知ってる



「あっはははっ!!君、気に入ったよ!可愛い顔の子だなとは思ってたんだけど!」

こんなに、大声で笑ったのは久しぶりかもしれない。

少し、時を遡るとしよう。柱合会議に呼ばれてやって来たはいいが、目の前には本来、柱合会議にはいないはずの少年。名はかまどたんじろうと、言うらしい。聞けば、鬼になった妹を連れて鬼退治をしていたらしいが。


「義勇、あの子、何したの?」
「………」
「まーた、黙り?少しは話そうよ」
「無駄だ、みょうじ。今回は冨岡も隊律違反だ」
「伊黒、冨岡もなんかしたの?」
「鬼を連れてる少年にそれを黙認してたんだ。処罰を受けるに値するだろ」

どうやら、みんなは少年の言っている妹は2年、人を襲っていないと言う言葉が信じられないらしい。伊黒も相も変わらずネチネチと言葉を漏らしている。男なら簡潔にハッキリと物を言え。



「妹をかばっているのはわかる。でも、こんなに優しそうな少年なら、死んでるよ」

目を見ればわかる。彼は嘘をついてない。それに、もし妹が人を襲ったのなら自分を真っ先に差し出すか、二人で死んでる。この子はそういう目をしてる。

そこに響く、隠の声。不死川がまた何かやらかしているらしい。登場した不死川の手には木で出来た箱があった。そこには今回騒動になっているかまど少年の妹が入っているようで、って、ちょっと待て。あいつの目、やばいな。



「おい、不死川。手を離せ。女子供に手を出すな」
「あ?何言ってんだ。鬼だぞ?」
「そうだ。だけど、その子はかまど少年の妹だ」

「鬼殺隊として、人を守るために戦えるぅ?そんなことはなぁ、ありえねぇんだよ馬鹿がぁ!」
「おい!」

彼の差した箱からは血がしたたっていて、それを見た少年の動きは速かった。でも、あれじゃあ、切られる。
でも、義勇が声をかけてくれたからか、避けられた上に不死川に頭突きまでも食らわせていた。



「ブフッ……すみません」
「あっはははっ!!君、気に入ったよ!可愛い顔の子だなとは思ってたんだけど!」

蜜璃が吹き出したのにつられ、私も大声で笑ってしまった。いや、我慢するつもりもなかったけど。

また、騒ぎになりかけたが、お館様がいらして、場を静めてくれた。お館様も彼らを容認していたて、私たちにも認めて欲しいと。まあ、納得しない奴らはいる。元柱からの手紙があっても、お館様のお言葉があっても。だから、不死川はまた動いた。鬼は鬼でしかないと思っているから。また、箱を差して自分の腕を傷つける。

伊黒に押さえられているかまど少年の方には義勇が行ったので、私は不死川の方へ向かう。

でも、私は必要なかったかな。禰豆子はかまど少年の声に反応して、不死川の腕から顔を反らしていた。


「女子供に手を出すなと言っただろ」
「…うるせー離せ」

不死川の突きだしたままの腕に布をきつく巻いて、怒っている禰豆子の頭を撫でて箱に座らせてあげる。

その後、かまど少年と禰豆子は蝶屋敷に預けられる事になった。後でお見舞いに行ってあげよう。



「こんにちは。かまど少年いるかい?」
「あっ!!みょうじさん!」
「何、この綺麗な方」

結局、私が蝶屋敷を訪れたのは数日経ってから。


「なまえでいいよ」
「なまえさん、どうしたんですか?」
「お見舞い。君、柱合会議でも無茶してたからね」
「すみません…俺」
「君は謝るような事は何もしてない」
「ねえ、炭治郎。この綺麗な方はどちら様ですか?」


ベッドに寝ていたかまど少年の側に寄ると体を起こそうとしていたので、止める。


「そのままでいい」
「ありがとうございます。それに、柱合会議の時も禰豆子の側にいて頂いてありがとうございます」
「彼女も大丈夫かい?」
「はい!今は寝て、体を休めているところです」
「そうか、それは良かった」

にっこりと笑えばかまど少年も笑顔を返してくれる。けれど、すぐにその表情は崩れて不思議そうな顔をしていた。



「どうして、俺たちを信じてくれたんですか?」

ああ、そうだね。みんなから疑惑の目を向けられたら不思議になるよね。


「君を見るまでは鬼の子もろとも腹を切らせばいいと思っていた」
「えっ」

「でも、君の嘘のない真っ直ぐな目に惹かれてしまったから」
「……!」

固まってしまったかまど少年の頭を撫でて寝るように促し、席を立つ。

ああ、彼に触れた手が熱いな。
私はこの感情をしっている。だから、あんな事を言ってしまったんだな。



「ねえ、俺、見えてるよね?全く認識されてた感じがしないんだけど見えてるよね?」
「……」
「炭治郎?って……顔赤くない?心臓の音ヤバイよ」

「う、うん…俺、どうしちゃったのかな?」
「…ち、ちくしょーー!!!知らん!勝手にしてもう!!!」


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