思ったより時間はかかったが、首尾は上々。
あの帝好みの花魁2人の引き揚げの段取りが出来たから、もう梵と俺の地位は確定したも同然だ。
正直、譲位さえさせられれば、あとは太夫出身の花魁じゃなくてもどうとでもなる。
引き揚げ先が帝というだけで茶屋の箔になるから、黙っていてもハーレムなんて下手したら出陣前に整いそうな勢いだ。
俺は指輪を外して登勢の顔を見に行って、もうすぐ一緒に海外旅行だと盛り上がると、綱元と小十郎に報告をした。
綱元と小十郎は登勢の部屋に控えていた。
「小十郎、綱元、あの帝好みの花魁2人の手配は完了だ。思ったより金を使わずに茶屋も元太夫を差し出したぜ?何せ、上皇の後宮に入れるためだって言ったら、吉原が大騒ぎで、うちも、うちもってすげぇ勢いで花魁を差し出そうとするもんだから、何とか全部の茶屋を宥めて逃げ出したくらいだぜ。あとの選抜は綱元に任せた。俺はあの帝好みの花魁2人に白羽の矢を立てて、あとは綱元が手配に来るって言ってある。正直、ロンドン出陣前にハーレムが出来そうな勢いだ。上洛に備えて、帝の好きな琴と琵琶の調べと和歌の稽古だけ言付けてきたから、養女縁組前に花魁のお披露目でもすればそれでいいと思うぜ?ところで遙ちゃんの琴の腕前って?なんか一部の部下が騒いでたけど、花魁に聴き劣りしたりしねぇよな?」
「よし、成実、よくやった。遙様の腕前を蔑ろにするんじゃねぇ。遙様しか知らねぇ調べを俺の笛と遙様の琴で帝に披露するが、この俺の笛を初見で捉えて伴奏を完璧にこなした腕前だけじゃねぇ。武田の城下の料亭で琴の腕前に2度目の料亭の食事代を割引かれたほどの腕前で、あの政宗様が襖の向こうの気配を完全にお忘れになって聴き惚れてらしたほどだ、この俺もな」
「梵は惚れた欲目があるから何ともだけど、小十郎が聴き惚れるレベルってのはやべぇな。何だかあの帝まで遙ちゃんに惚れ抜きそうで嫌な予感がするけど、すぐに譲位だから大丈夫か。それにしても、遙ちゃんって本当にすごいねー!」
俺は正直またびっくりした。
梵と小十郎の耳の良さの半端なさと来たら、日本一レベルなのに、その2人を聴き惚れさせるなんて相当な琴の腕前だ。
まあ、メガデスとメタリカをあれだけ弾きこなすんだから、琴くらい余裕なのかも知れないけど。
むしろ、メタリカより見た目的には琴の方がしっくり来る。
あんなすげぇ清楚系深窓の姫君美女が、Batteryなんて凶悪な曲を弾きこなす方が余程恐ろしい。
「で?梵は?」
「遙様がまだお休みなんだろう。あれから音沙汰なしだぜ。吉原についてはあとは俺に任せろ」
「綱元、Thanks!なるほどね。じゃあ、俺、梵に通話かけて直接聞く。いずれにせよ、信玄が来る前には起きてもらわなきゃならねぇから、別にいいだろ?」
「まあな。宴のための収穫の数もお伺いしなきゃならねぇから、政宗様にはそろそろ起きて頂かなきゃならねぇのは確かだな。俺も陰陽座のリハーサルには参加しなきゃならねぇしな」
「よし、そうだな…。俺も梵みたいな服が着たいから、直接梵の部屋に行って来るぜ!その後、梵には登勢の指輪を作ってもらって、それからリハーサルだな」
「クッ…好きにしろ。俺は信玄公の到着の見積もりの段取りをする。小十郎はそのまま焔と農産物の打ち合わせだな」
「リハーサルの時は抜けるけどな。新しい肥料が待ち遠しいぜ!」
「小十郎様、今しばらくのご辛抱をさせてしまい申し訳ございません」
「いや、焔、構わねぇ。政宗様の事は、成実、お前ぇに頼んだぞ!」
「任せろ!じゃあ、俺、梵の部屋に行って来るねー!」
俺はもう一度登勢にキスをしに行くと、梵の部屋に向かった。
大奥に入った瞬間に天井裏に伝令を飛ばす。
「梵に俺が向かってるって伝えろ。首尾の報告だってな」
「かしこまりました」
そう経たないうちに、梵からの伝令が届いた。
「成実様に申し上げます。遙様はいまだお休み中でございますが、お部屋に入っても構わないとの事でございます」
「遙ちゃん、まだ寝てんの!?甲斐でそんなに無理してたのか。可哀想に。後で梵と一緒に信玄に抗議してやる」
俺が大股に大奥を歩いて行くと、奥の部屋からは元親のX JAPANの大熱唱と美紀ちゃんのピアノがかすかに聴こえて来て、それもまた興味を惹かれたが、とりあえずは梵への報告が先だ。
しばらくすると梵の部屋の前に着いた。
「梵、吉原の首尾は上々だぜ。遅くなって悪かった。入ってもいいか?」
「ああ、いいぜ?」
くノ一が襖を開けると、梵は遙ちゃんの世界の服を着ていて、ソファという椅子に座っていた。
「成実、コーヒー飲むか?」
「ああ、もらうぜ」
「じゃあ、ここでタバコを吸いながら飲もうぜ」
梵が振り返ると、くノ一が素早くコーヒーの仕度に取りかかり、俺は梵の隣に座った。
本当に梵好みの海外風の部屋の造りで、俺だってこんな部屋が欲しい。
特に、ベッドが俺は欲しい。
遙ちゃんは、夜着を着て、肩まで布団に包まって、すやすやと寝ていた。
俺は差し出されたタバコに火を点けて、ゆっくりとすーっとする煙を吸った。
「思ったより手間取ったみてぇじゃねぇか。俺も少しだけ寝ちまった。でも、結果オーライってとこか?」
「太夫の引き揚げ先が上皇だって吉原中が大騒ぎになって、後続の花魁は綱元が選抜に来るから待ってくれって、茶屋全部を説得するのに手間取った。あの帝好みの花魁2人に白羽の矢を立てて、楽と和歌の稽古を指示して来た。養女縁組前に披露すれば、あの女好きなら養女縁組そっちのけで楽に夢中になるから大丈夫だ。そのままの流れでハーレムを切り出して譲位だな。15分もあれば落ちる」
「なるほどな。それで手間取ったか。その調子じゃハーレムも出陣前に出来そうだし、これで俺の大帝の地位も盤石だな!成実、よくやった!これで信玄が明日養女縁組を頼みに行けば無敵だな!それまでお前には動いてもらわなきゃならねぇが、登勢の命に免じて踏ん張ってくれ」
「ああ、もちろんだ、梵。遙ちゃんには返せねぇ恩があるからな!梵と遙ちゃんのためなら何でもするぜ!なぁなぁ、梵。俺にも梵の着物を貸せよ。動きやすそうだし、スタイリッシュだ」
「別に構わないぜ?当分の着替えはこの部屋に移してあるしな。来いよ」
梵は立ち上がって、壁際の家具の前に立った。
その扉を開けると、所狭しと服が吊り下げられていた。
「お前、ミュージシャンの知識ならあんだろ?だったら自分でコーディネート出来るはずだ。クローゼットの中の好きなのを選べ」
梵のクローゼットの中は、GACKTやYOSHIKIが好みそうな服ばかりだった。
俺もそういうのが好みだ。
ストレートのブロンズの柄がサイドにあるブラックのボトムスと、テリのある黒シャツとファー素材のブルゾンを選ぶと梵は笑った。
「全部ドルガバか。パンツのジャガードもブルゾンのジャガードも俺好みだな。本当にお前とは好みが似ている。並んで歩いてたら遙ですら間違えて後ろからお前に抱きつきそうだぜ」
「そうか?」
「ああ、そうだ。下着はこれを履け。未使用だから心配すんな。こっちの方が履き心地いいぜ?」
「マジか!なぁなぁ、梵!俺も引きこもり部屋欲しい!」
「はぁ、お前ならそう言うと思った。二の丸大奥に1000坪、お前に部屋をくれてやる。120畳の部屋なら16部屋確保出来るだろ?残りを焔にくれてやっても5400坪残る計算だ。中庭を歩いて来れば、大奥の向かいだしな。俺の部屋から一番アクセスのいい二の丸大奥に1000坪をお前ぇらの部屋にして、中でもアクセスのいい所に引きこもり部屋を作ってやる。どんなデザインがいいか言ってみろ」
梵は溜息を吐いた後に、分かりきっているというように笑った。
俺にしてみればそもそも狩野派以外に縁がないから、デザインもへったくれもない。
「俺、そもそも遙ちゃんの世界のデザイン知らねぇし、狩野派しか縁がねぇから分からねぇよ」
「じゃあ、狩野派の部屋にしてやろうか?お前、料理しねぇだろ?」
「料理はしねぇが、ベッドは欲しいし、ドラムセットは置きてぇな。ソファもテレビもだな。部屋のデザインも色んなのが知りたい!」
「じゃあ、後でインテリアの雑誌をやるから、それで考えろ。とりあえず風呂場だけは俺とお揃いにするか?」
「風呂場だけ?」
確かに梵の風呂場はデカいが、引きこもり部屋のは見た事がない。
相当な設備のはずだ。
この男が遙ちゃんを片時も離さない事を考えると、相当な設備を整えているに違いない。
「この部屋の風呂場を見せろよ!」
「ああ、いいぜ?」
梵はニヤリと笑うと、壁際のドアの前まで歩いて行って開いた。
脱衣所も広ければ、風呂場はもっと広い。
しかも見た事のない材質の風呂だし、何やら布団のような物まで壁に立てかけてある。
察するに、これを使えばここで夜伽しても身体が痛くならないようにするための物だろう。
梵はくすりと笑うとドアを完全に閉めた。
「成実、いい事を教えてやるよ。このボトルの中はローションって言う液体が入ってる。口で説明するより早いから、これをちょっと手に取ってみろ」
俺は差し出されたボトルの中身を少し手のひらに取ってマジで驚いた。
まるで、女のナカの液体だ。
それより、気持ちいいかも知れない。
「これを使ったブロウジョブは最高だぜ?今夜は身体全体で試して絡み合ってみてぇけどな!」
「すげぇええ!!!こんなもんが存在するなんて思いもしなかったぜ!」
「ああ、俺もあっちの世界でびっくりしたぜ!夜伽専用の宿にあった。ローションプレイをしても身体が痛くならないマットレスとかな。引きこもったら絶対に遙と遊びたくて用意したぜっ!昨日も止まらなくなりそうになったら、遙が自らブロウジョブを申し出てくれて、ローションと俺の教えた舌使いで、30分もかからず10発出してすっきりだ!最後に遙と対面座位で好きなように抱けたしな!昨日の夜伽は大満足だったぜ!それこそ、寝る前は抱き締めてるだけで充分幸せなくらいの大満足だ!これさえあれば、7年分の消化なんてちょろいな!ここは完全防音だから遙も恥じらう事なく声も出せるしな!」
「30分もかからずに10発って過去最短じゃねぇかっ!!マジですげぇ!このローション、俺も欲しい!!」
「倉かボストンバッグに願え。これを使えば、登勢も処女だけど痛くねぇかもな!」
「だったら尚更だ!他の装備はどうなってんだ?」
「よし、説明してやる」
梵は、シャワーやジャグジーや、梵が悪戯で用意した大人のおもちゃについて説明してくれて、俺達は大いに盛り上がった。
「とにかく、俺は昨日の遙のブロウジョブで、十月十日耐え切る自信がついたから、新婚を楽しんだら本格的に世継ぎ作りだぜ!飲ませさえしないようにして、ブロウジョブしてもらってたら、俺は遙を襲わずに十月十日耐え切れるからな!早く三男までと姫が欲しいぜっ!どうだ、成実、この風呂場、いいだろ?」
「梵、最高だっ!俺も早く登勢を仕込まなきゃならねぇな!まあ、18日後まで無理だけどな。俺の引きこもり部屋はその後の建築でいい。こんなの持ってたら、すぐにヤリたくなるからな!」
「そうだろうな。登勢が解禁になったら二の丸大奥に部屋を作ってやるからそれまで考えてろ」
「梵、thanks!登勢の解禁がますます楽しみになって来たぜ!」
「よし、そろそろリハーサルでもするか。そのローション、水で簡単に落ちるから、さっと手を洗え」
俺は蛇口をひねって手を洗った。
これも超絶便利だ。
部屋に戻ると、コーヒーが淹れられていた。
「成実、先に脱衣所で着替えて来い。コーヒーを飲み終わった頃に遙を起こして着替えさせる」
「Okay!」
俺は着替えを持って脱衣所で着替えて出て来ると、くノ一が俺の着物をたたんでくれた。
梵は、まだゆっくりとタバコを燻らせながらコーヒーを飲んでいた。
それに、俺も加わる。
「なぁなぁ、梵。小十郎が野菜の収穫数を気にしてたぜ?それから、信玄の到着時刻によってはリハーサルの時間も限られるな。最悪、陰陽座だけにするか?」
「そうだな…。そろそろ夕方だし、信玄の到着まで時間があんまりねぇかもな。小十郎に野菜の収穫数を言付けて、ついでに信玄の現在地を確認させる」
梵は、LINEを立ち上げると、素早く小十郎に言付けをした。
「仮に信玄が6時に到着として、リハーサル出来るのはMAX1時間半だな。遙の着替え中に野菜の収穫は終わるだろ。美紀にも連絡しなきゃな」
「ああ、美紀ちゃんなら、ピアノで大合唱してたぜ?多分、猿飛にLINEした方が気付くんじゃねぇかな」
「そうなのか?じゃあ、そうする」
梵は、続けて猿飛にLINEをした。
すぐに返信が返って来て、少しやり取りをすると、梵はタバコを揉み消して、コーヒーを飲み干した。
そして、立ち上がるとベッドに歩み寄り、遙ちゃんのそばに跪いてキスをした。
「遙、起きろ」
「うーん…」
遙ちゃんは、覚束ない手つきで目を擦って唸っている。
「今夜はゆっくり寝かせてやるから、起きろ、遙」
梵が優しく囁きながら何度もキスを繰り返すと、ようやく遙ちゃんは梵のキスに応え始めて目を覚ました。
寝起きのぼんやりとした遙ちゃんの表情を見て、梵が嬉しそうにくすくすと笑う。
梵が毎日こんなに嬉しそうで、俺も嬉しい。
ずっと辛そうで哀しそうな顔ばかり、この7年間見てきたから。
しかも、これから伊達の天下が待っていると思うと、俺も楽しみでしかない。
「遙、成実が部屋に来てるから、お前は脱衣所で着替えて来い。服はくノ一がたたんでくれてるぞ。ほら、これだ」
梵が、ベッドサイドから服を遙ちゃんに手渡すと、遙ちゃんは微笑んで、俺を見た。
「わぁ!成実も着替えたんだね!本当に、政宗、そっくり!」
「お前、間違えて後ろから成実に抱きつくなよ?もうすぐリハーサルだから、急げ」
「うん、楽しみ!」
遙ちゃんは、するりとベッドから抜け出すと、着替えを持って、脱衣所に消えて行った。
梵はその間にコーヒーをまた申し付けて、間もなく遙ちゃんは脱衣所から戻って来て、梵の隣に座った。
ようやくすっきりと目覚めたようで、元気そうな顔をしている。
「ねぇ、政宗。全部通しでリハーサルは無理だよね?もうすぐ夕方だよね?」
「ああ、そうだな。演奏出来て1つか2つのバンドがせいぜいだ。小十郎が張り切ってるし、エリザベスも歌いたいだろうから、陰陽座とアンベリアン・ドーンのリハーサルがせいぜいか」
「なんだよ、梵!俺、ハイスピードなドラムもやりてぇ!」
「じゃあ、追加でメタリカだな。それでいいか?」
「やったぜ!ハイスピードなCreeping Death、めっちゃやりてぇ!」
「なら、それで決まりだな。ギターを持つくらいなら荷物にもならねぇから、野郎共を呼ぶまでもねぇな。猿飛と美紀は肉じゃが作りで忙しいらしい。今日だけキーボードは代理でお銀に弾かせたら余裕だ。すき焼きの材料は全て言付けたし、具材の切り方や盛り付けも指示してあるから、あとは機材と肉の用意だけだな。そんなのは直前でも出来るから、十分だ。まずは、登勢の指輪を作りに行ってから、リハーサルの部屋に召集をかけるか。このコーヒーを飲んで一服したら、移動だな」
「やったぜ!俺、登勢の指輪、超楽しみ!」
「ふふっ、成実、良かったね!」
「ああ、俺、めっちゃ嬉しい!」
遙ちゃんは笑いながらタバコに火を点けて、ゆっくりと吸いながら運ばれて来たコーヒーを飲み始めた。
俺も梵もゆっくりと一服しながら、コーヒーを飲んだ。
コーヒーを飲み終わると、梵は俺に遙ちゃんのギターを持たせて、自分はタバコとライターとiPhoneを小さなバッグに入れて背負い、自分のギターとボストンバッグを持って、部屋を出た。
梵と遙ちゃんが手を繋いで歩いて大奥を出ると、野郎共がいつものように鈴なりになって見惚れていた。
「今日は、筆頭も成実様も、最高にcoolっス!!遙様も、超綺麗で可愛いっス!!あんなの見た事ねぇっス!!」
「Hey, お前ぇら、これから半刻だけライブだぜっ!聞きたかったら、廊下で聞いててもいいが、スタートは四半刻後くらいだな。演奏が始まるまでは廊下を塞ぐなよ?客の邪魔になるからな!」
「押忍!!待機してるっス!」
俺達はくすくすと笑いながら廊下を歩き、一度リハーサルの部屋に荷物を置くと、登勢の下へと向かった。
小十郎は、野菜の収穫に行っているのか不在で、綱元と焔がいた。
「綱元、首尾はどうだ?」
「はっ!信玄公の到着は、6時頃でございます。この綱元が出迎え、表の謁見の間にお通し致しますので、政宗様はどうぞご安心してリハーサルをして下さいませ。簡単な挨拶の後、中奥で宴と致しまして、出陣へ向けた軍議につきましては明日でよろしいかと存じます。まずは、全忍の掌握を最優先に致しましょう」
「よし、それで決まりだな。俺もそれには大賛成だ。焔、小十郎との話し合いはどうなっている?」
「持ち込む作物の種類につきましては、小十郎様とほぼ合意致しました。しかし、現在の新大陸の地理状況が不明のため、正確な数が見積もれません。自然を保護しつつどの程度開墾していくのか、遙様の世界の各時代の地図を見ながら、熟慮致したいと存じます」
「なるほどな。遙がオーストラリアの動植物は繊細だって言ってたからな。是非、慎重に頼む。どうせ今のオーストラリアは真夏だろうから、稲作は来シーズンからになるだろ?出来る事は用水路を掘る事と、畑作くらいだ。米は余剰米の持ち込みで何とかなる。その前に肥料作りだな。最悪、今回の太平洋周遊ではカリフォルニアの開発体制を整える事に専念して、オーストラリアとニュージーランドは先住民との交流と、現地の視察で十分かもな。視察しながら、綱元と連携を取って屯田兵を派遣すればいい。最大数の苗や種さえ見積もっておけば、不足する事はねぇから、屯田兵の派遣の時に馬や牛や植物を持ち込めばいい。一番効率のいい空母やその他の船と兵の動かし方を考えておけ。今晩にでも空母船団を願い直して軍備を再編成する。オーストラリアでの肥料作りの展開もだな。日英同盟と条約も頼んだぜ!それは、帝が譲位してからでも間に合うから後回しで構わねぇ」
「かしこまりました。流石は政宗様でございます。空母船団でございますか。ではその想定で、空母の動かし方を全てシミュレーションして、政宗様にまたご相談致します」
「Okay, 助かるぜ!じゃあ、ついでに、あと10分後に長曾我部夫婦とエリザベスとシェイクスピアがリハーサルの部屋に着くよう手配も頼む。俺はこれから登勢の指輪をデザインするから」
「御意。すぐにご命令をくノ一達に飛ばします」
「Thanks!じゃあ、成実、お待ちかねの指輪のデザインだ!行くぞ!」
「やったぜ!」
俺と梵はハイタッチをして、遙ちゃんと共に登勢のいる屏風の裏へと向かった。
登勢は、座椅子に座り身体を起こしていた。
「登勢!お前がそうして身体を起こせるまで元気になって、俺は本当に嬉しいぜっ!」
「政宗様、ありがとうございます!全て、遙様と美紀のお陰でございます。そして、まさか、成実様とまた婚儀を、しかも外国で行えるなんて、夢のようでございます!」
登勢は可愛らしくにこにこと微笑んだ。
俺も、登勢がこんなに元気になって、本当に嬉しい。
俺は、梵と遙ちゃんと美紀ちゃんのためなら何でもする。
全部、梵と遙ちゃんと美紀ちゃんのお陰だ!
梵はくすくすと笑った。
「登勢、これから忙しくなるから、今のうちにしっかり養生しろよ?外国の婚儀では、指輪の交換をして、その指輪を一生身に着ける事になる。お前に今から指輪を作ってやるから、お前の左手を俺によく見せろ」
「はい、仰せのままに」
登勢は小さな手を梵の前に差し出した。
「登勢の手は本当に小さいな。まあ、背も低いから当然か。この太さなら、7号だな」
梵は登勢の手を取り、様々な角度から観察して、何か素早く計算していた。
5分くらい、梵は登勢の手を観察しながら何か考えると、俺に向き直った。
「成実、右手の手のひらを出せ」
「こう?」
俺が右手の手のひらを梵の目の前に出すと、俺の手のひらの上に小さな箱が現れた。
「開けてみろ」
俺は頷いて、箱を開けた。
その瞬間、余りに出来栄えのいい指輪に俺は思わず叫んだ。
「すげぇぇええ!!これなら登勢の手にぴったりだぜっ!!ちょっとごついかもだけど」
「年齢を重ねたら丁度いいくらいだぜ?仮にも大公妃だからな。華奢過ぎるのも、後々貧相になる。でも、登勢はちっこいから、ダイヤを2列は無理だ。0.1カラットでもバンドが6ミリになっちまうからな。指を圧迫しちまう。これは、0.3カラットのカラーダイヤを交互に並べたやつで、バンドが4ミリだからそこまで指を圧迫しねぇ上によく輝くし、これがバンドの太さの限界だな。真ん中のカラーチェンジガーネットは1.5カラットだ。カラーダイヤが全部で8石だが、お前のと色が同じだからお揃い感あるだろ?どうしてもっていうなら、2列のお揃いに作り変えてやってもいいけど、太さを抑えなきゃならねぇから、ダイヤの価値は下がるな。どうしても0.1カラット以下しか無理だ」
「だったらこのままがいいぜ!俺のも着けて、登勢のと並べてみる!」
「ああ、是非そうしろ」
俺はポケットに入れていた指輪ケースから指輪を出すと、左薬指にはめて、登勢の左薬指にも梵が作ってくれた指輪をはめた。
並べてみると、登勢のカラーダイヤはこれでも俺のより小さい。
つくづく、登勢は小さくて可愛い。
遙ちゃんのエターニティーリングみたいに、もっと小さくて煌めくダイヤの指輪みたいなのも似合いそうだけど、あそこまで小さかったら、逆に俺とのお揃い感がなくなる。
やっぱり梵のセンスは最高だ。
「カラーダイヤの大きさが、俺のと近くて、登勢の指輪が1列でもお揃い感抜群だな!全部石の色はお揃いだからな!やっぱこのピンクダイヤが登勢にぴったりだ!」
「だろ?」
登勢は驚いたように目を瞠っていた。
「政宗様、これは…?」
「宝石だ。よく輝いてて綺麗だろ?成実と揃いの宝石だ。ペアの結婚指輪だ。俺と遙もペアの結婚指輪を作った」
梵は遙ちゃんの右手を取り、登勢に見せた。
「わぁ、綺麗…。私のも、成実様とお揃いで、すごく輝いていてとても嬉しいです!」
「風呂の中でも外さないで済むから安心しろ。むしろ、外すと不吉らしいぜ?ヴァチカンでの婚儀後はずっと着けてろ、いいな?懐妊したら外しても構わねぇ」
「はい!」
「登勢!このお揃い感が夫婦っぽくていいな!」
「左様でございますね!嬉しいです!」
「登勢っ!!」
登勢の花の綻ぶような笑顔を見たら、俺は抑えきれずに思わず登勢にキスを繰り返した。
唇を離すと、登勢は真っ赤に顔を染めていた。
梵と遙ちゃんがくすくすと笑っている。
「じゃあ、登勢、悪ぃが成実を借りるぜ。これからバンドのリハーサルをして来る」
「かしこまりました!成実様のcoolなドラム、楽しみです!」
「ああ、任せろ、登勢!この部屋まで確実に聞こえるからな!お前も治ったら、一緒に歌って遊ぼうぜ!」
「はい!」
「登勢、愛してる。行って来るぜっ!」
俺はもう一度登勢にキスをすると、梵達とリハーサルの部屋に向かった。
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