02


式典中も時折謎の視線を隣から感じるのだが…まあそれを除けば、始業式は恙無く進んでいった。

学長のお話は元の世界と変わらず退屈で、「貴族としての自覚が云々」「日々切磋琢磨が云々」などのありきたりな文句が並べられている。
ぼんやりしていると、不意にこの世界の言葉の聞き方を忘れてしまうような錯覚がある。
最初にここの言葉を聞いた時に感じたように、壇上の学長の言葉が呪文のように聞こえて――

さて、変化は突然であった。
それまで俺と似たり寄ったりで退屈そうな表情をして(時折あくびなんかをして)座っていた生徒面々がにわかに活気づき、目を輝かせた。
そして次の瞬間、割れんばかりの歓声が講堂内に響き渡った。まだ声変わりも済んでいないような子供の声から、力強い男の声まで。
隣を見れば、先程まで俺にガン飛ばして来ていたはずのフレディ=レクシスも興味津々の瞳で壇上を凝視している。

つられて壇上に視線を移すと、壇上には4人の生徒が並んでいた。特徴に差異はあれども、皆とても見目のいい……つまりイケメンな生徒達だ。
タイの色はいずれもネイビーブルーなので、俺より2つ上、すなわち高等部3年であろうと察しがついた。
遠くて細かくは見えないが、その生徒達の制服襟部分にはきらりと光るバッジが見えた。そのバッジの形は4人それぞれ異なるように見える。

――あ、分かった。
これ、それぞれの学科の主席の人達だ。
……に、しても。主席の人々にこんなに高い人気があるとは知らなかった。
すげえな、と感嘆のため息をつく俺を尻目に歓声はヒートアップ。やがて司会の生徒が口を開いた。

「静粛に願います。これより、政治学科、魔術学科、技術学科、軍事学科それぞれの学科会長から一言伝言を預かっておりますので、ここにお伝えします。」

学科それぞれに生徒会みたいなものがあるのか。まとめてしまってもいいのになぜ分けるのだろう。
そして伝言とはなんぞや。

俺が首を捻っていると、学科会長の4人が軽く礼をした。お辞儀にすら湧き上がる歓声。なぁんだこれ。
そりゃイケメンだけども、まるでアイドルに対する扱いのようだ。昨夜リールの言っていた「この学園には同性愛者が多い」をこんなところで体感する羽目になるとは。

司会の生徒は歓声を見事なポーカーフェイスでスルーしつつ、伝言を読み上げた。
「…えー、では読み上げます。『今年は、高等部1年の授業の視察をより積極的に行います。見どころのある生徒は学科会長自らスカウトをするので修練に励むように。また、スカウトされた生徒は将来がかかる選択になるので慎重に検討することを勧めます。』……以上となります。」

歓声。歓声に次ぐ歓声。歓声の波状攻撃。
対象になるのは俺の学年だからか、高等部1年が一番盛り上がっているような気がする。

学科会長がここまでの人気であることから察するに、学科会長達はそれなりに格の高い貴族なのだろう。
そしてそんな学科会長にスカウトされる、つまり目をかけられるということは……将来有利になるな。
これは確かに皆頑張るだろう。理解できる。

一時歓声の狂乱に陥りながらもどうにか始業式は終了し、俺たち生徒はHRへ移動することになった。
んっと伸びをしてHRの場所を誰かに聞こうとした時、俺に声をかける者があった。

「ノエ。おはよう」

アルバだ。俺はちょっと疲れた笑顔を見せて応える。
「ああ、アルバ。おはよう。悪いけどホームルームの教室まで案内してもらえるか」
「ああ、いいぜ。こっちだ」

ざわ。
俺の周囲がざわめいたのが分かった。
あらかた、エトワール家の養子が末端貴族と親しげに…!とかいういつものやつだろう。
このあたりのスタンスに関しては、周囲にしっかりと知らせておく必要があるな。
アルバも平気そうな顔をしているが、やはり居心地は良くないだろう。早めに対策してやらないと。

そんなことを考えながら俺たちは教室に向かうのだった。


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