始まりの日 01


拝啓、日本の母さん父さん。

王立デュノア学園始業式にて、俺の隣に座っている見知らぬ生徒から物凄い殺気を感じる今日この頃ですが、いかがお過ごしですか。

……現実逃避はやめよう。
理由は分かりきっている。
この始業式の席順、学年ごとに成績順に並ぶのだ。始業式開始前、総合棟の講堂前の掲示板に学年末試験の成績が張り出され、その順に座るようにとの指示があった。
学年末試験など俺は受けた覚えはなかったが、聞けば俺が入学前に受けたあのテストが学年末試験と同じものであったようで……

俺の名は、燦然と一番上に輝いていたわけで。

今、隣で全力で俺にガン飛ばしているのは、去年までの主席くんだったようで。

「おい、前の主席だったレクシスくん、編入生に主席奪われたらしいよ」
「マジかよ…気の毒だけど、求心力も下がるだろうなあ……」
……なんて噂話も小耳に挟んだりしまして。
どうも今回の次席のフレディ=レクシスくんは学園で主席を保つことでメンツを保っていた面があったんだろうなあと察してみたりして。

多少の罪悪感を抱きながら、思った以上に自分の黒髪が目立つことに驚きながら、こうしてため息をついている次第なのだ。

「……」

俺の隣に座り、俺を射殺さんばかりに睨みつけている彼、フレディ=レクシスは深い藍色の瞳にグレーの巻き毛を持つ可愛らしい少年だ(こっちを睨んでいなければ)。身長は160cmくらいと低め。
……なんだか、アメリカンショートヘアに威嚇されているような気分である。

彼は特に俺に話しかけるでもなくただただじっと俺を睨みつけ、時折いらいらと膝の上で拳を握ったり開いたりしていたが、

ぎりぎり、

不意に妙な音がするのに気付いて慌てて隣をみやれば、フレディが右手親指の爪をぎりりと噛んでいるところで目がバッチリあってしまった。

「……」
俺は無言で少し考え、
「……?!な、なにをするんだ!」
爪を噛むフレディの右手をそっと抑えて口から離した。彼が驚いた反応をしているがスルーし、
「俺のことを睨むのも憎むのも文句は言わないけど、爪を噛むのはやめた方がいいよ。それ、自傷行為と同じだから」
相手を警戒させないよう少し頬を緩めて話しかけた。

「……?!」
フレディは驚いたような表情で固まり、爪を噛んでいた右手をぱたりと膝の上に落とす。
そしてしばらく黙り込んだ後、
「……ふ、ふん。僕の勝手だろう」
そう言ってふいっと顔を背けた。

頬が少し赤らんでいたような気がするがきっと気のせいだろう。

そうこうしているうちに、始業式開始を合図するブザーが講堂に鳴り響いた。


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