運命の転換期 -1-

あの後、遙の処置の時間以外何曲も立て続けに歌って最高の恍惚感の中、機嫌良く夕餉を終えて、みんなで寛ぎながら美紀との交代まで待って、遙と一緒に部屋に戻ってコーヒーを淹れた。
いつもみたいに狂ったように遙を求めるのではなく、初夜から数日間、飽きる事なく裸で抱き合ってラブラブいちゃつきながらしていた夜伽がしたくてたまらない。

俺の一番好きな夜伽だ。
今の俺の状態なら、そうすぐに煽られる事なく、幸せ気分でいちゃつきながら夜伽が出来る。
こんな気持ちは本当に久しぶりだ。
もしかしたら、7年ぶりかも知れない。
あの夏、焦がれて止まなかった遙の心と身体をやっと手に入れて、信じられない幸福感に包まれて嬉しくてたまらなくて、愛しくて大切に可愛がっていた気持ちが蘇って来る。
いつもの快楽に濡れた遙の表情ではなく、あの頃と同じ幸せそうな顔がまた見たい。
一層美しくなった遙の幸せそうな顔が見たい。

コーヒーを飲みながら、タバコを吸う遙は上機嫌だ。
俺もタバコを吸いながら、遙に話しかけた。

「遙、折り入って頼みがある。今夜の夜伽は美紀との交代まで時間無制限にしてくれねぇか?睡眠時間も十分に与えるし、美紀との交代にも絶対に間に合う」

遙はさっと蒼ざめて、俺を見た。

「本当に間に合う?私、身体持つ自信ないよ?」
「大丈夫だ、遙。7年ぶりに気分がいいんだ。あれだけテンションMAXで歌って最高の恍惚感に包まれたから、今の俺はそうそう簡単に煽られねぇ。俺もお前を煽るような抱き方したくねぇしな。結ばれたての頃、飽きる事なく裸で抱き合っていちゃつきながら大切にお前を可愛がった夜伽がしたくてたまらなくなった。今の俺ならそういう風にお前を抱いてやれる。7年ぶりに新鮮な気持ちでそんな夜伽したくねぇか?だから、たっぷり時間が欲しい」

遙はふわりと蕩けるような笑みを浮かべた。

「あの頃は最高潮に幸せだったなぁ。飽きる事なく政宗の温もりと愛情に包まれて幸せでたまらなかった。別れの事を考える余地もないくらいに愛されたなぁ。あんなに夜伽が嫌いだったのに病みつきになっちゃった。そういう風に抱いてくれるの?」
「ああ、そうだ。今の俺なら出来る」
「だったらいいよ。政宗がそんなにご機嫌になるなら、明日も城全体で歌わなきゃね」
「クッ、そうだな。毎日恒例のライブタイムにしてもいいぜ?俺もお前といちゃつきたいからな。お前が嬉しそうにいちゃつきながら俺のキスをねだって、幸せそうに俺に抱かれるのが本当は一番好きだからな。お前に深い快楽を刻みたくて焦って色々な抱き方をしちまったけど、本当は飽きる事なく抱き合うのが一番好きだ。お前の愛情を全身で感じられる。初夜の日のお前を思い出す。あの日俺は人生で一番幸せだったからな。愛しい女を抱く悦びを初めて知った日だ。俺にそれが出来る状態になるまでお前には悪いが好き勝手抱かせてもらう事にしてたが、久しぶりに気分がいいんだ。7年ぶりに時間を忘れていちゃつこうぜ」
「わぁ、幸せでたまらない夜伽だ。政宗といつまでも幸せラブラブしたいな」
「じゃあ、ゆっくりコーヒーを飲み終わったら始めるか」
「うん」

遙は本当に嬉しそうに微笑んでゆっくりとコーヒーを飲み始めた。
俺にとって一番好きな夜伽が遙にとっても一番好きな夜伽なのがとても嬉しい。
そんな遙が可愛くて、頭をくしゃくしゃと撫でて、俺もゆっくりとタバコを吸いながらコーヒーを飲み終えた。
いつも渋々夜着に着替える遙が、コーヒーを飲み終えるとさっさと着替えた。
そんな遙を微笑ましく思いながら、俺も夜着に着替えて手を繋いで寝所へ入った。

夜着を脱いで遙と抱き合うとじゃれるようにキスを交わして見つめあった。

「はぁ、すごく幸せ。政宗の腕の中なら最高に幸せな私の夢語りが出来そう」

うっとりと微笑んで夢を見るような表情の遙が可愛くて、しばらく情欲をかき立てないような蕩けるキスを繰り返して、また見つめ合った。

「ふふっ、政宗のキスは最高に気持ちいいね」
「お前とだからこういうキスが出来る。お前の可愛い夢物語に興味がでてきた。今度はどんなロマンチックで可愛い夢物語を聞かせてくれるんだ?」

じっと遙を見つめると、遙はふふっと笑って俺にじゃれついた。

「私の壮大な夢は、政宗とエリザベス女王の、ロミオとジュリエットの固い絆に結ばれた、日英シェイクスピアの絆条約。この条約は永遠の友情の絆で結ばれた永遠の平和条約だよ?」

思わず俺は遙の首筋に顔を埋めて爆笑してしまった。
発想が可愛らしくて仕方ない。
もっとどんな面白い夢が聞けるのか楽しみになってきた。

「遙、お前、最高に傑作だな!日英シェイクスピアの絆条約か!笑いが止まらねぇ!」
「ふふっ、面白いでしょ?それでね、政宗とエリザベス女王の固い絆で二人で絶対に戦争が起こらないように世界を掌握するの」
「面白いな。だが、あいつはヴァージンクイーンだ。あいつの代の後、イギリスは乱れる。テューダー朝が終われば条約の有効性を保てる可能性は低くなる。その時お前はどんな策を取るつもりだ?」
「ふふっ、政宗が乗って来てくれて嬉しいな。だからね、エリザベス女王に、フランスのルイ14世の一卵性双生児の弟の存在を知らせる。ルイ14世の弟は塔に幽閉されている。それを知ったエリザベス女王は自分と同じ境遇の王子の救出を決意するの。何か知らないけど、もうユグノー戦争も終わってて、ルイ14世の時代になってるのをこの間政宗の政務を手伝った時に発見したの。映画でルイ14世の一卵性の双子の存在を知ったよ」
「ドラマチックになって来たじゃねぇか。あいつならやりかねねぇ。一途なロマンチストだからな」
「エリザベス女王は全軍率いて王子を救出しに行くの。世界最強のスーパーヒロインだよ?」
「マジでやりそうだぜ。男の俺でも惚れそうなあいつの勇姿が目に浮かぶぜ」
「エリザベス女王は、即位して間もないまだ力のないルイ14世を銃で脅しながら、囚われの王子を連れて来させるの。囚われの王子はエリザベス女王の雄姿に一目惚れして恋に落ちるの。王子の熱烈な求婚でエリザベス女王は折れてヴァージンクイーンの名を捨てる事を決意して結ばれる。テューダー朝の存続とブルボン家の血が交わるね?」
「やるな、遙、面白いじゃねぇか!恋愛による政略結婚か。よし、この調子でハプスブルク家を丸めむか。ハプスブルク家はブルボン家の宿敵だ。マリー・アントワネットより一足先に政略結婚させるか。フランス革命が防げるな」
「ふふっ、政宗流石だね。私も乗って来た。そうだな。エリザベス女王は王子がなかなかベッドから離してくれなくて子沢山。可愛い王子と姫の縁談先に悩んで、各国の王族と懇親会を開いて我が子を預けられる王族の吟味をするのはどうかな?」
「それ面白いじゃねぇか!やるな!お前が考えている可愛い懇親会について聞かせてくれ」

じゃれつくように抱き合って、また深いキスを戯れに繰り返して見つめ合って二人でくすくす笑った。

「政宗、イギリスには競馬の文化があるね?」
「ああ、そうだ」
「エリザベス女王は世界最高に楽しい懇親会を思い付くのはどうかな?イギリスの名をかけて」
「楽しそうだな。どんな懇親会か気になって仕方ねぇ。競馬だろ?イギリスで競馬観戦じゃ面白くねぇな。ヨーロッパ全土を巻き込む勢いのレベルの壮大な競馬が必要だ」
「政宗、流石だね!だからね、エリザベス女王はヨーロッパ各国の市街地をサラブレッドに走らせるF1グランプリを開催するの!」

俺はまた大爆笑をした。
まさかF1が出てくるとは思わず、笑いが止まらねぇ!
しかもサラブレッドのF1なんて聞いた事もねぇ!

「お前、傑作過ぎるぜ!笑いが止まらねぇ!」
「モナコグランプリには政宗と私も見に行って、ヘアピンカーブをサラブレッドが駆け抜けるのを眺めるのはどうかな?」

俺は笑いに追い打ちをかけられて言葉が出なくなった。
遙も爆笑している。

「アイルトン・セナとプロストの永遠のライバル同士のような手に汗握るトップ争いのようなレース展開で、全く勝者が読めない緊張感に満ちた賭けはどうかな?マクラーレンとフェラーリの永遠のトップ争いだよ?」

俺は笑いが止まらなさ過ぎて、無理矢理遙の唇を塞いだが、キスをしながらも笑って上手くキスが出来ない。
笑いが収まるまでキスし続けた。

「お前、俺をあんま笑わせんな!過去最高に傑作だ!」
「でも面白くない?政宗がエリザベス女王に吹き込んだらきっと乗るよ?」
「まあ、確かにそうだな。俺とあいつなら悪ノリしてやりそうだ」
「じゃあ、政宗、全力でエリザベス女王に吹き込んでF1開催させて?絶対に惚れ直すから」
「確かに面白そうだな。俺とあいつが世界を掌握したら、悪ノリしてやっても面白そうだな。悪ノリした俺が晩餐会で意図的に、ハプスブルク家の幼い姫とエリザベスの嫡男を遊ばせて、幼いながら恋に落ちさせて、遠距離恋愛をする仲に持って行ってやろうか」
「政宗、流石!将来的にテューダー朝にハプスブルク家の血が交わるね!筒井筒の仲だね!じゃあ、どうやって世界掌握の軍事力を増大させるか考えようか」

ふふっと笑って遙は俺にキスをした。
俺は真剣な目で遙を見つめた。
遙はくすくす笑いながら試すように俺を見つめている。
その目を見つめながら、遙の策を読む。
こいつは戦を嫌う。
日本もイギリスも島国だから、世界掌握の軍事力を得るには大陸を押さえる必要がある。
植民地を作る訳にも行かない。
もっと友好な策を望んでいるはずだ。
世界史で起きたアメリカとオーストラリアの原住民の悲劇を思い返す。
原住民にも得になり、尚且つ伊達とテューダー朝の力を増大させる策を考える。
北アメリカとオーストラリアはまだ未開の地だ。
という事は最善の一手はこれしかねぇ。

「遙、お前が考えているのは、北アメリカ大陸とオーストラリアへのフロンティアの派遣だな?」
「流石、政宗!大正解!!」

遙はじゃれ付くように俺に抱きついて、俺も遙を抱き締めて、しばらくキスに没頭して、唇を離すとまた見つめ合った。

「すげぇ、現実味のある作戦だな。何としてでもエリザベスにはテューダー朝を存続させて、二人で大陸を押さえる必要があるな。あいつの力がないと俺一人じゃ無理だ」
「だから、何としてでもルイ14世の弟救出作戦に誘導しなきゃ」
「そうだな」
「フロンティアには黒人奴隷を使う訳には行かない。日本とイギリスで人口を爆発させる必要があるから農業革命を起こす」
「なるほどな。イギリスでは今第一次エンクロージャーが起きてるがすぐにでも第二次エンクロージャーに移行して、冬場の食糧難を回避すれば人口が増えるか」
「流石、政宗、最高に頭がいいね!伊達とテューダー朝が友好的にアメリカを抑え続ける限り、独立戦争も起きないし、第二次世界大戦も起きない。例えアインシュタインが相対性理論を思いついても核兵器の時代は永遠に訪れない」
「はぁ、お前、恐ろしいほど頭いいな。絶対に北アメリカは押さえなきゃならねぇな。核兵器の時代は断固阻止だ。これはマジでエリザベスと話し合う必要があるぜ」

俺はしばらく考え込んだ。
この後起きるカルヴァン派の暴走をどう押さえるか。
イギリス全土が戦乱に揺れる。
日本は俺が押さえる限り安全だが、妄信的な信仰者の暴走は世界を巻き込む戦争に走らせる。
例えエリザベスの力を持っても厳しいレベルかも知れない。
厳しい戦況に眉間に皺を寄せて考える。

「遙、カルヴァン派を抑えるお前の策は何だ?」
「カトリックとプロテスタントの和解。イギリス国教会を率いるエリザベス女王を筆頭に全ての宗派のキリスト教のリーダーとローマ法皇との会合を伊達とテューダー朝が共同で仲介して全ての宗派に共通な共同訳聖書を作る。全てのリーダーが納得すれば、キリスト教信者同士の争いは永遠に起きない。エリザベス女王と政宗が全てリードする」

俺は深い溜息を吐いた。
本当に遙の読みが鮮やか過ぎて戦慄すらする。
核兵器の時代の阻止が全て俺の手にかかっていると思うと震えそうになる。

「政宗、ここで見返りにローマ法皇の監督の下、キリスト教の友愛精神を利用して、全てのキリスト教信者の力を借りて、北アメリカとオーストラリアを開拓していけば、友好的かつ素早く二大陸全土が開拓されていくよ。フロンティアスピリッツだね。開拓者の安全はテューダー朝と伊達が確約。見返りにテューダー朝と伊達の屯田兵になる事を約束させて支配下に置く。ここで大陸での兵力が確保出来る。日本イギリスだけじゃ例え農業革命を起こしても開拓者の人数が補えない。ただし、人間は欲深いからゴールドラッシュに走らせないように、カリフォルニアの金鉱の存在は隠し通しながら素早く掘り尽くして撤退。伊達とテューダー朝で分け合って独占。これで伊達とテューダー朝の力がますます増大する。その一方でヨーロッパ人は白人第一主義だから、インディアンやアボリジニを差別するはず。エリザベス女王と政宗の友情の力で世界には多くの人種が存在するけど、全ての人種に等しい人権があり、絶対的に侵してはいけない領域だと叩き込む。この時、日英アメリカオーストラリア共通の憲法を作ってもいい。基本的人権を絶対的に守らせる。これで、伊達とテューダー朝の世界掌握の軍事力が最も人道的で素早く確保出来る」

俺はまた深い溜息を吐いて、目を瞑って遙をキツく抱き締めた。
平和主義を徹底しながら、素早く展開されていく作戦が恐ろしいほどだ。
ほとんど俺とエリザベスが手を下さないで済む作戦に練られている所がまた恐ろしい。

「遙、独立戦争を絶対的に防ぐにはどうしたらいい」
「国民が、テューダー朝と伊達の傘下にいる限り、安心して豊かに暮らせると実感させるような治世を代々続けて行けばいい。折を見て災害が起きた時などは慰問に王自ら訪れ人々の心を掴む。王自らエンターテイメントを開催して人望を集めるのもいいと思うよ。エリザベス女王と政宗の第二子第三子をアメリカオーストラリアへ分家として王にする。全ての支配権はエリザベス女王と政宗の嫡男から直系の世継ぎが代々伝承する事にして、日英で完全にコントロール出来るようにする。国民生活が豊かな限り人々の反感は買わない。富国強兵を徹底し国民生活が豊かになる事を最優先事項とする。科学や文学や音楽など、文化面でも充実させ、精神的にも満足させる。科学技術の急速な発展を促進し、化学合成による様々な恩恵を得られるようにする。化学合成はカリフォルニアの油田の石油を使えばアメリカ本土で出来る。合成した物質を日英オーストラリアにも輸送して分け合えば、わざわざ中東の油田を押さえなくても十分。カリフォルニアの油田はなかなか枯渇しない。電力の時代に備え、風力発電、太陽光エネルギーなどクリーンなエネルギーから着手し、水力発電は用水路を利用した小規模な物に留める。ダムは建設しない。火力発電は行わず、石油は輸送のためのガソリンなどの用途のために取っておく。他国が原子力の軍事用途の実験を行わないか末代まで厳しく監視し、兵を派遣してでも阻止する。民主主義の気運が世界的に高まった時点で、日英アメリカオーストラリア四国全てで議会を設置、王は君臨すれども統治せずのスタンスに切り替える。これでテューダー朝と伊達の天下はお終いだけど、ロイヤルファミリーが残せる。世界の気運に合わせて緩やかに支配制度をアレンジして合わせて行けば、人々の反感は買わない。多分、これで独立戦争は起きないと思うよ」
「はぁ、お前、神レベルに頭いいな。はぁ…」

俺は遙を抱き締めて、首筋に顔を埋めて戦慄して荒い息を吐いていた。
恐ろしいほど壮大な計画だ。
俺の世継ぎ達がエリザベスの世継ぎ達と共に代々世界を制覇していく。
こんな運命が待っているなんて予想もしてなかった。

「ふふっ!これが私の日英シェイクスピアの絆条約の計画の一部かな?」

遙はじゃれ付くように俺に抱きついて、顔を上げさせた。
楽しくてたまらない表情で、俺にじゃれ付くようにキスをする。

「政宗、ここからが私の真骨頂だよ?」

遙を見下ろすと、何か楽しい事を色々考えている時の表情で、何を考えているのか気になってじっと遙の顔を見つめた。
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