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 それじゃあ行こう、とシュリが号令をかける。サヤカは、からかわれて頬を赤らめる彼に、ほんの数日前の自分を重ねていた。この場にナフェリアがいたならどうなっていただろうか。サヤカは彼女にからかわれ、マコトは弟とその恋人にからかわれる、なんていうことになるのかもしれない──と思ったが、ナフェリアならばミコトとシュリも槍玉にあげるのだろうなと思った。そう考えると面白い。
 シュリがなにやらお薦めの露店を教えてくれるらしく、サヤカの腕を引っ張って街へと繰り出した。
 昨晩、幻想的に夜光石の光に包まれていた街はその面影を残しながらも、騒がしい宿場町へと戻っていた。そのうちの、宝飾店の前を通った時にマコトが言う。
「あれ、シュリさんに似合うんじゃないですか」
「兄貴、そういうの言うのは俺の役目」
「あ、ごめん」
 悪びれずにそう言ったマコトに、ミコトがじとりとした視線を向ける。もちろん本気で怒っているわけではあるまいが、ミコトが一方的にマコトに火花を散らしている図は正直に言って面白かった。
 シュリも笑いながら答える。
「わたし、館の前に元いたところの身分証をまだ首飾りにしてるので、二個目はいいかな」
「おっ、サヤカにはこれじゃないか?」
 マコトへの仕返しとばかりに、ミコトがサヤカへ首飾りを薦めた。マコトではなくシュリが不服そうにぺちんとミコトの背中を叩いたが、同時にそれを見て確かにと呟く。銀色の飴細工のような首飾りだった。真ん中には碧に輝く小さな宝石が嵌っている。
「あ、私も両親からもらった宝石を首飾りにしてるから……うん、すごくきれいだけど、今はいらないかなあ」
「あっねえねえサヤカちゃん、これおそろいでつけようよ!」
 その宝飾店の店主は無口に、そんなやりとりを聞いていた。シュリが指差したのは小さな皮の紐で編んである腕飾りだった。彩色が少しずつ異なるようで、全部で六・七種類ほどあるようだ。ミコトとマコトが左右からそれぞれ覗き込んでくる。
「あ、それなら俺も欲しいかも。それほど高いわけでもねえし、全員で揃いの買うか?」
「あっ、それいいなあ。みんなでつけようよ!」
 シュリが強請るようにミコトに言う。そのあと何の色にする、あの色がいいだ全員で揃いにしたいだ、全員でばらばらの色にしたいだとひと悶着あって、結局ばらばらの色にすることで落ち着いた。サヤカが橙、マコトが白、ミコトが緑でシュリが赤だ。サヤカとマコトは好きな色を選んだだけだったが、ミコトとシュリはお互いの瞳の色を選んだようだった。サヤカは左手の包帯の上からそれをつけるわけにもいかず、右手にさっそくそれを填めた。両の手に約束を持ったようだなあ、と満足げに陽に照らす。となりでマコトも、嬉しそうに微笑んでそれを眺めている。一番喜んでいたのはシュリで、みんなでお揃い、というそのことに楽しそうだった。
シュリはひとりで青色の腕飾りも買っていた。