いつも私を守ってくれているこの子に感謝の気持ちを込めて軽く打粉をかけていく。
「なまえ、今日柱合会議だろ?」
「大丈夫!もうすぐ終わるから」
拭い紙で刀身を丁寧に拭いて、油を必要最低限、油紙で拭いてあげる。
「よーし、今日も綺麗だね!」
「お前、派手に好きだよな」
「私が鬼に勝つにはこの子が必須だから」
刀をしまって天ちゃんと同じように肩から背にかけて刀を背負う。女の私にしては大きいように見えるが、あいつらの首にはこのくらいが、丁度いい。
「あら、色柱のなまえさん。今日も旦那さんと一緒で本当に仲がいいですね」
「本当に、素敵です」
「しのぶちゃんと蜜璃ちゃん!」
この2人は柱の中でもかなり仲良くしてもらってる。蜜璃ちゃんが持ってきてくれる蜂蜜、すんごくおいしいんだよ。
「甘露寺、あまりそいつに近づかない方がいいんじゃないか。惑わされるぞ」
「えっあっ、そんなこと…」
「おい、伊黒。文句があんなら地味にネチネチ言ってねぇでド派手に言いやがれ」
定位置とでも言うように木の上から話しかけてきた伊黒に、なまえはただ、目をぱちぱちと瞬かせている。しかし、宇髄は自分の嫁がいいように言われていないのに腹をたて伊黒を睨み付ける。
不穏な雰囲気に甘露寺は冷や汗をかいて手を自分の胸の前で握りしめていた。その手を握ったのは他でもないなまえ。ぎゅーっと握られていた手を包みこんで少しずつ撫でて解して両手を握る。
「ふふふっ、惑わしちゃうぞーっ!」
「きゃーっあはははっ」
握った両手を引っ張り回り始め、楽しそうにしているなまえと甘露寺に周りの柱はポカンとしていた。
「宇髄さん、あなたのお嫁さん…」
「ああ、派手にいいだろ」
そのあとすぐにお館様がいらして、柱合会議が始まった。会議が終わってからはお館様がまず、お部屋を出ていくのだけれど、今回は違った。お館様と私だけが部屋に残っている。
「なまえ」
「はい!」
「いつも、彼らの間を取り持ってくれて感謝してるよ」
「とんでもごさいません!私が、ああいった雰囲気が苦手なものですから…」
「それでいいんだ。なまえはそのままでいて欲しい。それで、彼らを支えていってもらえるかな」
「御意。お館様のお心が晴れるのなら」
お館様からはたまに文が送られてくる。柱合会議の前日とか内容は柱のみんなの様子とか。
今回は蜜璃ちゃんの事だった。最近、落ち込むような事があったから気にかけてやって欲しいと。蜜璃ちゃんが落ち込んでると伊黒さんも機嫌が良くなくなるんだよね。
「ありがとう。任務の事は頼んだよ。気をつけて行ってきなさい」
「はい!」
私が返事をすると、お館様は部屋を退出された。私も部屋を出て外に行くと天ちゃんが待っていてくれた。
「天ちゃん!」
「お、終わったか」
「うん、でもこれから任務頼まれたので行って参ります」
「なんだ、そうだったのか。なら俺も一緒に行ってやるからさっさと派手に終わらせて帰るぞ」
「ありがとー!派手に終わらせるぞー!」
珍しく複数で潜伏している鬼がいるという情報が入り、街へ向かう。やっぱり、大きい街だと夜でも人が歩き回っていて、鬼には都合がいいのだろう。
「天ちゃん。私が囮になるから周り見張っておいてくれる?」
「引っかけるのは鬼だけにしろよ」
「はーい」
天ちゃんと別れて街頭の届かない細い道へと入っていく。そう、こういう道で追い剥ぎに見せかけて人を襲うのが多いんだよね。
持っていたクナイで指先に傷を作る。こんなところで血の匂いがしたら、ねぇ。
「お嬢さん、こんなところにいると危ないよ」
「あら、何が危ないのですか?」
「夜道を1人で歩いてると鬼が出るからね」
「それは……ところで、貴方。何人食べたんですか?」
にっこにこと笑いかけてきた男、いや、鬼にそう尋ねると笑みは消えて睨み付けてくる。
「旨そうな匂いがしたと思ったが鬼狩りか」
「ご名答!こんな早々に貴方たちに会えるとは運がいいですね!で、何人殺したんですか?」
「はっ!そんなのわかるかよ!何十人と食ってきたからな!」
「そう、なら……何十回と斬られなさい」
背に背負っていた大太刀を抜き、鬼の手足を細切れにしていく。何十回と。最期に首を切り離し、顔を両手で持ち上げる。
「さあ、貴方はもう人を食べなくてよくなりました。斬られなくてよくなりました。ゆっくり、おやすみなさい」
「もう、聞こえてねーだろ」
「天ちゃん、終わったの?」
「ああ、上にいた奴らは派手にぶちかましてやったぜ」
さすが天ちゃん。私が1人倒している間に他の鬼は退治していまったようで。
私と鬼がいた辺りには真っ赤に染まり鬼の細切れになった肉片が散らばっていたがさらさらと灰になっていく。
「同じ赤い血が、流れてるのに、どうしてこうなっちゃったんだろ。悲しいね」
「の割には慈悲も見当たらねぇけどな」
「…そりゃそうですよ」
やられたら、やりかえさないと。