02


「失礼、します。アドニス公、本日は対面の機会を設けていただきありがとうございます」

俺は深く一礼して、4ヶ月振りに会うアドニスの前に立った。彼は以前と変わらない笑みを浮かべて答えた。

「とても言葉が上手くなったね、本当に大したものだ」
「お褒めいただき光栄です」
「ああ、良いよ、楽にして。話をしようじゃないか。向かいに座りなさい」
礼を深くする俺を、アドニス公は手を振って制した。そして向かいの椅子に座るよう示す。テーブルにはいい香りのお茶が置かれていた。

俺が座ったのを確認すると、彼は紅茶に口をつけてから口を開いた。
「――さて、まずは君のことを聞こう。ノエ?ヒロム?」
「ノエ、で構いません。ここに来てからはずっとその呼び名なので」
「そうかい、じゃあ、ノエ……」

「君は何者だね?どこから来たのかな?」

来た……来たよ、この質問。避けては通れないと思ってはいたけども。
なんと答えたら良いものか。
俺はしばらく迷って、口火を切った。

「……嘘や誤魔化しが通用する方とは思いませんので正直に言います――信じてもらえるかは微妙なところですが」




俺は包み隠さずにすべてを話した。
自分はおそらく異世界の人間であること。
根拠はいくつかあるが、もといた国が「身分制度のない1億以上の人間が住む国であり、文明レベルに大きな違いがあるのが明白であること」が根拠の一つに挙げられること。
この世界に来ることになった原因はさっぱり思い当たらず、帰り方もわからないこと。
言葉が通じないことから奴隷として2ヶ月間働いたこと。――

アドニス公は、俺の話に一切口を挟むことなく静かに聞いていた。
俺の話が一段落すると、彼はふうと息をついて言った。

「なるほどね…道理で。私は我々と言語を異にする小数部族に多少詳しかったのだがね、君の操る言語は全く見つからなかった。おかしいと思っていたのだよ、そうか、異世界か……」
納得したように頷くアドニス公に、俺は遠慮がちに声をかけた。
「あの、ひとつ質問しても?」
「なんだね?」

「異世界からこちらに呼び寄せるような魔術はあるのでしょうか?俺の故郷には魔法が存在しません。何らかの魔術的要因で俺がこちらに来たなら、こちら側に原因があると思うのですが」
俺の問いに、アドニス公はうーむと考え込んでしまった。
「ない……わけでもないのだが……」

?歯切れが悪い。


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