引きこもり部屋 act. 1 -1-

どんな部屋かとてもわくわくして、引き戸を開けると、俺の部屋よりだいぶ狭い、引きこもり部屋が用意されていた。
設備としては申し分ないが、何か物足りない。
確かにモナコのような開放的なデザインだが、江戸城となんかマッチしないし、そもそも引きこもるにしたら狭い。
俺は襖を閉めると遙に言った。

「遙、部屋のデザインを全体的にやり直しだ。何か気に入らねぇな。調理してたら後ろにお前がいたら見えねぇし、テーブルも狭いし、デザインが気に入らねぇな。部屋自体も狭い。シャワールームももっと大きい方がいいし、出来ればソファも置きたいし、全部レイアウトのやり直しだ。何せ、大奥は広いんだ」
「はあ、政宗って本当に完璧主義だね。じゃあ、インテリアコーディネーターの知識と、一級建築士の知識と家電アドバイザーと知識とキッチンスペシャリストの知識を願ってあげる」

遙が祈りを捧げると、すべての建築と建具の知識と家具やキッチンなどの知識とレイアウトの知識と家電の知識が脳内に叩き込まれた。

手始めにステンレスのオーブン付きのアイランドキッチンを配置して、壁際に調理用の電化製品と食器棚と隠れる収納の分別ゴミ箱を並べる事にした。
カジキマグロが捌ける大きさの調理台のプロ仕様のキッチンだ。
くノ一が用意していた食材は冷蔵庫の中に入れた。
これも業務用仕様だ。
電化製品は全てシルバーで統一だ。
食器棚は壁とテイストを合わせる事にしたから、デザインは後回しだ。

内装はカナダのログハウス風なら天井裏にくノ一を配置出来る。
俺はカナダのログハウス風のデザインにする事にして、壁は平らな使い込んだ木材で、天井も床も同じテイストのフローリングにした。
壁と同じテイストのクローゼットと洋服ダンスとライティングビューローとペアの椅子を反対側の壁に配置して、全身が映る巨大な鏡を壁に設置する。
幅が1.5メートルくらいの背が高いやつだ。
これなら身支度も出来るし、また鏡の前で遙を抱ける。
ライティングビューローには手習いの道具を一式仕込んだ。

そこから十分な距離に直角に面した壁際に、ログハウス風の壁と同じテイストのキングサイズのベッドを置いて、部屋の真ん中はコの字型の8人がけのソファだ。
ベッドには敢えて天蓋を付けずに、広々とした空間を確保した。
リネンは全部オフホワイトで、羽毛の掛け布団と枕だ。
リネン類は浅いベッド下収納だ。
最高級のスプリングコイルマットレスで硬さは普通な感じだ。

ソファの前に60インチほどの大きなテレビを置いたら遙とゆっくり映画が見られる。
手入れしやすいように茶色の革張りのソファーで座面のスプリングが効いているやつだ。
背面もいい感じに背中を支える、心地よいデザインのソファだ。

テレビにはBOSEのホームシアターセットを付ける。
BluetoothでiPhoneから音楽を飛ばしてメタルもがんがん聞ける。
ベッド側の壁際の天井近くにもスピーカーを配置するサラウンドシステムだ。
そこから広々と距離を置いて木目が美しい無垢材を切り出したまま、整形をしていない、木の形を活かした8人がけの防水のテーブルを設置だ。
同じ木材で椅子も揃える。
キッチンの前に十分な広さを持ちながら配置だ。
ソファの前にも無垢材のコーヒーテーブルの設置だ。

これでも部屋の奥に余裕があるから、縁側に近いキッチンと反対側の壁際に2人は余裕で入れるガラス張りのシャワールームと、壁と同じ材質のトイレを隣に設置だ。
リハーサル出来るように、テレビの向こう側には間を取ってバンドセットの設置だ。
成実が選んだツーバスドラムを設置して、引きこもり部屋でもリハーサル出来るようにした。

それでもまだ余裕があるから、十分に離れた所に障子を開けたら庭を眺められるように、こじんまりとした小さなテーブルと椅子3つの設置だ。
そこでコーヒーブレイクが出来る。
キッチンに電気ケトルがあるから何の問題もない。
空調はベッド側の壁際に設置すればインテリアの邪魔にならない。
オフィス用の強力な空調の設置だ。
庭の障子の上にも同じように空調を設置してダブルで温度管理をする。

それでも空間が余ったから、小型の暖炉を設置して、煙突を天井裏から縁側に抜けるように設置して、ふかふかのカーペットを敷いた。
ここで寛げる。

トイレの隣には同じテイストの物入れを設置して、部屋の収納の足しにする。
その中に掃除用具とルンバを仕込んだ。
隣に物入れと同じような空間を作って、中にドラム式洗濯機を設置して、上部に洗剤などを置く棚を設置した。
これなら遙の服が洗えるし、インテリアの邪魔にならない。
その隣が、カナディアンテイストの洗面台だ。
木材は防水で壁と同じテイストで、洗面の洗い場は青みがかった防水の焼き物の洗面台だ。

その隣から、引き戸で完全防水で防音なバスルームの設置だ。
バスルームのドアの横の壁に風呂のコントローラーを付ける。
遙を横抱きに出来る、長椅子が置いてある広めの脱衣所を挟んで、バスルームはジャグジーで大人4人入って丁度なやつで、ラブホテルの設備は一通り整っていて、洗い場で厚めのマットでローションプレイで夜伽しても全然狭苦しくない規模の物だ。
何せ引きこもり部屋の奥行きが長いから、バスルームも広い。
脱衣所を含めて20畳はある。
バスルームの中の壁と床は大理石だ。
床は冷えないように床暖房の仕様だ。
防音だから、いくらでもそこで夜伽出来るし、冬場でも冷えない。
もちろん風呂場も冷暖房の空調付きだし、換気や乾燥機能付きだ。
せっかくだから、テレビと音響施設も付けた。
ドアはメインルーム側は同じテイストながら防水加工されていて、周りは強力なゴムパッキンで覆って完全防水の防音だ。

食器棚の規模を8人分の物にして、クローゼットと同じ木材の物にし、食器やカトラリー類は無印良品の柄のないシンプルな物を全世界の料理に合わせて一通り揃えた。
茶器は俺好みの凝ったブランドの物でバリエーションを揃えた。
ウエッジウッドとマイセンがメインだ。
日本茶用は清水焼で統一だ。
2人分から8人分まで調理可能な鍋類などを全て揃えて、なるべくティファールでコンパクトに収納して、アイランドキッチンのシンク下に収納した。
コンロ下は乾物類と調味料の収納だ。
世界中の料理の調味料を揃える。
調理台の下は大型の食洗機だ。
コンロは3つ口の強力なガスコンロで、これなら何でも調理出来る。
コンロの前だけ天井まで届く透明なアクリル板で油が跳ねないようにし、強力な換気扇を頭上にデザインした。

キッチンの奥の庭側にまだまだ余裕があるから、少し離れた場所に8人規模のホームバーカウンターとカウンターチェアを設置し、洗い場と酒の棚と考えられる限りの各種リキュールとスコッチを配置した。
洗い場の下がカクテルグラスの収納庫だ。
フルーツ用の小型の冷蔵庫もカウンター裏に仕込む。
これなら長曾我部やエリザベスと飲めるし、くノ一にバーテンダーの知識とテクニックを与えればいい。
全ての水源は大奥の井戸からのポンプで汲み上げるようにし、配管をデザインする。
トイレは肥溜めに配管する。

当分の着替えもクローゼットと洋服ダンスに願った。
キッチンの蛇口も浄水機能付きの、シャワーにして伸ばして綺麗にシンクが掃除出来る仕様だ。
洗剤類も消耗品も全て揃えたし、冷蔵庫内に当分の飲み物もある。
最後に適度に明るい白熱色のダウンライトを天井に設置して、使いやすい場所にスイッチを配置して、ベッドサイドテーブルの上に、全てのライトのオンオフが可能なリモコンを置いた。
すぐそばの壁に全てのエアコンのリモコンを備え付けた。
家具は同じ木の色ながら、全てアンティーク調のほぼ一枚板の家具にした。
ガスは永久的に補給されるプロパンだ。
俺は狩野派の金箔の襖が超お気に入りだが、この部屋には似合わない。
置くなら屏風なら映える。
多分、これで完璧なはずだ。
総計120畳以上だが、これくらいないと安心して引きこもれない。
何しろ俺の大奥は2000坪規模だ。
全然余裕がある。
これでも小さいくらいだ。

「よし、遙、デザインし直したぞ。これなら少しは広々してるし、俺も満足なはずだ」
「わあ、政宗のデザイン、楽しみだな!」
「よし、入るぞ」
「うん!」

俺は、部屋に入って、希望通りの出来栄えに満足した。
これならいくらでも引きこもれる。
これでこそ引きこもり部屋だ。
遙と美紀は驚いて絶句していた。

「よし、理想的な引きこもり部屋だな。27畳でなんか足りるはずがねぇ。少なくとも120畳は必要だぜ」
「独眼竜、すげぇ部屋だな!こんなの見た事ねぇぞ?まあ、広さ的にはこんなもんが妥当だな」
「だろ?カナダ風のデザインにしてみた」
「マジかよ!名古屋城にも大阪城にも欲しいぜ」
「じゃあ、後で願ってやるから、とりあえずは部屋の設備を見ようぜ」
「政宗、こんなに広い引きこもり部屋だなんて思いもしなかったよ…。ワンルームでこれはすごいし、政宗の部屋ともテイストがマッチするね。流石、政宗、センスがいいよ!軽井沢の高級別荘みたい!こんな広い一枚板のテーブルなんて300万円くらいするよっ!ソファは500万円レベルだ!」
「お前が気に入ってくれて良かったぜ」
「政宗、これ、マジですごい!!政宗の部屋に遊びに来たくなっちゃう!」
「じゃあ、美紀、お前は希望の部屋を俺か遙に伝えたら、お前にも引きこもり部屋を大奥に作ってやる」
「やった!」
「政宗様、流石でございます!私もすっごく素敵だと思います!」

俺達は部屋の中に入り、わいわいと騒ぎながら設備を見て回った。
遙はドラム式洗濯機に感動していた。
その間に部下達に荷物を部屋の奥に置かせて下がらせた。
焔が手配したくノ一達が部屋に入って来たので、ゆりかごをソファのそばに置かせて部屋の隅に控えさせた。
お銀は赤子をそこに寝かせて、部屋の中を長曾我部と探検し始めた。
俺と遙はバスルームを見に行った。

「何の扉かと思ったら、お風呂場だったの?こんなに規模が大きいお風呂場なんて初めて!政宗の檜のお風呂場によく似てるけど、もっと広いし、床も壁も大理石だし、シャワーがついてるのもいいね!ジャグジー付きだ!」
「床暖房があるから寒くないぜ。冷暖房付きだしな。ローションプレイも出来るから、ゆっくり楽しもうぜ!防音だから心配すんな。いくらでも声を出せ。俺もローションプレイは初めてだからな!」
「もう…。まあ、政宗とならいいかな。政宗が喜んでくれるなら。のぼせないようにさせてね?」
「もちろんだ。お前は本当に可愛いな。またブロウジョブしてもらうぜ?」
「お風呂だったらいいよ」
「よし、決まりだな。美紀達にも見せてやるか」
「うん!」

俺と遙はバスルームを出た。

「よし、美紀、長曾我部達と入って設備を説明してやれ」
「政宗、任せて!」

美紀達はバスルームに入って行って、何やら長曾我部がお銀と大興奮していた。
その間に俺と遙はソファに移動し、俺は俺付きのくノ一達にプロの家政婦と全てのバーテンダーの知識とテクニックを願った。
俺は、エリザベスの部屋の場所と規模をくノ一に確認し直して、俺と同じ部屋の設備を願った。
俺の部屋から40メートルほど離れた更に奥の大奥内だ。

「よし、とりあえず、全員分のコーヒーを淹れて、残りの奴らはまだ部屋に控えてろ。インスタントで構わねぇ。遙は砂糖入りのミルクコーヒーが好きだ」
「かしこまりました」

くノ一の1人がすぐに電気ケトルで湯を沸かし始めて、コーヒーを淹れた。
コーヒーテーブルの上に配膳された頃、美紀達がようやくバスルームから戻って来て、ソファに座った。

「政宗の部屋、すごいね!すっごく寛げる!これなら遙といくらでも引きこもれるね!」
「だろ?」
「独眼竜、あの風呂はやべぇ!すげぇ、便利だぜっ!俺もあんな風呂が欲しい!」
「よし、じゃあ、まずは長曾我部の引きこもり部屋を作ってやるか。どうせ、お前、ほとんどまた江戸にいるんだろ?」
「まあな」
「よし、俺のいつもの居室から15メートル離れてれば夜伽の声は聞こえねぇな。中奥寄りの場所に俺と同じ引きこもり部屋を作ってやる。俺付きのくノ一達なら護衛兼女中代わりになるしな。このキッチンならマグロも捌ける。お前もお銀と好きな時にバーでカクテルでも飲め。くノ一がカクテルを作れる」
「流石は独眼竜だぜっ!こんな部屋、夢みたいだぜ!」
「名古屋城と大阪城は、現地で整備してやるから待ってろ」
「おうよ!」
「やっぱり政宗様は最高でございますっ!」

長曾我部とお銀は大喜びをした。
俺は、全く同じ部屋と装備を俺の居室から15メートル離れた大奥に願った。

「よし、お前ぇら3人は長曾我部の部屋の護衛に当たれ。何か長曾我部から言付けがあれば、それに従え。俺の居室から15メートル離れた中奥寄りの大奥内に俺と同じ部屋がある」
「かしこまりました」

くノ一3人が音もなく部屋を出て行った。

「よし、コーヒーを飲んだら夕餉の仕度でもするか。遙、タバコと灰皿を出せ」
「うん!」

遙はバーキンを持って来ると、タバコと灰皿を出した。
2人でゆっくりとタバコを吸う。

「美紀、猿飛が帰って来るだろ?今晩から、2人きりのベッドの部屋で寝たらどうだ?お前だってベッドの方がいいだろう?」
「まあね」
「希望の部屋はあるか?」
「うーん、そうだなあ。佐助の趣味に合わせてあげようかな。私もそういうのが好きだし。ただ、江戸城の外観には合わないかな。完全に洋風だから、障子と襖がまず似合わないな」
「そうなのか?じゃあ、洋風にデザインしてやるから希望を言ってみろ」
「佐助の憧れはドイツのお城なんだ。だから、凧でドイツのお城の所を通った時、興奮してたでしょう?私もロココ調好きだしさ。簡単に言えば、スプリングコイルマットレスのベッドと、適度なお風呂場の設備で、あとは、フリードリヒ2世のサンスーシ宮殿の王の間みたいなのがいいの。バロックより趣味がいいし、執務室兼ベッドルームだしさ。グランドピアノ置いてくれる?それから、キッチンとトイレとお風呂場は別室にしてくれる?内装と合わないから。お酒弱いからホームバーはいらないな。冷蔵庫から好きなの取って来る。お風呂場は温泉みたいな岩風呂で、シャワーがついてるのがいい。佐助の部屋の温泉が岩風呂だったから」
「なるほどな、サンスーシ宮殿か。窓だけフランス窓風にすれば、明かりは入るし、縁側にも出られるか。カーテンをつければ問題ねぇな。それは一箇所であとはロココ調にデザインだな。ちょっとサンスーシ宮殿の王の間を調べるから待ってろ」
「うん!」
「ふふっ、佐助なら絶対喜ぶよ?美紀も姫系好きだもんね!私はこの部屋の方が寛げるなぁ」
「そうだね!佐助と趣味が合って良かった!ロココ調の家具って高いんだもん」

俺はサンスーシ宮殿の王の間をiPhoneで調べたが、画像検索に引っかかって来ない。
ただ、たくさんの画像からサンスーシ宮殿のロココ調の雰囲気は掴んだ。
確かにバロック様式より趣味がいい。
グランドピアノも良く似合う。
家具を全部ロココ調にすれば再現可能だし、ソファだって、ロココ調の物にすれば、寝椅子にもなるし、2人でテレビを見るのには十分だ。

俺は、必要最低限の家電はロココ調の完全に見えないキャビネットで完全に隠す事にして、クローゼットやタンスも同じ仕様にする事にした。
ガラス張りのロココ調の小さなキャビネットにウエッジウッドの茶器を用意する。
ウエッジウッドなら絵になる。
多分、俺と遙が遊びに行くし、長曾我部も来るかも知れないから、テーブルは楕円で6人がけだ。
これもロココ調のテーブルと椅子だ。
とりあえず、電化製品のキャビネットと食器棚を部屋に入って右側に設置する事にした。

テレビ台になる低いキャビネットも見えない収納のロココ調にデザインをし、テレビは縁が白い物にした。
ホームシアターも最低限の、50インチのテレビの前に置くだけの細長いバー式の物にして、これもBluetooth接続で色は白だ。
音はヤマハがいい。
テレビの前には2人がけのロココ調のソファをコの字に3つ並べれば、6人座れる。
ローテーブルもロココ調にデザインする。
これがテーブルセットの左隣の設計だ。
テーブルとは十分な広さを開ける。
家電のキャビネットの反対側の壁に、ロココ調のクローゼットと洋服ダンスの設置だ。

天井にもロココ調の細かな細工を施す事にした。
そもそも猿飛が忍だから、天井裏の護衛なんて必要ない。
日本は天井が低いから、天井ぎりぎりの浅いボウル状の大きなシャンデリアをデザインした。
ピアノはYOSHIKIが使っていたクリスタルのピアノが圧迫感がなくて合いそうだ。
ちょっとした室内音楽が楽しめるように、最低限のオーケストラが入るような広さを確保して、部屋の音響を良くする。
YOSHIKIモデルのピアノをテレビの向こう側の広い空間の真ん中に設置して、室内音楽が演奏出来るようにした。
その向こうに窓の設置だ。
一箇所だけ縁側に出られるようにする。
窓と反対側のベッドからこれだけ離れていれば見えないからカーテンはなくて大丈夫だ。
クローゼットの隣には同じくロココ調の大きな鏡を用意した。
壁にはぎっしりとロココ調の装飾がある。
床は大理石で床暖房完備だ。

あとは、キッチンとトイレと風呂場の設計だ。
ベッドから少し離れた壁際の鏡の向こう側にトイレへのドアを設置し、その奥の庭寄りに風呂場へのドアを設置した。
脱衣所にドラム式洗濯機と近代的な洗面所を設置し、壁に風呂場のコントローラーを付けた。
風呂場は和風の設計だ。
暖簾のついた料亭の入り口のような引き戸を開けると、中庭がよく見えるように、マジックミラーで外からは見えず、中からは中庭がよく見える、大きな窓を設置して、大人4人が入れる岩風呂を作る。
壁際にシャワーをいくつか設置して、湯治場のような設計にする。
椅子も手桶も檜作りだ。
床も岩で、床暖房にする。
全ての木材は檜だ。
東屋のようなのに、冷暖房と乾燥機能完備で、防音の防水だ。
風呂場とトイレの間にウォークインクローゼットを作って、家事の電気機器や洗剤などを置く場所にする。

キッチンは一応広く15畳ほど確保して、対面式でカウンター付きにして、カウンターチェアを設置した。
壁際に改めてキッチン家電の設置だ。
換気扇は俺と同じ仕様で、天井裏から中庭に配管が抜ける。
場所は風呂場と反対側の壁の向こうだ。
これで簡単な食事ならキッチンで摂れるし、メインルームのインテリアの邪魔にならない。
デザインは北欧風だ。
調理台の下には食洗機を付けて、コンロ下とシンク下には俺と同じような収納と調理器具と乾物類や調味料を揃えた。
全てのメインルーム内のドアのデザインもロココ調だ。

最後にキングサイズのベッドの天蓋付きのロココ調のデザインを決めて、枕と掛け布団は羽毛にし、リネンもロココ調にした。
リネンを洋服タンスに収納して、クローゼットから適度に離れた所に設置して、ベッドサイドにもテーブルを置いた。
服と小物は倉から持って来ればいい。

風呂場と脱衣所とトイレで12畳、キッチンが15畳、ウォークインクローゼットが4畳、メインルームが50畳ほどだ。
壁際が余ったので、部屋によく映えるライティングビューローと長椅子をいくつも設置した。
ライティングビューローには手習いに必要な道具は一式ある。

これで美紀のピアノが聞ける。
縁側に面した壁の上部とベッドの枕元の天井付近に小さなエアコンを付けて、全てのリモコンをベッドサイドテーブルに置いた。
そして、配管を設計した。
大奥の廊下に面した扉は引き戸ながら、内装だけロココ調だ。
装飾の雰囲気はあくまでサンスーシ宮殿をそのままコピーする。
これで完璧なはずだ。

脳内にリアルな設計図が出来たので、俺は、エリザベスとの部屋の間に一気に全てを願った。
俺の引きこもり部屋の風呂場から15メートルくらいの所だ。

「よし、美紀、ロココ調の部屋が出来たぞ。広さは81畳くらいか。大した事ねぇな」
「ええ!?そんなに広いの!?」
「王の間の情報がなかったし、サンスーシ宮殿の室内音楽の部屋を、生活出来るようにアレンジしたらその広さになった。2人暮らしならこれくらい必要だろ?」
「やっぱ、政宗は天下人だね。スケールが違うよっ!一般家庭の2人暮らしにしては十分大きいよっ!」
「そうか?コーヒー飲んだら見に行くか?」
「マジで!?超見たい!ロココ調の引きこもり部屋だなんて、佐助、超喜ぶ!私も超嬉しい!」
「お前がそんなに喜ぶなら、作った甲斐があるぜ」
「わぁ、美紀、良かったね!」
「黒いピアノだと圧迫感あるから、YOSHIKIの透明なグランドピアノにしておいたぞ」
「政宗、マジで!?あれ、何億かするんだよ!?超嬉しい!夢みたい!」
「俺達も聞けるように椅子はたくさんあるし、部屋の音響も良くしておいた。室内楽くらいは演奏出来る仕様になってるから、バンドも置けるし、X JAPANを演奏してやってもいいぜ?本場のYOSHIKIのピアノが弾けるぞ?」
「マジで!?紅とかWEEK ENDの東京ドームライブバージョンとか演奏したいな!」
「ああ、いいぜ」
「何だよ、美紀、楽しそうじゃねぇか!俺も見てみてぇな!あの幻のピアノだろ!?X JAPANやろうぜ!!」
「わぁ、元親も最高!私も政宗と美紀と元親とX JAPANやりたいな!早くコーヒー飲んで、美紀の部屋も見に行こう?」
「よし、じゃあ、飲み頃だから、一気に飲み干すか」
「元親様っ!元親様のX JAPANが銀は楽しみでございます!TOSHIのように歌って下さいませっ!」
「ああ、俺が歌ってやるよ!!」
「元親様の歌が楽しみでございます!X JAPANは名曲ばかりでございます!」
「まあ、いいぜ。長曾我部にX JAPANのヴォーカルは譲ってやる。美紀の部屋で演奏しようぜ。俺もツーバスドラム叩いてみてぇから、俺がドラム担当でもいいな。猿飛にベースでもやらせるか。ベスがベースでもいいな。大奥でX JAPANのライブが出来るな!よし、コーヒーを一気飲みだ!」
「うん!」

俺達はコーヒーを一気に飲み干すと、部屋を出て、美紀の部屋に向かった。
すぐに美紀と猿飛の部屋の前に着いた。
本当に声が聞こえない目と鼻のだ。

「よし、美紀、お前が引き戸を開けていいぞ。ここはお前の部屋だからな」
「マジで!?政宗、センスいいから、超楽しみ!じゃあ、入るね」

美紀は、襖を開けた。
その途端、大きく息を吸い込み叫んだ。

「マジでサンスーシ宮殿そのまんまだっ!!」
「えー!?私も見たいっ!」
「遙もおいでよ!」

美紀は遙の手を取って、部屋の中へと入って行った。

「わぁ、本当だ!サンスーシ宮殿の雰囲気そのまんまだ!政宗、よくデザイン出来たね!本当にすごい!だったら、婚儀の教会もケルン大聖堂みたいにして欲しいな」
「お前が望むならそうしてやる。俺も美紀の部屋を見てぇな」
「政宗も元親も来て!」

俺達は美紀の部屋に入った。
我ながら良く出来ている。
居心地がいいかと言われると、俺の趣味ではないが、これも悪くはない。
どちらかと言うと、軽井沢の別荘のような方が俺は落ち着く。
謁見の間なら絢爛に凝ってもいいが、生活の場となると、話は別だ。
凝るのは服装や小物くらいが丁度いい。
何を合わせてもよく似合う、上等な木のシンプルなデザインが一番だ。
それならどんな豪華な屏風や襖を置いてもよく映える。

美紀は歓声を上げながら、遙の手を引いて、メインルームの左側の収納を次々に開けて見て回ると、トイレや風呂場を確認した。

「ねぇ、政宗!あのお風呂場の窓じゃ外から見えるよ?」
「あれは、外からは見えねぇマジックミラーだから心配すんな!防音だから、夜中に歌いまくっても大丈夫だぞ?冷暖房完備だしな!床の岩場は床暖房だ。脱衣所にリモコン付いてただろ?大奥なら離れてるから、夜中にピアノを弾いてもいいぜ?」
「うん!嬉しい!メインルームの内装を邪魔しない所がすごいっ!今夜佐助と大はしゃぎだよっ!天蓋付きベッドだし!ウォークインクローゼットも便利で良かった!消耗品が全部揃ってて嬉しかった。家具のセンスもハイセンスだね!」
「部屋の反対側も見て来いよ。一応電子レンジとかトースターとか電気ケトルとかキャビネットに収納されてるぜ?飲み物類も全部一通り揃えておいた。何でも調理出来るように電子レンジはビストロを用意しておいた。ホットプレートもあるから、お好み焼きもたこ焼きも出来るぜ?シリコンスチーマーもあるしな。キャビネットの壁際のドアの向こうはキッチンだ」
「マジで!?見て来るっ!遙、行こう?」
「うん!」

美紀は遙の手を引いて、キャビネットの中と食器棚を見て歓声を上げて、キッチンに入って行った。
俺もキッチンの出来栄えを見に行った。
予想通りのカウンターキッチンの出来栄えに満足する。
窓はなくても、この広さなら圧迫感はない。

「わあ、IKEAみたいでおしゃれ!ちょっとご飯食べるくらいなら、これで十分だ!政宗、流石!よく分かってる!」
「シンク下の収納も確認してみろ。足りない調味料とかあったら、バッグから出せ」
「うん!」

美紀はシンク下やら、コンロ下やらを確認して、食洗機に感動していた。
小さいから、せいぜい4人分の食器しか洗えない。
まあ、2人なら十分だ。
俺は、キッチンを出て、長曾我部を呼んだ。

「お前もお銀と見て来いよ」
「おうよ!お銀、行くぞ」
「はい!」

長曾我部はお銀とキッチンを見て、声を上げると、すぐに戻って来た。

「なんか狭かったが、2人なら圧迫感はねぇな。いいんじゃねぇか?別にマグロをさばく訳じゃねぇし」
「だろ?」
「それにしても、こんな内装の部屋なんて見た事ねぇぞ?名古屋城も大阪城も派手だが、なんか違う」
「未来の神聖ローマ帝国のデザインだ」
「なるほどな。だったら納得だ」

すぐに美紀も遙と戻って来た。

「政宗、ウエッジウッドを用意してくれるなんてハイセンス!ワイルドストロベリーならロココ調に合うもんね!あれも高いのに!」
「高級な茶の湯の道具に比べたら安いもんだろ?じゃあ、夕餉の仕度に戻るぞ」
「うん!」

俺達は俺の引きこもり部屋に戻った。
すぐにタンスから割烹着を出してキッチンに立って、夕餉の仕度を始めた。
3品だから、30分もあれば十分作れるし、まだ9時半前だ。
俺は専用のにんにくの皮むきを使って手際よくにんにくの皮を剥いていった。
遙も割烹着を着て俺の隣に立った。

「政宗、手伝うよ。もう9時半だし。味付けは政宗に任せるし、長芋を切るのも政宗に任せるから」
「そうか?助かるぜ。お前と料理するのは久しぶりだな」
「うん!」

俺は、まな板を2つ出して、遙と共同で楽しく話しながら調理をして行った。
初めて出会った時の事を思い出して、とても懐かしい。
手早く人数分のにんにくの皮を剥くと、鶏肉を全て一口大に切って、大きな圧力鍋にハーブと赤ワイン1本分と鶏肉とにんにくと調味料を入れて、火をかけ始めた。
アラビアータ用に具材となる鶏肉とにんにくは残してある。
その間に、遙は、野菜を全て洗い、長芋以外、俺が調理しやすいように手際良く切って行った。
そして、パスタソース用のにんにくをすりおろす。
流石、外科医だけあって、仕事が丁寧で早い。

「政宗、きのこがないから、イタリアの乾燥のポルチーニ茸を戻して使うといいよ?すごくいい出汁になる。さっき願ったから、コンロ下から出て来るよ?」
「そうか。だったら、使い方を教えてくれ」
「戻る程度のぬるま湯で戻して、お湯ごと調理すれば大丈夫」
「なんだ、簡単だな。さっきのコーヒーの残り湯で手っ取り早く戻す」

俺はコンロ下からポルチーニ茸とトマトの缶詰を取り出すと、少量の湯でポルチーニ茸を戻し始めて、その間に長芋の皮を剥いて、千切りにした。
遙がその間に、大鍋で湯を沸かし始めた。

「政宗、ちゃんと2%の濃度で赤穂の塩を入れてお湯を沸かしたよ。プロ仕様ね。後はパスタソースが出来てから、パスタを茹でればいいよ」
「お前がいると捗るな。俺がパスタソースを作ってる間に圧力鍋が終わるから、シンクで冷やしながら蒸気を抜いたら、カブと小松菜を入れて、混ぜながら火をかけろ。まあ、お前に教わった料理だから、お前なら出来るな」
「ふふっ、そうだね」

俺は、5人分の長芋の千切りを素早く丁寧にすると、ボウルに入れて、パスタソースを多目に作り始めた。
とは言え、遙が材料を切ってくれたからあっという間だ。
オリーブオイルに乾燥唐辛子とすりおろしたにんにくを加えて、フライパンで火にかけて、香りを出してから、鶏肉の表面を焼き始めた。
鶏肉の表面を焼くと、鶏肉にしっかりと味が残る。
そこからトマト缶と戻したポルチーニ茸と戻し汁とハーブを加えて、下味をつけてから煮込み始めた。
ここで、フライパンに蓋をして一休みだ。
そろそろ圧力鍋の鶏肉とにんにくがいい感じに火が通っている頃だ。

「よし、遙、お前に火傷されたら困るから、圧力鍋は俺が見る。お前はパスタソースを見張れ」
「うん、いいよ」

俺は、圧力鍋を火から下ろして、シンクで流水をかけて冷やし始めた。
その間に調理台の上の必要がないものを全て流しに片付ける。
盛り付け用の皿を重ねて出している間に、遙はほうれん草をパスタソースに入れて、味を馴染ませるように炒め始めた。
時折味見をして、微調整をしているのを見て安心する。
その間に圧力鍋の圧力が抜けたので、俺は水を止めて調理台の上に置くと、小松菜とカブを入れて、煮込み始めた。
遙は、ほうれん草が柔らかくなり過ぎない所で火を止めると、冷めないようにフライパンに蓋をして、パスタの量を測り始めた。

「みんなお腹空いてるよね?150gでいいかな?」
「それでいいと思うぜ。その想定で湯を沸かしたんだろ?」
「うん」
「パスタは茹で始めたらあっという間だからな。アルデンテで頼む。俺は長芋の盛り付けをしながら、圧力鍋の様子を見る」
「うん!」

まるで本当に遙の世界の新婚生活みたいで、とても嬉しい。
快適な引きこもり部屋を作って本当に良かった。
器に長芋を綺麗に盛り付けた所で、圧力鍋の火を止めて、味見をして微調整をしてから蓋をして蒸らし始める。
アオサを取り出して、手で粉々にしながら、長芋の上に散らして、これで一品完成だ。
箸とフォークと卓上の醤油を出して、長曾我部夫婦に洋食のマナーの知識を願った。

「おい、箸とフォークと長芋の千切りと醤油を配膳しろ」
「かしこまりました」

くノ一に命じると、素早く命じられた物をテーブルに配膳した。

「遙、そろそろアルデンテだ。パスタは俺が盛り付けるから、鶏肉の煮込みを盛り付けろ」
「流石、政宗」

俺はパスタを一本箸でつまみあげて硬さを確認した。
完璧な硬さのアルデンテだ。
すぐに火を止めて、皿に盛り付け始めた。
遙は、お玉を使って、既に綺麗に鶏肉のワイン煮込みを盛り付け終わっていた。

「よし、鶏肉の煮込みを手分けして配膳しろ」
「かしこまりました」

俺は空いたスペースに大皿を全て並べると、手早くパスタを取り分けて、パスタソースをかけた。

「よし、これで完成だな。みんなで手分けしてこの大皿を配膳しろ」
「かしこまりました」

くノ一達みなで手早くテーブルの上に配膳されて時計を見ると、丁度30分だった。
割烹着を脱いでソファの上に置いてテーブルに着いた。
遙も俺にならって割烹着を脱いでテーブルに着いた。

「よし、長曾我部、お銀、美紀、待たせたな。夕餉の完成だ」
「独眼竜、マジで速ぇな!遙も手際良かったぜ!しかも、いい香りだ!」
「俺と遙と美紀が並んで座るから、向かい側に2人で座れ。パスタはのびるから急げ」
「ありがてぇ!」

美紀達は急いで席に着いた。

「よし、食うぞ」
「おうよ!」
「いただきます!」

一口食べた長曾我部がとても嬉しそうな顔になった。

「これ、マジで美味いぜ!どこの国の料理だ?」
「イタリアだ。鶏肉の煮込みは南フランスだ」
「マジか!!やっぱ独眼竜はすげぇ!」
「遙に教えてもらった」
「そうなのか!?遙はやっぱすげぇ!」
「政宗様、大変美味しゅうございます!」
「政宗の手料理、めっちゃ美味しいね!なかなか長芋なんてこんなに綺麗に千切り出来ないよ!政宗も器用だね!」
「長曾我部もお銀も美紀もそんなに喜んでくれて嬉しいぜ。遙が手伝ってくれたお陰だ」
「味付けは政宗がやってくれたよ?懐かしい味がするな。1人じゃこんな料理作らなかったし」
「じゃあ、明日は私が遙と政宗達に肉じゃが作ってあげる!」
「ふふっ、美紀の得意料理だね!楽しみだな!」
「そうか、美紀が手伝ってくれるのか。楽しみだぜ。人数分ならバッグから肉が出て来るかもな。だったら、明日はA5ランクの松坂牛ですき焼きしようぜ!白菜もネギも旬だからな!」
「政宗、マジで!?超楽しみ!政宗が用意してくれたキッチンで作って来るね!」
「ああ、美紀、頼んだぜ!」
「独眼竜の言ってたすき焼きか!超楽しみだぜ!」
「明日の昼餉も肉が食いてぇな。魚は飽きた。何を食おうか悩むな」
「じゃあ、夜は牛肉のオンパレードだし、せっかく白菜用意するから、昼は豚しゃぶにしよう?白菜を使い切れるし、手抜き出来るよ?」
「美紀、そんなんがあるのか?豚しゃぶなんて初めて聞いたぜ」
「うん、あるよ!豚しゃぶはさっぱりしてて美味しいよ?IHヒーターある?」
「あるぜ。鍋もIH対応だ」
「流石、政宗!明日も楽しみだなー!」
「私も楽しみ!すき焼きなんて本当に久しぶりだなー!」
「だったら、フグも調理台の上に願ってみろ。俺がさばいてフルコース作ってやる」
「え!?政宗、本当!?フグ食べたい!」
「まあ、明日は肉だけどな。ディズニー遅らせて、フグ食べるか?」
「豚しゃぶ止めにして、ブランチでフグのフルコース食べたい。それなら夜はお肉たっぷり食べれるでしょう?ディズニーは早く行きたいな。ねぇ、美紀、いいでしょう?政宗、フグの調理師の資格あるんだよ?豚しゃぶよりフグがいい!豚しゃぶ止めてフグにしよう?」
「マジで!?だったら、私もフグの方がいい!フグのフルコースの締めにフグ鍋食べようよ!てっちりだ!その後の雑炊もね!白子の醤油焼きも作って!」
「ああ、いいぜ。じゃあ、遙にたくさんオスのトラフグを願ってもらわなきゃならねぇな。頑張って食えよ?」
「うん!フグならいくらでも食べれる。特にてっさなら4人前くらい食べれる」
「よし、じゃあ俺が張り切ってさばいてやる」
「独眼竜、マジでか!明日も楽しみだぜっ!遙の言ってたフグだな!超楽しみだぜ!お銀も楽しみにしてたからな!なあ、お銀!」
「はい、元親様っ!流石は政宗様でございます!フグなんてさばけるのは政宗様くらいしかいらっしゃいません!」

明日の昼餉も夕餉も決まって楽しくて仕方ない。
しかもかなりのグルメだ。
わいわいと騒ぎながら食べているうちに、夕餉は食べ終わってしまって、くノ一達に食器を下げさせて食洗機にかけさせて、俺は食後の茶を淹れさせた。
思ったより夕餉に時間はかかったが、話しながらだったから、あっという間だった。

「はあ、パスタも鶏肉のワイン煮込みも長芋も最高に美味かったぜ!流石は独眼竜だ!小十郎の野菜も美味かったしな。遙が教えてくれたって言ってたな。遙もすげぇな!そりゃ、独眼竜も惚れるぜ。お前ぇ、遙に胃袋鷲掴みにされただろ?」
「まあな。こいつの作ってくれた料理は全部病みつきになったぜ。俺もGoogleで調べまくって色々作った」
「そうだったのか!遙、お前ぇ、料理の手際も最高に良かったぜ?独眼竜と並んでたら、美男美女のシェフが揃ってる感じだった。やっぱベストカップルだな!」
「ふふっ、元親がそう言ってくれて嬉しいよ。切るのは特に得意だからね。あとは政宗にお任せ。味付けのセンスは政宗は抜群だからね!」
「お前がそう言ってくれて嬉しいぜ。やっとお前に料理を作ってやれたからな。ガスの方が効率がいい。流石に米は釜で炊いた方が美味いけどな」
「そうだね。江戸城のお米、すごく美味しいもん。それにしても、もう11時かぁ。あと1時間ちょいでベスが来るね。政宗、セットリスト、どうしよう?」
「そうだな…。ライブをラストまでで2時間から2時間半で見積もるか。1曲が平均5分として計算すると、24曲から30曲のセットリストになるな。Starsが8分くらいだろ?Starsが2曲分として計算するのが妥当だ。そうしたら、各部では5曲か6曲が限度だ」
「なるほどね…」

遙は考え込むような表情になって、iPhoneを取り出した。
長曾我部もお銀も考え込んでいる。
俺もiPhoneを取り出して、Apple Musicで検索を始めた。

「よし、陰陽座とインペリテリは俺と成実に任せろ。インペリテリは長くて3曲だからな。遙、お前はブラインドガーディアンを美紀と担当だ。長曾我部はお銀とアンベリアン・ドーンを考えろ。歌詞と曲調で選べ。セットリストが決まったら、スピーカーで流してみんなで吟味だ。後でベスの意見も聞く」
「わあ、政宗、流石!それなら早く決まりそう!」
「流石は独眼竜だぜ!お銀、お前ぇの気に入ったアンベリアン・ドーンを俺に教えてくれたら一緒に考えるぜ?」
「はい、元親様!私は千雄丸に乳をやって参りますので、お待ち下さいませ」
「ああ、そうだったな。よし、行って来い。俺も行く」
「はい!」

お銀は嬉しそうに微笑んで、ソファの所へ行った。
長曾我部も嬉しそうにソファの所へ行って、お銀の肩を抱き寄せて座った。
俺も早く嫡男が欲しくなるが、まだ遙と新婚ラブラブしたくてジレンマに陥る。
まあ、どうせ婚儀はまだまだ先だし、まだまだ毎日抱ける。
明日はブランチだから、朝寝も出来る。
風呂にもゆっくり入りたいし、出来ればそこで夜伽したい。
俺は焔に予防接種は明日にして欲しいと言付けた。
焔からはすぐに了解の返事が来た。

俺はセットリストを考え始めた。
とりあえず、インペリテリならすぐに決まりそうだから、キリスト教っぽい曲に絞るために、インペリテリの全アルバムを表示させて、タイトルをざっと眺めた。
聖書の流れを考えると、失楽園からヨハネの黙示録だから、それっぽい曲を選ぶのが良さそうだ。

Garden of Eden、Creeping Death、Father forgive them、Beware of devil、Nova Eraの順がタイトル的に良さそうだ。
Enter Sandmanは抜いた方が良い。
ただでさえCreeping Deathは長いし、Enter Sandmanはキリスト教色が薄い。
インペリテリからは、Garden of Eden、Beware of devil、Father forgive themの3曲が良さそうだ。
タイトルで決めてから、音を小さくして歌詞を見ながら全部聞いてみると、どれも最高にノレて歌詞もタイトルを裏切らない名曲ばかりだった。
セットリストの順に展開するストーリーは、エデンの園での悪魔の誘惑に負ける話、出エジプト、神への許しを請う話、悪魔に打ち勝つ話、最後に堕天使が救われる話だ。
これでストーリーがいい感じに展開するから、第1部のセットリストは決定だ。

次は第3部の陰陽座だ。
とりあえず、俺らしい曲は、組曲「義経」〜悪忌判官、青き独眼、青天の三日月、紺碧の双刃の4曲だ。
あと1曲選ぶとしたら、能の要素が入っている羅刹だ。
後は曲の流れをどうするかだ。
羅刹がインパクトがデカいから1曲目なのは確定だ。
愛の歌をラストに持って来たいから、ラストは組曲「義経」〜悪忌判官だ。
俺と遙の愛の象徴のような歌だ。
あとの3曲を音を小さくして歌詞を見ながらかけて行った。
紺碧の双刃は独眼と天下人という歌詞が入っている。
俺の象徴そのものだ。
羅刹からの繋がりもいいから、これが2曲目で、独眼繋がりで3曲目は青き独眼、4曲目が青天の三日月で決まりだ。
5曲しか選べないのならば、このセットリストしか無理だ。
むしろ陰陽座オンリーライブを何時間もやりたいくらいだ。
俺は、青天の三日月からラストへの繋がりを確認して、iPhoneのメモにセットリストを控えた。
特にラストの組曲「義経」〜悪忌判官は仏教思想な所が日本らしくて尚良い。

「遙、インペリテリと陰陽座は決まったぞ。ブラインドガーディアンはどうだ?」
「政宗、速いね。まだ決まってない」
「よし、俺も考えてやる。アンベリアン・ドーンはエリザベスと一緒に考えても構わねぇ」

時計を見ると、あと30分ほどでエリザベスの到着だ。
とりあえず、さっさとブラインドガーディアンを決めるに限る。
まずはノリが良くて一発目に相応しい、The script for my requiemだ。
アーサー王物語がテーマでどハマりした曲だ。
だから、2曲目もアーサー王物語繋がりで、Mordred's songだ。
アルバム内でも次の曲だから繋がりはいい。
モードレッドはアーサー王の円卓の騎士の1人だが、後にアーサー王を裏切る騎士だ。

後は、吟遊詩人のエルフやドワーフがテーマになっている曲を選ぶか。
そうすると、鉄板で吟遊詩人まんまの、The bard's song-In the forest、The bard's song-The hobbitの2曲だ。
Bardとは英語で吟遊詩人の事だし、覚えたらこの曲は観客と大合唱出来る。
そうしたら、エルフ繋がりでラストはハイスピードで最高に盛り上がるTime stands still(At the iron hill)しか無理だ。
Time stands stillはエルフのノルドールがテーマの曲だし、モチーフが指輪物語だ。
Noldorという曲もあるが、静か過ぎるからラストには相応しくない。
Lord of the ringも指輪物語そのままだから、それも考えたがラストに持って来るには盛り上がりに欠ける。
他にも色々思いつくが、しっくり来るのはこの曲だ。
他の曲も絶妙に中世ヨーロッパの世界がテーマだが、明確にエルフやホビットというキーワードが出て来る曲で絞ると、この3曲が最適だ。
多分、遙は中世ヨーロッパが大好きだし、ブラインドガーディアンの曲調が好きだから選びきれないんだろう。

ブラインドガーディアンは遙がいなかった時も、その後もよく聞いてたから、かけるまでもない。
全部、遙の超ヘビロテアルバムの曲だし、俺も好きだった。
俺はiPhoneのメモにセットリストを控えた。

「よし、遙、ブラインドガーディアンのセットリストを5曲思い付いたぞ。お前、選び切れねぇんだろ?」
「政宗、よく分かってるね!ブラインドガーディアン、好き過ぎてとても5曲には絞れない。政宗のセットリストを教えて?」
「The script for my requiem、Mordred's song、The bard's songを2曲立て続けと、ラストにThe stands stillだ。前半2曲がアーサー王物語で、残りが吟遊詩人だ。全部お前、好きだろ?」
「わあ!全部好き!全部盛り上がる!政宗の声で聞けて一緒にギターを弾けるなんて夢みたい!流れもいい!でも、The bard's songの後なら、Somewhere far beyondはやりたいな。イギリス的だから」
「政宗、流石だね!一瞬で決まったね」
「ブラインドガーディアンは俺もよく聞いてたからな。Somewhere far beyondか。まあ、いいぜ。確かにイギリス的だし、The hobbitが短いからな。よし、これで決まりだ。長曾我部、息子はどうだ?」
「さっき寝たぜ。アンベリアン・ドーンを選べなくて悪かったな。なんか、メタル聞いていつもよりご機嫌だったぜ。エリザベスが来ても、メタルをこの部屋で聞いてても問題なさそうだぜ」
「そうか、なら良かった。そろそろベスから連絡が入りそうだから、休憩だ。茶を飲みながら、ベスにLINEする」

俺は冷めた茶を飲み干して、全員の茶と灰皿を2つ申し付け、俺の部屋からZIPPOを持って来るよう言付けた。
遙がバッグからタバコを2つ持って来て、俺の前に置いてくれた。
すぐにZIPPOが届けられて、俺はタバコに火を点けた。
タバコをゆっくり吸いながらエリザベスにLINEをして後どれくらいで着くのか聞いたら、あと25分との事だった。

俺は、伊達家のLINEグループに決めたセットリストを送った。
成実からすぐに返信があり、陰陽座が超絶お前らしいのばっかだぜ!俺、選び切れなかったから今度陰陽座オンリーライブやろうぜ!キリスト教のセットリストもブラインドガーディアンも最高だぜっ!超絶盛り上がるっ!という内容だった。
つくづく俺と似たやつだ。
小十郎からも、大変政宗様に相応しい曲の構成と存じます。この小十郎は明日、畑の作業の後にでも笛の稽古を致します。との返事があった。
遙もしげしげとセットリストを眺めている。

「はあ…。やっぱり政宗は流石だ。ちゃんと歌詞を考慮した上で、しかも曲の繋がりが自然なセットリストだ。第1部の並び方なんて天才的だ」
「そうか?あと10分したら二の丸に向かうか。その前にアンベリアン・ドーンも考えてみる」

アンベリアン・ドーンも名曲ばかりでかなり悩む。
音楽の知識を持った今、まさかアンベリアン・ドーンがこんなにアルバムを出しているなんて思わなかったから驚いた。
アンベリアン・ドーンもオンリーライブをやりたいくらいだ。
とりあえず、各アルバムをみんなで担当して、名曲を提案してその中から選ぶしかないかも知れない。
俺はとりあえずiPhoneに気に入った曲をメモし始めた。
気付いたら、約束の10分が経っていた。

「よし、二の丸に行くぞ。長曾我部、お前はどうする?お前はここで待っててもいいぞ。お銀1人じゃ心細いだろ?」
「そうか?悪ぃな、独眼竜。別にお銀は1人でも大丈夫だが、なるべくならそばにいてやりてぇからな」
「いや、お前の気持ちはよく分かるから構わねぇ。遙、美紀、行くぞ。おい、お前ぇらは茶器を洗って拭いておけ。今からエリザベス女王達が来る」

俺はエリザベスの部屋の奥に、十分な距離を置いて適度な大きさのシェイクスピアの部屋も願った。
これて快適に仕事してもらえるはずだ。
俺は遙と手を繋いで部屋を出て二の丸に向かった。
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