02
サーシャのオレンジ髪をもふもふしたまま、シュカは言う。
「午後の軍事分野実技訓練、軍科の学科会長と副会長が視察に来るんだってさ。一昨日くらいから噂になってる」
「そう、なの?おれは1-Aだからい、いないけど、がんばってね」
リールがぐっと拳を握って応援するが、サーシャはどこか憂鬱そうだ。
「どうした?サーシャ」
俺が促してやるとサーシャは俯いて吐露した。
「僕、軍事分野訓練苦手なんだ……魔力も少ないし、攻撃系の魔法は得意じゃないし…」
「あー、オレもー。軍科に行く予定じゃないけど、ちょっと憂鬱だわー」
シュカも同意を示す。
2人の愚痴を聞いたアルバがきょとんとして言う。
「そりゃあ…やり方が悪いんじゃないか?戦闘ってそんなに魔力量重要じゃないぞ」
「その通りだな、2人さえ良ければ次の時間にコツ教えようか?」
俺がうんうんと頷きながらした提案に、サーシャとシュカの目が輝いた。
「ほ、本当?!」
「マジでー?!これでオレも劇的につよく…」
「1日でなれるわけないだろ」
「ですよねー!」
シュカはこの通り、凄く賑やかなやつだ。
こういうタイプも嫌いじゃない。場の空気が和むのはいいことだ。
「あ…でも…」
サーシャがふと目を泳がせて、気まずそうに俺に言った。
「でも、気をつけてね、ノエくん。僕のクラスにノエくんを目の敵にしてる人がいて……今度の実技訓練でぼこぼこに叩きのめすって勇んでいたんだ…」
なぁんて不穏な情報。俺は苦笑しながら訊ねる。
「ええ……誰それ、俺の知ってる人?」
「ノエお前、また変なところで恨み買ったんじゃないのか?」
入った茶々はアルバのものだ。サーシャはぶんぶんと首を振って答える。
「去年までの主席の、フレディ=レクシスさんって知ってる?その人の熱狂的ファンというか、取り巻きの生徒なんだ」
ああ……あの目線で人を殺そうとしてるんじゃないかってくらい殺気の酷かったフレディくんか。こんなところで喧嘩を売られるとは。
サーシャは眉を顰めて注意を促してくれる。
「きっと訓練中の自由時間になったら挑戦されると思うから、気を付けて」
アルバが腕を組んで不愉快そうに言う。
「迷惑なことだな、こりゃ逆恨みだからしょうがねえ。……まあその時はコツは俺が2人に教えるから」
俺も少し考えて、頷いた。
「…そういうことになっても、それほど時間はかからないと思うが……ま、油断は良いことないからな。そうだな、アルバ、頼んだ」
「おう」
――今日も、一波乱ありそうだ。
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