06


俺は知らなければならない。
自分の力の及ぶ問題なのかどうかを。
自分の力の範囲を。

この問題について誰かから噂で聞く、という方法はこの場合望ましくないだろう。
俺についての噂のことを顧みるに、尾ひれがつきまくって正確さは望めまい。不確実な情報で分かったような顔をされることというのは、当事者からしてみればとても不快なことだ。デリケートな問題ならば尚更である。

ならばどうするか。




俺はその日の放課後、アルバに教えてもらった学園の図書館に行くことに決めた。
「1人で大丈夫か、手伝うか?」
俺の顔を心配そうに覗き込んでアルバは提案してくるが、
「いや、大丈夫。自分でやりたいことなんだ。ありがとう」
この通り断った。なんだかいつもよりアルバが優しいというか過保護で、少しくすぐったい気分だ。

さて、この図書館。
総合棟に存在する膨大な蔵書量を誇るらしい立派な代物である。

先程から「教えてもらった」とか「誇るらしい」とか、妙に曖昧な表現だと思われただろう。

というのもこの図書館、誰も本当の広さ・蔵書量・所在地を知らないのである。
アルバ曰く、この学園を作った数百年前の先人達の非常に複雑な魔術重ねがけにより、この図書館の実態は巧妙に隠されているのだそうだ。
国家機密に当たるような貴重な文書も多く保管されているらしいので、スパイや邪な目的で本を閲覧されるのを防ぐための機構なのだろう、とのこと。

この図書館にたどり着くためには『図書館に行く目的』を念じながら校舎内を歩き回れば良い。
邪な目的でなく、その本を閲覧するにふさわしいと図書館に認められれば、目の前に重厚な扉が現れるだろうと。

俺は、放課後のいつもより少し静かな校舎内をのんびりとぶらつきながら念じた。

『貴族の戸籍、家系図、或いは貴族の実態が分かる本を調べたい』――

……変化は突然訪れた。
遠くに感じていた人の気配や喧噪が突然さらに遠くなり、空気が澄み渡るのを感じる。

「おお……」

俺は目を見張った。
目の前にそびえるのは、とても大きく重厚な木の扉。美しい彫刻が施され、その雰囲気はどこか神聖でさえある。

恐る恐る手を触れて押せば、扉はその見た目とは裏腹に意外なほどあっさりと開き俺を迎え入れた。
古い紙の匂いが漂う巨大な書庫に、俺はゆっくりと足を踏み入れた。


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