02
何気なく発せられたアルバの言葉に思わずどういうことかと聞き返す。
アルバは「本当にお前貴族事情に疎いのな」と嘆息してから口を開いた。
「そりゃだってお前。俺達みたいな末端貴族から見れば天下の有力貴族様、同じ有力貴族から見れば下賎な平民出身のヤツ。…中途半端な立場になるのが目に見えてるじゃねーか。孤立するぞ?」
どうやら、思った以上に貴族間の人間関係とは面倒くさいものらしい。
「なるほど、そりゃ確かにだるいな。忠告ありがとう。……そういや、会ってからずっと不思議に思っていたんだが、」
「ん?」
「貴族って実力主義だって聞いてたんだが、なんでここの連中はそんなに家や血統に拘るんだ?魔力で黙らせればいいじゃないか」
俺の素朴な問いに、アルバは心底面白くなさそうな顔で答えた。
「あー……話がそう単純だと俺も嬉しいんだけどなあ――」
曰く。
貴族の位の高さとは、それすなわち「戦いにおいてどれほど国に貢献したか」を直接示すもの。
で、あるので。
有力貴族には「自分が国を支えてやった、末端の者達を救ってやったのだ」という強烈な自負と誇りがある。
そのプライドを例え学園の中とはいえ踏みにじってしまえば、方々にコネクションや影響力を持つ有力貴族に目をつけられる。
その結果、成人して政治に関わるようになった後にもケチがついてまわる。
だから成人して出世するまでの辛抱だ、と「有力貴族様には敵いませんでさ、へへへ」とへこへこしているのが楽なのだそうな。
まあ実際のところ魔力は遺伝的側面が強いので、有力貴族の方が高い魔力を持つ傾向が強いといえるみたいだ。
だから「敵いませんでさぁ」もあながち嘘ではない、と。
「――ま、こんな感じかね。格の低い家や平民出身の奴が高い魔力を持つなんて、それこそイレギュラーなわけよ。俺も大概なんだけど、お前はイレギュラー中のイレギュラー。」
アルバはやれやれ、と肩をすくめた。
「そうなのか…あ、ってことは、」
俺は頷きながら話を聞いていたが、ふと思いついて声を上げた。
「ん?」
「アルバも魔力強いんだろ?ってことはお前、格上のヤツ相手にわざと負けてたりするのか?」
「あー…まあ、そういうこともある、かな」
「なら、」
このしがらみだらけの面倒なカーストに、俺でも一石を投じられるかもしれない。
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