腐れ縁。


牛乳を飲み終えた茂夫はそそくさと事務所を後にしてしまった。2人に気を使ったのだろう。
夏深はやや名残惜しく感じたが「また明日会えるか」と昔から変わらない事務所のソファに身を沈める。
どっと疲れが増してきた気がするが、これから霊幻の自宅へ向かわなければならない。
アルコールが入っている為に徒歩での移動となるが、霊幻と共に歩くのなら夏深は苦ではない。
「まだ明るいからな、残りの菓子とつまみは袋に入れて家で仕切り直しだ。」
夏深に手を差しのべ、霊幻は告げる。
疲れよりも形容し難い楽しさと嬉しさが込み上げ夏深はその手を取った。
(ああ、大きくて固い、男の手だ)
いつの間にかこいつは男になってしまったんだろう、いつの間にか私は女になってしまったんだろう。
過ぎるそれは益々夏深を酔わせた。
「うん、でも…私寝ちゃうかも。」
へにゃりと笑えば、ぽんと頭を撫でられる。
まるで先程夏深が茂夫にした行為のようにわしゃわしゃと撫でれば「ほら、行くぞ。」と夏深のカバンをひょいと持ち手を引いた。
(ああ、この人の事本当に好きなんだな。昔から…)
夏深はバイク用のブーツを引っ掛けながら引かれるままに事務所を出た。
「やっぱ、夏でもさ。夕方は涼しいね。」
「スーツにワイシャツじゃ厳しいけどな。 バイク乗ってると寒い位なんだろ?」
まだ空は赤いままだし、段々歩いている内に眠気は飛んでしまった。
「20年、凄いよね。出逢って20年だよ。」
握った手と手がじんわり、夏の蒸しっぽさで汗ばんできた。
「ああ、お前がいない2年でも色々合ったんだ。20年…色々とあったな。」
思いを馳せるように歩く、懐かしい幼少の出逢いを思い出すように。



8歳の頃、私は県外からこっちの小学校に転校してきた。それも、4月や8月や12月等という学期の区切りではなく10月という曖昧な時期。 そして既にクラスの皆は個々のグループでまとまり、居場所なんて少しも無かった。 それに追い討ちをかけるように、当時の私は訛りがこちらとは違うようで馴染めずにいた。1人でいるのが好きという訳では無い、寧ろ人1倍寂しがり屋だと今でも思う。特にいじめに合うわけてもなく何もせずに月日は流れた。が、12月。 私の運命が大きく揺らいだあの事件は起こってしまった。

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