それぞれの恋心 -3-

くノ一達が政宗様の警護を終えると、俺達はそれぞれ温泉に向かった。
ここの温泉は久しぶりだ。
そういえば、くノ一のみんなも気に入ってた温泉だっけ。
板を隔てた向こう側からは、美紀の明るい声が聞こえて来て、くノ一のみんなは何かに驚いて、それからわいわいと盛り上がっている様子だった。

「ねぇねぇ、みんなどうしたの?」

男湯から声をかけると向こう側から返事が聞こえて来た。

「美紀様がお持ちの石鹸と頭を洗うシャンプーという物を使うと、身体も髪もすっきりとして、とても気持ちいいのです!これで美人湯に浸かったら、最高の気分だと、みなで盛り上がっていた所でございます」
「そうなの?」

石鹸なんて、政宗様がわざわざフランスから取り寄せているくらい高級な物だ。
それを持っているなんて、未来の世界はとんでもない世界だ。

「ねぇ、佐助!みんな身体を洗い終わったらそっちに投げるね!佐助もさっぱりすると思うよ!」

美紀の明るい声が聞こえて来て、俺も好奇心いっぱいになった。

「俺ものぼせるから早くね」
「はーい!みんな、急ごうね」
「はい。それにしても、本当にさっぱりして気持ちいいですね!」
「身体を洗ってから美人湯に浸かったら、最高の気分だね!佐助が待ってるから急ごう」
「かしこまりました」

くノ一達は、きゃあきゃあと騒ぎながら、次々に身体を洗っている様子で、とても微笑ましかった。
美紀は、どうやらくノ一達と仲良くなったようで、安心した。

「みんな、身体洗ったから、そっちに投げるよー。佐助、準備はいい?」
「オッケー!」
「行くよ!せーの!」

女風呂からは、ビニールで出来た巾着が投げられて来て、俺はそれをキャッチした。

「受け取ったよー!」
「了解!ボディシャンプーで身体を洗って、シャンプーで頭を洗ってね!それから、髪にトリートメントをして洗い流すんだよー」
「何かよくわかんないけどやってみるねー!」

何やらごわごわと固い手ぬぐいで身体を洗うのだと見当をつけて、ボディシャンプーなるもので、身体を洗うと気持ちよくて、俺は何度かそれで身体を洗うとさっぱりとした。
くノ一達が喜んだのも納得が行く。
次に、シャンプーで髪を洗うと、地肌がすっきりとして、一度流した後、もう一度シャンプーをすると、爽快な気分になった。
そして、トリートメントを髪につけると、驚くほど髪がしっとりとして、洗い流すと花の香りがした。
美紀や遙から、花の香りがしたのは、これを使っていたからだと初めて知った。

「ねぇねぇ!これ、今返した方がいい?」
「後でいいよー。これから、美肌の温泉楽しみだなー。寝る前にも入りたいくらいだよ。お肌すべすべー」
「そうですね!以前よりすべすべして気持ちいいです!」

美紀達は、互いにすべすべな肌を触り合って喜んでいる様子だった。

それは微笑ましいけど…。
どうせなら、美紀と二人きりで入りたかったなー。
寝る前のお風呂は右目の旦那に頼もうかなぁ。

そんな事を考えていたら、流石にのぼせて来た。

「ねぇ、美紀はまだのぼせないの?」
「そろそろ上がるよー。お夕飯、食べられなくなっちゃうもん」
「じゃあ、入口で待ち合わせようよ」
「いいよー」

くノ一達も温泉から上がる気配がして、俺も温泉から上がった。
廊下に出ると、次々に、浴衣を来たみんなが脱衣所から出てくる所だった。

「はぁ…。女子会楽しかった!次は、お食事で女子会だね!」
「はい!」
「佐助の事、もっと知りたいし、みんなの話、楽しみだなー」
「私達の話で良ければ」
「美紀、恋バナは止めてね。俺、まともに恋したのは遙だけだから」
「えー?私は?」
「君の事は大好きだよ?でも、恋かどうか、まだ分からないんだ。君が遙より大切なのは確かなんだけどさ」

そういうと、美紀は機嫌を直してまたヒマワリの笑顔を見せた。

「じゃあ、女子会、レッツゴー!」

部屋に戻ると、間もなくして夕餉が運ばれて来た。
それを美紀はつつきながら、くノ一、一人一人に俺への想いを聞いて回って正直焦った。
それは、俺の裏の仕事の内容だから。
でも、美紀は、笑顔のまま、うんうんと頷いていた。

「へぇー。みんな、佐助の事が大好きだったんだね!」
「大好きというより、大切な主と言った方が正しいと思います。美紀様だけですよ。佐助様のお心をお救いになったのは」
「そうなの?私も佐助の前だと素直になれるんだよなー」
「ですから、お二人はお似合いの夫婦になりますよ、きっと」
「でもなー。佐助と恋したいなー。政宗と遙みたいにさ」
「俺だって君と恋したいよ。でも、まだよく分からないんだ」

そう言うと、くノ一達は、意味深な笑みを浮かべた。

「焔様にお聞きしたらいかがですか?あのお方は、人の心理をよくご存知ですから」
「焔ねぇ…。聞くだけ聞いてみようかな」
「では、私達は退散致します。片付けも、お布団の用意も致しますので、ご安心を」
「ありがとねー。美紀と二人きりで、色々話してみるよ」
「では、失礼致します」

みんなは、手早く片付けると、布団を敷いてくれた。

俺達は、布団に横になって、何とはなしに見つめ合った。
中の上ね…。
今なら、上の下に見えるけどなぁ。
遙が綺麗過ぎるだけなんだよ、きっと。

そっと髪を撫でると、美紀はくすぐったそうに笑った。
そして、その手に自分の手を重ねた。

「私、お館様に感謝してるんだ。佐助にも…。命を懸けてまで、純愛を選んでくれたから。すごく悲しかったけど、愛を選んでくれた。こうして佐助が生きていてくれたから、お館様に感謝。それでも、佐助は、愛が分からない?」
「そうだなぁ…。俺、誰かを命を懸けてまで、愛した事、遙以外にいないんだ。あれが恋だったのかもよく分からないくらいなんだけど…。でも、君の前でやっと泣けて、俺、救われたんだ。君以外には、俺は弱みを見せられる女の子なんていないんだよ」
「私も、佐助の前でだけ泣けた。遙の恋に憧れて、羨ましいなんて言えたの、佐助だけだよ。佐助との関係も、友達の延長だったら、悲しいな…。前の旦那と何も変わらないから」
「でも、俺は浮気なんてしないよ?じゃなきゃ、命なんて懸けられないよ」
「そっか…。そうだよね。あの時、本当に佐助を失いたくなかった。でも、遙と政宗の恋をずっと見て来たから、まだ恋じゃないのかなって思うんだ」
「そうなんだ…。じゃあ、俺も恋を知らないのかもね。ただ…」
「ただ、何?」
「くノ一を抱いたみたいに、快楽だけを与えるんじゃなくて、君を大切にしたくて、ああいう抱き方をしてる。そんなの、初めてなんだ」
「そうなの?」
「うん」

美紀は嬉しそうに、俺に縋り付いて、頬を俺の胸にくっつけた。

「何か、とっても嬉しいよ…。佐助に抱かれると、すごく気持ち良くて、幸せなんだ。愛されるってこういう事なのかなって思うの」
「俺も、君を抱く時、幸せだよ?大切だから、優しくもなれる。これって愛なのかな?」

美紀は困ったように笑った。

「愛もだけど、佐助と恋したいな…。私の我儘だけど」
「恋ってどういうの?お琴を弾く遙を綺麗だなって思ったり、寝顔を見て幸せな気持ちになったり、そういう事?」
「うーん、遙は素材がいいからねぇ。手を繋いで街を歩いたり、抱き締めてもらった時に幸せ気分になったり、そういう事なのかな。絶対に離れたくないって気持ちとかさ。佐助にピアノを弾く所を見せたいなぁ」
「ピアノはここにはないから無理だけど、抱き締めるのは出来るよ。おいで…」

俺は、美紀を抱き寄せて、ギュッと抱き締めた。

あ、何か幸せ気分。

美紀も、俺の背に腕を回してギュッと抱き締めた。

「何か、すごく安心する」
「俺も、幸せ気分だよ?」
「このまま、キスしてたいな…。佐助のキス、すごく気持ちいいんだもん」
「そう?君が望むならいくらでも」

俺は、そっと唇を重ねて啄ばむようなキスから、段々と深いキスに変えて行った。
舌を軽く吸い上げて、唇で柔らかく食むようなキスを続けると、美紀は、甘えるような声を上げ始めた。
その声が可愛くて仕方なくて、キスをしたまま、美紀の浴衣をはだけて行った。
流石、美肌の湯だけあって、肌触りがすべすべして気持ち良くて、俺の浴衣もはだけながら、お互い裸のまま抱き合って、優しく触れるだけの愛撫をすると、美紀はたまらないように唇を離した。

「君の肌、今までになくすべすべだね」
「佐助もだよ?」
「ああ、このまま抱き合っていたかったけど、俺、限界。君と一つになりたい」

美紀の答えを聞く前に、俺は美紀の身体を奥まで貫いて、キツく抱き締めた。

「ああっ、佐助…!!」

美紀は快楽を耐えるように、色白の首を逸らして、キュッと目を閉じた。

「目を閉じないで、俺を見て」

そのまま動かないでいると、美紀は俺を見つめた。
とても愛しい気持ちになって、俺は囁いた。

「君の事が大好きだよ。君の全てに触れたい」

片手で体重を支えると、ゆっくりと美紀の身体を穿ちながら、滑らかな肌に手のひらを滑らせて行くと、美紀はたまらないように、小さな喘ぎ声を上げた。

「佐助、もっと激しくして?」
「今日はダメ。君の肌を堪能したいから、代わりにキスしてあげる」

愛撫を続けながら、深いキスをすると、美紀も俺の背中に手のひらを滑らせた。
それが気持ち良くてたまらなくて、奥まで穿ちながら、この瞬間が永遠に続けばいいと思った。

でも、とろとろと溢れる愛液に包まれるとどうしようもなく腰が疼いて、段々と激しく腰を打ち付けると、美紀はたまらないように絶頂を迎え、俺もすぐに美紀の中で果てた。

互いに荒い呼吸をしながら、またキツく抱き合い、さらさらとした肌にまた手を滑らせた。

「気持ち良かった…。それに、佐助の肌、すべすべで気持ちいい」
「俺も気持ち良かったよ。君の肌こそ、すべすべで気持ちいいよ。今日は、このまま抱き合って眠りたいな…」

美紀との逢瀬はいつもこうして繋がってばかりだ。
恋って何だろう?
温泉に浸かって、抱き締めたりするのも恋なのかな。

「ねぇ、美紀。もう一度、温泉に行かない?ただ君を抱き締めたいんだ。政宗様から許可は得てるし」
「そうだね…。それ、いいかも。何か恋人同士みたいでいいなぁ」
「じゃあ、早速行こうか」

俺達は、浴衣に着替えると、政宗様の温泉に向かった。
右目の旦那からも許可を得て、掛け湯をしてから温泉に浸かって、ただ美紀を抱き締めて、つるつるとした湯の中で、そっと腕を撫でて、キスを繰り返した。

ああ、こういうのを恋人同士って言うのかも知れない。
少しずつ芽生えた、安らぎに満ちた恋心を俺は噛み締めた。
美紀は、嬉しそうに、そして眩しそうに、俺を見つめていた。

その視線が愛しくてたまらなかった。


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