今回から英語があまりに多用されるため、全編ほぼ、全て日本語訳でお送り致します。
俺と紫苑ははるかに上空へ飛び立ち、遙の送ってくれた地図を思い浮かべながら、全速力で凧を飛ばした。
出立時間は日本時間、午前0時ぴったり。
もし休む事なく飛び続けるのであれば、約2日半後にバッキンガム宮殿に到着予定。
つまり、日本時間、午後1時過ぎくらいだ。
6時間なら休まなくても楽勝だから、休憩回数は合計10回程度。
15分ずつ休むとしても、誤差は3時間以内。
あとは、着いた時のイギリス時間が何時になるか計算しながらイギリスで時間つぶしをするのが良さそうだ。
バッキンガム宮殿の中庭に降り立つのはイギリス時間午後1時の予定。
上空から見て、中庭に女王がいるならそのまま降り立ち、いなければ出直すのが間違いない。
俺は5時間後に1度目の休憩を取り、政宗様にタイムスケジュールをLINEして、ついでに辺りの風景の写真を撮って送った。
現在日本時間午前5時。
限りなく広く地平線が広がり、朝焼けがとても綺麗な景色だった。
山がちな日本では絶対見られない風景だ。
「超絶coolな景色だぜっ!どこだ?」
「分かんない。遙に聞いてみて」
「Okay!後で聞いてみる。また連絡待ってるぜ!」
「了解!」
遙はどうやらまだ寝ているようだった。
次に日本時間午前11時30分に次の休憩地点で軽い食事をしながら、また写真を撮った。
まだまだ果てしない地平線ばかりで、景色が全然変わらない。
政宗様には申し訳ないから、写真を送信するのはやめた。
これだけ飛んだのに全然進んだ気がしないってどんだけ!?
初めて世界の広さを思い知った。
「お前、今、どこだ?」
「まだユーラシア大陸。ロシアの南あたり」
「なるほどな。遙から聞いた。どこまで行ってもほとんど不毛地帯だから、写真は撮らなくていい。休憩は足りたか?」
「全然大丈夫。これだけ人がいなければ心置きなく飛ばせるよ。また6時間後に報告するね」
「Okay!」
予定通り日本時間午前11時45分に出発。
6時間後、凧を降りると辺りは夕焼けに染まっていた。
日本時間、午後5時45分。
果てしなく広がる夕焼けを激写して政宗様に送信。
「綺麗な夕焼けだな!地平線が果てしなく広いぜっ!遙から聞いた。今日中にはまだロシアを抜け出れないらしい。多分景色も退屈なはずだ。もうちょい南を飛んだら景色が変わるかもな。人目につきたくなければこのルートを進め」
「俺、外国語話すの怖いから早くイギリスに着きたい。このまま人目につかないルートを進むよ」
「Okay!好きにしろ。今晩は休むのか?」
「いや、風向きがいいからこのまま徹夜で飛ぶよ。また6時間後に報告するね」
「よし、俺は起きてるから大丈夫だ。待ってるぜ!」
15分休憩の後、俺達はまた飛び立った。
闇の中、頼れるのは長年鍛え上げられた勘だけだけど、今晩は風に乗れていい感じだ。
ほとんど楽してこのまま6時間は飛べる。
次に降り立ったのは日本時間午前0時。
ちょっと気が引けたけど、軽食を食べながら政宗様にLINE。
「合計飛行時間、23時間だよ、政宗様」
「Okay, そのまま北ルートを進め。間違って南に進んだ場合、オスマン・トルコ領内なら砂漠で休め。それなら人目につかない」
「分かった。ところで俺達どこにいるの?」
「まだロシアの南部だ」
「ええっ!?どんだけ広いのロシアって!?」
「行程の半分以上はロシアだ。3分の2はロシアだと思っておけ」
「そんなの世界最強じゃん」
「ロシアには港がない。海が凍るからな。だから世界に進出は出来ねぇ」
「なるほどね。海の方が広いもんね。道理で寒いはずだよ。流石、政宗様。じゃあ、15分休憩の後、また6時間飛ぶよ」
「Okay!」
日本時間午前0時15分に再び飛び立った。
これでもうすぐ2日目に突入。
あとまだ約1日半もあると思うと、世界の広さにびっくりだ。
それも、まだまだロシアってどんだけなの!?
飛んでも飛んでも不毛地帯。
食料たくさん持って来て良かった!
人目につかないのも都合がいい。
多分、俺、びびって話せない。
飛んで飛んで、6時間後にまた地上に降り立った。
日本時間午前6時15分。
相変わらず風景変わらず。
所々変わった感じの集落があっただけ。
でも見つかったら厄介そうだから、不毛地帯に着地。
ここで、政宗様にLINE。
「政宗様、6時間飛んだよ。相変わらず風景変わらず。変わった集落が上空から見えただけ。今は不毛地帯にいるよ」
「Okay, まだロシアだな。多分、次のフライトかその次くらいで大きな湖が見えるはずだ。海みたいにデカい湖だ。その先の黒海って海みたいな入江を過ぎたらが東ヨーロッパの入り口だ。ただし、塩湖だから水は飲むな」
「よく知ってるね、びっくりだよ。分かった、水は飲まないよ」
「そこから先は気を付けろ。森が広がってるはずだ。身を隠すのには適してる。もしかしたら、東ヨーロッパの城が見えるかもな」
「分かった!お城が見えたら激写して送るね!」
「楽しみにしてるぜ!」
15分休憩の後、再び飛び立つ。
何時間か飛ぶと、確かに大きな湖が見えて来て思わず歓声を上げた。
激写したいけど、iPhone落っことしそうで無理。
デカい、デカすぎる。
これ、マジで湖!?
信じられない!
墜落したら困るから、湖の北ルートを通った。
この辺りから、集落の数が増えて来て、しかも割と平地だから目立ちそう。
なるべく高度を上げて飛んで、砂漠地帯で着地。
鳥取砂丘よりデカい!
思わず激写して政宗様に送信。
これで飛行時間、6時間。
日本時間、午後11時半。
そろそろ丸2日だ。
「政宗様!激しくデカい湖を通過!あれ、何!?めっちゃデカかった!」
「カスピ海だ。身体が浮くくらい塩分濃度が高いらしいぜ?そこまで来たら、ヨーロッパまであと一息だ。すげぇ砂漠だな!果てしなくデカいぜ!そろそろ寝るか?」
「いや、5日までなら寝なくて大丈夫だから、このまま飛ぶよ。軽食食べたら出発。次の飛行時間も6時間の予定。イギリスに着くまで誰とも話したくない」
「Okay!次の報告待ってるぜ!」
少し休憩してまた飛び立った。
休憩時間、15分、完璧。
しばらく飛ぶと、海に出た。
墜落が怖いから北ルートに迂回。
この辺りから、所々、少しは発展した集落が見え始めた。
集落と集落の間は深い森で覆われている。
そのまま飛ぶと、今度はタマネギみたいな屋根のデカい建物が見えて来て、人口も多そうだったから、更に北に迂回。
また森林地帯に突入。
そろそろ6時間なので、休憩のために着地した。
日本時間、午前5時45分。
政宗様にLINE。
「政宗様!タマネギみたいな屋根のデカい建物が見えたよ!何か人が多かったから、北に迂回した。今は森林地帯にいる」
「なるほどな。順調そうだな。それは、モスクって礼拝堂だ。お前が通ったのはオスマン・トルコだ。北に迂回したって事は、ハンガリーの辺りだな」
「ハンガリー?ヨーロッパって事?」
「東ヨーロッパだな。イギリスはヨーロッパの西の端だ。あとはヨーロッパ大陸を横断しろ」
「了解!はぁ、やっとヨーロッパか!もう一息?」
「このままのペースだと予定より速いかもな」
「分かった。15分休憩の後、また6時間飛ぶよ」
「Okay!」
軽食を食べながら15分休憩して、また飛び立つ。
しばらく飛んだら、お伽話に出て来るみたいな綺麗な城を見つけた。
高い塔がそびえ立つ、石で出来た、崖の上に立っている城だ。
「紫苑、降りるよ!」
「御意」
城が遠望出来る高台に降り立ち、ズームをして激写。
政宗様に送信。
「政宗様!これお城だよね!?こんなの見た事ないよっ!めっちゃロマンチックなんだけど!」
「ああ、城だな。オーストリアの辺りに入ったか。LINEグループにもこの写真を貼れ」
「了解!」
俺は、愛の大河ドラマ撮影部隊のグループに写真を送信した。
すぐに、遙と美紀から返信あり。
「わぁ、佐助!これ、ドイツだよ!ハプスブルク家の領内に入ったよ!出来れば、ウィーンを通って、どこかの屋根の上から景色を激写して!」
「ちょっと、佐助!連絡不精過ぎ!心配してたよ?ドイツに着いたんだね!良かった!イギリスまであともう一息ガンバっ!」
「ウィーンってどこ?」
すぐに遙からの画像送信あり。
多分今は辺境にいるから、中心街に行けばいいのかな?
「分かんないけど、ウィーン目指してみるね!分からなかったらゴメンね!」
「無理しなくていいよ!とにかく気を付けてね!」
「ありがとう!」
俺と紫苑は現在地の見当をつけるとすぐに飛び立った。
なるべく高度を上げて、大きな街を探した。
やがて、高い塔がいくつもそびえ立つ、大きな街に出た。
江戸と規模が変わらない、もしかしたらもっと大きい街かも知れない。
朝なのか、まだ人がいない。
街の中心部付近に平坦な屋根を見つけて、そこで動画を撮影。
お城も教会も広場も見える、絶景のポジション。
グループに送信。
すぐに遙から返信あり。
「佐助っ!これ、シェーンブルン宮殿だよっ!ウィーンの中心街だよっ!こんなのムービーで見られるとは思わなかった!ありがとう!」
「そうなの?江戸城みたいなもん?」
「そうだよ!」
「coolじゃねぇか、猿飛!よくやった!ここが神聖ローマ帝国の中心街か!すげぇ絶景だぜ!」
「佐助、グッジョブ!こんな景色見られるとは思わなかった!」
みんなに褒められて嬉しくなる。
でも、そろそろ出発しないとヤバい。
「ありがとう!みんな、そろそろ行くね!」
「Okay!」
「よし、紫苑、行くぞ!」
「御意」
遙からの地図を確認して、イギリス目指して人目につく前に俺達は飛び立った。
ここからは少し北に進路を取る。
しばらく飛んで、そろそろ6時間なので森林地帯に着地した。
時計を見ると、日本時間午後0時。
午後1時までにイギリスに着きそうもない。
とりあえず政宗様に報告。
「政宗様、森林地帯に着陸。ここで休憩。今どこにいるかは不明。いくつも城下町みたいなのを過ぎたけど、ほとんど森林地帯だ。それも針葉樹が中心だ」
「それがヨーロッパの大陸の特徴だ。お前はまだ神聖ローマ皇帝領内にいると考えられる。そのまま北西に進んで、海峡を渡ったらイギリスだ。この調子だともうすぐ着きそうだな。日本とイギリスの時差は8時間だ。バッキンガム宮殿到着の目安は日本時間午後9時だ。3時間前にはイギリス入りしていれば十分だろう。つまり日本時間午後6時だ。このままのペースだと時間つぶししなきゃならねぇな。予定より遅れてるが好都合だ。イギリスに着いたら少し休憩しろ」
「了解。じゃあ、ここで長めの休憩取って、日本時間午後7時頃にまた連絡するね」
「Okay!」
俺と紫苑は、少し多めに食事を摂り、1時間ほど寛ぐと、体力も大分回復した。
俺達は、ラストフライトに飛び立った。
何時間も飛び続けると、すごく発展した街が続く景色が見え始めた。
人目につかないように、高度を上げる。
眼下に広がる街並みをまた何時間か見ていると、海が見えた。
「紫苑、海峡の狭い部分を探そう。多分、あの地図からすると、もう少し南だ」
「左様でございますね」
そのまま、海岸線を南に下って行くと、海峡が狭くて向こうに陸がある地形を発見した。
「多分、あれがドーバー海峡だ。海峡を渡ったら、人目につかない所に凧を下ろそう」
「御意」
海峡には軍が配備されていたので、そこから離れた、牧場地帯に凧を下ろした。
ここで政宗様にLINE。
日本時間午後7時。
「政宗様、ドーバー海峡らしき物を渡ったよ。軍が配備されてたから、そこから内陸に入った牧場地帯に凧を下ろした。なんて言うか、草原が広がってる。羊だらけ」
「よし、そこがイギリスだ。ロンドンは、ドーバー海峡のすぐそばだ。猿飛、よくやった!予定通りだな、流石だぜ!隠れられそうな所はあるか?」
「んー、羊の囲いと囲いの間は何にもなくて人もいなさそうだから、座ってても問題なさそう」
「日本とイギリスの時差は8時間だ。日本時間午後9時頃にバッキンガム宮殿の中庭に降りたて。休憩はしたか?」
「いや、まだだけど、休憩しながら打ち合わせ出来るよ」
「よし、じゃあ、これから打ち合わせだ」
政宗様からは次々と写真が送られて来た。
ロンドンの街の地図や風景、バッキンガム宮殿の構造の写真だ。
「なるほどね。位置はよく分かった。多分、実物と同じなら中庭に降りたてる」
「何なら上空から下見して来い。その方が安心だろ?」
「まあね。ゆっくり休めたし、ちょっと下見して来るよ!そのままロンドンでタイミングを計る。またLINEするね」
「Okay!」
俺と紫苑はもう一度首尾を確認すると、空へ飛び立った。
ロンドンまでは本当にそう時間もかからずに着いた。
上空から宮殿を探すとすぐに見つかった。
中庭が複数あったらどうしようかと思ったけど、広い中庭が一つだけだ。
これなら迷わないし、あとはタイミングの問題だ。
「よし、紫苑、街の外に降りよう」
「御意」
時計を見ると、日本時間午後8時。
ここで政宗様にLINE通話。
「政宗様、下見完了。現在、ロンドン郊外にいる。バッキンガム宮殿の中庭は一つだけ。あれなら迷わない」
「Okay!あと1時間後にそこに降りたてるように準備しろ。とにかく、少しずつ高度を下げて、凧に気付かせろ。エリザベスが気付いたら、すぐに俺の文を渡せ。それならお前もそんなに話さなくて済むはずだ」
「はぁ、良かった!俺、緊張で震えそうだもん」
「大丈夫だ。あいつなら、忍者に会えて大喜びしてはしゃぐだろう。とにかく、エリザベスの気を引け。あいつのドレスはデカい円形の襟巻きがついてるから目立つ。すぐに分かるぜ?」
「デカい円形の襟巻きね。それならすぐに分かりそう。何なら気を引くように少し音でも立てるよ」
「よし、その手で行け。あいつに文を渡して読み終わったら、iPhoneを渡してFaceTimeをかけさせろ」
「分かった、FaceTimeね。じゃあ、あと少し時間をつぶしたら、本番行って来るね。政宗様、どうしよう。俺、めっちゃ緊張してきた」
「とりあえず、返事はyes, your majestyだ。それで乗り切れ」
「Yes, your majestyね。分かった。はぁ、緊張する…」
「どうしても無理ならすぐに俺に電話しろ、いいな?」
「頼りにしてるよ、政宗様!本番まであと1時間。何とか堪えるよ」
「よし、行って来い!俺がついてるから大丈夫だ。じゃあな!」
政宗様のLINEを思い返して脳内シュミレーション開始。
とりあえず、中庭上空で旋回して、高度を下げつつ音を立てる。
エリザベス女王が気付いたら、すぐに着地して、膝をついて文を差し出せば多分大丈夫。
後は、yes, your majestyだ。
オッケー!何とかなるかも!
俺は紫苑ともう一度首尾を確認して、50分休憩して、いざ本番へと出陣した。
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