03


アドニス公は暫しの逡巡の後、重い口を開いた。
「ノエ、君のいうような魔法はあるにはある…が、私の見解としてはそれが原因である可能性は低いと考えているよ」

彼の話は少々専門的だったため言語を習い始めて半年の俺には理解に手間取るものだったが、どうにかこうにか理解できたことを簡単に述べよう。

曰く。
まず第一に、異世界から何かを召喚するような魔法は知る人の限られる禁術であること。
そして第二に、召喚魔法はその性質上、人ひとりをきちんと運ぶのは奇跡に近い確率であること。

召喚魔法の命令術式は『あそこにあるモノをここに持ってこい』である。
その場所を指定する時に座標を利用する。

もしも魔法が発動した瞬間、その座標に犬の上半身部分がたまたま入り込んだらどうなるか?
答えは『犬の上半身だけがもげてここに来る』。
下半身は向こうの世界に置き去りだ。
この惨事を防ぐためには、指定した座標に他のものが入らないように見張っておくしかない。
そして、異世界を覗く(見張る)魔法は存在しない。

アドニス公は言った。
「もし君がこの魔法で呼ばれたのだとしたら、普通に考えれば手足の1本や2本もげていてもおかしくないからねえ」

つまりどういうことか?
召喚魔法で偶然呼ばれたのだとしたら、俺は死ぬほど悪運が強い。
それ以外の要因だとしたら……何?奇跡でも起きたの?

どちらにしても、天文学的確率を引いている。ナニコレ。

嫌な予感を覚えながら、どうにかして元の世界に戻る方法はないのか?と問うた答えは、

「……私にはお手上げだね!」

爽やかな笑顔で言い切られた。
で、ですよね!

頬を引き攣らせて固まっている俺をアドニス公はしばらく観察していたが、やがて紅茶を一口飲んで真面目な表情になった。

「そこで、提案があるのさ。――今度は私側の話をする番だね。」

「君が誠意を持って正直に話してくれた、その対応には相応の答えを返さねばね。」


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