伊達三傑 -1-

俺は大名達とFaceTimeを終えて時計を見た。
もうそろそろ12時だ。

「美紀、せっかくなら、昼餉食って行けよ。猿飛がいねぇから、寂しいだろ?」
「やった!政宗、ありがとう!佐助、何だかんだでイギリス楽しんでるよ。騎士のお友達が出来たとか言って大喜びしてたな。変わった忍者だよね」
「そうか。お前ぇらがやり取りしてて、俺も安心したぜ。おい、昼餉を持て!」
「かしこまりました」

美紀は感心したように笑った。

「政宗って一声で何でも命令出来るんだね。すごいなぁ」
「美紀、私も最初は驚いたよ?政宗といると超楽チンでびっくりした」
「お前にはくだらねぇことはさせねぇからな。それより、江戸湾に行くのに馬に乗るだろ?美紀、お前、馬に一人で乗れるか?1日しか稽古してねぇだろ?」
「うん。何とか乗れるけど、自信ないな」
「よし、お前は成実に馬に乗せてもらえ。成実なら嫌じゃねぇだろ?」
「うん、あのノリ私は嫌いじゃない」
「分かった。どの着物にするか悩むな。女物の乗馬の衣装なんて流石に用意してなかったからな。ジーンズじゃ目立つしな。最終手段はジーンズでもいいけど…」
「政宗、大丈夫だよ!成人式の時の格好なら、振袖に袴だから、馬に乗れるよ?政宗のお披露目だから、それなりの格好した方がいいでしょう?華やかだよ?」
「振袖に袴か。どんな袴だ?」
「こういうの」

遙は、写真アプリで、遙の成人式の写真を見せてくれた。
すごく若くて、出会った時の遙そのもので、超可憐な美女だ。
袴も男物と全然違って、これなら女らしい。
和装ながらとても斬新な格好だ。
これなら江戸の町にぴったりだ。

「お前、やっぱ超可愛いな!見惚れちまう。この格好をしてくれるのか?」
「うん。懐かしいな。妹も着れるからって親が張り切って選んで買ってたよ」
「そうか。いい趣味じゃねぇか。品のいいデザインだ。袖は花が散りばめられて豪華なのに、上半身は単色で片側だけ肩から花を散らしている。お前は上品な顔立ちをしてるから、ごちゃごちゃしてねぇ方がいいからな。華やかな西陣織も着こなせそうだが、これもいい。是非これを着ろ」
「うん、バッグから出すね。美紀は?」
「じゃあ、私も成人式のにするよ。卒業式はハリーポッターローブみたいなの着たもんね!袴は成人式の時だけだから、懐かしいな!」
「ハリーポッターか。魔法使いか。笑えるぜっ!美紀はどんな着物だ?」
「ちょっと待ってね。私のは遙のと正反対だ。兄貴ときゃっきゃとはしゃいで選んだ」
「クッ、派手って事か。それにしてもお前、兄上がいたんだな。お前、寂しいだろ?」
「まあね。兄貴の事は大好きだったからね。兄貴は裁判官なんだ。転勤ばかりだから、兄貴が裁判官になってからずっと離れて暮らしてたな。離婚の時も、兄貴が唯一の理解者で戦略を弁護士に教えてくれたけど、長引いたなぁ。兄貴も忙しくてあんまり話せなかったし。だから、寂しさが余計募ったんだね、きっと。あ!あったよ、私の成人式の写真」

俺は美紀のiPhoneを覗き込んだ。
華やかな花が散りばめられている、淡い色の振袖だ。
思ってたより全然趣味がいい。
西陣織の帯にこういうのがある。
華やかながら、美紀の派手な化粧と髪型によく似合っている。

「お前、これ、着物自体は派手だが、趣味はいいぜ?俺は悪くねぇと思う。むしろ、お前の派手な化粧と髪型によく似合っている。いいんじゃねぇか?これなら俺も連れ回しても恥ずかしくねぇな。むしろ、遙と対照的な所がまたいいぜ。是非これを着ろ」
「わぁ!政宗にそんなに褒められるとは思わなかった。兄貴が選んだから間違いないね」
「お前の兄上の趣味か」
「うん」
「政宗様、昼餉をお持ち致しました」
「Okay、入れ」
「はっ!」

くノ一達が配膳して、下がって行った。

「今日はブリの塩焼きだ!日替わりで色んなお魚食べれて嬉しいな。もう、寒ブリの季節だね。あっという間だ」
「ああ、そうだな、遙。あまり代わり映えしなくて悪ぃな。お前は物珍しい料理をたくさん作ってくれたからな。今日からは引きこもり部屋だから、俺が料理してやる。何かリクエストがあれば、作ってやるぜ?」
「本当!?じゃあ、12ミリのパスタで、アラビアータを作って欲しいな!」
「アラビアータか。トマトは缶詰で何とかなるな。夏野菜が手に入らねぇな。ナスは無理だ。ほうれん草に変更でいいか?あれなら冬野菜だからな。多分、味はまとまるはずだ。タマネギも問題ねぇな。それから、お前が作ってくれた、鶏のワイン煮込みも作ってやるぜ。にんにくと鶏がとろとろになって全然匂わないやつな。ピーマンは冬だし無理だ。それに品種が違う。唐辛子料理は作れるな。にんにく料理もだ。そっちは、圧力鍋をかけ終わったら、仕上げに小松菜とカブを入れるか。カブは葉っぱごとだな。小松菜とカブなら味の邪魔にならねぇからな。むしろカブの甘みがいい感じだ」
「わぁ、政宗、流石だね!ほうれん草と小松菜とカブで十分だよ!美味しそう!政宗の手料理久しぶりで嬉しい!」
「お前がそんなに喜ぶなら、江戸にいる時は毎日作ってやる。分かった。朝餉の材料もついでに言付ける。何が食いたい?」
「朝は政宗にもゆっくりして欲しいから、作らなくていいよ?」
「そうか?俺もお前とゴロゴロしてぇからな」
「いいな、遙。政宗の手料理かぁ。私も久しぶりにパスタ食べたいなぁ」
「そうだな、美紀も毎日和食だと飽きるよな。ヨーロッパに出かけるから黒毛和牛を屠殺する訳にもいかねぇしな。お前も呼んでやる。その代わり、遙のライブのセットリストを手伝え」
「マジで!?カラオケで、遙が片っ端からメタル歌ってたし、私も家で聞いてたから、だいたい分かるよ!それなら、手伝う!パスタ超嬉しい!」
「そんなに喜ばれると作り甲斐があるぜ。火にかけてる間、暇だから、長芋の千切りでもして、鰹節と青さと醤油で食べる感じにするか。これで、3品だな。完璧だ。長芋ならイタリアンとフレンチの味を邪魔しねぇからな」
「はぁ、政宗って本当にすごいね!楽しみだなぁ!美紀と食べれるから、尚更楽しみ!」
「そうか、なら良かったぜ」
「政宗、サンキュ!」
「No, problem。おい、今言った材料を小十郎に言付けて多めに収穫させたら、お前が責任を持って寝所の隣の部屋に置いておけ。鶏も2羽〆させてもも肉と胸肉を全部持って来させろ。成実にはもう少し待てと言っておけ。綱元に見張らせろ」
「かしこまりました」

俺達はあくまで食べながら会話をしていた。
引きこもり部屋も楽しみだし、倉も楽しみだ。
軍備を見るのも、遙の振袖姿を見るのも楽しみだ。
今日もいい一日だ。

「ねぇ、政宗。私、綱元、初めて。どんな人?」
「そうだな。基本的に伊達軍のノリだから、綱元もヤクザ系か。小十郎と同じだな。俺と成実はヤンキー系だけど。綱元は俺より18歳年上だ。俺の側近では一番年上だな。小十郎が軍師で綱元が治世の指揮を執る感じだな。だから、あいつに一番ややこしくて肝心な徴税を任せている。官僚達の直接の指揮もな。でも、腕は立つから護衛には期待出来る。まず、小十郎と成実で足りるから、あいつに依頼する事は滅多にねぇけどな。会えば分かる。昼餉が終わったら、着替えだな。今日は軍備のお披露目だから、綱元も同行させる」
「わぁ、綱元もイケメンそう!」
「美紀、お前は面食いだな。そうだな、40代にしては若く見えるか。小十郎と見た目の年はあまり変わらねぇ。今は軍を動かす事があまりねぇから、小十郎も成実も政治に参加してるけどな。だから、官僚制が早く敷けた。綱元の見た目については説明が難しいな。一番似ている芸能人を探すか…。そうだな、東山紀之をもっと筋肉質にしてガタイ良くして、ヤクザっぽくした感じか」
「えっ!?ジャニーズ系!?超会いたい!」
「ふふっ、美紀、アイドル好きだね!政宗、見た目、GACKT系だもんね。甘いセリフも。政宗はすごく私のツボだなあ。そういえば、ベルリンフィルハーモニーはどうなってるの?養わなきゃいけないんじゃない?」
「俺が願った瞬間に出現するようになってるみたいだぜ。全く都合よく出来てるぜ。俺がお前のツボで本当に良かった」
「ベルリンフィルハーモニーが来るなら、それなりのホールで演奏させたいなぁ。音響が日本で一番いいのは、サントリーホールか。日比谷公会堂の辺りに出現させたら、江戸城から近いね。日比谷公園の中だよ。桜田門からすぐだ」
「江戸城外苑と日比谷公園はあるぜ。お前の世界で気に入ったし、思い出の場所だからな。日比谷公会堂はねぇな。じゃあ、そこに願う」
「日比谷公園の前が帝国ホテルだから、国賓やオーケストラの人達をそこで養えば?移動が少ないし、帝国ホテルは日本最高峰のホテルだよ?」
「そんなんがあるのか。知らなかったぜ。調べてみる」

俺は丁度昼餉が終わったので、Safariを立ち上げて、サントリーホールと帝国ホテルについて調べた。
確かに帝国ホテルは相当客層が良さそうなホテルの作りだ。
ベッドにもこだわっている所が尚良い感じだ。
これなら、外国の王族達を泊められる。
江戸城内の敷地にもてなすための迎賓館を作ってもいいが、それは後で考えればいい。
あとはどう日本風にアレンジするかだ。

「遙、美紀、ヴィクトリアシークレットは、日本なら江戸のどこで開催がいいと思う?」
「あ!それなら私にいい案があるよ!銀座の宝塚大劇場が規模的にヴィクトリアシークレットと変わらないと思うな!もしかしたらちょっと狭いかもだけど、帝国ホテルから歩いてすぐだし、立地的にばっちりだと思う!」
「美紀、流石だね!ヅカ好きだもんね」
「宝塚大劇場か。ちょっと場所を調べてみる」

調べてみると、銀座の外れで、広場にして土地がまだ余っている所だった。
ここなら、動画で見たヴィクトリアシークレットの規模のホールが建てられそうだ。
後で帝国ホテルでパーティをしたら、丁度いいし、すぐに江戸城に帰還出来る、便利な場所だ。
後日、サントリーホールのコンサートで歓待してもいい。

「よし、ここに決めた。あとは、F1の場所か」
「日比谷公園の中にサーキット作ったら?あそこ、広いし。帝国ホテルから近い方が便利だよ?美紀、どう思う?」
「政宗がどんな日比谷公園を作ったかによるけど、多分作れると思うよ。競馬の1周は多分、2キロくらいだと思うから、仮に1キロの範囲でカーブを上手く作っていったら、コンパクトながら、1.4キロ近いサーキットが出来ると思うし、サラブレッドは持久力がないから、丁度いいんじゃない?脚も弱いからそんな凝ったサーキットは作れないし。政宗、どう思う?」
「そうだな、美紀の言う通りだな。どれくらいの土地が必要か計算してみろ、美紀」
「うん」

美紀は素早く電卓を叩いて、Safariで検索をした。

「そうだね、日比谷公園が16ヘクタールくらいで、競馬場がパドック抜きで5ヘクタールくらいだから、余裕だね。競馬場は観客席入れて、8ヘクタールくらい見積もってくれたら自由にサーキットが設計出来るな。サントリーホールで1ヘクタールちょいだから、まだ公園として使える土地が余るくらいだよ。ちなみに1反が約992平方メートルだから、1ヘクタールは約0.1反で計算すれば大丈夫。でも、みんなにメートルとキロとヘクタールは叩き込んだ方が後々便利だよ?」
「美紀も計算が速いな、やるな。それなら安心だ。遙と美紀がいると、本当に捗るな。助かるぜ。換算については分かった。俺も小十郎も反の方が正直想像はしやすいから、両方で説明する。thanks!」

遙もようやく食べ終えて、美紀も食べ終えたので、俺は膳を下げさせて、タバコに火を点けた。
遙もタバコに火を点けてゆっくりとふかし始めた。
寝所の向こうに気配を微かに感じる。
どうやら、小十郎は収穫を終えたようだ。

「遙、美紀、コーヒーでいいか?他のがいいか?」
「小十郎達と合流したらお茶だから、コーヒーがいいな」
「政宗、私も!」
「ああ、いいぜ」

これで、本日2度目のタバコだ。
本当に今日は忙しい。
少しゆっくりしたくて、鉄瓶で湯を沸かした後コーヒーを淹れると、もう1本タバコに火を点けて吸い始めた。
遙も禁煙が堪えたのか、もう一本吸っている。
美紀はコーヒーを半分くらい飲むと、席を立ってバッグを持った。

「政宗、私、隣の部屋で着替えて来るよ。私、着物着るの遅いから。遙は政宗とここで着替えなよ」
「そうか?だったら、行ってこい。もし、分からなかったら俺を呼べ。着付けは得意だ。襦袢さえ着てたら抵抗ねぇだろ?」
「わぁ、助かる!じゃあ、政宗を呼ぶね。遙も政宗に綺麗に着付けてもらいなよ」
「うん、そうする!」
「ああ、俺に任せろ。お前の振袖姿が楽しみだからな!」

ゆっくりとコーヒーを飲んでいると、やがて美紀に呼ばれて俺は美紀を着付けてやった。
そのまま美紀と交代して寝所に入ると、俺も華やかな紋付の小袖と袴に着替えて部屋に戻った。
遙が襦袢まで着て待機していたので、着物を着付けてやった。
そして、美紀も遙も化粧をきっちりとすると、どこに出しても恥ずかしくない娘姿になった。
あまりに綺麗だったので、何枚か写真を撮ると、俺のiPhoneに小十郎からLINEが入った。
湾岸への警備が整ったとの事だった。
俺は刀と脇差を帯に挟んでiPhoneを懐に入れた。

「よし、遙、美紀、コーヒーを飲み干せ。俺も飲み干したら小十郎達の所へ行くぞ」
「うん!」

遙と美紀は同時に返事をすると、コーヒーを飲み干した。
俺もコーヒーを飲み干すと、片付けをくノ一達に命じ、遙のバッグを持って部屋を出た。

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