運命の転換期 -4-

こいつは切実に世界平和とエンターテイメントを心の底から望んでいる。
俺はとても好感を持って、力になりたくなった。
じっと考えを巡らせる。
多分、キーワードは俺を最強に笑わせたF1だ。
俺の時代に存在するもので、あそこまで笑わせられる策なんて存在しない。
中東でもF1を流行らせて王族と仲良くなって、カピチュレーションを利用して、色々ねだってみるのが得策そうだ。

「とりあえずヨーロッパでのF1を考えていたが、中東や清でもF1をした方が良さそうだな。中東ではアレンジをして砂漠でラクダのF1に切り替えるか。イランの辺りまで砂漠のはずだからな。馬じゃ走れねぇし。それならオスマン・トルコもサファヴィー朝も懐柔出来る。サファヴィー朝にはカピチュレーションがねぇから別の策が必要だ。ただし、イギリスと友好的な関係だから、取っかかりはあるか。清は騎馬民族だからサラブレッドのF1でいいな。十分に遊んだらカピチュレーションと朝貢貿易を逆手に取ってねだりまくって、考え得る限りの地下資源を奪って伊達とテューダー朝の永久的な独占権を確約させる。オスマン・トルコからギリシャを奪うのもその時だな。俺の時代から力を徹底的に削ぐ。どうせなら俺がファッションリーダーになって、辮髪もやめさせるか。飴と鞭政策の予防だ。まだ清は万里の長城の北にいるからそこに乗り込むか。乾隆帝が生まれないようにカタを付ければ明は衰弱していくし、清は力を伸ばせない。そうしたら、明も俺とエリザベスで掌握出来るな。今の明の情勢を読まなきゃならねぇな。とりあえず明の主要都市でF1やりまくって様子見る所から始めるか」
「はぁ、流石は伊達政宗だ。少し道が拓けて来て安心した。伊達政宗がピアスを着けてただけで江戸城下でピアスが流行ったくらいだから、伊達政宗が本気を出してまだ誕生しない清に色々なファッションを吹き込んだら、辮髪を止める可能性が高いね。これで経済戦争は起こせなくなるし、伊達政宗とエリザベス女王の領土も広がるね」
「政宗、流石だね!私もいい事を思いついたよ。この人が夢の中で人々を誘導してバイナリーレベルで記憶や能力を書き換えられるなら、全世界のイスラム教徒が覚えているコーラン自体を書き換えればいいんだよ。そうだな、手始めに預言者ムハンマドと預言者イエス・キリストを永遠の親友に書き変えれば、永遠にキリスト教徒とイスラム教徒はいがみ合わないと思わない?」
「お前、流石だな!それは斬新だ。アリーの暗殺の事実はどう書き換えるつもりだ?あれがシーア派の始まりだ」
「私も明確には思いつかないんだけど、暗殺じゃなくて愛ゆえに自ら毒を煽った感じに持って行けば不自然な死に方じゃなくなりそうだし、シーア派の人達の憎しみも消えそうな気がする。ロミオとジュリエットみたいに。夢の中でムハンマドが真実を告知する啓示にしたら、人々は夢の中にムハンマドが現れたって熱狂して頑なに信じそうな気がする」

俺は本当に驚いて言葉を失った。
男も驚いたように遙を見つめている。

「確かに僕の手で一斉に上書きするのは可能だ。データを作っておいて一斉に上書き保存すればいいだけだから。まさかコーランを書き換えるとはね。ムハンマドの啓示もプログラミング出来るよ。でも、どうやってコーランもムハンマドの啓示も作るつもり?あれは本当によく出来ているからこそ人々があれだけ熱狂するんだ。コーランを超えるものなんてなかなか作れないよ?君とエリザベス女王と伊達政宗に出来る?」
「はぁ、俺でも流石に無理だ。和歌も漢詩も手習いも得意だが、流石に全世界の人々を虜にするコーランなんて書けねぇ。仮に目覚めてからアラビア語のコーランを読んで試してもいいが時間の無駄のような気がする」
「うん、だからね、政宗。この人にシェイクスピアに全世界の言葉を話せるようにしてもらって、エリザベス女王と政宗と私で案を出しながらシェイクスピアに話せばきっと史上最強にロマンチックなコーランを書いてもらえるよ?シェイクスピアにお願いすれば啓示も最高にドラマチックなセリフを考えてくれるよ?世界最強の作者だもん」
「お前、マジですげぇな!あのシェイクスピアを使うつもりか。驚いたぜ。お前の世界と違ってシェイクスピアはまだ若い。俺と同い年だ。エリザベスも俺と同い年だ。この調子で色々文学の再生を図るか。風と共に去りぬとかな。南北戦争がなくなって失われているはずだからな」
「流石だ、如月遙。本当に驚いた。シェイクスピアの言語能力を操作するのは楽勝だ。まさかシェイクスピアにコーランを書かせるとはね。伊達政宗も流石だ。シェイクスピア作の風と共に去りぬなんて想像もしていなかったよ。やっぱり君達の絆は最強だ。作戦開始と共にシェイクスピアに世界中の言語能力を与える」

男は安心して脱力したように溜息を吐いた。
そしてまた目をぎゅっと瞑る。

「ユダヤ教徒に対する措置はどうするつもりなのか二人の意見を聞いてもいいかい?」

俺もしばらく考えてハッと思いついた。

「オーストラリアにユダヤ教徒の自治州を作って領土を確保する。アメリカ大陸よりオーストラリアの方が嘆きの壁に近いからだ。ただし屯田兵の義務からは解放せず完全にコントロールする。賛美歌もついでに与えるか。古代ローマ以降キリスト教があれだけ流行ったのはラテン語の美しい賛美歌のお陰だ。賛美歌はメタリカのCreeping Deathだ。あれはモーセの十戒をお膳立てする出エジプト記が舞台だからな。ファラオに対する怒りのDieコールをさせたら盛り上がるし、毎週の一大イベントになるからストレスもたまらない。月一回成実か長曾我部の監督の下、順番に嘆きの壁に巡礼させてやればわざわざ嘆きの壁の所に領土を作ってやらなくても満足するはずだ。まだシェイクスピアはヴェニスの商人を書いていないから阻止させて、ユダヤ人差別は煽らせない。早急にオスマン・トルコを懐柔してカピチュレーションでユダヤ教徒の巡礼を確約させる。あのオッペンハイマー家の財力を支配下に入れられるのは魅力的だな。殆どの財閥がユダヤ系だったはずだから、伊達とテューダー朝の基盤がますます盤石になる。巡礼の礼として金を差し出させる。石油王と楽勝で戦えるし、そもそも俺は油田を根こそぎ手に入れる」
「はぁ…。政宗、流石だね!最高の一手だ。そこまでは思いつかなかった。まさかCreeping Deathを賛美歌にするなんて思わなかった。江戸のホールから生中継でオーストラリアに映像を飛ばしたら、時差はないし、私達は江戸から動かなくて済むね。私達も盛り上がるためにオーストラリアの様子を観客席側にスクリーンを設置してみんなが盛り上がる様子を見ながら演奏すれば良いか」
「お前も流石だな。この難局を乗り越える一手はこれだと思うんだが、お前はどう思う?」
「伊達政宗には本当に驚かされたよ。Creeping Deathの意味を本当に理解してるし、宗教の原理も理解してるんだね。君達は毎週歌わなくていい。ライブの録画映像を巨大スクリーンで流して広場に集めればそれで十分だ。君達は世界をかき回す任務があるから」

男はようやく少し安心したように吐息を吐いた。
俺はまた音楽をどう復活させて行くか戦略を練り始めた。
アフリカ大陸は部族達の小競り合いが永遠に続くはずだ。
小競り合いを続ける限り、文明は発達しない。
それにブラックミュージックの流れを作るためには、黒人達のセンスとノリが欠かせない。
しかし、ポルトガルとスペインによる黒人奴隷の輸出はすでに始まってしまっているから、白人の黒人への差別感情は既に根深い。
仮に開拓したアメリカとオーストラリアに誘致して融和を図ろうとしても、なかなか難しいかも知れない。
でも、絶対に実現しないとならない。
黒人達にキリスト教を浸透させないと、ゴスペルは生まれないからロックンロールへのストリームが作れない。
白人に黒人達を大陸に連れて行かせたら警戒して戦になる。
例え相手がフロンティアでも。
フロンティア達を危険に晒す。
ここは日本人がやるべきだ。

「お前、前田と上杉謙信にも出来るだけ多くのイージス艦を与えてくれ。何ならついでに多くのタイタニック号もだ。夢の客船だ。イージス艦に護衛させればいいからな。iPhoneも渡せ。日本海は北から伊達が牽制出来るから留守にさせても大丈夫だ。俺の親族達に留守を任せる。前田夫婦と上杉謙信とかすがにも外国語の習得をプログラミングしてくれ。前田と上杉謙信の護衛の下、牧師達と聖歌隊をアフリカ分割を行ったフランスとイギリスのルートでキリスト教を一気に布教していく。その時アメリカとオーストラリアではもっと進んでいて、本格的に便利で安全で幸せな生活が送れると刷り込んで、大陸の沿岸部に誘導して、アメリカとオーストラリアに移住させる。これで、ブラックミュージックのお膳立てが出来て、黒人達には教会でゴスペルが歌わせられるようになる。しかし、根強いお互いの差別感情の解消が問題だ。これを乗り切るのは難しい」
「はぁ、流石は伊達政宗だ。最も義に熱い上杉謙信と前田夫婦を使うとはね。もちろんすぐに手配出来る。その策には賛成だし恐れ入ったよ」

遙もまた何か考えているようだ。

「そうだな。政宗がCreeping Deathを使ったから、差別感情解消のために、白人黒人問わず熱狂させたビッグアーティストの音楽を連発して、大陸を熱狂の渦に巻きこもうか。とりあえず、スティービーワンダー、マドンナ、シンディーローパー、マライア・キャリー、極め付けのジャネットジャクソンとマイケルジャクソンだ。大規模なライブを連発する」
「お前、やるな!そうか!お前が考えているのは、マイケルジャクソンのBlack or whiteと、オールスターのWe are the worldだな!マライア・キャリーは白人と黒人のハーフだしな。はぁ、お前はマジで天才だ」
「すぐに分かる政宗もすごいよ」
「それにしてもマイケルジャクソンのダンスなんて誰にも出来ねぇぞ?マドンナとジャネットジャクソンもだ。どうやってクリアするつもりだ」
「お館様の説得で伊賀と甲賀の忍が手に入るでしょう?忍ならあのダンスが出来る運動神経もあるし、踊りながら息もきっと上がらないよ?バックダンサーも用意出来る。くノ一達だったら、マドンナより妖艶にダンス出来るよ?歌唱力と言語能力だけいじってもらえばいい」
「お前は本当にガチの天才だな。それ以外の一手は思いつかねぇ。ライブで夢中になれば人種の壁が越えられる。統一なキリスト教精神で繋がってるなら尚更だ」
「そこに更に政宗と小十郎のエルヴィスで追い打ちをかける。あれは元は全部ブラックミュージックだし、エルヴィスは白人で初めてブラックミュージックを歌った人だから。黒人も白人も熱狂する。政宗と小十郎のエルヴィスはエルヴィス本人よりセクシーだからね。天下人とその右腕の歌だから、人々は余計に感動して政宗に絶対的に忠誠を誓うと思うよ」
「そこまで考えての上でのエルヴィスか。お前の頭の回転は本当に恐ろしいな。分かった。ライブの頻度を後で考える。遊びながらだから、あんまりしょっちゅうはライブ出来ねぇしな。はぁ…」

俺が深い溜息を吐くと、スクリーンの男も大きな溜息を吐いた。

「本当に君達は天才だ。これにエリザベス女王も加わって打ち合わせしたら、本当に全ての危機が回避されて、もっと科学が進みそうだ。僕の夢語りはまだ時期尚早だし、ちょっと長くなるからエリザベス女王が合流してから改めて話すようにするよ。今回は君達に考えさせ過ぎたし、僕も取らなきゃいけない策が沢山なのが分かったから、過去に遡って、伊達政宗と如月遙が提案したプログラムを全ての人に施して来るよ。あと一つだけ忠告しておくよ。上洛で帝の前に行く時はiPhoneを持たない方がいい。君達にとって少し衝撃的な出来事が起きるが、その結果未来はダイナミックに開けて伊達の天下が揺るぎないものになる。だから何が起こっても僕を責めないで。如月遙はこれ以上傷付けられない事だけは約束する。言ったら未来が変わるから言えない」
「遙がこれ以上傷付けられないなら、俺は黙って受け入れる。伊達の天下が揺るぎないものになるなら尚更だ。未来を知ってそれが手に入らなくなるというなら俺は敢えて聞かない。それでいいか?」
「伊達政宗の永遠の愛を僕は頼りにしてるよ。その揺るぎない権力も。じゃあ、目覚めの時間だ。起きても1時間は誰からも連絡行かないように手配するよ。また会える日を楽しみにしている」

その瞬間ぱっちりと目が覚めた。
遙と横向きに抱き合っていて、遙も夢から覚めたようにぱっちりと目を開けていた。
二人とも驚きのあまり固まっていたが、やがて深い溜息を吐いてキツく抱き合った。
男が言っていた通りに全ての能力と知識が与えられていて本当に驚いた。
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