革命のエチュード -3-

「政宗、また思い付いた!」
「よし、思う存分話せ、遙」
「うん!焔、あのね、外交官や塾生への効率的な外国語習得法を思い付いたの。スペイン語、フランス語、イタリア語、ポルトガル語は4ヶ国語一度に教えた方がいい。ほとんど文法が同じだから。単語すら共通の物が多い。ロシア語も何か近いね。キリル文字はもう存在してる?」
「いえ、キリル文字は存在しておりません。しかし文字があった方が教えやすいので門外不出でキリル文字でロシア語を鍛えます。なるほど、それならば効率的に外国語を教えられますね、かしこまりました。それならば、同じように、ドイツ語、オランダ語、中国語、ギリシャ語をまとめましょう。これで、大国の外国語が制覇出来ます。ハングル文字がないので、朝鮮語もロシア語と同じ扱いでございます。日本語と文法が似ているので朝鮮語は教えるのは容易いですね。フィンランド語、ハンガリー語、トルコ語とまとめましょう。ラテン語とアラビア語とヘブライ語は独立ですね。アフリカとインドは言語が多過ぎてお手上げでございます。ある程度はまとめられますが、東大の教養課程で考えればよろしいかと。東南アジアとインドについては言語が遙様の世界の物とは違いますね。植民地化されないからでございます。それにつきましても教養課程に回して熟慮致します。必修選択科目で全世界の言語が網羅出来そうです。教え子達に満遍なくクラス編成を分けます。まずは基礎外国語と致しまして、英語を定着させましょう。入塾後半年から1年あれば英語は完璧になりますので、それから外国語教育に力を入れて行きます。入門としては英語が一番でございます。いかがでございましょう?」
「わぁ、焔、すごいね!それなら、外国語教育もばっちりだ!政宗、どう思う?」
「ああ、マジですげぇな!遙もやるな!焔、その戦略で俺の外交官達を鍛え上げてくれ。とりあえず俺とエリザベス女王は英語の歌で世界的に英語を共通言語に持って行くから大丈夫だ。世界中バイリンガル以上だ。俺の外交官達も英語は出来るからな。成実が鍛え上げた。それ以外の外国語を各語族にチームを分けて教えてくれ。大国だけで構わねぇ。そうしたら1年後には外交官達も使い物になる」
「流石は政宗様でございます。すぐにでも取りかかります。遙様、他には何かございますか?」

焔が頷き微笑むと、遙はノリノリで話し始めた。

「いち早く農業革命を起こしたいな。植物の三大栄養素を踏まえた窒素系有機肥料を日本全国で普及させたいんだけど、化学合成じゃない肥料が使いたいの。人糞は有機的だけど危険だし。どうすればいいと思う?」
「それでございましたら、最善の策がございます。牡蠣殻を砂のように砕いたものに、米ぬかを土と混ぜて3週間ほど熟成させた物を加えますと、ミネラルとビタミンと必須微量元素が豊富な植物の三大栄養素を補う窒素系有機肥料が作れます。米ぬかは新鮮な物のみ有効です。必ず肥料作成直前に精米でございます。他にはよく腐敗が進み熟成された広葉樹の腐葉土に、広葉樹の枯葉とミミズを大量に加えた物も有効でございます。腐葉土の成分が窒素であり、ミミズの排泄物にリン酸とカリウムとマグネシウムが多く含まれますし、ミミズは地表から20センチの深さに多く存在し、土壌中にトンネルを作るので、土壌中の空気がふんだんになり、作物栽培後も勝手に畑を耕してくれます。腐葉土と枯葉がミミズのエサになります。ミミズの飼育も駄目押しでした方がいいですね。野菜クズを与える事により増えます。ミミズの量の目安は1平方メートルあたり千匹でございます。また、家畜の糞尿に土壌やおがくずや稲わらや米の殻を混ぜ込んで空気をふんだんにしてふんわりとさせますと、土壌中に存在する好気性微生物の分解によって発熱致します。熱を60度に保つ事で、好気的微生物の活動がも最も活発になり、理想的な炭素と窒素の割合の肥料となります。メタンガスが発生しますので、採取すれば燃料になりますね。バイオマスでございます。機密性の高い発酵用の小屋を建ててメタンガス採取の設備を整えましょう。活動盛んな亜硝酸菌や硝酸菌は程よく飢餓状態で窒素過多による害虫や病気の温床を防止致します。十分な熟成がポイントでございます。また、質の良い糞尿を得るためには、畜舎を清潔に保つ事が肝心ですが、この時代では馬も牛もとても大切にされておりますので何も問題ございません。この肥料自体もミミズのエサとなるのでミミズが増えます。今の時代の主流の肥料は家畜と人間の糞尿を貯めた肥溜めからの肥料でございます。それも確かに栄養源ではございますが、同時に汚染源ともなりますし、土壌の窒素過多の温床で害虫や植物の病気の原因になります。これら3つを適切にブレンドする事により、窒素過多にならない理想的に安全な有機栽培が出来、寄生虫感染の危険を避ける事が出来るクリーンな窒素系有機肥料が作れます。土地がやせる事もございません。これを全国に普及させましょう」

遙は驚き目を瞠った。
俺だってびっくりだ。
まさかこんなに簡単に農業革命が起こせるなんて、思いもしなかった。
俺の時代で全部簡単に手に入る。
メタンガスという天然ガスまで手に入る。
すげぇ策だ!!
小十郎が血相を変えて話を聞いている。

「そっか、牡蠣殻と米ぬかか!米ぬかをあらかじめ熟成させたら、最初に加えた土の中の微生物で糖質と脂質が十分に分解されて微生物の活動が穏やかになって、肥料として撒いた土壌の窒素飢餓が防止出来るのか!それで安全に窒素、リン酸、カリウムが含まれた肥料が作れるね!牡蠣殻はミネラル豊富だし、貝類にしては珍しく窒素、リン酸、カリウムの植物の三大栄養素が含まれている上に、人間が必要とする種類豊富な貴重な微量元素まで最適に含まれてるもんね!最高の栄養源だ!米ぬかもビタミンとミネラルとアミノ酸が豊富だ!是非、それを綱元の力で全国に広めて!ミミズの効果までは知らなかったな。ミミズを効率的に捕獲するためにも腐葉土採取はいいね!家畜の糞尿は川の汚染源でしかないと思ってたけど、稲わらやお米の殻で空気を入れたらそんなにすごい肥料になるしミミズのエサになるのか!すごいリサイクルだ!温度管理のための発酵用の小屋は、臭い対策に人が少ない場所に作った方がいいな。バイオマスでメタンガスまで採取だなんて最高だよっ!簡単にお風呂が沸かせるね!牡蠣もお米も腐葉土も家畜の糞尿も伊達領内の奥州でたっぷり採れる!そうだな、北アメリカならオレゴンとカリフォルニアで牡蠣、カリフォルニアでお米も入手可能だ。稲の苗をアメリカ大陸に日本から移植すれば、カリフォルニアなら稲作に適してる。森林ならオレゴンにもカリフォルニアにもあるな。特にカリフォルニアの湾岸部の森林地帯は大きくて有名だ。だから腐葉土が手に入るし、アメリカ大陸には馬が存在しないから、馬も移植だな。牛はバッファローがいる。それで家畜の糞尿が確保出来るよ。稲があるから稲わらもお米の殻も手に入る。アメリカ西海岸だね。オーストラリアならビクトリアやニューサウスウェルズで稲作が可能だし、東海岸の湾岸部は南オーストラリアまで牡蠣の名産だ。ビクトリアに森林が広がってるな。季節が日本と逆だし食料も肥料もたくさん入手出来るね。馬と牛ならオーストラリアに移植しても大丈夫。オーストラリアの東海岸だ。ただし、稲作を展開する時にコアラに気をつけなきゃ」

俺は新大陸での肥料作り展開に大興奮した。
まさかそんな事が出来るなんて、予想もしてなかったし、遙が世界地理をそこまで知っているとまでは知らなかった。
すぐに指令が俺の脳内に浮かんだ。

「それもすげぇ策だな!是非まずはすぐに日本で導入してくれ。特に牡蠣殻だ!冬野菜からすぐに使えるし、来年からは稲作も野菜も豊作だ!綱元、今は牡蠣の旬だから牡蠣殻の山だ。江戸なら日本橋のそばの蛎殻町に牡蠣殻の山がある。それを使え。何せ牡蠣殻はそれだけで植物の三大栄養素が含まれる上に、貴重なミネラルと微量元素の源で理想的な栄養らしいからな!絶対にいい肥料になる!伊達領内なら三陸に大量の牡蠣殻があるから伝令しろ。アメリカ大陸については、インディアンと仲良くなり次第、カリフォルニアで稲作を展開して行けば、油田と金鉱を掘る兵達の食料になるな。ついでにオレゴンとカリフォルニア湾岸部を視察させて、牡蠣がどれだけ自生してるか確かめさせればいい。どうせ金鉱を探索するのに馬は必要だから連れて行くしな。それで手っ取り早く肥料を確保出来る。脱穀前の米を大量に日本から持たせておいて、稲作開始前に田に肥料をやれば一発目から豊作だし食料にもなる。シーズンになったら苗も持ち込まなきゃならねぇな。軌道に乗れば、日米オーストラリア3馬力で肥料を作ってイギリスに行き渡らせ、余剰分を世界に売りつけて財源を確保出来る。その財源はエリザベスと山分けだな。遙、コアラには気をつけるから安心しろ。安全に引っ越しさせるかその土地で飼う。フロンティア派遣前にカタをつけてぇな。伊達領内の屯田兵を派遣してオーストラリアでの稲作と肥料作りを始めさせるか。空母1隻分の屯田兵と馬で十分だな。追加でまた空母を派遣すれば良い。ビクトリアとニューサウスウェルズは伊達直轄地だ。窒素系有機肥料の無料提供と第二次エンクロージャーの情報と引き換えにエリザベスに承諾させる。あくまでアボリジニと仲良くな。焔、金鉱はカリフォルニアのどこにある?」

焔も乗って来て少し興奮したように俺に答えた。

「サンフランシスコでございます。北には大規模な森林地帯が広がっておりますから、そこから腐葉土が得られます。かなりの規模の砂金から金山に至るまでの大規模な金鉱でございます。年間産出量が3180万ドルの金鉱でございます。カリフォルニアのゴールドラッシュで得られる金は総計350トンでございます。小判に換算すると約925万両です。大型貨物船のハッチバルガーならば650トンまで鉱物や穀物が積めます。カリフォルニアのゴールドラッシュの期間は7年でございます。鉱山発掘のためにリーバイスのジーンズが生まれたくらいでございます。これで江戸でジーンズが流行らせられます。ちなみにゴールドラッシュは伊達、テューダー朝支配下であればオーストラリア、ニュージーランド、カナダ、アラスカでも起こります。オーストラリアはビクトリアとニューサウスウェルズです。中心地はそれぞれメルボルンとシドニーでございますね。特にメルボルンではバララットとゾブリン・ヒルが金鉱の中心地です。これは伊達の管理で何とかなります。サンフランシスコの金鉱は、テューダー朝、伊達、長曾我部の力で一気に掘り尽くす必要がございます。そうですね、総計15万人規模で最新技術ならサンフランシスコの金は2年以内もしくは1年以内で掘り尽くせそうです。街を高い石の城壁で囲めば独占出来ます。インディアン達は出入り自由にして交流を深めましょう。他にもブラジル、チリ、南アフリカでゴールドラッシュが起こります。南米はスペイン、ポルトガルの支配下でございますね。19世紀まで誰も気付かないので、それぞれの金鉱を掘り尽くしてから移行して行けばよろしいかと存じます。アラスカはかなり北でございますから夏に採掘致しましょう。サンフランシスコの方が優先ですから後回しでございます。オーストラリアのゴールドラッシュではビクトリアで622トン、ニューサウスウェルズで62.2トンでございます。ニュージーランドではオタゴで1000トンでございます。オタゴの中心地は沿岸部のダニーディンでございます。4ヶ所の合計は、2034.2トンで、小判に換算致しますと、約5381万両でございます。この採掘は犯罪者の服役には使えません。全て屯田兵で行いましょう。害のない精錬方法がご用意されているはずでございます。あくまでゴールドラッシュでの金の採掘を初めは目標と致しましょう。何故ならアメリカ全土とオーストラリア全土の金鉱はなかなか枯渇しませんので掘り尽くすのは難しいからでございます。オーストラリア全土の金埋蔵量は9800トンでございます。アメリカ全土の金埋蔵量は3000トンでございます。オーストラリアとアメリカの金鉱はかなり深層までの金を含みますので、到底掘り尽くせません。ニュージーランドも多くはございませんが採掘の余地がございますね。ゴールドラッシュ分の金鉱を掘り尽くしてから、後々テューダー朝と伊達の直轄地として全ての金鉱を恒久的に保護するより他ございません」
「えっ!?そこまでは知らなかった!」

俺達は全員大きく目を見開いて絶句した。
俺も正直驚きだ。
こんなに大規模な鉱山だなんて予想もしてなかった。
すげぇ規模の鉱山だ!!
こんな話、全然聞いてねぇ!!
ゴールドラッシュ、マジですげぇ!!
すぐに兵の分配と採掘の展開を計算する。

「マジでか!?じゃあ、カリフォルニアの金鉱対策としては伊達が7万人屯田兵を出して、エリザベスが5万人の兵、長曾我部が3万人の屯田兵が妥当だな。それなら国内の守りは十分だ。月一度様子をみんなで見に行って盛大な宴を開いてやれば、野郎共も金を得ても絶対に変な気は起こさねぇ。目一杯褒めてやって褒美はその時弾むしな!採掘した金からそんな事、いくらでも出来る。最初のうちは貯蔵した金で何とかなるし、他にも金を得る手段は考えついている。オーストラリアとニュージーランドの食料確保は米以外にはどうしたらいい?」
「エリザベス女王の力をお借りして、オーストラリアとニュージーランド両方で羊の飼育を致しましょう。牧草は自生しております。カブの栽培で冬場の羊のエサも乗り切れます。カブは日本から持ち込みましょう。シドニーもメルボルンも沿岸部は海と川に面しておりますので、漁で魚介類は補えます。サンフランシスコも魚料理やロブスターという伊勢海老のようなエビやムール貝で有名でございます。そもそもタンパク質の食料として牡蠣が十分にございます。牡蠣の網焼きでもすれば盛り上がります。牡蠣料理だけで豊富でございます。魚介類はバリエーション豊富でございますから日替わりで楽しめます。野菜ならば、アメリカ、オーストラリアにおいてはどの種類の野菜でも育ちそうなので、屯田兵に苗や種を持たせて下さい」
「分かった。漁は長曾我部に依頼する。全ての地域でエリザベスと長曾我部と合同で採掘だ。農業は伊達が得意だ。サンフランシスコ、シドニー、メルボルン、オタゴの町の規模の大きさは?」
「サンフランシスコが121.4平方キロ、シドニーが12370平方キロ、メルボルンが9990平方キロ、オタゴが31290平方キロでございます。江戸が外堀の少し外側の三鷹以内で662平方キロでございます。そこから計算すれば政宗様ならお分かりになります。後でLINEをお送り致します。サンフランシスコには山がございますので、恐らく城壁用の岩はそこから得られます。金鉱採掘後、城壁は壊して下さい。生態系を守るためでございます。オーストラリアは街を掌握後、兵で守りを固めるので十分でございます。城壁は必要ございません。広過ぎますし、コアラの保護にもなります。ニュージーランドのオタゴも広すぎますし、動物を守れますから、沿岸部の守りだけで十分でございます。そもそもニュージーランドにはフロンティアを派遣せず、存在を隠し通せば後に金の採掘に集中出来ます。オタゴは海辺の長さが短いのでそんなに守りの兵力は必要ございません。先住民はマオリ族です。沿岸のペンギンなどの野生動物保護にお気を付け下さい」
「分かった、追加で12万人の伊達の屯田兵を送って、手っ取り早くサンフランシスコに城壁を築かせて、すぐにオーストラリアに9万人移動させて警備と採掘に当たらせる。ニュージーランドは3万人でオタゴ沿岸部の警備だ。それで12万人の兵がオーストラリアとニュージーランドの警備と採掘に総計回せる」
「流石でございます、政宗様」

これだけの兵を養うには現地の開拓が必要だ。
食料確保の戦略が不可欠だ。

「カリフォルニアの米の産地はどこだ?」
「サクラメントでございます。サクラメント川という大きな川を水源に出来ます。サクラメントバレーという農地が軍馬でサンフランシスコまで2時間半強の距離でございます。米と野菜の栽培がそこで出来ます。サンフランシスコは湾に面したサクラメント川の河口ですので、郊外で流域において畑作と稲作が可能かも知れません。特に畑作は間違いなく出来るはずでございます」
「それはすげぇ好都合だ。郊外の土地の状況をすぐに視察させなきゃならねぇな。軍馬で2時間半は流石に少し遠い。そうかっ!!だったら運搬用の船を願ってサクラメントバレーとサンフランシスコを川で繋ぐかっ!!それなら上流のサクラメントバレーで稲作が展開出来るぜっ!!ちなみにオーストラリアの米の産地は?」
「流石でございます、政宗様。シドニーもメルボルンも沿岸部は大きな川の下流でございますから、どこでも稲作は可能なはずでございます。かなり大規模な稲作が展開出来ます。同時に野菜の栽培も展開して下さいませ。ニュージーランドは稲作には適さないので、オーストラリアから米を運ぶのがよろしいかと。野菜も種類が限定されそうな気候でございますから、オーストラリアと分け合いましょう。とても近いですから。その代わりニュージーランドは牧羊に最適でございます。ワインのための葡萄もよく育ちますし、乳牛の飼育にも適しておりますからチーズなどの乳製品を作れます。小麦や大麦やライ麦も育ちますね。パン食向きでございます。エリザベス女王指揮下の屯田兵か羊飼いや牛飼いに任せるべきでございます。この機会に屯田兵の発想をお伝えしてもよろしいかと。ヨーロッパにはない発想でございますから」
「屯田兵については伝えた事があるが、念を押すに越した事はねぇな。オーストラリアは野菜まで栽培出来るのか。来年から米も豊作だから、余裕で農地開発までの数年は兵達を養える。そもそも畑を耕すのにそんなに手間はかからねぇ。すぐに野菜は栽培出来る。屯田兵に畑付きの簡易的な家を作らせればいいだけだ。みんなで協力すればそんなのはあっという間だ。ニュージーランドのワインと乳製品は魅力的だ。エリザベスと米と野菜とワインと乳製品を共有すればいい。俺もワインが楽しみだ!」
「それからアメリカ最大の稲作はアンカンソーでございます。東側の内陸でございますので後々考えるので十分でございます。ニューヨークからならば軍馬で12時間かかります」
「分かった。後々考える。東海岸ならエリザベスにアンカンソーを任せる」

遙は感動しきった表情で、興奮して頬を染めて俺を見つめた。

「政宗、すごいね!流石は天下人だ!それだけの軍勢がすぐに動かせるなんて!それに、すごい司令だ!本当に常備軍だね!世界史教えて本当に良かった!すっごく惚れ直した!ワインと乳製品は嬉しいな!」
「遙、お前がそう言ってくれて俺は本当に嬉しいぜ!正直、有頂天だ!お前のためにも世界史を勉強しながら天下を取って本当に良かったぜ!!」

こんなに惚れ直してもらって、俺はもう最高潮に幸せだ!!
この調子で世界の伊達政宗に俺はなる!!
焔も驚いたような表情の後、微笑んだ。

「政宗様、かしこまりました。綱元様に指揮を執って頂きます。アメリカ大陸とオーストラリア大陸につきましては政宗様と遙様に賛成でございます。流石でございます。イギリスとの交渉と肥料の輸出につきましては大変驚きました!」

身を乗り出して黙って聞いていた小十郎も、驚いて声を上げた。

「政宗様、金鉱の規模にはこの小十郎も大変驚きました!カリフォルニアだけで350トンで925万両でございますのに、アメリカとオーストラリアとニュージーランドを合わせますとゴールドラッシュだけで約5381万両、その上追加の埋蔵量が1万2千800トン。小判に換算致しますと……3億3863万両でございますか!!総計4億両弱でございますか!!想像もつきません!!これで世界最強でございますねっ!!」

とても興奮して俺に話しかけた小十郎は、すぐに焔に向き直った。

「焔、俺の畑にもお前ぇの考えた肥料が使いてぇな。肥料は俺オリジナルだが、その、米ぬかと牡蠣殻の肥料を是非導入してぇ。特に牡蠣殻だ!その腐葉土の肥料もすごそうだから試してぇな!ミミズは導入してるが、数までは知らなかったからな。遙様おすすめならば、間違いねぇ。とにかく全部を最適なブレンドで頼む」
「小十郎様、かしこまりました。発酵済みのミミズ入りの腐葉土も家畜の糞尿も八王子あたりで入手出来ます。家畜の糞尿ならば江戸城内の敷地でも手に入りますね。牡蠣殻は蛎殻町の物を使います。何ならこの焔が八王子まで出向いて入手し、ブレンド致します。最低3週間はお待ち頂きますが」
「焔、ありがとう!流石、小十郎、お野菜名人!どうせなら、夏野菜も一年中食べたいから、ビニールハウスと小十郎が不在でも大丈夫なように水やり用のスプリンクラーを政宗に願ってもらおうかな。水源はお堀か井戸ね。美紀、iPadで小十郎にビニールハウスとスプリンクラーを小十郎に見せてあげてくれる?導入は江戸城の小十郎の畑だけでいいよ」
「オッケー!」

美紀は、ビニールハウスの画像を見せて、どうやって温度管理をするか説明をし、スプリンクラーの動画を見せて、自動的に水やりが出来る事を説明した。
小十郎は感嘆の吐息を漏らしていた。

「これならば、この小十郎が不在の折にでも、野菜が年中育てられます、政宗様。収穫の時期だけ野郎共に司令すれば十分でございます。スプリンクラーだけ出陣前にいち早く導入し、今回の出陣から戻ってからビニールハウスも早速取りかかるのはいかがでございましょう?夏野菜用の畑を耕す時間が取れませんから」
「ああ、いいアイディアだ、小十郎。遙はトマトとかナスとかキュウリとか夏野菜が好きだからな。旅行から帰ったら是非作ってやってくれ」
「左様でございましたか。ますます腕を奮いますのでご安心下さいませ。美紀、水やりの量とタイミングも指定出来るか?」
「うん、出来るよ!」
「なら、俺が政宗様にお願いするから、政宗様に作って頂く」

遙が嬉しそうに声を上げ、続いて美紀も嬉しそうに声を上げた。

「わぁ、小十郎、ありがとう!」
「小十郎、私も超嬉しい!小十郎の野菜、超絶美味しいんだもん!!」
「遙様、お任せ下さいませ。美紀にもそんなに喜ばれてすごく嬉しいぜ!」

小十郎は嬉しそうに、にこにこと微笑んだ。
俺は感動が止まらないどころの話ではない。
金の埋蔵量と農業展開に興奮しすぎだ!
ゴールドラッシュの金の量だけでもマジでやべぇ!
この金の規模なら、全てのイベントの主催の財源の確保が恒久的に出来る。
すぐにでもゴールドラッシュを独占したい!
国が絶対滅びないレベルの金だ!!
南米のゴールドラッシュも奪ってやるぜっ!!
更にいいアイディアが浮かんだ。

「遙はやっぱすげぇな!こんなに簡単に農業革命が起こせるなんて、思いもしなかったぜ!ついでに大量の金が手に入るしな!牡蠣殻がそんなにすげぇなら牡蠣の養殖が必要だな。牛と馬はいくらでもいるから、家畜には困らねぇ。米もたっぷりだしな。精米の技術が進んでるから米ぬかは余ってるくらいだ。焔、後で牡蠣の養殖の仕方を教えてくれ。産地は俺がよく知ってるから、俺が願う。春からは岩牡蠣を使えば秋初頭まで岩牡蠣は食べれるし、その後は真牡蠣に移行だから、年中対応出来るな。日本海側の伊達領湾岸全域と三陸、下総の銚子辺りで岩牡蠣が採れるか。そこで養殖すれば十分だな。綱元、肥料の全国普及、頼むぜ!原材料は全て伊達領内で確保しろ。伊達の専売で安値で全国に流通させて税を得る。それで人件費と材料費と利益を得る。買い取るのは大名だ。農民には負担をかけねぇ。その代わり肥料買取のための交付税を必要量以上にたくさん弾んでやれ。特別な交付税だ。あれだけ金が得られるからそこから捻出だ。技術は伊達で独占だ。伊達領内の農民と屯田兵の時間の使い方は、空いてる時間にひたすら肥料作りだな。ただし、1日多くても農業を合わせて10時間労働で週休2日制だ。一度植えれば毎日何時間も世話しなくても作物は育つからな。空き時間で肥料を作らせろ。それならすぐに全国に行き渡る。何せ武蔵から北は農村ばかりだからな!」
「政宗様、承知致しました。遙様にはまた驚かせられました!流石でございます!政宗様も流石でございます!それならば大名達も納得致します。むしろ大喜びでございます。真牡蠣と岩牡蠣のローテーションと肥料を作る時間配分も流石でございます。確かに農業は繁忙期と暇な時の差が激しいですね。この綱元に全てお任せ下さいませ。小十郎用の肥料は今回だけ焔に任せます」
「綱元様、お任せ下さいませ。遙様も政宗様も流石でございます。他には何かございますか?」
「遙、美紀、他にはあるか?」

二人を見やると遙がすぐに頷いた。
頭の中にアイディアがたくさんあるという表情をしている。
俺は遙に好きなだけ案を出させるように誘導する事にした。
更にすげぇ政策が出来そうな予感がする!!

「肥料改革で国民の寄生虫の感染が激減するから、花粉症に始まるアレルギーの患者さんが増えるよ。杉の植林はあまりしない方がいいと思う。アレルゲンにならなさそうな動物にも優しい木材に最適な木を選んで植林させて。植わってるものは仕方ない。これは全国的に徹底した方がいい。伐採した杉の木は割り箸や町の発展や医療設備のための学校や診療所を建てるための木材に利用させて」
「それは良き考えですね。肥料を変える事による医学的影響につきましては、遙様のお考え通りだと存じます。東大病院でIgE抗体激減に過敏に反応しないような薬剤学的アプローチも考えてみます。当面は抗ヒスタミン剤で対応致しますが、免疫系の働きを熟慮した新薬を黒脛組に研究させます」
「流石、焔、頼りになるよ!寄生虫関連で思い出したけど、今のうちに九州南部から南の島々の陰嚢水腫を起こすフィラリアの撲滅ね。予防薬や治療薬があったら投与して。焔が獣医学部の知識も持ってるなら、狂犬病の撲滅もね。日本オオカミが絶滅してしまうから保護。狂犬病さえ防げはオオカミも狂わない。それから、稲の品種改良の指導もよろしくね!寒さや暑さに耐えるように。全部掛け合わせで品種改良。東大農学部内の田んぼで出来る。遺伝子組み換えは禁止」
「かしこまりました。流石は遙様でございます」
「遙、品種改良は最高の策だ。やませが吹いても猛暑でも安心だ。オオカミの事までは知らなかったぜ。他には?」
「政宗に頼まれていた、上下水道の整備ね。まずは下水道の整備から着手。水質汚染が防げて、それで接触感染による感染症がかなり防げる」
「かしこまりました。大変良き策でございます。まずは全国的に下水道設備を整備致しましょう。古代ローマの建築法を参考にすれば、この時代でも実現可能でございます」
「流石だ、焔。それは俺も考えていた策だ。他には?」

ちらっと遙を見やると、頷いてすぐに話し始めた。

「焔、火薬って今はどうやって作ってるの?花火を打ち上げるのに必要だ」
「木炭と硫黄と硝石からでございます。硫黄ならば硫黄系の温泉地で簡単に手に入ります。火山の多い日本ではどこでも手に入ります。木炭も燃料ですからどこでも手に入ります。硝石は、以前は信長が広げた南蛮貿易により東南アジアからヨーロッパの商人経由で輸入しておりましたが、それでも足りなかった事と貿易のコストがかかるので、硝石の生成は古土法が戦国時代末期に広く普及致しました。しかし、古土法は自給出来ても効率が悪いですね。50年ほど経った古い民家の床下で硝酸カルシウムを含んだ土を採取し、ヨモギなどのアクの強い草木を集めて煮詰めて炭酸カリウムを得て、反応させて乾燥させて硝石を採取する必要があるからでございます。民家の床下で硝酸カルシウムの蓄積させるのに、長くてそれくらいの時間がかかります。古民家の確保が大変でございます。政宗様の江戸時代の世では東南アジアから簡単に硝石が輸入出来るため、伊達では火薬は余ってるいるくらいでございます。古土法はヨーロッパで取られている方法でございます。しかし、花火のためだけでなく、今後、世界の警察となるためには、もっと効率の良い硝石の産生方法を実現し、かつエコロジカルでバイオロジカルな方法を取るとよろしいと存じます。硝石の生成でございますから、鍵を握るのは亜硝酸菌と硝酸菌でございます。培養法と呼びます。古土法の応用でございます」

焔は楽しそうに言葉を切って俺と遙を見つめた。
何かまた焔の面白い誘導が聞けるのかと思うとわくわくする。

「培養法か、聞いた事ねぇな…」
「政宗、私も知らない。エコロジカルでバイオロジカルで亜硝酸菌と硝酸菌を使うのか…。じゃあ、まずは土壌が必要だ。土壌中の亜硝酸菌なら尿素を分解して、アンモニアを生成するね。更に土壌中の硝酸菌がアンモニアを分解して亜硝酸塩が得られるのか。ということは、尿素の原材料に家畜や人間の糞尿が必要だ。でも、清潔とは言えないから、家畜に限定かな。それから、亜硝酸塩は土壌中のカルシウムとすぐに結合して硝酸カルシウムになるね。これが窒素系肥料の作り方の基本だ。これで得られた硝酸カルシウムにアクの強い草木を煮詰めて出来た炭酸カリウムを加えたら、古土法とほぼ同じ方法で硝石が得られるね」

焔は楽しそうに微笑んで頷いた。
まるで生徒と教師のやり取りだ。
やっぱり遙の頭脳はすげぇ。
甲斐で読んだ有機化学の歴史の本に、確かそんな物質の名前が書いてあった。
それを専門外なのに覚えているのだから、大したもんだ。

「左様でございます。しかし、家畜の糞尿は貴重な肥料の原料でございますから、別の方法でアンモニアを得ます。日本は全国的に養蚕が盛んでございます。農民達は蚕の糞の処分に困っているのが現状でございます。ですから、アンモニアには蚕の糞を使い、土と藁やもみ殻などを使います。蚕の糞は臭いません。熟成を促すために、肥料と同じように藁やもみ殻を使います。ここで手っ取り早くアクの強いヨモギなどの草を使います。細菌の活動を活発にさせるために、民家の暖かい囲炉裏端のそばに穴を掘らせ、そこにヨモギと蚕の糞と藁ともみ殻を交互にふんわりと重ねて行って熟成させます。それで結晶化した硝石を含んだ土が得られます。亜硝酸菌と硝酸菌は好気的細菌でございますから、半年に一度穴の中の蚕の糞や草などをふんわりとかき混ぜます。熟成の目安は5年でございますね。穴は1メートルくらいのすり鉢状、つまり半球状で十分です。これは遙様の世界の江戸時代の薩摩藩で取られていた方法で、かなり大きな硝石が得られたそうでございます。70ヶ所の村で37.5トンの硝石が得られたそうでございます。これを伊達領内の農村の各家庭で行えば相当な硝石が得られます。十分に硝石を結晶化させた蚕の糞と稲わらやよもぎなどは、炭酸カルシウムをよく含むので、よくかき混ぜて田畑に撒けば、肥料となります。同時に海外の硝石の鉱山を押さえれば、火薬の原料はたやすく手に入ります。南米のチリが有数の鉱山でございます」

俺と遙は大きく目を瞠った。
すげぇ生産効率だ!
これはすぐにでもやらなきゃならねぇ政策だ!!
これなら硝石の輸入の必要はなくなる!!

「そんな方法があるんだ!知らなかった!すごくエコロジカルでバイオロジカルで、尚且つ絹の生産高まで上がるね!しかもそんなに効率が良いなんて知らなかった!残骸が更に肥料になるなんて、最高!」
「すげぇな!冬場は農業が限られてるから、どこの農家でも養蚕はある程度やってるし、民家の天井裏の養蚕所の糞の処理に困っているのも確かだ!画期的だぜ!糞の処理に困らねぇなら、養蚕をもっと本格的に全国的に推奨したら絹の生産高はもっと上がるし、今までより遥かに大規模な輸出が可能だ!まだごく一部、明からの輸入に頼ってすらいるから、これは絶対にやらなきゃならねぇ政策だぜっ!!蚕の餌の桑も日本なら基本的にどこでも育つし、狭い農村でも簡単に育てられるし、桑畑なら田畑をそんなに圧迫しねぇな!!村の庭でも足りるレベルだ!しかも残骸が肥料になるなんて無駄がねぇ!画期的過ぎるぜっ!!小十郎、どう思う?」

小十郎は驚愕の表情で聞いていたが、微笑んで頷いた。
綱元も微笑んでいる。

「誠に素晴らしき策でございます。絹の生産高がもっと増え、更なる輸出が出来るようになりましたら農民の生活がもっと豊かになります。その上、火薬の原料の硝石が廃物利用でほぼほぼ放置するだけで得られて、残骸も肥料になるなど最高でございます!!このような策など聞いた事はございません!!夢のようでございます!!」
「政宗様、肥料作りと硝石作りは農村に強く奨励致します。正直ほとんど放っておくだけでございますから、農民の手間もかかりません。全国的に展開し、大名達には防衛に十分なだけの最低限の硝石を保証し、後は全て農民や屯田兵から伊達が直接買い取るのはいかがでございましょう?農家と屯田兵の農業以外の時間の使い道は、家族で分担での肥料作りと絹の生産に致します。手間取るのは蚕の糞の掃除と生糸作りだけでございます。農民や屯田兵もこぞって養蚕に励むでしょう」
「流石だ、綱元。まずは伊達領内で実験をし、作れる硝石の数を見積もれ。硝石は東南アジアから簡単に輸入出来るが、出来れば国内で自給自足したい」
「政宗様、かしこまりました。流石でございます」
「政宗様、理論上でよろしければ、一つの穴当たり生成出来る硝石の量は今すぐにでも見積もれます。実験には及びません。実験する5年の時間がもったいのうございます」
「マジか!?焔、是非今すぐ計算してくれ!!」
「かしこまりました」

焔は目を細めて頷いた。
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