねぇとな!」
「ふふっ、流石、政宗様!戦国きってのハイスペック男!」
「お前も天下一の伊達女だ!じゃなきゃあんな祝言思いつかねぇ!俺にはやっぱりお前しかいねぇな!愛してるぜ、遙!」
「私も政宗を愛してるよ?」

成実は堪え切れないように笑い出した。

「お前ら、本当にラブラブだな!俺も梵の祝言、すっげぇ楽しみになったぜ!プロポーズより断然こっちの方が面白れぇ!」
「だから言っただろ?婚儀の時はもっと輝くって」
「ああ、お前の言う通りだな。全国の大名達もきっと驚くぜ?伊達の名が国中に轟くな!」
「だろ?」
「政宗様のプロポーズでも驚きましたが、婚儀にはもっと驚かされました。この小十郎の命を賭けてでも、成功させる所存でございます。準備に手間取りましても致し方ないでしょう。一年以内には何とか致します。さあ、鍋が食べ頃になりました。政宗様、どうぞ」
「Thanks, 小十郎!」

しばらく、熱い鍋を冷ましながら、ゆっくりと食べていると、遙が俺の袂を引いた。

「ねぇ、政宗?白無垢のお式はどうやるの?」
「そうだな…。遙の考えた祝言に比べたらインパクトねぇな。参ったな…」
「神社で三三九度?」
「まあ、普通はそうだな。神田明神を考えている。伊達家が保護してるからな」
「大学のそばだ…。懐かしいな…」
「ああ、そうだな。しかし、参ったぜ…。マジでインパクトに欠ける…」

遙はしばらく無言で鍋を食べながら、視線を落として考え込んでいたが、ふと、ぽんと手を打った。

「神田祭と合体させる?お式の後、お神輿見たら、盛り上がりそうだね!」
「その手があったか!式の後、人力車を出させて神輿の先頭でも歩かせるか?またパレードだな!」
「お神輿の先頭!?そこまでは思いつかなかったな…」
「政宗様、人力車とは?」
「馬車みたいなもんだが、馬の代わりに人夫が車を引く。遙の世界で見た」
「左様でございますか。それは、確かに面白そうですね。参列客はいかが致しましょう?」
「そうだな…。教会式の前日にするか。前夜祭だ!教会式の方がインパクトあるから、そっちは後回しにするのはどうだ?伊達家の重臣と大名達に参列してもらう。2日連続なら、いちいち江戸まで来る手間省けるだろ?それに1日で帰ってもらうより叔父貴達も大名達も楽しめるだろ?そうだな…神輿と神輿の間に人力車を配置して、重臣達と大名達にも乗ってもらうか。物珍しくてきっと驚くぜ?祭りも楽しめるしな。前田慶次には神輿の上に乗ってもらうか。楽しみだ!これも絶対史上初だ!」
「ははっ!coolだぜっ!流石は梵だ!それはいい考えだ。せっかくの祝言だ。立て続けの方が絶対盛り上がるなっ!パレードのルートが違う方が、民衆も参加しやすいしな。なぁ、小十郎、どう思う?」
「そうだな、それは確かにいい考えだ。政宗様、流石でございます」
「ヒントをくれたのは遙だ。まさか神田祭をやらせるとはな!宮司達を説得しなきゃならねぇな。俺と遙のためだけに、神田祭を例え時期外れでも無理にでもやらせるぜっ!」

小十郎は堪え切れないように笑い出した。

「神田祭ですか。大変可愛らしい発想ではございますが、前夜祭としては相応しいですね。民衆も大変喜ぶはずです。盛大な祭りを手配致しましょう」
「頼んだぜ、小十郎!」
「はぁ…やっぱり政宗ってすごいね。短絡的に神田祭って言ってみただけなのに、ちゃんとお式に組み込んじゃうんだもん。まさかパレードにするなんて、びっくり!」
「俺こそ祭りと組み合わせる発想にはびっくりだったけどな。お前、やっぱ頭いいな!最高に盛り上がりそうだな!」

俺が軽く手を挙げると、遙も微笑んでハイタッチをした。
その手を握って軽く引き寄せて、何時間かぶりのキスをした。
これで祝言の大枠は決まった。
あとは披露宴をどうするかだ。

「なぁ、小十郎、お前、披露宴ってどうやるつもりだ?」

遙は鍋を食べながらじっと耳を傾けている。

「簡単に言えば、伊達家臣一同へのお披露目の宴でございます。重臣達は呼ばなくても結構かと。政宗様と遙様の晴れのお姿を、みなで祝福するのが目的でございます」
「なるほどな。野郎共にお披露目か。でもなぁ、遙との誓いのキスはしてぇなぁ」
「だったら、政宗、人前式にすれば?宴の中で、誓いのキスも、馴れ初めもお披露目出来るよ?司会は小十郎か成実にお願いすればいいし。美紀でもいいし」
「人前式?そんなのがあんのか!?」
「うん、友達の結婚式で見たよ?結構色んなパターンがあって、面白かったよ」
「お前には驚かされてばかりだ。後でSafariで調べて、俺なりにアレンジしてからまた相談だな」
「みんなで、カラオケしたりもするんだよ?せっかくなら、Eternal Flameを歌うのもいいんじゃない?」
「そんな事まですんのか!?ああ、是非お前とデュエットしてぇな」
「ふふっ、小十郎にも成実にも歌って欲しいなぁ」
「あ!俺、やるやる!何曲でも歌ってやるぜっ!」
「この小十郎の歌でよろしければ、是非」
「ふふっ、小十郎にはエルヴィス歌いまくってもらうから、覚悟してね?」
「遙っ!お前、また小十郎に惚れるだろっ!?」
「笛と一緒!一生に一度だけなんだから、いいじゃない!」
「はぁ…笛と一緒か…。一生に一度なら許す」

成実は堪え切れないように大爆笑をした。
小十郎もくつくつと笑いながら答えた。

「遙様の一生に一度の晴れの舞台でございますから、いくらでも歌いましょう」
「わぁ!小十郎、ありがとう!」
「俺も歌ってやる。小十郎には負けねぇからな!ロックンロールで気絶させてやるから、覚悟しろ!Surrenderも歌ってやる!お前をめろめろにさせてやるからなっ!また口説き落としてやるぜっ!」
「政宗、最高!流石、政宗!」

遙も嬉しそうに声を立てて笑った。

「よし、伊達の披露宴の大枠はそれで決まりだ。細かい所は遙も交えてまた4人で打ち合わせだ。遙、披露宴のお色直しは?」
「政宗がして欲しいなら、何回でも着るよ?どんなドレスでも着るよ?」
「それでこそ俺の女だ!カラードレスを2着は着るか。いや、それじゃ全然足りねぇな。もちろん真っ白なウェディングドレスも見足りねぇな!それもただの宴じゃねぇ。愛の大河ドラマ、婚儀編だからな!当然12刻スペシャルだっ!何ならそれより長くても構わねぇ。遙には何度でもお色直しさせるぜっ。俺が満足するまで何度でもなっ!」

成実は今度こそ腹を抱えて大爆笑をしてひいひいと言っていた。

「あんま笑わせんなっ!く、苦しいっ!あはははっ!12刻スペシャルの事は部下から聞いたぜ、お前、最高に傑作だったなっ!俺も超見たかった!お前の披露宴、超絶楽しみにしてるからなっ!また馴れ初めから、全部話せよ、俺も聞きたい」
「ああ、いいぜ。とことんまで惚気て泣いてやるから、覚悟しろよっ!」
「梵、お前、最高!はははっ!」

小十郎は微妙な顔をし、遙は不思議そうに俺を見つめていた。

「政宗様、この小十郎、披露宴が大変心配になって参りました」
「心配すんな、小十郎!絶対に盛り上がるから、梵に任せておけ!また野郎共の号泣の大合唱聞けると思ったら、笑えてくるぜ、ははっ!」
「そんなに面白いの?成実?」
「落語なんか目じゃねぇくらい笑えるぜ?遙ちゃん、楽しみにしてなよ!」
「落語より面白い…。それは相当だな。全然、想像つかない…」
「成実!余計な事、言うんじゃねぇ!」
「いいじゃねぇか!なにせ伊達軍最大のエンターテイメントだったからな!」
「そんなにすごいの!?」
「ああ、ガチで、すげぇ。楽しみだ!よし、一度目の披露宴はそれで決まりだなっ!小十郎、文句あっか!?」

小十郎は溜息を吐いた。

「確かに野郎共にお披露目って考えると、政宗様がお話になるのが一番盛り上がるのは間違いねぇ。確かにあれだけ野郎共が盛り上がった事は今までにねぇのは確かだ。お前ぇの言う通り、伊達軍最大のエンターテイメントだったからな。政宗様と遙様にお任せするのがいいかもな」
「小十郎にもそこまで言わせるほどって、政宗、何を話したの?」
「梵から聞きなよ、俺、きっと爆笑し過ぎて言葉になんねぇ」
「政宗?」
「その話はまた今度な。披露宴のプロット立てるのにお前の力が必要だから、登勢が治ってからでもゆっくり、な?」
「あ、うん、そうだね」

遙はまたいそいそと鍋を食べ始めて、小十郎の野菜を褒め称えては、小十郎を喜ばせていた。
俺もゆっくりと鍋をつついた。

「はぁ、小十郎。俺、江戸だけで満足しちまいそうな勢いだぜ。この調子なら、遙のドレス姿は最低10着は見られるし、わざわざ信玄の手を煩わせる必要もなさそうだ。まさか、教会式だけで3着も見られるとは思いもしなかったからな」
「左様でございますね。伊達の披露宴も、12刻スペシャルであれば、政宗様のお望み通り、満足なさるまで遙様のドレス姿を何度でも見られるのは間違いございません」
「よし、今のところ、二度目の披露宴は保留だ。正直、伊達軍だけでこの上なく盛り上がるのは間違いねぇし、遙の策で、歴史に残る婚儀になるのも間違いねぇ。とりあえずの所はドレス選びに専念しようぜ」
「はっ!」

俺はようやく落ち着いて食事を再開した。
まさかこんなにトントン拍子に婚儀の大枠が決まるとは予想もしていなかった。
やっぱり遙は最高の女だ。
俺の好みをよく分かっている。
あとは、婚儀の内容をつめながら、十二単選びか。
いずれにせよ、十二単の試着は登勢が治ってからしか無理だし、今出来るのは、遙の世界の婚儀についてもっとよく調べる事だけだ。
またいいアイディアが浮かぶかも知れない。
準備に時間がかかるなら、上洛前に段取りを細かに決めておいた方がきっといい。

「遙様、そろそろ痛み止めの処置のお時間かと存じます」
「あ、焔、ありがとう!」

遙は立ち上がり、襖の向こうへ消え、しばらくしてまた戻って来て食事を再開した。

「はぁ、野菜の旨味たっぷりの鍋、最高に幸せだな!鶏の出汁とマッチしてて、この季節にぴったり!塩だけのシンプルな味付けがまたいいね!今まで食べた鍋の中で一番美味しいな!ネギマのネギもすっごく甘くて歯ごたえも良くて美味しかった!」
「お前が喜んでくれて、俺も嬉しい。小十郎も、野菜の育てがいがあるな!」
「左様でございますね。遙様のためにもますます腕を奮う所存でございます」
「はぁ…政宗と結婚して本当に良かった!毎日幸せだなぁ」
「表向きはまだ許嫁だけどな。俺も毎日幸せだぜ?もっとお前を幸せにしてやるから楽しみにしてろよ?」
「政宗最高!また何を輸入するか一緒に考えようね!」
「ああ、もちろんだ!小十郎、煎茶を急須で持って来させろ」
「はっ!」

小十郎が茶を申し付け、しばらく言葉少なに食事していると、鍋が空になった。

「遙、シメの雑炊どうする?」
「今日は食べたい」
「かしこまりました。冷や飯を申し付けます。おいっ!シメの雑炊だっ!卵とネギも持って来いっ!」
「了解ッス!」

バタバタと伝令の声が聞こえるのを聞きながら、俺は食後のタバコを吸い始めた。
遙と成実もゆっくりとタバコを吸い始める。

「結婚式の準備がこんなに楽しいなんて、思わなかった。せっかくなら、馴れ初め動画とか作って、スクリーンでお披露目するのもいいなぁ」
「お前、そんな事も出来るのか!?」
「うん。バッグからMacBook出して、それで作れるよ。一ヶ月半の恋のダイジェストを動画にするの、面白そう。んー、甲斐の話も全部盛り込んで、政宗との再会とかプロポーズまでのエピソードの動画も作ろうかな。江戸にいれば私は大丈夫だから。もう取り乱さないよ、きっと。みんなにも知って欲しいし。それに、iPhoneもアップグレードされてるはずだから、全部のお式の動画を黒脛組に撮らせれば、一生の思い出になるね!何台もiPhone出して、色んなアングルから動画を撮影して、動画を編集したら、iPadで後でいくらでも眺められる。写真ももちろん。わぁ、すごく幸せだ…」
「動画まで残せんのか!?」
「うん、結婚式のメモリアル動画。お式からパレードまで全部。勿論晩餐会も披露宴もね」
「マジでか!俺達の婚儀の動画なら、何度でも後から見直してぇな!」
「でしょう?政宗とゆっくり眺めたいなぁ!」
「すげぇな、遙ちゃん!それ、めっちゃいいアイディアだぜ!俺も甲斐の話、詳しく知りたいしさ。どうせなら、教会式の一部始終も動画編集して披露宴でお披露目するのはどうだ?野郎共も見てぇだろうし、また号泣の大合唱だ!」
「流石だ、成実!12刻スペシャルだからな!野郎共には見せつけてやんねぇとな!」
「成実、たまにはいい事言うじゃねぇか。政宗様、良き考えだと思います。しかし、一度限りの婚儀を後から何度も見直せるとは、この小十郎予想もしておりませんでした。遙様、黒脛組には、この小十郎が撮り方を叩き込みますので、道具のご用意と使い方を教えて下さいませ」
「うん、いいよ!」
「小十郎様!雑炊の材料と茶をお持ちしました!」
「おう、入れ!」

雑炊の材料が持って来られると、小十郎は手早く雑炊を作り始めた。
俺達はゆっくりと茶を飲み始めた。
全く遙には驚かされっぱなしだ。
まさか7年で、こんなに便利になっているとは思いもしなかった。
出来ればあの頃の動画を残しておきたかったくらいだ。
でも、それを見たら、恋しくて恋しくて泣いてばかりだったと思うし、どうせなら幸せな動画の方がいい。
遙との婚儀の動画だなんて、今までで最高の動画になるのは間違いない。

「政宗様、雑炊が出来ました。熱いのでお気を付け下さい」
「Thanks。なぁ、小十郎。どうせなら江戸にいる野郎共が全員入れるようなホールを建築しねぇか?せっかくならみんなにお披露目だ!後々役に立つだろうし、敷地も余ってる。そうだな、三万人くらい入ればいいか。江戸城の警備の人数を抜くとそれくらいの数が妥当だからな。ステージも作れ。ステージの裏側に控え室もな。そうだな…花道も作るか。花道から遙と入場だっ!後ろの奴らもそれなら見られるからなっ!」
「わぁ、政宗!コンサートホールみたいだね!いいと思う!」
「だろ?」
「ホールでございますか。雨天の時の軍議に便利ですね。確かに後々役立ちそうです。かしこまりました。建築を急がせましょう」
「梵、すげぇな!そいつは確かに便利だし、披露宴がもっと盛り上がるぜっ!中にはまだ噂しか知らねぇ奴等もたくさんいるからな!野郎共には幕の内弁当と酒でも配るか」
「よし、成実、その手で行く。楽しみだ!椅子の席は作らなくていい。板の間で十分だな。流石にそんな規模の広間は今のところ城内にはねぇから、これから使える。遙のエレキギターを野郎共にそのうちそこでお披露目してもいいしな。ライブだ!」
「わぁ!政宗最高!政宗達とバンド結成して、ライブやりたいね!」
「梵、ライブって?」
「成実、ちょっと待ってろ」

俺は脇に寄せていたiPadでメタリカのライブを検索し、動画を発見すると成実に渡した。
小十郎も隣から覗き込む。
成実は息を呑んで叫んだ。

「すげぇ!これ、最高にcoolだぜっ!絶対、野郎共もノリノリになるぜっ!」
「だろ?遙のエレキギターは最高にcoolだからな!そうだな、俺達も楽器の稽古でもして、歌うか?」
「梵!俺もやりたい!この太鼓、最高にcoolだぜっ!」
「成実、それはドラムって言うんだよ?じゃあ、成実、ドラム叩く?」
「ああ、俺これやりてぇ!」
「ふふっ、政宗と小十郎にはどの楽器弾いてもらおうかなぁ」
「俺はお前とツインギター弾きてぇから、俺がエレキギターのバッキングだな!小十郎はベースだな」
「この小十郎に出来ますでしょうか」
「エレキギターほどは難しくねぇし、お前は十分器用だから、問題ねぇよ。左利きだしな。よし、遙、披露宴の余興にでも、3曲くらいは野郎共にお披露目するか?ドレス姿のエレキギターもまたcoolだろうなっ!何なら10曲くらいでも構わねぇ」
「うん!すっごく楽しみになって来た!」
「お前がそんなに楽しみなら、絶対ライブはやらなきゃならねぇな、よし、決まりだ!」

俺と遙はハイタッチをして笑った。
小十郎もくすくすと笑っている。

「12刻スペシャルならば、十分時間はございますね。遙様がそんなに喜ばれるのであれば、この小十郎も稽古を致します。遙様、雑炊は足りましたか?」
「もう少し食べる」
「かしこまりました」

小十郎は遙から器を受け取り、また盛り付けた。
遙は幸せそうに目を細めて食べている。

「このネギ、すごく甘くて美味しいよ。いくらでも食べれちゃう」
「ありがとう存じます。これだけお元気になられて嬉しい限りでございます」
「ああ、俺も嬉しいぜ。小十郎、俺もあともう一膳、食う」
「かしこまりました」

俺の器にも盛り付けると、俺は受け取り、ゆっくりと食べ始めた。
前回の鍋も楽しかったが、今日は格別だ。
遙との婚儀がこんなにスケールがデカいものになるなんて、思いもしなかった。
楽しみで楽しみで仕方ない。
俺も遙もすっかり食べ終わり、食事のタバコを吸い始めた。
遙はちらりと時計を見やった。

「あと、1時間で美紀と交代か。思ったより夕餉で話し込んじゃったな。焔達にもお食事して欲しいし…」
「遙様、我々の事はお気になさらず。先程、薬の追加を調合して頂きましたから、美紀様との交代まで持ちます。遙様さえよろしければ、大切な婚儀の打ち合わせを続けて下さい。カルテも記入してございます。問題なく美紀様に引き継げます」
「焔、流石だね!それなら安心だ」
「Thanks, 焔!もう少し、遙、借りるぜ!」
「御意」
「遙、お前ってやっぱり大した女だぜ。小十郎、披露宴の話の続きだ」
「はっ!」

それから俺達は、遙と披露宴の大枠について話し合い、遙から教会式や人前式についてもっと詳しく聞いて、当日のカメラワークについての打ち合わせを行った。
そうしているうちに、1時間が過ぎ、美紀と交代した。
小十郎が美紀を説得すると、美紀は大爆笑しながらシフトの変更を快諾してくれた。

今から18時間、遙を独占出来る。
そう思うと嬉しくてたまらなかった。

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