若さと。
徒歩の2人に合わせバイクを引いて歩けば上機嫌な恋人の姿とそれを見て嬉しそうな茂夫の様子で一気に幸せが込み上げる。
「来週からまたこっちなの。やっぱり地元最高!」
「ま、最近は特にコレといった依頼も無いわけだ。ゆっくりしようぜ。」
ビール2本とジュースとつまみと菓子が入ったコンビニの袋を持った霊幻はそんな夏深を見るなりさぞ嬉しそうに語り掛ける。
先程上機嫌な2人から買ってもらった棒アイスを舐め、茂夫は〈あたり〉の文字をぼうと見つめる。
「ん、モブにお土産をあげよう。」
出張先に偶々、縁結びで有名な灯台があり、そこで「そういえばモブも年頃だしなー」と購入したウサギのぬいぐるみである。
「おいおい、男子中学生にそれは厳しいだろ。モブはもう小学生じゃないんだぞ。」
なー?と呼びかける師を横に茂夫は目を輝かせ「ありがとうございます!」と頭を深々と下げていた。
「若いね。」
と霊幻に呟く。いつの間にか28である、こいつと出会ってもう20年だ。
「まだまだだろ、俺たちも。」
夏深のバイクのハンドルを押す手が緊張と照れくささで湿る。
〈霊とか相談所〉の安くさい看板も古いビルも変わらないし、何より2年も待っていてくれた彼に心から愛しさが込み上げてきた。20年という月日がたった2年で壊れる筈はないだろうが、それが何よりも嬉しかったのだ。
「私ね、新隆は絶対浮気してると思ってたしもしかしたら帰ったら他の女の子と結婚とかしちゃってるかもしれないって思って。」
悪戯っぽい夏深の表情に呆れつつ霊幻は頭を掻く。
「なわけねぇだろ。俺が生涯結婚したいと思う女も一緒にいて本当に愛しいとか…?その、なんつうか…そう思えんのは夏深だけだから、……安心していい…ぞ。」
照れくさそうに誤魔化して茂夫に「予約の依頼、あったか?」と聞く彼とぽつんと40cm程距離が開いた。
まるで、付き合いたてのカップルじゃないか。夏深は顔を真っ赤にし、ツカツカと距離を埋める。
エクボがヒューと冷やかす、本当に付き合いたてのカップルか。
狭い駐輪場にバイクを置き、これから喉を通るビールの味を考える。何とも可愛げの無い照れ隠しなのだろう、もっと若かったらもっと可愛げがあったのだろうか。
コンクリ造りの懐かしい事務所へ足を踏み入れる。
「た、ただいま。」
と夏深が呟き、唖然としたように扉の前に立てば
「おう、おかえり。ってそれは俺の家で言えよなー。」
「おかえりなさい、待ってましたよ。」
暖かい言葉が夏深を包んだ。
- 2 -
*前次#
ページ:
ALICE+