「それは、……端的に言いますと、あなたをそこまで信用していない。これに尽きます」
「なんだと、てめえ!久瀬さんに言っていいことと悪いことがあるだろうが!!」
目を閉じて眉間にしわを寄せて答えると、後ろに控えていた風間が色めき立って壁をドンと殴った。
俺はそんな風間を無視して久瀬先輩のグレーの瞳を見据えた。
「いつ“あの人たち”とご同類になるか知れない貴方の傘下につく気はありません。俺の言いたいこと、分かりますか。久瀬先輩」
久瀬先輩の眼光が一際鋭くなって俺を射抜く。
「……ああ、そうだな。分かる、分かるとも」
ここで俺は、久瀬先輩のゲンドウポーズで隠された口元が笑みを作っていることに気付いた。
嫌な予感がする。
どうも一筋縄ではいかない御仁のようだ。
唯一陥落していない、マトモな役員、というデータでもっと警戒して然るべきだった。
久瀬先輩はもはや零れる笑みを隠そうともせずに言った。
「学園の現在の状況をきちんと異常と認識し、桜田教の信者共が害悪であることも分かっている。俺に睨まれても風間くんに威圧されても平然としている。腕も立つときている。そんな君を是非ともこちら側に引き込むべきだということが分かったよ」
そうして小さく「その二つの問題の解決方法ならある」と呟いた。
『桜田教』と来たか。うまいこと言いやがる。アレほとんど宗教だもんな。
これに対し俺もまた、迷惑そうな表情を隠そうともせずに言った。
「…ひ、百万歩譲ってこの二つの問題が解決したとします。それでも基本的に風紀に入る気はありませんよ」
「なぜ?」
「俺にメリットがないから。」
俺の答えを受けた久瀬先輩は含み笑いをして、少し溜めて言葉を発した。
「それこそ、簡単な話だ!……風間くん、少し外してくれ」
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