宵の宴
宵闇の中に、燈籠の炎が揺らめく。
遠くから近くから、人の子の喧騒がきゃらきゃらと夜に響く。
燈籠の林、その陰に佇んでいた人ならざる者は、見知った人の気配に組んでいた腕を解いた。
「一目連さん」
「陰陽師殿か」
燈籠の灯りに目を細め、一目連は陰陽師の傍らに歩み寄る。
「今宵は、祭りのようだな」
「はい。天神様の社でお祭りがあるみたいで」
「……そうか」
故に、か。
一目連が難しい声色で呟いた意図に、陰陽師は気付いていない。
「皆さんにも来て頂けば良かったですね。お祭り、一緒に見て回りたかったんですけど」
「問題あるまい。都の祭りには、皆で行くのも良いな」
「良いですね。晴明様や博雅さんも、来てくれるでしょうか」
「どうであろうな」
からりからり、下駄が鳴る。
一目連はふと足を止めると、振り返った。
「行きは良い良い帰りは怖い……。良く言ったものではあるが、我らが陰陽師殿を手放すとでも思うたか?」
独眼を細めて、一目連は静かに告げる。
「――それでも良いなら通るが良い。我ら式神、総力を以て、害する者を退けよう」
背後を覆う気配が、霧散していく。
一目連は、己を呼ぶ陰陽師に笑いかけながら、踵を返した。