政宗の軍議 -2-

「よし、地上の諜報の目処が立ったから、次は俺達の最強の船団の陣形について、考えるぜ。それには、まず、世界で先進的なヨーロッパの戦法について知る必要がある。念のためヨーロッパの地上戦の規模もだな。まずは、この時代で最強のイギリス軍の戦法と、少し前まで世界を制覇してたスペインの無敵艦隊の規模と戦略について知る必要がある。それを踏まえた海軍の構成のやり直しだ。それにはエリザベスの力が必要だ」
「Okay、任せて!じゃあ、アルマダの海戦で使ったイギリス軍の戦法と、戦ったスペインの無敵艦隊の規模と戦法について話をするわね。そうね、まずは世界最強の戦艦隊を持つスペインの無敵艦隊の構成と兵力と兵法から話をするのが妥当だわ。私がそこから作戦を考えたから。それでいいかしら?」
「ベス、流石だぜ!惚れ惚れするぜ?是非まずはスペインの無敵艦隊について聞かせてくれ」
「Okay、いいわよ!」

小十郎達は、初めて聞く外国のしかも世界最強の戦艦隊の話に一気に身を乗り出した。
中でも長曾我部が超真剣だ。
エリザベスはくすりと笑うと話し始めた。

「まず、主なスペイン船は帆船ではなくてガレー船よ。主力戦艦はガレオン船。アルマダの海戦での無敵艦隊は130隻、水夫8000人、兵士1万8000人からなっていて、真鍮砲1500門、鉄製砲1000門を装備してたって聞いたわ。全艦隊が出港するのに2日を要している大軍よ。艦隊は正規の軍艦を28隻含んでいて、その構成は、ガレオン船20隻、ガレー船4隻、ナポリ製ガレアス船4隻ね。その他の大型船のほとんどは武装キャラック船とハルク船で、さらに小型船34隻が随伴して護衛よ。スペイン領オランダでは兵3万が無敵艦隊の到着を待機してたらしいわ。あの頃はオランダにプロテスタントを布教してカトリックの勢力を削ごうとしてたから、オランダはイギリスの同盟国だったの。ロンドン近くの地域に兵を上陸させる船を軍艦が護衛する計画になっていたみたいね。この作戦ではスペイン、ポルトガル連合軍で合計5万5000人の兵士が動員された、大規模な軍事展開だったわ。火力は破壊力抜群の長距離命中型のカノン砲と全カリバルン砲が3分の1ね。これは数弾被弾するだけで戦艦の動きを封じる威力のある大砲だと思ってくれたらいいわ。残りの3分の2はペリエール砲以下の軽砲で接近戦向きね。動きを止めた艦隊に接近戦で砲撃をして致命的なダメージを与えて、敵艦隊に兵士を乗り込ませて船上で戦って船を奪う作戦だったのよ。大規模な軍事展開だっただけに、私も相当頭を使ったわ。でも、取っ掛かりはあったし、スペインが戦を仕掛けてくるのを読んで、予め手を打っていたから何とか勝てたわ」

俺はあまりの海上の規模に驚いて、言葉を失った。
5万5千の兵力を海上戦で使えるなんて、やっぱり無敵艦隊はやべぇし、それを破ったエリザベスはもっとやべぇ!
派手にイージス艦で爆撃しまくって主力艦隊を全て沈没させないと、上陸した後の身の安全の確保が難しい。
小十郎達も驚いて声を失っている。

「政宗、私達が鉄壁の防御を敷くには、この人海作戦にどう対抗するか考えなきゃいけないね。正直予想以上だ。ヨーロッパに上陸させる護衛の数が少な過ぎるよ。政宗とベスの安全が守れない。数で脅せる兵の数じゃない」
「ああ、そうだな、遙。後で、ヨーロッパの地上戦についても聞いて、適切な軍備編成を考えなきゃならねぇ」
「左様でございますね、政宗様。護衛の戦艦の再編成をし、上陸させる護衛の数を十分に確保して、更にエリザベス女王と長曾我部様との連合軍でないと安心出来ません。エリザベス女王、是非、陛下の取られた策についてこの小十郎は知りたいと存じます」
「小十郎、いいわよ!まずは海戦前に私が取った策について話すわね。少し話を過去に戻すわ。スペインのフェリペ2世が私を譲位させて、スコットランド王国の血筋のメアリ・スチュアートを擁立して、イングランド女王として正式に即位させようとしている情報を掴んだの。前々からカトリックのメアリ・スチュアートはイングランド女王を主張するライバルだったし、カトリック国はメアリ・スチュアートがこそが正当なイングランド女王だとみなしていたわ。メアリ・スチュアートはカトリックだから、彼女がイングランド女王として正式に即位したら、カトリックのフェリペ2世がイングランドを支配下に置けるとでも思っていると踏んで、私は先手を打ってイギリス全土を守るためにメアリ・スチュアートを処刑したの。従姉妹だったから、すっごく心が痛んだし、先延ばしにしようと頑張ったけど部下達を抑えられなかったわ。当然フェリペ2世の逆襲が予想されたから、戦に先駆けてスペインの艦隊の力を削ぐために、偵察がてら、派手に海賊行為をさせて財宝を奪いつつ、世界中の本土の港以外のスペイン領の港と船を襲わせて、食料保存のための樽と材料の樽材を片っ端から破壊させたの。食料が保存出来なかったら、航海は続けられないし、戦も続けられないからね。手っ取り早く力を削いで降参に持ち込むための前準備よ。だからこそ、スペインを更に怒らせて無敵艦隊まで刺激しちゃって、すぐに大規模な戦になっちゃったんだけど」
「兵糧攻めか。確かに手っ取り早いな。流石だぜ。あのハプスブルク家のフェリペ2世と張り合っただけでもマジですげぇな!」
「エリザベスってマジですげぇな!お宝狩りの海賊行為をさせつつ兵糧攻めの前準備か!やっぱエリザベスは海賊の頭領なだけあるぜっ!樽と樽材を破壊するだけで済むなんて、これは超効率的だぜっ!やっぱエリザベスも超頭いいな!流石は独眼竜のマブダチだぜっ!!スケールがデカい!」
「ふふっ、マサも元親も感心してくれて嬉しいわ」

みなが心底感心したようにエリザベスを見つめている。
特に遙と美紀はきらきらとした目でエリザベスを見つめている。
こんなすげぇ奴とマブダチだったなんて、思いもしなかった。
遙から歴史を教わって、すげぇ女王とは思ってはいたけど、まさかここまでとは予想もしてなかった。

「流石でございます、陛下。この小十郎も兵糧攻めに全く賛成致します。数で勝る敵に対抗するには効果的な策でございます。参考までにヨーロッパ式の航海に必要な保存食についてお聞かせ願えますか?日本の兵士達の食料確保の参考になりますから」
「分かったわ!普通の船は豆類、乾パン、塩漬けの肉や魚、乾燥ニンニクね。でも、大型船では家畜を船に乗せて、そのまま肉や魚を豆と一緒に調理出来るわよ。海が凪いでる時、限定だけど。塩漬け肉も同時に作れるから効率がいいわ。私は海賊行為のスポンサーだから、海賊達には家畜を乗せられる船と家畜を提供してるわ。水はどうにもならないわね。代わりにお酒を飲んでるわ。空母やイージス艦があるからこれからは心配いらないけど。壊血病の死者が頭痛のタネね。あれはどうやって防げばいいのかしら」
「それだったら、エリザベス様。野菜の漬け物でどうとでもなるし、空母だったら冷蔵庫があるから、生野菜も積めばいいんだよ。壊血病の原因は野菜に含まれるビタミンCの欠乏だから。パンもカビが生えたり虫がわきやすいから、日本の米を炊けば、玄米なら栄養価が高い上に、炊く前の玄米は1年以上保存出来るよ。炊いたらほかほかのご飯だよ?空母で水が確保出来るならそれが可能だ。漬物とご飯と肉と釣った魚があれば十分だね。味噌で豆類の補充も出来るから、味噌汁がスープになるよ。具材は乾燥ワカメと野菜で十分だ。これで兵達の栄養不足が解消されるし、病人も死人も出ない」
「流石でございます、佐助様。政宗様、硝石が防腐剤となり、塩漬け肉の保存になります。細菌の繁殖を抑えますから。ハム作りにも硝石は効果的でございます。保存料となるだけでなく、色も良くなります」
「マジでか!?」
「Really!?硝石は確かに古くから薬として使われているけど、まさかそんな事に使えるなんて知らなかったわ!是非国内でも防腐剤として使わせるわ。ハムもソーセージもヨーロッパでは生産盛んよ。岩塩を使って作っているわ。貴重な冬場の食料ね。でも、航海に耐えるほどの防腐効果はないわ。塩漬け肉が長持ちするのは最高よ!佐助の情報もすごいわっ!」
「その岩塩に硝石の成分が含まれます、陛下」
「焔、そうだったの?全然知らなかったわ!」
「独眼竜、ハムとソーセージって?」
「政宗、私が願ってあげる。みんなでつまもうよ」

遙が祈りを捧げると、人数分のハムとソーセージの皿と爪楊枝が現れた。
長曾我部が目を輝かせて身を乗り出した。

「すげぇ!美味そうだ!」
「全部遙のお気に入りか。よし、これからみんなで試食だ」
「はっ!」

ハムを食べた長曾我部がものすごく嬉しそうな顔になった。
俺も久しぶりで、すげぇ懐かしい。

「独眼竜、これ、日本でも作ろうぜっ!野郎共が大喜びするぜっ!超美味い!」
「それもそうだな。豚肉の畜産は早急に始めなきゃな」
「これは豚なのね。羊のよりも断然美味しいわ。私も豚肉の畜産を推奨するわ。紫苑、生産の知恵を貸してくれる?」
「お任せ下さい、エリザベス様」
「俺も国内のは焔に全て任せたぜっ!美味いハムとソーセージを頼んだぜっ!」
「御意」

みんなで美味い美味いと盛り上がっていると、くノ一達がすぐに煎茶を配膳した。
お前ぇら、本当によく気が利くな。
確かにハムとソーセージは喉が乾く。
みんなで食後の茶を飲みながら、俺はまたタバコに火を点けた。

「それにしても、ベス。お前も天下統一して長ぇんだから、国内の王達を完全に支配下に置いて、アイルランドまで含んだ全土を明確に掌握しろよ。お前がヴァージンクイーンの名を守り続けたら、お前の死後、お前の宿敵メアリ・スチュアートの血筋のスチュアート朝がお前の後を継いで、イギリス全土は荒れる上に、たったの2代かそこらで議会に政治を乗っ取られる所だったぜ?」
「えっ!?メアリのスチュアート朝が私の後継者!?そんなのカルヴァン派のピューリタンを抑えられる訳がないじゃない。ただでさえ、まだ数少ないピューリタン達に手を焼いてるのに」
「だったら、尚更大帝に即位して、国内用にグレートブリテン及びアイルランド諸国連邦って国名にでも改名しろ。ユナイテッドキングダムだ。それなら諸外国も暗に含まれるだろ?南アメリカまで手に入るなら、環大西洋ブリタニア大帝国でも構わねぇ。ついでにアフリカの王国と姉妹国になって部族達もキリスト教で懐柔してアメリカ大陸に送り込めば、アフリカ大陸も支配下に入って、本格的に大西洋を囲めるだろ?黒人白人の差別感情は黄色人種の日本が調停するから大丈夫だ。その策はもう出来ているし首尾も整っている。日本は環太平洋日本大帝国って対外的には名乗ればいいからな。これで4つの海とそれを囲む領土が明確にイギリスと日本のものだと対外的に示せるだろ?それで、国内の王達を諸侯のレベルまで落として、イングランドのテューダー朝の血筋を最高峰の物として差別化を図れ。少なくともスコットランドは完全に併合しろ。それなら、他の王家をイングランド王に擁立される事もねぇよ。イギリス国内も心配でたまらねぇ。何なら水戸黄門と暴れん坊将軍でも本格的に上演して、民衆の目にもテューダー家の紋章を焼き付けろ。俺も琉球王国と蝦夷を掌握して配下に置くつもりだからな。アイヌ人と琉球人は末代まで守り抜く。大帝国だったら国内に複数王国があっても全然不自然じゃねぇし」
「それもそうね…。じわじわとアイルランドに植民して文化を浸透させつつ懐柔して、ほぼアイルランドは掌握したけど、決め手に欠けるわね。王位を剥奪したら反発を招きそうだから、大帝の地位の利用はすごく名案ね。私の世継ぎ達をアイルランドとスコットランドに送り込んでテューダー家の血筋で固めたら間違いなさそうよ。アイルランドとスコットランドのカトリックを抑えるためにも、ヴァチカンは絶対に乗り切らなきゃいけないわね。そうしたら上手く行くわ。ローマ法皇に命令してもらえばいいだけだから」
「ヴァチカンの事は遙と俺に任せろ。必ず懐柔してやる」
「心強いわ!」
「はぁ…政宗ってやっぱ流石だね…。環大西洋ブリタニア大帝国と環太平洋日本大帝国か。斬新だしスケールが違う…!!」
「お前が言い出した作戦だろ?俺はそれに全力で乗っかってるだけだ」
「それを出来るのが政宗のすごい所だよ。ああ、流石は政宗様…。私の小さい頃からの永遠の憧れのお方だ…。あの憧れの政宗様の軍議に参加して、この目で政宗様の采配が見られるなんて、夢みたい…。ドキドキが止まらない…死にそうなほどドキドキする…蕩ける…」
「だから、そんな事で死ぬな。お前を口説けなくなる。ドキドキじゃ死なねぇから安心しろ。その政宗様の心を一発で射止めたんだから、お前はもっと胸を張れ。そもそも俺はお前しか愛せねぇからな。お前が俺の初恋で、永遠の恋人でたった一人の妻だ」
「はぁ…めろめろになった…力が抜けた…もうダメだ…。あの憧れの政宗様直々に口説かれた…」

遙が頬を完全に染めて、めろめろになったように脱力して、ばたんと机に突っ伏して、俺達は大爆笑をした。
こんなに簡単にめろめろになってもらえるなら、俺はいくらでも軍議を開いて政策を打ち出して口説いてやる。
一石二鳥を超えるレベルで好都合だ。
小十郎が肩を震わせながら大爆笑をしている。
こんな小十郎は本当に珍しい。

「遙様、傑作でございますっ!!ははっ!まさか軍議でこのように政宗様にめろめろになるおなごがいるとは、この小十郎、予想もしておりませんでした!憧れの政宗様でございますかっ!幼い頃からの憧れでございますかっ!遙様は未来の異世界で政宗様の偉業に、幼い頃から憧れてらしたんですねっ!この小十郎、大変誇りに思います!ははっ!流石は政宗様でございます!政宗様、遙様が幼い頃から憧れてらして、本当に良かったですね!遙様もすぐに政宗様に惹かれた事と存じます!」
「はぁ…全くその通りだぜ。こいつは伊達家の典医の如月家の末裔だ。俺の末裔の伊達本家とも交流があって、幼い頃から俺の話を聞かされて育って俺にすげぇ憧れてた。出会って間もないのに憧れたように見つめられて、男として俺を見て欲しかっただけにマジで困ったぜ。いわば遠回しな幼い頃からの初恋だ。だから俺の書が異様に大好きだし、いろはの手習いにすら俺の鶺鴒の花押を欲しがった。あんな女初めてだったぜ。マジでびっくりした。鶺鴒の花押がまさか400年後の未来でも超有名だなんて思いもしなかったからな。俺は遙に一目惚れだったが、如月の末裔と知って尚更守ってやりてぇって更に恋しちまったぜ。だから、東大病院があっても如月の血筋は絶対に守れ」
「かしこまりましたっ!」
「あははっ!梵、初恋同士で良かったじゃねぇか!俺と登勢も初恋同士だからお揃い感抜群だぜっ!分かった、如月の血筋は全力で守らなきゃな」
「遙も独眼竜に初恋かよっ!独眼竜、良かったな!それにしても、いろはの手習いに鶺鴒は笑えるぜっ!!」
「ああ、全くだぜ。たかがいろはの手習いなのに、あんまり真剣に俺の鶺鴒の花押をせがむから、唇へのキスを条件に書いてやったぜ」

いろはの手習いに鶺鴒の花押がみなのツボに入ってまた大爆笑が起こり、おさまるのにしばらく時間がかかった。

「はぁ…憧れと言えば、エリザベス1世も高校生の頃からの憧れの人だ…。テューダー家の薔薇の紋章はランカスター家とヨーク家の白薔薇と赤薔薇の融合だし、綺麗な飾り文字も超有名だし、狩り好きなのもお風呂好きなのも超有名。一流の文化人であのシェイクスピアをお抱えにしてたし、ギリシャ語もラテン語も堪能で、アルマダの海戦の演説も超カッコ良かったし、世界で一番カッコいいスーパーヒロインだ…。政宗様に負けない教養人だ…。ダブルの憧れの人を目の前にしてると思ったら、まためろめろに蕩けて来た…ドキドキが止まらない…」

遙は惚れ惚れと俺とエリザベスに交互に見惚れると、まためろめろになって夢見るような遠い目になって、ばたんとテーブルに突っ伏して、また俺達の大爆笑を呼んだ。

「遙、あんまり俺を笑わせんなっ!!笑いが止まらねぇっ!!」

俺は突っ伏した遙の頭をくしゃくしゃと撫でながら笑い続けた。
道理で7年前、概略ながらもやたらとエリザベス1世について詳しく説明したはずだ。
だから、俺もシェイクスピアの事が印象に残っていて、俺直々に翻訳したし、原文を取り寄せるのも楽勝だった。
これも全て運命だったのかと思うと、本当に遙は俺の運命の恋人で、あの恋も運命の恋だった。
それにしたら、何て残酷な星回りだったと恨めしくすらなるが、こうして俺とエリザベスにめろめろな遙を見ると、どうでも良くなって来た。
先程よりも時間がかかりつつ、ようやくみなが落ち着いて行った。

「クッ…遙様、最高に傑作でございました。エリザベス女王、政宗様のおっしゃる通り国内の安定がまず肝要でございます。世界に進出するならば背後の守りが欠かせません。この小十郎、政宗様から概略はお伺いしたとは言え、ヨーロッパのしきたりや現在のイギリス国内の情勢の詳細がよく分かりませんので、お聞かせ願えませんでしょうか?伊達でも策を練りますし、紫苑も何か考えるはずでございます」
「それもそうね。この情報は間違いなく日英で共有した方が好都合だわ。分かった。何かあったら質問してね」

エリザベスは、ヨーロッパの王位継承のしきたりや、イギリス国内に王国が複数ありながらイングランド王国が全て掌握している事や、貴族制度や、エンクロージャーの状況、イギリス国教会の誕生の話と宗教の対立の問題などを話した。
流石、玉座に座りながら海上を掌握しているだけあって、話の漏れはないし、分かりやすい。
俺達はしばらく真剣にエリザベスの話を聞いていた。

「要するに、ヨーロッパの王家は途絶えたら他の王家の血筋から王を擁立して継承してるのよ。互いにそうしてるから、どこかしらの王家にイギリス王家の血筋の王子や姫がいるからね。イギリスの最大の島、グレートブリテン島はイングランドとウェールズとスコットランドの3つの王国で成り立っていて、アイルランド島も近いから4つの王国でイギリスと見なせるわ。大きく分けて4つの王国の頂点に立つのがイングランド王国のテューダー家でイギリス王よ。神聖ローマ帝国の皇帝みたいなものね。だから、私はマサが提案した環大西洋ブリタニア大帝国という名称に大賛成だわ。ラテン語の響きがカッコいいわね!私の父上であるヘンリー8世が侍女だった母上と結婚したいがために、前妻との離婚をしようとカトリックから離反して出来たのがプロテスタントのイギリス国教会。理由が情けなくて嫌になっちゃうけど、私の命に免じて許してあげるわ。私は古代ローマの政策を利用して、政教一致の王の立場からカトリックの国々に対抗してるわ。アウグスブルクの宗教和議では、王や諸侯が決めた宗教に民は従わなければいけないから、信者同士の争いは絶えないわね。国同士の戦がそのまま宗教戦争よ。だから、私は宗教同士で結びつきながら作戦を展開してるの。懐柔に牧師を派遣してプロテスタントを広めてカトリック勢力に対抗したりね。簡単に内乱が起こせるわ。こう考えると、ヨーロッパの戦況は、玉座に座りながら簡単に俯瞰出来るでしょう?カトリックとプロテスタントの二色に色を分けて陥落させた都市に色を塗るだけで勢力図が簡単に出来上がる。後はどこのプロテスタントを味方に引き入れれば有利か考えればいいだけよ。今のところはプロテスタントの大国はオランダだから、何とか味方に引き入れたい所だけど、私が援助し過ぎて強大になって離反して、東南アジアに手を出し始めたから厄介だわ。フランスのカルヴァン派のユグノーの残党も使い道があるわね…。とにかくカトリックに対抗する事で作戦を展開してイギリスを守ってるわ」

俺は改めてエリザベスの頭の良さに感動した。
やっぱ遙が憧れるだけの世界最強のスーパーヒロインだ。
俺も更に大切な事に気付いた。
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