05
二人一組でのウォーミングアップをしながら、俺はアルバに訊ねた。
「なあアルバ……さっきの軍科副会長って…」
「ああ、リールの兄貴だな」
何気ないような答えだったが、……アルバの眉が少し顰められたのが分かった。あまり触れるべきではない話題なのだろう。そう察した俺は軽く首を振った。
「ああ、やっぱりそうか。……いや、これ以上は特に聞かないよ。気になるならリール本人に聞くさ」
アルバは安堵したように僅かに微笑んだ。
「ああ、うん。その方がいい。お前が今まで聞いてないってことは、そういうことだからな」
「兄さんがいるとは聞いていたんだけどな。年子だったのか。」
「リールの家は子沢山だからな…確か高等部3年にも兄貴がいたはずだぜ」
親兄弟と確執がありそうだということは察してはいたが……こんなに早く遭遇することになるとは。まあ今は訓練に集中するほかない。
そんな俺達に近付き、声をかける者がいた。
「おい、ノエ=エトワール」
「…ん?」
俺が胡乱げに振り向けば、そこにいたのは額に青筋を浮かべて般若の形相をしている生徒がいた。そのさらに背後で、サーシャがあわあわしているのが見えた。
――ああなるほど、こいつがサーシャの言っていたフレディのシンパの生徒、というやつか。
「俺に、何か?」
じっと目を見つめて問い返せば、その生徒はぷるぷると唇をわななかせた。
「お前、次の実践戦闘でオレと勝負しろ」
おお、直球な決闘の申し込みか。
もう少し陰湿な方法が来てもおかしくないと想定していただけに好感度が上がった。
まあ向こうからすれば、俺からの好感度なんぞお断りなんだろうが。
ちょっと面白くなってくすっと笑えば、相手の生徒は何笑ってんだ!と激昂。い、いかん、怒られると逆に笑えてくる。
俺は笑いを堪えつつその生徒に答える。
「ああ、ごめんごめん。こんなに直球で喧嘩売られるとは思ってなくて笑っちゃったよ。いいよ、やろう。……その前に、俺、君のこと知らないんだけど。名前を教えてくれる?」
その生徒は頬をぴくぴくさせながら、むすっと答えた。
「……クレール=ブライト。お前をぶちのめして、フレディ様の威信を回復する。覚えていろよ」
「クレールくんか。君みたいなのは結構好きなんだけど残念だな。」
アルバがあっちゃー、という顔をしている。
シュカがヤレヤレ、という顔をしている。
サーシャはおたおたしていた。
そして俺の気付かぬところで。
軍科会長と副会長はこんな話をしていた。
「――ふむ。」
「会長、面白いことになってきましたねー?」
「……ああ、変な形になっているようだが、きっちり素質を見極められるのは有り難い」
「そーですねえ。凄い凄いって噂になってるけど、噂が独り歩きしてるだけじゃないといいっすねー」
「……ああ」
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