過去の私とヒーローと。


パラパラと雪もちらつき、冬が来た。
12月、それも8歳の12月は忘れない。
未だにクラスの人と最低限の会話しか出来ずにいた私は段々とクラスから疎外されていって、無い物のように扱われた。
「桐島さん、お願いね」
「どうせ桐島なら断れねえよ」
いや、都合の良い物として雑用やら何やらを押し付けられたのだ。
普通小学生がこんなことをするか、と未だに自問自答したくなる出来事だった。
ゴミの片付けだって、黒板消しの掃除だって、重い給食の配膳だってやった。
中には私を馬鹿にしたりする人もいたし、意地の悪い事に足を引っ掛けたり上着を隠したり…ああ、やっぱりいじめに発展している。
さっきのは訂正、やっぱりこれはいじめだった。
上着を隠された日、雪が丁度積もった日。
寒くて寒くて、でも誰にも言えなかった。
そんな中、彼は私のヒーローになってくれた。
「おい、お前もしかして上着ねぇの?」
馬鹿だなー、天気予報見ろよ。と自分の上着を私に投げ捨てた彼。
そう、霊幻新隆との出逢いだった。
その日から私は新隆と仲良くなったんだと思う。
「桐島夏深?あー、もしかして転校してきた奴か? 俺は霊幻新隆、見たところ友達が居ないと思える。」
「余計なお世話だよ、でも新隆君が私の友達になってくれるなら嬉しいな。」
少し寒そうにする新隆は今でも鮮明に思い出せる。
「正しい判断だ、よし。お前の友達1号はこの俺だからな。」
何気ない一言が凄く嬉しくて、今でもそれを言うけれど新隆は恥ずかしがって相手にしてくれない。
色々とあった、新隆が母親に運動会の事を言い忘れてお弁当を忘れた日。当時流行った都市伝説に冷や冷やしながら下校した日。中学も同じで、3年間同じクラスだったのには流石に腐れ縁を感じたけれど、同時にあの時…モブくらいの時だったか、私はこの感情が恋だと知った。同じ高校に入って、クラスが分かれても相変わらず一緒にいた。丁度付き合ったのはその時で、お互いを異性として意識しながらドギマギして帰宅したのを覚えている。新隆が就職してこちらの会社に入社が決まった時は私も今の会社への内定が決まっていて、自然と同棲生活へ発展したんだったっけ。
初夜はいつだったか、確かお互い初めてで2人でいけない事をしているような罪悪感と、大人へ近付けた喜びが朝方、新隆の顔を見て感じられたんだ。

そろそろ懐かしいあの部屋が見えてきた。
終始無言だった私達、きっと思う事は同じなんじゃないかなあ、と空を仰ぐ。
時刻は18:48。 まだまだ、夜はこれから。

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