ブスでも恋をする 第1話(立花×潤)
※注意
この物語は、潤 るちあくんを主人公としたお話です。FHCで唯一ブスの潤くんが恋(?)をするBL物語です。
しかしここの潤くんは別次元の潤くん、つまりパラレルワールドの世界の彼です。その為、FHCの潤くんとは別人と思ってくれたらありがたいです。潤くんの恋人考えてたんだよなぁ…と思っていた方はご安心ください。
誰も考えてない? そうですか……。
それでは、潤くんを中心に巻き起こる物語、スタートです。
とある街に存在する高校―――そこは、美男美女しか通う事を許されない学校として有名で、日本中の美男美女はこの学校に通っていると言われている。この学校に入る条件は「美男美女である」ことだ。正直、頭がいいか悪いかは関係ない。「顔が良ければすべて良し」と言う学校なのだ。
この学校の厳しい所は、一度入ったら卒業するまで自分自身の「美」を三年間維持しなければならない事だ。太る事はもちろん、ニキビ一つさえ許されない。もしそんな事になってしまえば最後、その人は周りから見下され、差別の対象となる。
そんな学校に一人、「ブス」と呼ばれても学校に通い続け、どんな差別に対しても前向きな青年がいました。その青年の名は、潤 るちあ。
しかし一つだけ言いたいのは、彼は虐めに屈しない強い子でも、堪えたら救われるなど夢を見る子ではない。彼は、自分が一番カッコいいと信じ、周りは嫉妬しているんだと思い込んでいる、ただのバカなのだ。
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校舎の4階、隅っこにある教室。その教室に一人の青年が目をつぶり、神経をとがらせている。周りの世界の音が彼には届かず、彼に聞こえるのはラジオから聞こえる音のみ。
男はそっと目を開けると、目にも留まらぬ速さでかるた札一枚を吹き飛ばす。かるた札はまるで手裏剣の様な速さで飛び、教室の柱に刺さる。その刺さったかるた札を取った男子生徒は、クスッと笑みを浮かべる。
「さすが、かるた部の部長。まるでかるた札が凶器みたいだわ」
青年はかるた札を片付けた。束となったかるた札を持ち、立ち上がる。部員数が少ないかるた部の部長。そう、彼が主人公の潤 るちあ―――の友人、竹馬 月日(たけば つきひ)である。
そしてもう一人の男、彼の名は灰崎 虱(はいざき しらみ)。彼もまた、潤の友人である。この二人は二年の間では1、2位を争うほどの美形の持ち主だ。その上、二人は頭がいい上に運動神経もいい。
竹馬はかるた部の部長だ。今まで多くの大会で優勝し、「かるた界の王子」と呼ばれている。そして誰にでも優しく、女子生徒からは「爽やか系王子」と呼ばれ、人気が高い。
灰崎はオネェだ。女性の気持ちも、男性の気持ちも理解し、周りからは良き相談相手として慕われている。そして彼もまた人気が高い。
そんな1、2位の美形の二人が一緒に廊下を歩いているだけでその場は騒がしくなる。彼らと目が合うだけで女生徒たちは涙した。二人とも周りの女の子に挨拶をしながら、廊下を進む。
「ところで王子様。私たちの人魚はいつもの所かしら」
「えぇ。昼休み、ひと泳ぎしてくると言うたはりましたわ。時間にならはったら、迎えに来てほしいとも…」
「一度集中すると周りの音が聞こえないものね。誰かさんと同じで…」
「本当に。誰に似たんでっしゃろ……」
「ん〜! もう! 月ちゃんの喋り方、全然慣れないわ! いい加減に標準語にしてくれないかしら!」
「すんまへん。こっちの方が慣れとるから」
二人はそんな話をしながら、校舎から少し離れた室内プールへと向かった。
室内プールの鍵は本来なら職員室にあり、体育の教師が管理をしている。しかしその鍵を唯一自由に使用できる生徒がいる。そう、その生徒こそがこの主人公、潤 るちあである。
なぜ彼がプールの鍵を自由に使用できるのかと言うと、この学園建設に潤家も関わっているからだ。建設の際、潤家の当主は学園に条件を出したのだ。それは「将来は息子を入学させる事、プールを自由に使用させる事」であった。そう、言わばこのプールは潤の為だけに作られた場所なのだ。もちろん学園側は反対したが、それだと金は一門も出さないと言われた為、仕方がなくその条件を呑んだのだ。
その為潤は、通常の休み時間、放課後の限られた時間以外は常にこのプールを使用していた。朝には早く登校して朝礼が始まるまでにひと泳ぎ。そして次は昼休み。放課後は水泳部が使用する為、水泳部が終わってからまた泳ぐ。
前に一度泳ぎに集中し過ぎて授業に遅れたことがあった。それをキッカケに潤は友人に時間になったら迎えを頼むようになった。その迎えをお願いしたのが、この学園で数少ない友人、竹馬と灰崎だった。
室内プールにたどり着くと、灰崎はドアを開けた。案の定、潤はまだ泳いでいた。一応時間を知らせるためにとセットしておいたアラームが室内に鳴り響くが、やはり潤は気付いていなかった。
潤はとても気持ちよさそうに泳いでいた。それはまるで人魚の様に綺麗で美しい。灰崎も竹馬も、気持ちよさそうに泳ぐ潤を見ているのがとても好きだった。だから声をかけるのが凄く躊躇う。しかしそれでは彼の為にはならないと、灰崎は潤が泳ぐの辞める時を待って、声をかける。
「るちあちゃーん! もう時間よ! アラーム、ずっと鳴り響いているわよ!」
「あれ? 二人ともいつの間に?」
「つい先程どす」
潤はプールから出ると、竹馬から渡されたタオルを受け取ると、身体を拭き始める。それからロッカーで着替えを終え、潤たちは一緒に外に出た。
「ん?」
潤がドアのカギを閉めている間、竹馬は背後に視線を感じて振り返る。しかしそこには誰もいなかった。
「どうしたの?」
「いいえ。何でもありません」
三人は一緒に教室へと戻っていった。この時の潤は、早く放課後にならないか、ワクワクしていた。
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6限目。潤たちのクラスは体育だった。だが潤は、プールは得意だがどうも陸上系の運動は苦手だった。まず汗をかくのが嫌いだった。どうせ濡れるのなら水がいいなど、潤は思っていた。
すると、隣のグラウンドから女子生徒の歓声が聞こえた。声が聞こえる方を見ると、3年生がサッカーをしている真っ最中だった。誰が歓声を受けているか、潤は知っていた。
立花 高貴(たちばな こうき)―――この学校の3年生。成績優秀でスポーツも出来る。そして何より顔がイケメンだった。そんな彼が女子生徒にモテない訳がなかった。
「何でアイツがモテるんだ? 俺の方がちょーカッコいいのに」
「あのね、るちあちゃん。この世には好みってのがあってね、女性皆必ずしもるちあちゃんを好きになる訳じゃないのよ」
「なるほど! 俺がカッコよすぎて、声かけづらいんだな!」
「うん、それでいいわ…」
3年と違って潤のクラスはテニスだった。チームを組んでボールの打ち合いなどをやっていた。潤は竹馬とチームを組んだ。テニスも出来る竹馬と違って、潤は初心者同然だった。竹馬が打ったボールを上手く打ち返す事が出来ず、毎回空振りとなる。
「わ、わりぃ!」
また空振り、潤は転がっていくボールの方に向かって走っていく。やっと止まったボールを拾おうとした時、先に誰かがそのボールを拾った。顔を上げると、そこには先程キャーキャーと騒がれていた立花がいた。立花は潤と目が合うと、ボールを渡してくれた。
「あ、ありがとう…ございます」
「テニス、難しいよね」
(うわ、空振り見られていたのか……)
と、潤は思った。そう思うと何だか恥ずかしい気がする。潤が少し照れていると、立花がまた口を開いた。
「君、いつもプールで泳いでいる子だよね。ふふ、何で知ってるのって顔をしてるね。君って結構有名人なんだよ」
「は、はぁ…」
ちょっと面倒だなと思った時、竹馬が潤を呼んだ。潤は助け船が来たと思い、立花にお礼を言った後、すぐに竹馬の方へ戻っていった。
潤の後姿を、立花は何も言わずただ見ていた。
END
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