03
俺に割り当てられた教室は高等部1年B組。
幸い教室や出席番号まで成績順ということはないらしく、フレディ=レクシスとはクラスが分かれた。
まあ微妙に視線が痛いのは変わりないのだけれど、フレディほどの敵視の視線はそう多くない。
「クラスが成績順になってないのはあれだ、学校行事とかで困るんだよ。クラスで能力に偏りがあるとさ」
とはアルバの談である。
「ごめんな、ちょっと居心地悪いだろ?」
俺がアルバにそう謝罪すれば、アルバは今更だなあと笑いながら言った。
「これから変えてくれるんだろ?期待してるぜ、ボス?」
茶化した物言いに感謝しつつツッコミを入れる。
「誰がボスだよ」
周囲はそんな俺たちを怖々と観察しているようだった。
「よしお前ら、1ヶ月ぶりだな。毎年クラスが変わらず同じメンツだからそろそろ飽きてきたか……と、言いたいところだが――」
教壇に立つのはこのクラスの担任の教師。
身長は180cmほど。真っ赤な直毛をオールバックにしている、がっしりとした体格のアラフォーおじさんだ。
ナイスミドルといった雰囲気で、これまた生徒には人気が出そうな見た目である。
この教師はヤレヤレといった雰囲気で語っている。毎年変わらぬ顔ぶれ、毎年変わらぬ文句なのだろう、が――
「今年は優秀な編入生がいるんだったな。」
そう言って俺を見た。教室中の視線が俺に集まる。
俺が軽く会釈をすれば先生もまた軽く頷いた。
「うん、そういうことなのでほかの皆には耳タコだろうが自己紹介をしよう。俺はヴェルナー=サリバン。総合科の軍事系教科の指導と、お前らの担任を担当する。今年は大事な進路選択の時期に当たるから、相談には適宜乗る。遠慮なくアポを取ってくれていい。」
軽い自己紹介の後、サリバン先生は俺の方へと視線をやった。
「エトワール、せっかくだからお前も前で自己紹介しろ」
俺は頷き席を立った。
俺を捉える数十のカラフルな瞳。本当にこの学園で一度も黒の髪、瞳を見ないな。
俺は注目の集まる中で口を開く。
「はじめまして、ノエ=エトワールです。色々噂が流れているようですがこの通り普通の生徒です。ただ、――」
スタンスを表明するなら、ここかな。
俺はにこっと笑みを浮かべて宣言する。
「俺はほかの皆とは些か、スタンスが違うと思います。具体的には…俺は有力貴族の息子だからという理由で持ち上げられるのが嫌いだし、末端貴族の息子だからという理由で人を貶める人が嫌いです。なぜなら強くて偉いのは親であり、自分自身じゃないからだ。」
しん、と教室が静まり返った。
「俺は自分自身を見て欲しいし、人付き合いにあたりあなた方自身を見る。格下の家であっても、尊敬すべきところは尊敬する。そんな付き合いを望む。」
俺はすうっと息を吸い込んで教室を見渡し、
「だからここに表明します、」
図太く、満面の笑みで言い放つ。
「俺は真面目も真面目、大真面目に、この学園で馬鹿騒ぎをします。これから、どうぞよろしく!」
啖呵をきった。
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