06
対人戦闘訓練は森の中で行うわけではない。
人相手の戦闘だと学舎や森に流れ弾、というか被害が及ぶことも珍しくないからだ。
ならどうするのか、というと。
サリバン先生が家庭用プラネタリウムのような球形の機械を取り出した。これは学園の備品の魔化製品、空間拡張の魔法の応用で作られた代物で、――
かちっ、とスイッチが入れられる。
すると、ぶうん、という音とともに周囲の景色ががらりと変化する。四方どこを向いても緑色だった森の中から、岩がむき出しの荒野に。
――このように、バーチャルな世界に入り込むことができる。SAOみたいなものだ。
ただ例のデスゲームと違うのは、この空間で致死ダメージを食らうと死ぬわけではなく強制的に元の空間、つまり森の中に戻されるという点にある。そして元の空間では、この空間で食らった傷は全く反映されていない。
実際には無傷でデッドオアアライブの戦闘ができるという点で、訓練にはもってこいというわけだ。
……で、今俺の目の前には、並々ならぬ殺気で俺を睨みつけるクレールくんがいるわけだ。
サリバン先生にことの次第を簡単に説明して許可を求めたところ、
「……エトワール、また馬鹿なことを始めるつもりか……まあ、いい。訓練の方式に従うなら止める理由もない。」
渋い顔をしていたもののお許しが出てしまったので。
あそこまでど直球で果し合いの申し込みを受けたわけなので、フレディ派閥と俺が決闘することはそれこそマッハで知れ渡った。俺達2人の周りにはギャラリーが出来ている始末だ。
クレールは押し殺したような声で俺に言った。
「こんだけのギャラリーの前でお前をやっつければ、これでお前も大きな顔できなくなるだろ……覚悟はいいか!」
「うん、いいよ。よろしく!」
俺が笑顔で答えれば、クレールのイライラ度が上がったのがわかった。煽り耐性がないやつは面白い。
クレールは俺から20mと、かなり長めの間合いを取って仁王立ちをした。俺は特に準備はせずに動きやすい自然な姿勢を取り、クレールと向き合う。
俺達の周囲には足場になりそうな段差や遮蔽に使えそうな岩が転がっている。
……随分広めに間合いを取るんだな。
軽く向こうの戦法の予想を立てて、自分の動きを考えた。そして軽く右手を上げて、
「いつでもいいよ!始めよう!」
騒動の幕が上がる。
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