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 次の日も、相変わらず雪が降っていた。
「馬車はどうだって? シュカ」
「動かないそうです。昨晩の話の通りになりました。急ぎなら歩いて王都まで行くことになります」
「……シュリちゃんたちは歩いていく?」
「うーん、そうしようかな……」
 シュリが不安そうな顔でそう続ける。しんしんと降りゆく雪は、確実に季節が未だ冬であることを示していた。一行は、宿についていたテラスで、アルトンの馬車の上体を確認しに行っていたシュカとミコトを待っていたのだ。
「ナフェリアさんはどうしますか」
「あたしはこのままシュカたちについてくけど……」
 シュカが、ナフェリアの言葉にほっとしたように小さく息を吐いた。他の人がその微細な変化に気づく前に、サヤカとマコトを振り返ったナフェリアが続ける。
「あんたらはどうすんだい、特にマコト」
「僕はどっちでもいいけど……サヤカは?」
「えっ……と。……マコトに合わせるよ?」
 返答に困ったサヤカがそう言うと、マコトは少し面食らった顔をしてから考え始めた。そういえば、「サヤカは」と問われたときにこの返しをしたことはなかったな、と今更に思う。ただ、怪我が治っているのにサヤカが振り回すのは、という罪悪感があったから返事に困っただけだったのだが、怪しかっただろうか。
 一晩立つと、昨晩の決意はどこかに飛んで行ってしまったようだった。そして、マコト以外の面々がいる中で、どうしても昨晩の言葉をもう一度伝える勇気など湧いてこないのだ。
 ナフェリアが一瞬だけ言葉をためらってから、続けた。
「一緒に来ないかい。人が多いほうが旅は楽しいだろう?」
「兄貴来ないんなら、母さんに俺から勝手に近況報告するぞ」
「そんなに脅さなくても……」
 なんだかんだ兄と一緒に行きたいらしいミコトがそう言って笑っていた。苦い顔をしながらも笑ったマコトが、サヤカの顔を覗き込む。黒髪がマコトの表情を半分隠していた。
「サヤカはそれでいい?」
「うん、いいよ。今から出発したら、今日の夜には着くかな?」
「そうだねえ。雪が止むまで待つのもいいけど、早く進みたいし……」
 ナフェリアがちらりとミコトのほうを見る。つられて全員の視線が彼に集まって、シュリがその視線を代表して問いかけた。
「……ミコト、火の魔法いっぱい使ってくれる?」
「おう、いいぜ。当たり前だろ」
 視線の先の彼は、任せろと言いたげに胸を叩いていた。