04
……なんとなく、話が見えてきたような気がする。
読書に没頭する俺をビブロさんは難しい顔で見守っていた。
高位の魔物の呼び出しをするにはまず陣と術式、そして魔物への誠意として1人の人間の命を差し出すことが必要である。
時間は月の出ている夜が望ましいが、都合がつかないならば地下や洞窟などの暗いところで蝋燭を灯して行うのが良い。
蝋燭を月と見立てて儀式を行うのである。
魔物の姿を間近で見ることで取り乱す者も多いので、魔物との交渉役は複数人用意しておくべし。
……いや、これって本末転倒じゃないか?
魔物に害されないように、という目的で始まった研究なのに既に1人死んでいるんだが。
手筈通りに魔物が出現したら、ここからが交渉段階である。
人間に利益をもたらす魔物の能力は、主に以下のものがある。
1.人間に知られていない禁断の魔術知識
2.その魔物固有の能力の貸与
3.魔物の生まれつき持つ純度の高い魔力を人間に分け与える
魔物にも個体差、性格があるようで、上手く交渉すれば少ない対価で大きな利益を得ることも可能だろう。
ただし譲歩を引き出せるのは、彼らに交渉に応じるメリットがある範囲内に留まることに注意が必要である。
1の魔術的知識を求めるならば、魔物側からしてみれば『教えること』により魔力消耗は起こらないため対価となる魔力は少なくて済むだろう。
ただ、呼び出された魔物の性格によっては面倒がって応じてくれない場合もある。
相手が得られる利益(対価の魔力)が多くないからである。
逆に2,3を求めるならば、魔物に相応の『食事』…すなわち魔力を渡す必要があるだろう。
2,3は魔物にとってもそれなりに体力を使う業であるため、釣り合う魔力は決して少なくない。
2の能力貸与は、貸与の期間や能力の強力さにもよるが目安として『5年で人間3人分の魔力』といったところだろう。
※この『人間』は魔法を使うことのできる者である必要は必ずしもない。平民の体の底にも、澱のように魔力は溜まっているものだからである。平民はただ、魔力を力として放出する術を持たないだけなのだ。
3の魔力分譲は、これも魔力の量によるが最低でも『人間8人分の魔力』が必要となるだろう。多く捧げれば捧げるほど、多くの分譲が期待できるはずだ。
そして、ここからが注意すべき部分である。
高位の魔物はかなり『契約』を重視する性質であるらしく、この取引により知識・能力・魔力を得た人間の身体にに『取引をしたという印』を残すのである。
形は人それぞれであるので以下に例示する。
爪が鋭く長くなる、背中の肩甲骨部分に翼の刺青が現れる、犬歯が鋭くなる、瞳の色が魔の色である紅に染まる、耳の形が変化する……等。
また、万が一にも事故が起きぬよう追記しておくが、魔物を呼び出しておきながら取引を完了させられなかった場合は、その場にいる者の皆殺しは避けられないだろう。
例えば、交渉役が全員取り乱して取引どころでなくなった場合、差し出す対価が足りなかった場合等である。
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