「そんなに感激してもらえて嬉しいぜ!だからこそ、焔が俺の宰相なんだし、遙の命を救ってくれた焔への俺からの礼の一つだな」
「政宗様には感謝してもしきれません。佐助様とは違う形ではございますが、俺も配下のくノ一達も、もしや幸せになれるやも知れません。それ以前に、政宗様と遙様のお力になれるだけで、俺は十分に幸せでございます」
「焔、お主らしいの。政宗公、焔の言う通り、それこそが焔の一番の幸せじゃ。くノ一達も救われるであろう。わしも、政宗公に感謝してもし切れぬ。この武田信玄、改めて礼を申す」
信玄は深々と俺に頭を下げた。
「そんなに喜ばれると、王への即位が楽しみでたまらねぇな。その後は大帝になるしな!お前の娘の遙は、大皇后だ!日本での婚儀が楽しみだな、信玄!」
「誠、楽しみな事じゃ!」
「Hey!誰か、今日の朝の瓦版、人数分持って来やがれ!俺もまだ読んでねぇからな。綱元、瓦版は人数分手配してるだろうな?」
「ええ、もちろんでございます。おいっ!瓦版は政務の部屋だっ!とっとと持って来やがれっ!」
「すぐ行くッス!!」
廊下の部下が返事をしてバタバタと走り去って、しばらく談笑しながら美紀の肉じゃがを褒め称えていると、部下がバタバタと戻って来た。
「筆頭、失礼しまっス!」
「おう、入れ」
部下に差し出された瓦版の束を俺は受け取った。
「瓦版の筆頭、最っ高にcoolでした!遙様も美紀様も最高ッス!俺の永久保存版ッス!」
「そうか、今から俺も読む。楽しみだ!下がっていいぜ。おい、成実、みんなに配れ。これだけあれば足りそうだ」
「Okay!俺も読むの、超楽しみ!」
部下はすぐに下がり、成実はさっと俺達の座卓の分を配って、残りを長曾我部にちゃっかり任せて登勢を連れて戻って来た。
「信玄、紹介するぜ。俺の嫁の登勢だ。登勢とは5年以上夫婦だが、心の臓を患っていて、今まで江戸に来れなかったし、夜伽も出来なかったんだ。登勢が危篤になって、猿飛達が亘理まで凧出してくれて、一緒に行った美紀ちゃんが当面の危機を救ってくれて、江戸で遙ちゃんと美紀ちゃん共同で、登勢を夜伽も出来る健康体にまで治してくれた。これでやっと俺達は本物の夫婦になれる!まるで夢みたいだぜ!猿飛達を伊達にくれて、礼を言う。遙ちゃんを信玄の実の娘にしてくれた事もな!じゃなかったら、俺は登勢を永遠に失う所だった。俺の妻は登勢だけだ。他の女なんていらねぇから、側室も後妻も娶る気なかったからな!」
「成実様…」
「何と!!登勢様のお噂は聞いた事がある。夫婦なのにずっとそばにいられぬほどの重い病だと。それは、誠に良かった!!佐助達の凧が役立ったのだな!それにしても、遙と美紀の医術には驚きじゃ!心の臓まで治せるとは!」
「ああ、マジですげぇ!だから、梵の婚儀の後ろ盾には大感謝だぜ、信玄!じゃなかったら、登勢は助からなかったからな!」
「そうであったか!流石、遙は4匹のマムシの毒からわしを救ったおなごよ!わしも遙に命を救われた」
「マジで!?それは知らなかったぜ。良かったな、信玄!」
「うむ。遙には感謝の言葉もない。5日間も徹夜をしてわしを救ってくれたからのう」
「はぁあっ!?」
俺は驚きのあまり、成実と同時に叫んだ。
5日間も徹夜だとは聞いてはいたけど、改めて聞くとなんて無茶をさせてたんだと怒りが湧いてくる。
俺が口を開く前に、成実が反射的に信玄に向かって怒鳴り出した。
「そんなんだから、遙ちゃん、今、ぐったりなんだろ!?聞いてみたら、疱瘡の治療の時も、遙ちゃん、2ヶ月もほぼ仮眠だけで生きてたって聞いたぞ!?」
「成実、その上、遙は2ヶ月間も飲み物の流動食だけだ。それも究極のストレスの環境下でだ。だから、遙は甲斐で胃の腑が破れそうになって吐血して死にかけた。俺、遙の余命が1ヶ月って泣きながら遙に宣告されて、世界の終わりかよってくらい号泣したぜ。小十郎もだ。美紀がすぐに遙を治しに来てくれなかったら、俺も後追い自殺だったぜ…はぁ…」
俺が溜息混じりにそう言うと、成実は更に眉を釣り上げて怒鳴り散らし始めた。
「はぁああっ!!?梵っ!?昨日の民衆へのパフォーマンス、てっきり石榴石教、教祖天下人伊達政宗による壮大な捏造女神伝説最終編だと思って、今までになくやけにリアリティあって過去最高傑作だってすげぇ感心しながら聞いてたけど、あれってガチのマジの事実だったのかよっ!?俺、武田の姫の疱瘡の治療に手間取るって伝令しか受けてねぇぞっ!?梵、お前、またよりによってそんな大事な事を俺に隠してやがったなっ!?しかも2ヶ月の断食だとっ!?おい、信玄、お前、梵と遙ちゃんにもっと謝って感謝しろよっ!!人の嫁を、それも天下人の梵の嫁を、医者だからって、いいようにこき使いやがって!!遙ちゃん、いまだに疲れ切ってて、梵も7年も操を立てて待ってたのに、夜伽をほどほどで我慢してるんだぞっ!?お前、梵に心の底から謝りやがれっ!!監督不行き届きにもほどがあるぞっ!!お前、仮にも領主だろっ!?」
「成実、大丈夫だから…。お館様は何も知らなかったし…。私はどう見ても不審者だったし、黙ってた私が悪いし…」
「遙ちゃんは黙ってて!!これは領主のけじめだからなっ!!いいか、信玄、これから大説教会だっ!!俺はとてもじゃねぇが黙ってらんねぇからなっ!!梵と遙ちゃんと小十郎を泣かせたのも絶対に許せねぇなっ!!人の上に立つなら、下の人間をもっとちゃんと見て、責任持って面倒見て、しっかり教育もしやがれっ!!その上で人を上手く使いやがれっ!!梵みたいになっ!!梵の黒脛組は猿飛忍隊の30倍以上の規模だが、梵は全員よく見て、よく褒めてるし、報酬も弾んでるし、梵自身尊敬されるように毎日努めてるぞっ!!だから誰も離反しねぇんだっ!忍頭の業なんて全然必要ねぇなっ!!みんな梵が大好きだからなっ!!常備軍まで入れたら伊達軍は100万人規模だけど、親戚総出で俺達で手分けして、みんなでちゃんと部下達全員可愛がってるからなっ!!てめぇが遙ちゃんの事を知ってたとか知らなかったとかなんて、そんなの全然関係ねぇっ!!そんな言い訳、天下に通用するかよっ!!梵に会いたいくても無力で会えなくて、困ってた遙ちゃんの本質を、一発ですぐにきちんと見抜いて、真っ先に力になってやれなかった時点で、てめぇは領主としての器が小せぇんだよっ!!そんなの人の上に立つ人間に値しねぇなっ!!人間性なんて常日頃からしっかり色んな人間見てりゃ、どんな人間かおしゃべりすれば、初対面でもだいたい一瞬ですぐに分かるだろっ!?それが上に立つ人間の洞察力だぜっ!!天下取りたかったなら、尚更だっ!!遙ちゃん、絶対にすっげぇ困ってて不安そうだったに決まってるっ!!俺には手に取るように遙ちゃんのその時の表情が分かるぜっ!!武田で手に負えなかったら、天下の伊達に相談してすぐに手を借りれば良かったじゃねぇかっ!!それですぐに万事解決だっただろっ!?領主がそんなんじゃ武田領の民達がみんな可哀相だぜっ!!梵にも内緒だなんて、そんなに腕利きの医者を武田だけで独占したかったのかよっ!?それに、疱瘡の治療の時、遙ちゃんがてめぇから離れてて目が届かねぇなら、斥候なり猿飛の忍なり使って、遙ちゃんの様子くらいちゃんと見てあげられただろっ!?そもそも武田の主力の真田幸村と猿飛佐助がべったり張り付いてたのに、何で遙ちゃんがこんなにぼろぼろなんだよっ!?てめぇ、何の報告もあいつらから聞いてなかったのかよっ!?そんなの絶対ぇ、おかしいだろっ!?あいつらにどういう教育したら、一体全体そうなるんだよっ!?報告、連絡、相談は、上司と部下の基本中の基本だろっ!?てめぇ、そんな基本すらあいつらに叩き込んでなかったのかよっ!?職務怠慢もいい所だぜっ!!それに、仮にも疱瘡なんていう、危険極まりねぇ不治の流行病の治療を、遙ちゃんにしてもらってたんだろっ!?遙ちゃんにちゃんと感謝して、大切にする気持ちとかなかったのかよっ!?まさか腕利きの医者だから、病を治すのは当たり前で、こき使っても構わねぇなんて、遙ちゃんの好意の上に胡座をかいて、遙ちゃんを蔑ろにしてたんじゃねぇだろうなっ!?だから、遙ちゃん、仮眠しか出来なかったんじゃねぇのかよっ!?絶対そうだったに決まってるっ!!恩義を感じてもっと大事にするのが普通の人間がする事だっ!!仮にもそもそもがてめぇの命の恩人だろっ!?何で2ヶ月も断食なんてさせてたんだよっ!!知らなかったとは言わせねぇっ!!薄情にもほどがあるぜっ!!遙ちゃんは物じゃねぇ、人間だっ!!普通だったら、そんな献身的な医者には、心の底から感謝して、丁重にもてなして労わるだろうがっ!!遙ちゃんの吐血は、全部、てめぇの領主としての責任放棄のせいだっ!!職務怠慢のせいだっ!!誰にも助けてもらえなくて無理した結果、胃の腑を病んで遙ちゃんが死にかけた時、梵と遙ちゃんがどんだけ辛くて哀しかったか、多妻持ちのてめぇなんかには、一生分かんねぇだろうなっ!!二人とも7年間もの間、再会を夢見続けて、互いだけを一途に想い続けて操を立てて、待ちに待った奇跡の再会だったんだぞっ!?梵がどんだけ遙ちゃんだけを想って、7年間もずっと俺達にも黙って、縁談断りながら天守閣で独りで、二人の恋の思い出の歌を寂しそうに、でも幸せそうに歌って、こっそり泣いてたと思っていやがるっ!?俺はガキの頃からずーっと一筋に登勢命だったから、梵と遙ちゃんがどんなに辛くて哀しかったか、胸が苦しくて痛くなるほどよーく分かるぜっ!!俺は最愛の登勢をガチで何度も失いかけたから、尚更だっ!!世界で一番その時の梵の気持ちが分かるからなっ!!正直今にも涙が出そうだぜっ!!っつか、リアルに思い出して、マジで涙が出て来たじゃねぇかっ!!Shit、ガチでマジで涙が止まんねぇっ!!クッ…チクショウ!!…ううっ…ぐすっ…。ううっ…チクショウ…梵と遙ちゃんが可哀想だっ!!ううっ…あんな思いを経験するの、俺一人だけで十分だったのにっ、チクショウっ!!梵にだけはあんな辛い思いなんて、絶対ぇ経験させたくなかったのにっ!!くっ…てめぇ、うちの大切な梵に何て事しやがったっ!!梵が可哀想だろっ!?梵を深く傷付けやがってっ…ぐすっ…!!ううっ…そもそも、信玄、自分の部下達に、てめぇの命の恩人にどう接するべきか、そんな基本中の基本の教育すら徹底して来なかったんだなっ!!根本的におかしいじゃねぇかっ!?てめぇそれでも本当に人の上に立つ人間かっ!?てめぇ、領主大失格だぜっ!!きちんと領主の責任果たしやがれっ!!心の底から反省しやがれっ!!じゃねぇと、この天下の江戸城の留守を、俺は信玄なんかに任せらんねぇよっ!!置いてく野郎共が心配でたまらねぇからなっ!!俺達の背中だって安心して預けらんねぇ!!梵と遙ちゃんの婚儀の後ろ盾なんかだけじゃ誠意が全然足りねぇよっ!!梵、遙ちゃん、俺はこれだけは絶対に譲れねぇなぁああーーっ!!」
成実は最後は涙まで滝のように流し、しゃくりあげながら、激情と殺気を迸らせた。
こんなに泣きながら怒り狂って、俺の秘密すら無意識にバラす成実は本当に珍しい、ってか、初めてだ。
成実も、小十郎と違った意味で俺命だし、伊達軍命だ。
この7年間、よく天守閣の俺の様子を窺ってすげぇ俺の事を心配していたし、天守閣の人払いを徹底したのは成実だ。
隣で綱元も怒りに満ちた厳しい顔つきで頷いている。
綱元の向かいの小十郎の表情はもっと怒りに満ちていて厳しい。
信玄は青ざめて言葉を失っている。
成実はしゃくりあげながら、何度もチクショウ、絶対許せねぇと言いながら本格的に泣き出した。
まあ、成実の言ってる事は正論だし、俺の言いたかった事、そのものだ。
義理人情が伊達軍のポリシーでもあるし、俺も伊達軍命だ。
だから、俺達はみんな仲が良くてノリがいい。
長曾我部軍も同じだ。
だから、あいつとは馬が合うし、軍勢のノリもいい。
ちらっと長曾我部を見やると、長曾我部も厳しい顔つきで深く頷いた。
「全く成実の言う通りだぜ!俺だって野郎共になんかあったらすっ飛んでくし、その心づもりはいつでも出来てる。ただ、そうならねぇように、日頃からみんな仲良く盛り上がるように、天下統一の戦の前から教育は徹底してたぜ!それから、困ってる奴がいたら、知らねぇ奴でも、例え領土外の奴でも助けになれってな!どうしたらいいか分からなかったら、野郎共で会議させて、悩んで出した結論はちゃんと全部後で俺に報告させて、悩みまくってそれでも分からなかったら俺をすぐに呼べってな!遙がもし俺の領土に来てたら、すぐにでも独眼竜の耳に存在が知れてたぜ?遙の事だから、怖気付いて本当の事を言えねぇ所に、信玄、お前ぇ、詮議でもして怖がらせたんじゃねぇのか?それで遙が独眼竜の事を黙っちまったんだろっ!?てめぇ、娘を嫁がせたかったからなっ!!まさか、遙にそれを聞かせたんじゃあるめぇなっ!?そんな事したら、下手な事を言ったら殺されるんじゃねぇかって遙が怯えて、真実を黙っちまうに決まってんだろうがっ!!独眼竜が遙を見つけ出したのは奇跡に等しいぜっ!!だから1ヶ月半もかかってたのかよっ!!超頭のいい独眼竜ならそうそう手間取る事なんてまずねぇのに、道理でおかしいと思ってたぜっ!!それだったら、俺も信玄を許してはおけねぇなぁあーーっ!!」
長曾我部が信玄を睨みつけながらバッサリと切るように言うと、信玄は更に青ざめた。
そこに慌てて猿飛が飛んできた。
「ゴメン!!お館様を責めないで!!全部、悪いのは、俺だから!!遙に伊達の間者って疑いをかけて、殺気まで迸らせて辛く当たって、眠らせなかったのも俺だし、詮議の時に、遙の存在を政宗様にお館様はお知らせしようとしたんだけど、それを止めたのも俺だから!遙を探しに来た黒脛組を蹴散らすよう命じたのも俺だし、それに、遙の食事に気を配らなかったのも俺だし、遙のストレスの原因は全部俺で、武田の信頼が遙から得られなかったのも、全部、俺のせいなの!!お願い、ゴメンっ!!お館様は全然悪くないの!!お館様を責めないで!!」
「猿飛、てめぇは黙っていやがれーーーっ!!そんなのは全然関係ねぇなっ!!てめぇも何も分かっちゃいねぇっ!!」
成実と長曾我部が同時に目を見開きながら、唱和して怒鳴った。
猿飛は雷に打たれたように固まり、青ざめて声を失った。
長曾我部が成実に目で合図を送ると、成実が頷いて涙を拭って、信玄を睨みつけて、何とかして呼吸を整えると、大きく息を吸ってまた怒鳴り散らし始めた。
「そもそも、普段からの家中の教育方針が間違ってるから、こういう有事の時に指揮系統がしっかりしねぇんだっ!!一番下っ端の猿飛が全部責任取るってそもそもおかしくねぇか!?こういう形の忠義を押し付けてるから、猿飛は遙ちゃんに対して辛く当たってたんだろっ!?遙ちゃんをいいようにこき使ったんだろっ!?遙ちゃんが梵にすぐ会えなかったの、全部てめぇが作った武田の家風のせいだぞっ!!そこんとこ、ちゃんと分かってんのか!?梵に地に頭擦り付けて謝りやがれっ!!猿飛ってば、給料の割にいつも真田幸村の尻拭いばかりじゃねぇかっ!!今回は大将の信玄の尻拭いかよっ!?猿飛が伊達に来て本当に良かったぜ!!俺達なら猿飛達をそんな風に絶対に扱わねぇからな!!確かに家中や町人や農民を統制する制度とか、領国貨幣や分国法も出来は悪くはねぇが、大事な事をすっ飛ばした法律だから、嫡男切腹の悲劇が起きたんだろ!?そのくせ悲劇の後も改正法は出来てねぇし、失敗したなら、そこから学んでもっと成長して、改正法を作れよ、いい大人だし領主なんだからさぁ!!何の見栄張ってんだか、俺には全然意味分かんねぇなっ!!それに、武田の家臣の面子見てみたら、使えそうなのはてめぇの代の重臣達くらいで、下が全然育ってねぇじゃねぇかっ!!教育怠慢の証拠だぜっ!!自分の子供達ときたら、出来損ないばかりじゃねぇか!!あんな頭空っぽのプライドが高いだけの娘を、よく天下人の梵に嫁がせる気になったな。呆れ返るぜ、信じらんねぇっ!!馬鹿しか生まれねぇのが明白だろっ!?俺だけは武田との婚儀、大反対だったからなっ!!そんな世継ぎ、むしろ天下の危機だっ!!天下の大迷惑でしかねぇ!!伊達の頭脳が汚れるぜっ!!伊達の教養も随分と甘く見られたもんだなっ!!真田幸村なんて、取り柄は根が真っ直ぐで、猪突猛進な武芸の達人な所くらいで、真っ直ぐ過ぎて馬鹿正直で、真っ直ぐが行き過ぎて、前田夫婦みてぇに普通に夫婦仲睦まじいだけで、見るなり破廉恥って叫んでるの、頭どっかおかしいんじゃねぇのかっ!?夫婦なら夜伽までしても当然だろっ!?どういう教育したらああなるんだよっ!!言葉で諭さないで、拳だけで語り合ってるから、あんな短絡思考の単純バカが育っちまうんだろっ!?だから、猿飛が余計なくらい警戒して、仕方なく極端に捻くれて、疑い深くて慎重になっちまうんだっ!!猿飛は本当に賢明だからなっ!!なのに、真田幸村の尻拭いばかりでマジで哀れだぜっ!!猿飛も報われねぇなっ!!真田幸村も武田信玄も、揃いも揃って猿飛に甘え過ぎだぜっ!!だから、猿飛が全部一人で問題解決しようとして抱え込んでこんな事態になったんだろっ!!猿飛が遙ちゃんの食事まで気が回らなかったのは、元はと言えば、信玄、てめぇの教育がなってねぇからだっ!!部下を大事にしてねぇからだっ!!猿飛はてめぇの背中見てたからそうなっちまったんだっ!!それもよーく反省しやがれっ!!何もかも、てめぇの教育が全部悪いんだよっ!!猿飛が悪いんじゃねぇっ!!上に立つ人間の教育怠慢の責任だっ!!悪いのはてめぇだ、信玄!!てめぇ、猿飛にあんな風に謝らせて恥ずかしくねぇのかよっ!?猿飛の忠義が健気過ぎて不憫だぜっ!!俺だったら死にてぇくらいに恥ずかしくなるぜっ!!確かに武田は腕は立つ集団だが、そんだけじゃ天下なんてとてもじゃねぇが治められねぇなっ!!天下人とはどうあるべきかなんて、てめぇには分かりっこねぇだろうなっ!!頭使っていかに楽しながら国を豊かにして守るかだろっ!?天下取った後、真田幸村に武田を背負わせるつもりだったんだろうが、そんなのこの世の終わりみたいなもんだぜっ!!お館様だけが頼りの、あの筋肉脳みそにいい治世なんて、これっぽっちも期待出来ねぇからなっ!!家中もまともに治められねぇくせに、よくも天下取りなんて思いついたなっ!!てめぇ、いい度胸してるじゃねぇか。いいか、信玄、よーく聞け。天下で一番大事なのは人間だ。人は宝だから人材とも言うだろ!?てめぇだって同じ名言残してるくせに、ただの上っ面の言葉かよっ!!?てめぇが先頭に立って部下に漢の背中ちゃんと見せながら、身体張って実行してみせやがれっ!!部下達を、民達を、よそ者でもどんだけ大事に出来るかが、領主の器の大きさだろっ!?てめぇ自身の目ん玉でよーく見て判断をして、いくら猿飛の忠告があったとしても、正しい決断を下して遙ちゃんを信じて守ってやれなかったのかよっ!?全く情けねぇ領主だなっ!!それに、自分の子供を理不尽に切腹させる分国法も糞食らえだぜっ!!そんな国じゃ大規模な屯田兵の展開なんて絶対に期待出来ねぇなっ!!プライドが高い武田の兵達が喜んで開墾したり、田畑を耕すなんて到底思えねぇなっ!!いくら梵が徴税を工夫して他国の民を守ろうとしても、そんな領主の下じゃ、農民は侍や町民に搾取されてそりゃ飢えるぜっ!!だから遙ちゃんが収穫の秋なのに、貧しい農村で2ヶ月も飢えてたんだろっ!!伊達領内だったら、どこで疱瘡が流行っても楽勝でたっぷり食料確保出来るぜっ!!秋だから尚更だっ!!季節問わず余剰米と四季折々の野菜と鶏と卵と干物と燻製やその他諸々で山奥ですら食料はすげぇ潤沢だぜっ!!どんな野菜がどんな気候で育つか小十郎が思い付く限りのパターンで検証して計画的に大量栽培してるからなっ!!だから伊達は他国の援助がすぐに出来んだっ!!長曾我部も同じだなっ!!梵から熱心に教わってたからなっ!!自分の治世をよーく反省しやがれっ!!梵が家中に口出したらややこしいから、敢えて俺の口から言わせてもらうぜっ!!名門の源氏だか何だか知らねぇが、武田の家風ってのは、つくづく部下達を平等に大切にねぇ家風だなっ!!何だよ、外様って!!他所ものはハブかよっ!?だから、遙ちゃんがハブられたんだろっ!?蔑ろにされたんだろっ!?梵への報告がされなかったんだろっ!?天下の伊達軍の力ですら、よそ者だから武田は頼りたくなかったんだろっ!?うちの梵は全然違うからなっ!!いいか、信玄、イヤーのホールをかっぽじってよーく聞けっ!!うちの梵はなっ、例えよそ者出身でも、人質になった下っ端の斥候3人の命救うために、大将の自分の命をガチで張れる、漢の中の漢だぜっ!!天下一の伊達男だからなっ!!実際に命張って大怪我をして1ヶ月以上寝込んだからなっ!!たった一人で松永久秀に逆襲に行った小十郎を、心配でたまらなくて怪我が完治する前に、野郎共を率いて無理矢理助けに行って、ちゃんと無事に俺と梵で小十郎を火の海から助けて、松永久秀を討ち取って、死んで詫びようとした小十郎をぶん殴って止めて、無事に連れ帰ったんだからなっ!!遙ちゃんを略奪に行った時も、当然天下人の梵がたったの15騎で先鋒だっ!!愛する女のために、自分の命張ってるから当然だっ!!だから野郎共も俺達も全員、梵命で梵が大好きなんだぞっ!?それでこそ天下の伊達の筆頭だぜっ!!漢気溢れる男前のcoolな伊達男だっ!!俺だって命張って、梵のしんがりやってんだっ!!梵と小十郎と野郎共を、俺の命賭けて全力で守り切って、梵を絶対に悲しませないように、俺自身も無事でちゃんと最後は梵の下に帰るためだからなっ!!てめぇもそんくらい、ガチでてめぇの命張って、下っ端の部下達全員大事に守ってから、天下の江戸城に出直して来いやーっ!!そもそも疱瘡の予防接種なんてもんがあったんだから、てめぇ自身の目ん玉で、きちんと村の惨状を視察してくりゃ、遙ちゃんの無理だってとっくの昔に露呈してただろっ!?遙ちゃんが病む事もなかったし、梵も遙ちゃんも小十郎も泣く事もなかっただろっ!?全部てめぇの怠慢のせいだっ!!領主なら先陣切って村人達を励まして来いよっ!!梵なら絶対そうするぜっ!!俺だって小十郎と一緒に梵の護衛について、二人の背後の守りをしっかり固めに行くぜっ!!更に背後に綱元を動かして鉄壁の守りを固めながらなっ!!部下を民を守るってのはそういう事だっ!!なんか俺、間違ってる事、言ってるかっ!?信玄、なんか文句あっかぁあーーーっ!?」
「よく言った、成実っ!!全部お前ぇの言う通りだぜっ!!俺だって飢えた病の民のために、炊き出しの野郎共を引き連れて、絶対に先陣切って励ましに行くぜっ!!領主だったら当たり前ぇの事だぜっ!!俺の手に負えねぇ酷さの流行だったら、絶対に天下人の独眼竜に真っ先に相談して助けを呼んでるぜっ!!信玄、何で独眼竜に相談しなかったんだよっ!?仮にも娘を嫁がせたかったんだろっ!?独眼竜をちゃんと信頼しやがれっ!!誠意を見せやがれっ!!この世で一番頼り甲斐のある、世界一頭のキレる漢気溢れる伊達男じゃねぇかっ!!成実まであんなに泣かせやがって、俺は絶対許せねぇなっ!!よく独眼竜と遙が信玄を許したな、そんなの二人の愛の奇跡だぜっ!!てめぇのした事をよーく反省して、独眼竜と遙に全力で謝って、太平洋より広ーい心の二人に心の底から感謝しやがれぇええーーーっ!!」
ラップみたいにリズミカルで、ハイスピードな立て板に水の、成実のすげぇ長い罵倒とさりげく織り交ぜられた俺と伊達軍への最上級の愛の叫びに、長曾我部の怒号のラストスパートの最上級の友情を叫ぶ合わせ技が決まった。
合わせ技が綺麗に決まった瞬間、成実の全身が眩く光り輝く稲妻に包まれてバチバチと激しく帯電し始めて、成実はギラギラと目を光らせた。
…これは、真田幸村の事件の詳細が露見したら、全面戦争レベルの大激怒だ…!!
こいつらこそ、ガチでマジの独眼竜の逆鱗だっ!!
こいつらを下手に刺激したら、天下を揺るがす天変地異が巻き起こるっ!!
我ながらこいつらに、こんなにまで愛されてるとは思いもしなかった。
分かっていたつもりのレベルの、更に遥か上を行っている!!
大気圏を軽く突破するレベルの高さの愛だっ!!
俺達の披露宴前に、何とか最大限に穏便にこいつらを宥めないと、絶対にやべぇほど大変な事態になるっ!!
天下を揺るがす、大危機だっ!!
披露宴は切り上げられ、そのまま大激怒の成実と長曾我部のツートップの先陣で、おそらくエリザベスと小十郎と会場の野郎共全員引き連れて、俺の全ハリアーまで小十郎が動かして配下のハリアー全30機が一瞬のうちに空を飛び、甲斐、信濃、諏訪の全てが絶対に数時間のうちに、めっためたに灰燼と化す!!
アンリ4世の婚儀後に起きたサンバルテルミの虐殺を遥かに凌駕するレベルの、婚儀中断の大虐殺事件だっ!!
やべぇ、俺が大帝なだけに間違いなく俺の婚儀が大事件としてうっかり世界史に残っちまう!!!
ふと戦慄して身震いをして、小十郎と綱元を見やると最早般若のような怒りの形相で、成実の怒りに呼応するように、全身が成実に負けないほど眩く光り輝く稲妻でバチバチと帯電し始めて、そのすげぇ殺気と剣幕に思わず俺は更に慌てた。
「信玄、てめぇ、小十郎と政宗様だけじゃ飽き足らず、成実まで泣かせやがったなぁあああっ!!!てめぇこの落とし前、どうやってつけるつもりだぁああ!!!?」
思った通り来やがったーーー!!
伊達三傑長男でラスボス、絶対怒らせちゃいけねぇ男、鬼庭綱元の大激怒だーーーっ!!
小十郎と綱元も早急に落ち着かせないと、これはマジでガチでやべぇ!!
これは、最早、俺で抑えられるレベルの怒りなんかじゃねぇっ!!
小次郎の悪夢の再来だっ!!
今度は成実も綱元も参加かよっ!?
こんなのいまだかつて見たことねぇっ!!
今度は伊達三傑総出の、縦横無尽の大稲妻が江戸城中に、いや、江戸中に、いや、このレベルの殺気から予想する俺の見積もりでは、関東平野中にバチバチと大稲妻が走りかねねぇレベルの、天下人伊達政宗発令、緊急、伊達三傑大激怒による関東平野全域における未曾有の大雷特別警報だっ!!
俺の渾身のHell Dragonなんて、ミジンコ以下のレベルの大稲妻が関東平野を縦横無尽にバチバチと走る!!
一体俺はどうやって、関東平野の民達を伊達三傑のトリプル大稲妻の大量感電死と大火災から守ればいいんだっ!?
江戸城だけだったら、野郎共は俺の雷電から逃げるのに慣れてるから何の心配もねぇが、流石に平野レベルの民達を感電と火災から守るのは俺の手には絶対に負えねぇっ!!
今回は、日本全国で間違いなく伝説になるっ!!
この世の終わりの大災害だったと!!
遙も同じ事を考えているのか、落ち着きなく戦慄した表情で、俺と成実や小十郎達を交互に見ていた。
視線を部屋にさっと走らせると、猿飛は青ざめてぽかーんと固まっていて、焔と紫苑と忍の長達は厳しい無表情で信玄を見つめ、武田の親衛隊は震え上がり、美紀と登勢とエリザベスと、シェイクスピアとお銀まで眩しそうにうっとりと成実を見つめている。
俺のくノ一達だけが粛々と業務を行い、気付いたら既に鍋が焦げないように全ての鍋の具材が食べ頃ちょい前のタイミングで、綺麗に山のように引き上げてある。
これなら鍋に戻したら丁度食べ頃だ。
お前ぇら俺自らが教育したとはいえ、こんな状況下でも、本当にマメでよく気が利くぜ…。
後でちゃんと褒美をやらなきゃな。
信玄は土気色まで、いや、死人のように紙のように真っ白く青ざめて、目を瞠って固まって小刻みに震えていたが、やおら勢いよく立ち上がり、俺と遙の後ろに回って座ったので、つられて二人で身体ごと振り向いた。
そして、信玄は勢いよくゴンっと板の間の床に、頭と両手のひらを打ち付けて、その音のあまりのデカさに俺と遙はびびって手を取り合った。
信玄、音を聞いただけで相当痛いぜ…?
何だか俺まで頭痛がして来て、しばらくそのまま無言で数秒が流れると、いきなり頭を連打で床に打ちつけながら信玄が大声で詫び出し、俺と遙はまたそのデカい音にびくっと身体を震わせた。
「誠にすまなんだ!!詮議などするまでもなく、遙の初めて出会った時の誠実な行動から、その人柄は分かりきっておったはずなのに、詮議なぞして誠にすまなんだ!!お主のような繊細なおなごなら、あのように佐助に殺気を出されて、さぞや恐ろしかったであろう!!真実を言いたくても言えなかったであろう!!また、どんなに政宗公に会いたかったかと心中を考えるだけで、この武田信玄も胸が抉られる思いじゃ!!遙の飢えも睡眠不足も全てわしの監督不行き届きの責任じゃ!!このわし自ら食料を持って出向き、盛大に炊き出しを命じるべきであった!!疱瘡の治療も、すぐには出来ぬと言った遙に、医者のくせに臆病風に吹かれたのかと恫喝してしもうた!!遙はさぞや辛かったであろうに!!わしの命の恩人であったのに、わしは誠に酷い事を言うてしもうたっ!!何と恩知らずな事をわしはっ!!政宗公もわしの婚儀の催促に手を焼いて、遙を迎えに来られず、さぞやお辛かったであろう!!7年も待ち続けた妻に、はよう会いたかったであろうに!!成実公の仰せの通り、全てはこの武田信玄の教育方針の誤りと、洞察力のなさと心得違いの責任じゃ!!わしは領主として大失格じゃ!!武田で遙を抱え込む決断を下したわしが全て悪かった!!この目で直々に遙を見守らなかったわしが全て悪かったっ!!領主の務めをはき違え、民を直々に励ます事すらしなかったのも、全てこの信玄の不徳と致す所!!その上、幸村を漢として育て上げきれず、佐助には苦労ばかりかけてしもうた!!佐助にも詫び切れぬ!!拳だけで語り、自らの悟りをただ待つだけの、わしの教育方針が全て間違っておった!!姫の出来が悪いのもわしの責任じゃ!!政宗公の教養には到底釣り合わぬのに、婚儀を進めた事も詫びても詫び切れぬ!!天下を危機に晒す所じゃった!!お二人には詫びても詫び切れぬ!!誠にすまなんだ!!そして遙には、遙を深く傷付けるような愚弄をした我が娘の命まで救われ、政宗公の怒りを鎮めて戦を回避させられ武田領まで守られ、感謝の言葉もない!!誠にかたじけない!!そして、詫びても詫び切れぬ!!誠にすまなんだ!!」
信玄は大声で詫びながら、何度も床に立て続けにゴンゴンっと頭を打ち付けて謝り続け、その度に遙が青ざめて驚いてびくっとなり、俺はいまだ謝り続ける信玄を慌てて止めた。
「分かった!!分かったから、もう、止めてくれ!!遙が心配してる、つか、怯えてるから、頼むから止めてくれ。顔を上げてくれ」
顔を上げた信玄は、額にハゲの部分までくまなく大きな青タンをいくつも作っていて、また二人でビクッとなった。
ちらっとバチバチと帯電したままの成実を見ると微かにニヤリと笑って目で頷いて、茶目っ気たっぷりにウィンクをした。
俺は成実の意図にようやく気付いて、引きつっていた表情を無理矢理引き締めて、信玄の肩をポンと叩いて息を吐いた。
成実、俺をガチで慌てさせた、この神レベルのドラマチックな流れを作るとは、やっぱお前は流石、伊達男の俺の従兄弟だぜっ!
マジで焦ったけど、これなら俺でも綱元達を抑えられるぜっ!
後は天下一の伊達男の、この俺に全て任せろ!!
俺が全部丸く収めてやるぜっ!!
これで関東平野の緊急大雷特別警報を解除させて、ついでに武田領全土灰燼化の天下を揺るがす大虐殺からも回避するぜっ!!
マジで焦ったじゃねぇか、小十郎も綱元も俺をいきなりガチでビビらせんじゃねぇっ!!
俺は信玄の両肩に手を置いて、静かに殊更低い声で、淡い笑みを浮かべながら優しく語りかけた。
「信玄、これは全ては運命だ。遙はいずれにせよ、俺を真に理解するために、俺の右目を失わせた疱瘡の封じ込めに関わらざるを得なかった。右目を疱瘡で患った幼い娘との出会いも運命で必然だ。それで俺も右目の辛い思い出から完全に救われた。遙自身も救われた。遙は甲斐の疱瘡を後で知ったら、助けられなかった事を悔いてきっと苦しんでた。遙はそういう女だ。だからこそ、俺が惹かれて愛して止まない女だ。それに、疱瘡を根絶させたからこそ、遙は武田の正式な信玄の実子の姫となり、だからこそ宮家の養女となれるんだ。じゃねぇと、俺の縁談騒動は一生続いただろうからな。遙を正室に出来たかも分からねぇ。遙が死ぬほど胃の腑を病まなかったら、美紀はここにいなかった。猿飛も美紀に心を救われる事がなかった。真田幸村だって真実の愛に目覚める事なく、漢気を出さなかっただろうな。遙一人じゃ登勢の命も救えなかった。成実も遙も絶対に悲しんでた。運命のお陰でみんなが幸せに結ばれた。生涯独身のつもりだったエリザベスも、運命の王子と出会って世継ぎを成す未来が遙の知恵で拓けた。マブダチのエリザベスの恋が俺は楽しみだ!俺はむしろ嬉しいぜ?だから、全てが運命で必然だ。俺と遙の出会いと、切なかったけどとても幸せだった恋も、別れと再会も、平和的な世界掌握という未来も、全て。成実にああやってお前が怒鳴られたのも、また運命だ。だから、全てこれでいいんだ。大事なのは過去じゃねぇ、未来だ。過去はただの教訓に過ぎねぇからな。これからは、武田の部下も民も、伊達の部下も民も、日本の民も兵も、みな平等に大切にして、俺を支えてこの江戸城を守ってくれるか?お前は今からでも心を入れ替えて変わってくれるか?」
「政宗公っ…!!ああ、もちろんだとも。もちろんだ!!こんなわしを許して江戸城の留守を預けて下さるのか…。幸村の事もそのように許して頂けるのか…!!かたじけない!!誠にかたじけない!!」
信玄は、涙を流して男泣きに泣いた。
成実はすっと稲妻を消して、口笛を吹きながら、俺とハイタッチをしに来た。
その手をパシンと叩いて、次に長曾我部ともハイタッチをした。
そして、成実は満面の笑顔になった。
「やーっぱ、シメは天下一の伊達男の梵に限るなっ!!全ては運命で必然か!!言われてみれば、どの運命も変えられねぇなっ!!そういう運命だったなら、仕方がねぇ!!俺も運命には文句は言えねぇからな!!そのお陰で最愛の登勢とやっと念願の俺の世継ぎが作れるんだ!!全部梵の言う通りだぜっ!!伊達には美紀ちゃんも欠かせねぇからな!!梵の洞察力の鋭さは、やっぱ流石は世界を末代まで掌握する天下人だぜっ!!俺もエリザベスの恋が楽しみだ!!俺は心ゆくまで大説教したし、信玄も泣きながら反省して、しっかり梵と遙ちゃんに謝って感謝もしたから、これで俺も安心して信玄に江戸城と野郎共を任せられるぜっ!!梵の言う通り、大事なのは未来だからなっ!!なぁ、小十郎、綱元、そうだろ?」
般若の形相でバチバチと帯電していた小十郎と綱元も、成実の満面の笑みの瞬間にすっと稲妻を消していて、話を振られると微笑んで軽く頷いた。
この天下一の阿吽の呼吸は、流石は俺の能の伴奏者達だ。
「ああ、そうだな、成実。全くお前ぇの言う通りだ。流石は政宗様でございます。遙様を愛すればこそのお言葉でございます」
「たまにはやるじゃねぇか、成実!お前もやっぱり伊達男だなっ!流石は政宗様の従兄弟だぜっ!!」
「うるせぇ、綱元!!一言余計だっ!元親も最高にcoolだったぜ?流石は梵が見込んだ、梵の政治の右腕で最高のbuddyだっ!!野郎共が愛して止まねぇ、西海の鬼のアニキだぜっ!!」
「おうよっ!これが海賊の流儀ってやつだぜっ!!」
成実と長曾我部が満面の笑みでハイタッチをして、そのまま手を握り合って声を立てて笑った。
美紀がきゃあきゃあヒューヒュー言いながら拍手喝采を始めて、それが、この場の全員の拍手喝采に変わって行った。
お銀が頬を染めて、うっとりと長曾我部を見つめている。
成実に見惚れる登勢の顔も、喜びで輝いている。
猿飛も惚けたように成実を見つめている。
遙は、安心したように、ふふっと笑った。
「何で登勢ちゃんが、成実好きなのかやっと分かった。私も怒鳴り散らす成実に、少しキュンってときめいちゃったから。これが成実の本性か、それなら納得だ。あんなに頭の回転が早くてカッコ良くて、正義感と漢気に溢れてたら、登勢ちゃんもそりゃ惚れるし、政宗も当然信頼するよね!」
「はぁっ!?何だと、遙!?成実にときめいただと!?カッコいいだと!?あいつだけはダメだっ!!見た目が俺そっくりなだけに絶対許せねぇっ!!声まで俺そっくりだからなっ!!お前、惚れるだろっ!?」
「ふふっ、撤回しないよ。成実、すっごくカッコ良かったよ?政宗と登勢ちゃんと伊達軍命で。でも、最後の政宗のセリフには最高にシビれたな!流石は天下一の世界に羽ばたく伊達男!全ては運命で必然なんだって、相変わらずすっごくキザで惚れ直した。甲斐の騒動全ては、私が政宗のたった一人の妻になるためだったんだって。あの出会いも恋も悲しい再会も運命で必然だって。みんなが幸せになるための、運命の切なくて幸せな恋だったって。政宗の絶大な許しと愛の言葉にドキドキが止まらなくて蕩けそう。私が愛してるのは、やっぱり政宗だけ。政宗はやっぱり優しくて温かいし、私の事、よく分かってるね!大好きだよ!心の底から愛してるよ。それは7年前から変わらないよ」
「はぁ、お前って本当にずるい女。また嬉しくてたまらなくて、何も言えなくなっちまった…。成実にときめくのも褒めるのも、少しなら許す…」
不覚にも嬉しさのあまり少し赤面しながらぼそぼそと言った俺のセリフを聞いて、伊達三傑と長曾我部は大爆笑をした。
とりあえず、遙のためにも今日の関東平野の大雷特別警報が解除されて、俺は心底ホッとした…。
未曾有の大災害が回避されて、本当に良かった…。
⇒Next Chapter
しおりを挟む
top