ナフェリアの決断で吹雪の進んだ三人は、思ったよりも早くに灯りのもとへたどり着いた。サヤカの見た通りそこは山小屋のようで、中には人がいる様子だった。煙突からは黒い煙がのぼっており、中には何やら暖炉があるようだ。
サヤカたちは、小屋の主に気配を悟らせないよう、少し離れた位置でこそこそと話し合う。ここがもし悪党の──ナツの追っている奴らだけでなく──根城だったとしたら、サヤカたちは良い標的になってしまう。サヤカたちは、中にどんなひとがいるのか全く分からない危険性と、ここで小屋に出会えたというある種の奇跡を天秤にかけた。
……結局、このままじゃ凍死してしまう、というナフェリアの非常にまっとうな意見に頷くことになるのだが。
結局、小屋の主に一晩の宿を貸してもらえないかと交渉してみようということで話がまとまった。交渉役は、もしものことを考えて女性よりは男性のほうがいいだろうとマコトが買って出た。サヤカとナフェリアは、ここは素直に任せることに決める。心配性であるサヤカはあからさまに不安そうな顔だ。
簡素なつくりの小屋の扉は、足もとに積もった雪で二寸ほど埋まっていた。これで扉は開くのか、とサヤカは首をかしげる。その間にも、マコトは怖気づくことなくこんこんと扉をノックする。
すぐに返事が返ってきた。
「どなたですか」
「旅のものです。外が吹雪で、吹雪を凌げる場所も見つからず困っていて……。僕を含めて三人いるのですが、よければ場所をお借りできないでしょうか」
「ああ、そういう事情ならば喜んで。……今扉を開けますので、扉の正面からどいていただいていいですか。皆さんが移動されたら、声をかけてください」
聞こえてきたのはまだ声変わりを迎えていないらしい少年の声だった。はきはきと要点だけ話して、彼は扉の向こうで黙り込む。サヤカたちは不思議に思いながらも、言われたとおりに扉の真正面から捌け、マコトが「大丈夫です」と声を張った。
「じゃあ、遠慮なく」
その言葉の数秒後、扉が途轍もない勢いで開いた。同時、扉を遮るように積もっていた新雪が吹き飛び、扉の横にいたサヤカたちに積もっていた雪も同じように吹き飛んだ。その強風に煽られナフェリアが平衡を崩して転びそうになったのを、マコトとサヤカが腕をつかんで引き留める。
「ありがとうね、ふたりとも。……ところで、今のは風魔法かい?」
「そうですね。扉は雪で埋まってるはずでしたし、手っ取り早い方法がこれだったので」
苦笑いのナフェリアに話しかけられても、表情一つ変えずに答えて見せた少年。サヤカよりも背の小さい彼は、入ってくださいとだけ伝えると、小屋の中へと戻っていった。