02


俺は傍らで眠り込むアルバの肩に毛布を掛けてやってから猫又へと向き直った。
そうして俺と猫又の交渉が始まる。




――じゃあ、遠慮なく。お前が俺に求めるものは3日1度、一口の血液を提供する。これでいいな?

「ああ。ご主人には自分の血の希少性を認識しにくいんだろうけど、これで大抵のことにはお釣りが来るぜ。もし足りなくなるほど魔力を使わされる事態になったら、状況に応じて追加料金を貰うってことでどうよ?」

――俺がお前に血を渡すことで、俺の魔力が枯渇して回復しない事態になる可能性はあるのか?

「ない。俺達魔物と違って、人間は魔力を消費しまくって気絶しても長くても2、3日養生すればキャパ一杯まで回復する。そのキャパには個人差があってご主人は規格外。俺達魔物には人間は“枯れない泉”に見えるってわけさ」

――「3日に1度」とは厳密に72時間に1度を指すのか?お前は知っているか分からないが、人間は一度に多量の血液を失うと死に至るんだ。

「あ、なるほど。例えばご主人が大怪我してる時に提供したら容態が悪化することがあるってわけな。……そういうことなら厳密な計算はナシにしようや。俺としてもご主人に死なれたら困る」

――助かる。血の提供に関する質問だが、例えば瓶やパックかなにかに俺の血液を保管しておいてその都度渡すというのはアリか?

「魔力供給、って意味ならそれで事足りると思うけど……嫌だな、鮮度が落ちると味も落ちる。新鮮なのがいい、っていうのが俺からの要望ってことで」

――味、というワードで気になったんだが、魔物は俺達人間が食べるようなものも食べるのか?……つまり、食費はかかるのか?

「食う必要はない。でも食えるし味覚もあるから貰えるなら貰うし嬉しいぜ?人間でいうなら……煙草みたいなものかね。嗜好品。ご主人の負担にならねえ程度で構わない」

――契約後は基本的に俺の指示に従ってくれると考えていいのか?

「自害しろ、とか以外ならな。嘘もつかない。より効果的な策があれば進言はするかもしれないな」

――例えば……仲の良かった魔物を倒してくれ、とかでも?

「勿論。……つーか、仲の良かった魔物とは今日の昼喧嘩別れしてきたんだよ!その喧嘩で消耗してたんだけどな!」

――お前から俺に指定したい条件、他にあるか?

「そうだな、俺以外の魔物と長期で契約するのは基本ナシ、要相談ってとこか」

――魔物と契約する時、魔物は人間に何かしら印をつけていくと聞いたんだが。

「よく知ってるな?もしかして邪法使いだったりするのか?人間は見た目によらねえな」

――もしそうだったら?

「いや、関係ないけどな」

――……残念だが俺は邪法使いじゃない。それで、契約の印について、

「好んで悪趣味な印をつけてくやつはいるけど俺はなんでもいいな。ご主人が望むなら目立たない所で構わない。ただナシっていうのは契約の縛り上認められないんだ、悪いな」

――契約の期間はどうしたい?

「ご主人が死ぬまで。じゃダメか?」

――……俺には複雑な事情があって、将来的にその契約を履行することができなくなる可能性があるんだ。10年ごとに契約更改を提案したい。

「……そのフクザツな事情ってのは教えてもらえるのか?」

――契約が済んだら言うかもしれない。

「……そういうことなら断ることもねえな。10年でも俺としては損のない契約だ」



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