09


「……げ」

思わず声に出てしまった。
いやいや、それも無理ないだろう。
鉢合わせた相手もまた、「あっ」とか「うわ」とか思い思いのリアクションをしているわけだし。その集団の中心にいる少年が、ひどく複雑そうな顔をして俺の名を呼んだ。

「……ノエ=エトワール。」

身長160cmほど。
深い藍色の少しつり気味の大きな瞳。グレーの巻き毛。
俺がやってくるまで学年主席だった、フレディ=レクシス。と、その取り巻きが4人。当然なんだけど取り巻きの4人は俺に敵意のようなものを向けてきている。……いやあ、気まずいなんてもんじゃないね!

俺はあー、とかえっと、とか愛想笑いをしながらなんとかこの空気をどうにかしようと、

「……や、やあ。天気は悪いけど、調子はどうだ?」

なーんて声をかけてみるけれど……ダメだ!空気は凍りつく一方だ!
どちらかというと暑いくらいの気温なのに、この付近半径5mくらいの範囲に限ってはめちゃくちゃ寒い!

この空気、どうしたもんか。
困ってしまって黙っていると、フレディが一歩前に出て……

「ノエ=エトワール。」

色々な感情が入り混じったなんとも複雑な表情を浮かべて、俺が思ってもみなかったことを口にしたのである。

「……以前は、僕の取り巻きのクレールが無礼を働いた。……申し訳なかった。止められなかった僕の責任だ。あいつも未来ある身だ、どうか許してやってほしい」

そう言って頭を下げたのである。意外すぎる対応に思わず面食らう。
フレディの取り巻き連中は「そんな!」とか「レクシス様が謝る必要など!」とか「そうです全部クレールのやつが悪いんですから!」とか姦しい。
フレディは喧しい取り巻きたちを「ちょっと黙っててくれないか」と一喝する。慣れた対応だなあ。

「いや、気にしていないよ。俺も俺で負けず嫌いなものだから負けてはやれなかったけど。フレディくん?レクシスくん?も気にしなくていい。君がやったことでもないわけだし」

俺が軽く手を振って答えると、フレディはほっと息をついて少しだけ頬を緩めた。
相変わらず好意と嫌悪の混ざったような形容しがたい表情だが。

「……そうか。僕も大概負けず嫌いなもので、人生初めての敗北のショックのあまり始業式でも大人気ない真似をした。……次は決して負けないし、……ひとまずはこのゲームで君に勝って僕の力を証明するとしよう」

……ふむ、今までの人生で負けたことがなかったなら、始業式のあの態度も納得の範囲ではあるな。
案外いいやつ、というか、思った以上に理性的な男らしい。俺の好感度が上がった。上がったからってありがた迷惑なんだろうけれど。

俺も歯を見せて笑み、言葉を返す。

「そうだな、このゲームなかなかハードだろうがお互い頑張ろうか。……ところで、相方は見つかっているか?知っている数字があるかもしれない。情報を交換しないか」

俺の提案に、フレディは一も二もなく頷いた。
「ああ、僕は142番だ。こいつらは……」

……。
……今、なんて?
……142?えっ、マジで?

「は、はは……フレディくん、どうやら勝負はお預けみたいだ」

俺は乾いた笑い声を上げて自分の番号――142番を告げた。フレディの取り巻き連中が言葉を失い、フレディの顎が落ちた。

……『俺、天文学的確率を引くことにかけては自信があるんだ』

うん、言った。確かに言ったな!

……こういうフラグ回収かよ!!


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