是非もなし。


貴族が貴族であり続けるために必要なものはなにより魔力である。
今代がどんな有力者であっても、魔力を持つ子供に恵まれなければどうにもならない。お家取り潰し、というやつだ。
だから、魔力持ちの子に恵まれない貴族は家を消滅させないために養子確保に駆けずり回る。

話を戻すと、アドニス公はこの「子に恵まれない有力貴族」にあたるのだそうだ。

「妻がいたのだけれど、子供を産む時に子供ともども死んでしまってね……彼女を愛していたから、後妻を娶る気も起きなくてねえ」

アドニス公は目を伏せて息をついた。
長めの髪が顔にかかって表情は伺い知れない。淡々と話は続く。

「有力貴族の私に恩を売ろうとする輩が後を絶たないのだよ。やれ娘を後妻にだ、やれ三男坊を養子にだと、ほかの家の息がかかった者を潜り込ませようとする輩が鬱陶しいったらない……そんな時に現れたのが君だよ」

ぱっ、と彼の顔か上がった。心底嬉しそうに笑っている。

「つまり、アドニス公……俺に養子になれと?」
「そのとおり!」
おそるおそる訊ねれば、アドニス公、サムズアップ。That's right!

「言っちゃ悪いが君が帰る方法は今のところないし、見つかるとしても10年単位の時間がかかることは間違いない」
「それは……そうですね」
「ならば、その間君に身分上の保護をしよう。帰る方法を探す手伝いも惜しまない。」
「ええと、」
「君はその間に子供のひとりでも設けてくれれば、帰還方法が見つかった暁には帰っても構わない」
「その、」
「私はうるさい取り巻きから解放され、誰の息もかかっていない上魔力のとても強い養子を得る、」
「あのう」
「君は帰還までの経済的、社会的バックアップを得る。ウィンウィンだろう?」
「……」
「君が馬鹿だったら多少の路銀を持たせて放逐しようと思っていたが、賢いようだからね!申し分ない!」

……というかやっぱりこの4ヶ月頑張っておいて良かった!この人見捨てる気満々だった!

「どうかな?ノエ」

わあ、綺麗な笑顔ですね。
選択肢ははいかYesですね。

「……よろしくお願いします」

そんなこんなで、俺はノエ=エトワールになった。


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